プレリュード

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2010年10月09日
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「名曲100選」 ベートーベン作曲 弦楽四重奏曲第7番~第9番「ラズモフスキー」

藝術家、特に名を成した人の歴史を振り返る時にその生涯や作品が形成された時期を分けたくなるものです。 また色分けすると分かりやすく理解できるこもあります。 ベートーベンの作曲作品を年代で分けてみると前期・中期・後期と分けられるそうです。

彼の作品で最もと言ってもよい有名な交響曲第5番作品67。 この第5番として知らなくても「運命」と覚えている人、知っている人も多いでしょう。 第6番「田園」作品68と共に上述の中期を代表する交響曲です。 この中期にはヴァイオリン協奏曲作品61、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」作品73、チェロ・ソナタ第3番作品69、ピアノソナタ第23番「熱情」作品57などが次々と書かれています。 いずれも雄大なスケールを誇る音楽ばかりです。 またベートーベン自身が古典音楽から脱皮して新しい音楽~ロマン的で文学的な音楽~へと変わって行った時期にあたります。

俗に「ラズモフスキー四重奏曲」と呼ばれる弦楽四重奏曲第7番~第9番は作品59としてまとめられており、この3曲もベートーベン中期に書かれています。

「精神(音楽)が私に語りかけてきている時に、あなたの哀れなヴァイオリンのことを考えられると思っているのですか?」  有名なベートーベンの言葉として残されているのですが、これは四重奏曲作品59の3曲の演奏の難しさを、ヴァイオリニスト・シュパンツィヒがベートーベンに訴えた時の返答とされています。

このシュパンツィヒは当時オーストリア大使としてウイーンに駐在していた、ロシア貴族のラズモフスキー伯爵がお抱えとしていた弦楽四重奏団のヴァイオリニストです。 ラズモフスキー伯爵は熱狂的な音楽愛好家で、当時ベートーベンを世話していたパトロン的存在のリヒノフスキー侯爵と義兄弟という関係もあって、ベートーベンの四重奏曲はほとんどこのラズモフスキー専用の団体で演奏されていたそうです。

ラズモフスキー伯爵はベートーベンに作曲の依頼をしました。これに応えて献呈したのが作品59の3曲「第7番~第9番」でした。 この献呈によって「ラズモフスキー」という副題が付けられており、伯爵に敬意を表して音楽の中にロシアの民族音楽風旋律をさり気なく挿入されていることからも「ラズモフスキー」の副題が活かされているようです。

音楽は3曲とも中期を代表する作品らしく規模も大きく、気宇壮大な佇まいの中に包み込まれてしまうかのような雄大な四重奏曲です。 チェロ・ソナタ第3番イ長調と同じような壮大な音楽宇宙を築いた曲たちです。

こうした音楽を聴くと上述のベートーベンの言葉が理解できるように思えます。「運命」の作曲にもとりかかり「皇帝」や「熱情」の素案も心に浮かんできているベートーベンにとって、一ヴァイオリニストの嘆きなど考えている暇がないのでしょう。

シュパンツィヒの言葉通りこの作品に対する批評は酷いものだったそうです。「ベートーベンはとうとう気が狂ったか。 こんなのは音楽ではない」と酷評されたそうです。彼らには前衛音楽のように響く曲だったのでしょう。ハイドン、モーツアルト時代の「家庭音楽(ハウスムジーク)」の代表だった室内楽は「サロン音楽」であり劇的でありロマン性の備わった音楽ではなかったのですから。



(1) ブタペスト弦楽四重奏団

CSCR8044-46 1959年録音
(SONYレーベル CSCR8044-46 1959年録音)

このディスクは全集ではなくて「ラズモフスキー」3曲と第10番、第11番、第13番の「選集」。 今は廃盤でこれに変わって全集盤としてリリースされています。 安定したリズム、アンサンブルの見事さ、四重奏の密度の濃さに圧倒されてしまう50年前の録音ながら、今日でも相変わらず聴き親しんでいる名盤。

(2) アルバン・ベルク弦楽四重奏団

5746062 1978-83年録音

タワーレコードで特売(4500円)で売られていた全集7枚組。 第1番から順番に第16番まで聴くと音楽の変わって行く様を聴きとれます。 非常に精密なアンサンブルで非の打ちどころのない演奏ですが、あまりに精密で機械的なところが好きでありません。


(3) ウイーン・ムジークフェライン弦楽四重奏団

DB1031 1992年録音
(グラモフォン原盤 タワーレコード DB1031 1992年録音)

タワーレコードのオリジナル企画で全集 今なら8枚組で2890円という破格の安値です。ブタペストやアルバン・ベルクの演奏と少し雰囲気が違います。 とても柔らかな感じのアンサンブルで音楽の表情にも優しさの溢れるベートーベン。 それが物足らないと言う人もいるくらいに優しさに満ちた典雅なベートーベン。


(4) カール・ズスケ弦楽四重奏団

KICC9417 1967-68年録音
(シャルプラッテン原盤 キングインターナショナル KICC9417 1967-68年録音)

第7番(ラズモフスキー第1番)を収録しています。

KICC9457 1967-68年録音


第8番(ラズモフスキー第2番)を収録しています。

KICC9437 1967-68年録音
(シャルプラッテン原盤 キングインターナショナル KICC9437 1967-68年録音)

第9番(ラズモフスキー第3番)を収録しています。

シャルプラッテンの録音盤を徳間音工がリリースしていたころに購入した比較的古い盤でLP時代から聴いていた演奏。 ゲヴァントハウス管弦楽団のコンサート・マスターであったカール・ズスケ(いっときN響にも来て首席を務めていました)が主宰する四重奏団で、純ドイツ風を好む方には最も好まれる演奏だと思います。








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最終更新日  2010年10月09日 00時14分21秒 コメントを書く


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