東方見雲録

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2023.12.09
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カテゴリ: ものづくり
鉄の5倍の強度で重量は5分の1! 環境に優しいセルロースナノファイバー



セルロースナノファイバーには、主に軽量で強度が高いという特徴を生かして、炭素繊維などに代わる樹脂の高性能補強材といった用途が期待されています。しかし樹脂補強材としては製造コストが高いのが最大の課題です。セルロースナノファイバー強化樹脂の、構造材としての実用化を目指した研究開発が進む一方で、機能の多様さを生かした自動車タイヤ、ボールペン、シャンプー、化粧品といった衛生用品や日用品への利用、天然素材であることを生かした食品分野での応用がすでに進んでいます。今後、そうした分野だけでなく透明性を生かした電子材料分野なども応用分野のひとつとして期待されています。


セルロースナノファイバーの高分解能走査型電子顕微鏡写真

 CNFが構造材として注目されながら普及が進まない理由として、大量の水に分散させてナノスケールまで繰り返して細かく繊維をほぐすための機械処理が必要であり、そのためのコストの高さが挙げられます。

 自動車や航空機のボディなどの骨組みとなる構造材にとって、強度と軽さは燃費改善、航続距離の延長に不可欠な要素です。その点、CNFで強化したプラスチック材料はうってつけと言えますが、GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)やCFRP(炭素繊維強化プラスチック)など、繊維で強化するCNFの類似材料は、すでに自動車のボディ材料などに使用され、実用化されているものが多いのが実情です。あえてコストが高いCNFを使わなくても他の素材を使えば同様の性能は実現できているのです。

 とはいえ、CNFのもうひとつの強みとして100%天然素材という点は見逃せません。自動車部品ではほとんどのタイヤが、天然ゴムを主材に合成ゴムを配合していますが、CNFを補強材に採用した製品も登場しました。今後、合成ゴムを使わず100%天然ゴムを原料にし、補強材にCNFを用いれば100%天然素材のタイヤも夢ではありません。自動車産業のテーマは「脱炭素・脱石油」。CNFは植物由来の材料であることから、CNFの持つ多くの特徴を生かして、これからも構造材をはじめとして応用分野の開発が進むでしょう。
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 SDGsが求められる現代社会では、CNFは天然素材というアピールポイントを生かした用途開拓が進んでいます。植物ならば木や草でも基本的に同じようにCNFの原料として使用できます。間伐材や食用や飼料用の植物の刈り取った後の茎など未利用のバイオマス資源を原料とすることも可能です。石油系の資源をつかわずに、今まで利用されてこなかった植物、すなわちバイオマスを資源に使えるCNFは、廃棄物削減や地球温暖化防止という現代のニーズにマッチする素材だと言えます。天然素材であることで人体に触れる用途にも安心して使えるなど、応用分野はこれからも広がっていくことでしょう。

 日本でも自然志向・健康志向の社会ニーズがさらに強まれば、天然素材という点がより注目され日用品や食品、雑貨の開発・実用化が進むだけでなく、CNFの製造法の改良が進み低コスト化が実現されるでしょう。製造コストが下がることで、CNFの機械的強度の高さを生かした自動車や航空機などの構造材や建材分野などより機能性を重視する分野での応用が進むことが期待されています。

こちら

参考サイト:Wikipedia情報   こちら

参考サイト:2019 モーターショー   こちら





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Last updated  2023.12.09 09:00:10
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