東方見雲録

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2024.02.29
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カテゴリ: 宙(そら)学入門

25日の通信結果(JAXAの公式Xより)
© ITmedia NEWS

 月面着陸に成功した小型月着陸実証機「SLIM」が、14日間続いた極寒の夜を越え、2月25日に通信を再開した。JAXA(宇宙航空研究開発機構)が2月26日、SLIMのX公式アカウントで発表した。

 25日に地上から送信したコマンドに対してSLIMから応答があり、通信機能を維持して夜を越えられたことが分かったという。

 月面では14日間続く灼熱の昼と、14日間の極寒の夜が訪れる。月面の昼は110度、夜はマイナス170度になるとされ、SLIMの設計範囲を超えた非常に厳しい温度環境だ。
 SLIMは1月20日に月面に着陸。一時、太陽電池による発電ができず運用を停止していたが、その後、通信を確立。着陸地点が日没を迎えたため1月31日運用を停止し、冬眠状態になっていた。

 夜の極寒でSLIMの機能喪失も懸念されていたが、2月25日夜、無事に電波の送受に成功した。通信時、一部の機器の温度は最初から100度を超えていたため、通信は短時間で終了した。今後、温度が十分に下がったところで観測を再開できるように準備していくという。
引用サイト: こちら


関連サイト: こちら

月面での越夜はなぜ「特別」なのか



 月面の温度は昼に100度(摂氏、以下同)、夜に-170度といわれる。1972年のアポロ17号の観測で低温では、103K(およそ-170度)、高温で385K(およそ111度)だった。その後はNASAの月周回探査機「ルナー・リコネサンス・オービター」(LRO)が継続的に温度を測定しており、緯度によって温度に差があることもわかってきた。極域の環境では100Kを下回ることもあり、低温環境では表面温度が-180度や-220度に達することもあるようだ。

 極端な温度差のため、月探査機の電子機器は熱によるひずみや歪みで損傷してしまうリスクがある。アポロ11号のミッション中には、電子機器のはんだ付け部分が熱で損傷して誤動作を引き起こしたという例がある。また宇宙機でも利用されているバッテリーのリチウムイオンは極端な低温では凍結してしまう。

 月面で探査機が「1日以上」の時間を越えて活動するには、日中の放熱と夜間の保温の機能を備えた設計の上で、日中に太陽電池から得られるエネルギーを利用して活動し、夜間は活動を休止して機器を保護するというサイクルを繰り返すことになる。
・・・・
なぜ原子力電池なしで月の夜を乗り越えられたのか?

 RTGやRHUなどによるヒーターが使用できない場合、宇宙機の越夜の可能性は非常に厳しくなる。日本が過去に計画した「LUNAR-A」のように、地下に進入するミッションの場合は地下の断熱効果を利用できるが、発電機器は月面に残しておく必要がある。SLIMと同系統となるNASAのサーベイヤーミッションは、RTGを持たずに月面で越夜に成功したきわめて珍しいミッションだ。

 サーベイヤー3号のミッションレポートによれば、RTGを持たない探査機はバッテリーを使った夜間のヒーターと、徹底して日中の熱流入、夜間の熱流出を抑える設計で乗り切っている。電子機器は2つの「コンパートメント」と呼ばれる断熱容器に収められ、各コンパートメントの上部にはラジエーターが取り付けられている。日中はラジエーターから熱を逃し、夜間はラジエーターを切り離して保温する。コンパートメント内には銀-亜鉛蓄電池を電源とするヒーターが取り付けられ、夜間は機器を温めていた。探査機の外側も多層断熱材で覆われている。

 サーベイヤー探査機は総じてマジックを使っていたわけではなく、事前に月面の熱環境を想定してひたすら理論で探査機の設計を積み上げていくことで越夜を実現した。そもそも温度を含めた月面の環境を測定するためのミッションで、温度環境は完全にはわかっていないという厳しい条件でこれを実現している。それでも、着陸地点にあった岩が周辺の熱環境を左右していた、という「運」もあって探査機寿命の命運は別れたという。

 SLIMは、サーベイヤー探査機の系譜に連なる、原子力電池を利用せずに越夜を実現した探査機ということになる。半世紀以上の月探査で、温度などの月面環境がより明らかになってきているという進歩はあるが、1月20日の着陸後まもなくリチウムイオンバッテリーを切り離しているため、夜間のヒーターの電源として利用できない制約もある。

