東方見雲録

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2024.09.08
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カテゴリ: 科学

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日本海新聞 0831

ちょっと道草:3月9日付の朝日新聞朝刊から、山極寿一氏の「人類はどこで間違えたのか」

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関連サイト:論旨   こちら
人類はどこで間違えたのか 共感力と技術 賢い使い方を

 まず、「人類は進化の勝者」という考え方が間違っている。そもそも人類に最も近縁なアフリカの類人猿は、2千万年前から勢力を伸ばし始めたサルたちに押されて、種の数を減らしてきた劣勢の種だった。サルに比べて消化能力も繁殖能力も劣っていたからだ。乾燥地や平原に進出したサル類とは対照的に類人猿は熱帯雨林とその周辺にしか生息していない。
 地球が寒冷化し始めた700万年前、人類の祖先は直立二足歩行を駆使して、熱帯雨林から徐々に草原へと進出を果たした。それは強かったからではなく、弱かったから縮小する森林にすみ続けることができなかったからだ。速力でも敏捷性でも劣る二足歩行は、自由になった手で食物を運び、安全な場所で仲間との共食を導いて人類の生存を助けた。
 人類が狩猟を始めたのは50万年前であり、それまでは肉食動物に「狩られる」存在だった。それで互いの身を守るために助け合い、集団の規模を少しずつ拡大して肉食動物の脅威を防ぐことが人類の社会力を育てたのである。それは互いの社会関係を熟知し、気持ちを理解し合う共感力によって鍛えられた。また共食や共同の子育ては共感力の強化に役立ち、歌や踊りなどの音楽的コミュニケーションはその触媒となった。つまり、人類の進化の大半を「弱みを強みに変える」ことによって発展してきたのだ。

 7万~10万年前、その共感力に満ちた社会に言葉が登場した。言葉によって世界を切り分け、物語にして出来事を因果関係によって解釈し始めた。人間は物語の主人公になり、環境を対象化して世界を支配するようになった。

 しかし、定住と所有という農耕・牧畜社会の原則は個人や集団の間に多くの争いを引き起こし、やがて支配層や君主を生み出し大規模な戦争につなげる温床となった。集団間の争いで死亡する人の割合は3千~5千年前に最大となり、下克上の世の中を生き延びるためにキリスト教や仏教などの世界宗教が生まれたのである。
 この時期に人間は、現世の苦しみはあの世で救済されるという考えを抱くようになった。これは人類が長い進化の過程で発達させてきた共感力を敵意を利用し拡大させる道を開いた。もともと共感力は150人程度の集団で働く顔見知りの意識だが、顔も知らない人々が自己犠牲をいとわずに助け合うために、支配層は言葉を弄し、武力を強化し、社会の外に共通の敵を作って団結する仕組みを作ったのだ。これは今でも戦争の基本的な考え方として力を発揮している。

 産業革命はそれまで家畜の力に頼ってきた人間の暮らしを、人工の動力によって拡大することに成功した。農村で季節の変化に従って生きてきた人々は都市に集められ、自然界にない製品を作り出せるようになり、支配層だけでなく一般の人々も過剰に物を欲するようになった。それが無限の経済成長を信じる思想を育て、海外へ進出して領土を広げ、自国にない産物を略奪する行為を正当化した。

 人類が成功者として歩んできたという思想の裏に、実は間違えた道筋をたどった歴史が隠されている。地球環境が限界に達した今、人間の足跡を検証し、正しい道へと社会を向かわせなければならない。そろそろ過去の間違いを認め、共感力と科学技術を賢く使う方策を立てるべきではないか。個人の欲求や能力を高めることよりも、ともに生きることに重きを置く。管理された時間から心身を解放し、自然の時間に沿った暮らしをデザインする。所有を減らし、シェアとコモンズ(共有財産)を増やして共助の社会を目指すことが肝要だ。それは長い進化の歴史を通じて人類が追い求めてきた平等社会の原則だ。
 間違いを認めず、いたずらに武力を強化して、再び戦争の道を歩むことだけは決してあってはならない。

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「樹木には、同じ種類でまとまった林を作る種類と人間が植えなければ林にならない種類があります。例えば、どこの野山でもマツ林は普通に見られるのに、サクラ林が自然にできることはなく、この違いに菌根菌のタイプが関わっているのです。外生菌根菌が共生するマツの根の周囲には共生菌が蓄積して同じマツの実生の成長を促し、マツ林ができあがります。一方、アーバスキュラー菌根菌が共生するサクラの周囲には病原菌が蓄積してサクラの実生の成長を阻害し、多様な樹木が育つことになるのです。森林生態系を土からつくって分析することで、森林の成り立ちに地下の菌根ネットワークがダイナミックに影響を与えることが確認できました」


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樹木の多様性を守り、森林の変化を促す原動力「菌根菌」
土壌にはさまざまな微生物が存在し、実生を待ち構えています。その代表格といえるのが、「菌根菌」という仲間の共生菌です。菌根菌は、根の表面付近や内部に侵入して生きる「かび」や「キノコ」の仲間です。これらの菌類は水分や土壌の栄養分を吸収して植物に与え、一方で植物は糖を菌類に与え、互いに役立つ関係を持っています。このような関係を菌根共生といいます。

菌根菌は糸のような足(菌糸)を方々に伸ばし、地面の中で網目状の構造(ネットワーク)を作っています。このネットワークにつながることは、実生の定着と成長を左右する重要な条件です。しかし、ネットワークにつながれば何でもよいというわけではありません。樹木が共生する菌根菌はいくつかの種類に分類でき、代表的なのは、サクラ、モミジ、ツバキやクスノキなどと共生する「アーバスキュラー菌根菌」、アカマツ、コナラ、シイやアカシデなどと共生する「外生菌根菌」という2つの菌根タイプに分類され、これらはそれぞれ異なるネットワークを作っています。

樹木の種類によって、同じ菌根タイプのネットワークにつながれば成長できる樹種もいれば、同じ菌根タイプであり、かつ同種の樹木のネットワークでなければ成長できない樹種、どのような菌根タイプの樹木のネットワークでも成長がそれほど変わらない樹種がいます。そうした特徴に応じ、どの樹木の種類の実生がどのような条件下で生き延びることができるのかが決まります。


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森林から見た私たちの暮らし
近年、未曾有の自然災害が世界各地を襲っています。そうした災害から私たちの身を守ってくれるもののひとつが自然の森です。私たちの研究では、土壌に生息する微生物のはたらき(土壌微生物が原動力となる環境変化)を理解することではじめて森の成り立ちと遷移を理解できることを示しました。よって、菌根菌は、さまざまな生態系サービス(炭素の蓄積や水源の涵養、防災、食料や木材生産などの人類の利益になる生態系の機能)の重要な基盤となります。

美しい森は豊かな土壌微生物の世界に支えられている。
森をきちんと管理していくためには、森がどのようにできているのかを知ることが重要です。土壌微生物のはたらきから森を捉えるアプローチは、将来、森林を守ったり、再生させたりするうえでスタンダードになっていくかもしれません。

さらに、土壌微生物が大切となるのは、森林だけではありません。農地においても重要です。1種類の農作物だけでは豊かな土壌微生物を育むことはできません。しかし、混作をすることで、農作物の多様性が豊かな土壌微生物相を作り出すことにつながります。植物とともに豊かな土壌を育むことが、森林や農地が提供する生態系サービスを向上させ、人々の暮らしを支えることにつながるのではないかと考えています。
門脇浩明
京都大学学際融合教育研究推進センター・特定助教
引用サイト: こちら

強引な我田引水 私見
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Last updated  2024.10.14 20:19:20
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