東方見雲録

東方見雲録

2026.08.15
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カテゴリ: 文化



この原爆投下の展示では、「わたしの観点」として四人の人物による投下直後の証言や意見が並べられていた。
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広島逓信病院の日本人医師ハナオカ・カズオは、「焼け焦げていないものは、何ひとつ見当たらなかった」と原爆投下後の広島の惨状を証言している。二一歳の米軍少尉ポール・ファッセルは、原爆投下を聞いて「東京近郊の浜辺で機関銃を撃ちながら砲撃と迫撃砲を浴びることを免れた」と喜びの涙を流したという。トルーマン大統領は、「戦争の苦悩を早く終わらせ、何万、何十万という若きアメリカ人の命を救うため」と原爆を投下したみずからの決断を正当化している。

そして四人めに登場するのが、昭和天皇だった。

そこには、玉音放送の一節が引用されていた。以下は、展示の英訳よりわたしが日本語に訳した。前略と中略は英文のママである。

(前略)敵は、新たにしてきわめて残酷なる爆弾を用いはじめ、その破壊力はまさしく計り知れず、多くの無辜の命を奪った。(中略)それゆえ、朕は、連合国共同宣言の条項を受諾するよう命じた。

これはかなり恣意的な引用だ。一見すると「原爆投下が日本の降伏を決定づけた」と読み取れてしまう。だが、実際には省略された部分で、国民の生存確保などの理由にも言及されており、原爆が唯一で直接の理由として挙げられていたわけではない。

参考までに、同箇所の原文の趣旨を、現代語訳で以下に示しておく。

それに加え(引用者註。戦争開始より四年近くが経過し、日本人の努力にもかかわらず戦局は好転せず、世界情勢も日本に不利だと述べたうえで)、敵は新たに残虐なる爆弾を使用して、たびたび罪なき民を殺傷し、その惨たらしい被害がどこまで及ぶのか、本当にわからないところまできてしまった。これでなお戦争を続ければ、ついにわが民族の滅亡を招くのみならず、ひいては人類の文明をも破壊し尽くしてしまうだろう。こうなってしまっては、朕は、わが子のように慈しむ人民を守ることができず、祖先のみ霊に顔をあわすこともできない。これが、朕が政府にポツダム宣言を受諾させるにいたった理由である。  (拙著『天皇のお言葉』より引用)



以上の展示から読み取れるのは、戦勝国の博物館であっても、かならずしも自国の行為を全面的に正しいとは主張しきれていないという事実である。

もっとも、米国では第二次トランプ政権が成立して以降、DEI(多様性・公平性・包摂性)政策を廃止し、博物館や記念碑の見直しが進められている。そのため、将来的にはこのような展示も変更される可能性がある。だが、われわれがいま米国について参照すべき点があるとすれば、こうした〝全肯定に傾かない〟展示のあり方ではないだろうか。
引用サイト:辻田 真佐憲(文筆家・近現代史研究者) によるストーリー   こちら





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Last updated  2026.08.15 06:00:05
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