 将来は日本の深宇宙探査でもRTGなど多様な電源の利用を推進する声があり、それは宇宙探査の手段として向き合うべき課題だ。ただ、マジックではなく過酷な月面環境を読み切って探査機の設計に反映させたSLIMの実力は、今後続くインドと共同の「LUPEX」や将来に日本が参加する有人月探査にも活きてくるはずだ。
引用サイト: こちら

関連サイト:民間初の米月面着陸船が休眠状態に、夜明け後に通信再開トライへ こちら



J AXA月探査機「SLIM」再び休眠状態に 次の運用挑戦は3月中旬以降
JAXAによると、SLIMは通信機器の温度が十分下がってから観測を再開できるように準備を進め、日本時間2024年2月29日夜の運用ではMBCも起動したものの、越夜の影響によるものか正常に動作しませんでした。着陸地点は日本時間2024年3月1日3時すぎに日没を迎えたため、SLIMは再び休眠状態に入っています。

月面の温度は昼間は約110℃、夜間は約マイナス170℃と温度差が激しく、電子機器等が故障する確率も上がるものの、JAXAはこれまでに取得したデータをもとにSLIMが再度夜を越してからとなる2024年3月下旬の運用機会に向けて調査を行うということです。
引用サイト: こちら

SLIM まとめ解説 NHK こちら

24.04.20追記
SLIM、2度目の“越夜”に成功 極寒に耐え、再び航法カメラの画像を送る


 取得した機体データからは、一部の温度センサーや、既に使用していないバッテリーセルに不調が出始めていることも分かった。それでもJAXAは「1回目の越夜で確認した主要な機能は維持」しているとみている。

 月面では灼熱の昼と極寒の夜が、地球時間の14日周期で訪れる。昼間は摂氏110度、夜はマイナス170度になるとされ、SLIMはもともと越夜を想定して作られてはいなかった。
引用サイト: こちら

24.04.24追記
月探査機SLIM、またまたまた復活 3度目の「夜」越え、通信再開

復活した探査機SLIMが送ってきた月面画像。これまでの画像と比べて全体的に明るい=JAXA提供
© 朝日新聞社


3月末に復活した際に探査機SLIMが送ってきた月面画像=JAXA提供

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は24日、「休眠」していた月探査機SLIM(スリム)との通信が再開したと明らかにした。マイナス170度の極寒の「月の夜」を生き延びる「越夜」に成功するのは、3月末に続き3回目。撮影した月面画像も送信してきた。

 JAXAによると、SLIMが再起動したのは23日夜。前回は3月30日に休眠に入ったため、約3週間ぶりの復活となった。再起動したタイミングは、これまでで最も早い月齢だったため、太陽がほぼ真上から差し込んでいる。撮影した画像も全体的に明るく、影も非常に短いことが見てとれる。

 月面では、太陽の光が当たる状態と当たらない状態が約2週間ずつあり、当たらないとマイナス170度ほどになる。SLIMは過酷な環境に耐えられる設計になっておらず、稼働できるのは数日と見込んでいたが、着陸から3カ月以上たっても探査を続けるたくましさを見せている。

 一方、月面の岩石調査に使う特殊カメラは、2月末に復活して以降、正常に動いていない。電源は入るが、撮像ができていない状態だといい、プロジェクトチームが観測できないか試みるとみられる。
引用サイト: こちら

0430追記

スタートラッカーで撮影した月面(出典:SLIM公式Xアカウント)
© UchuBiz
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小型月着陸実証機(SLIM)は4月29日未明、再びの日没を迎え、休眠に入った。「3度目の越夜成功」からの復帰運用となった今回は、スタートラッカーによる北側斜面の撮影に挑んだ。
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スタートラッカーとは、宇宙を航行中の探査機の向きを、星の並び具合から精密に計測する装置だ。原理的にはカメラと同様の撮影が可能なことから、SLIMの公式Xアカウントいわく「裏コマンド」として運用に挑んだ。
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SORA-Qが撮影したSLIMの画像にはスタートラッカーが写っていた。つまり、スタートラッカーから撮影した今回の画像には、SORA-Qが写り込んでいる可能性があるという。なお、スタートラッカーはカメラとしての使用は想定されておらず「鮮明な画像を得るのは困難」とするものの、今後機会があれば違う設定での撮影にも挑むとしている。

SLIMの太陽電池は、5月中旬〜下旬ごろに発電を再開する見通し。その際には再びの運用復帰に挑戦する。
引用サイト: こちら

関連日記:2024.01.25の日記 こちら





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Last updated  2024.04.30 15:40:31
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