少し前までのコンピューターウイルス(悪質なプログラム、以下ウイルス)といえば、自分の技術力を誇示したり被害の拡大を遠くから楽しんだりするよう な、いわば愉快犯的なものがほとんどだった。感染するとパソコンが終了してしまったり、画面に花火や渦巻きを表示したりして、ユーザーを驚かせるようなも のだ(図1)。
こうしたウイルス以外にも、大量のパソコンに感染するような、動きの派手なものも少なくなかった。2009年にWindowsの脆弱(ぜいじゃく)性を 悪用して世界中で900万台のパソコンに感染したといわれる「ダウンアド(DOWNAD)」や、2003年に大流行した「ブラスター(Blaster)」 や「スラマー(Slammer)」が代表例である。
ところが最近では、こうしたウイルスとは別に金もうけを目的とした攻撃が増えている。例えば、パソコンをウイルスに感染させて、IDやパスワードといっ た個人情報を盗み出してそれを販売したり、パソコンを自由に操作できる権限を奪ってそれを販売したりする。
無論、「攻撃していますよ」ということがユーザーに簡単にバレてしまったのでは、攻撃者は目的を果たせない。そこで攻撃者は“静か”に攻撃を実行するよ うに変わってきた。「ウイルスを見つけにくくなっているのが現状」(トレンドマイクロ コンシューマ&SBマーケティング部 プロダクトマネジメント課 プロダクトマネージャーの長島理恵氏)なのだ。
活動が静かになるだけではなく、ウイルスの種類は増加の一途をたどっている。ドイツのウイルス検査機関「AV-TEST.org」によると、2008年 には800万件弱の新種ウイルスが確認されたという。同機関によって2006年に確認された新種ウイルスが100万件近かったことから、2年間で約8倍の 新種が発見されたことになる。最近では「1.5秒に1つウイルスが発生しているといわれている」(長島氏)。
これではメーカー側の対応が追いつかなくなる可能性がある。こうした状況に対応するため、同意したユーザーのパソコンから匿名でファイルの情報を収集す る製品が多くなっている。例えば、トレンドマイクロの「ウイルスバスター2010」では、パソコン上で不審な動きをするファイル(ソフトウエア)の情報を 収集する機能を取り入れている。その情報を元に、ウイルスかどうかの判定に利用するウイルス定義ファイル(パターンファイルなどとも呼ばれる)を作成する というわけだ。
攻撃に使うための経路も広がってきた。ウイルスの侵入経路としては、数年前まではメールに添付されて送られてくることが多かった。最近はメールではな く、Webサイトにアクセスするだけで感染するWeb経由の攻撃が増えている(図2)。
Web経由で感染を広げるウイルスを使った攻撃の代表例が「ガンブラー」だ。攻撃者は、企業などのWebサイトに侵入し、Webページを改ざん。ウイル スの「わな」を仕込む。そのWebサイトにアクセスしたユーザーはウイルス感染する。国内では、2009年末から2010年初めにかけて、有名企業の Webサイトが改ざんされ、ガンブラーに悪用された。
ガンブラーで送り込まれるウイルスは多種多様だが、ほとんどがWebサイトの管理用パスワードを盗み出そうとするタイプ。攻撃者は盗んだパスワードを使 い、ほかのサイトへも魔の手を伸ばすのだ。ほかにも、パソコンを乗っ取るウイルスやセキュリティ対策ソフトを無効化するウイルスをダウンロードさせたり、 セキュリティ対策ソフトに見せかけた偽ソフトをダウンロードさせたりすることもある。
Webを悪用した攻撃はガンブラーなどに代表されるウイルスだけではない。ユーザーを詐欺サイトに誘導するためにも使われている。
例えば、話題になっているキーワードで検索した結果の上位に表示されたWebサイトにアクセスすると、
偽ソフト
を ダウンロードさせるというものだ(図3、図4)。Webページにアクセスしただけ、あるいはWebページ中の画像やリンクをクリックしただけで料金を請求 する
ワンクリック 詐欺
サイトや、銀行など金融機関やクレジットカード会社、ショッピングサイトを偽装したメールを送りつけ、メール中の偽リンクから 偽サイトへと誘導し、IDやパスワード、クレジットカード番号などを詐取する
フィッシング 詐欺
サイトの誘導に使われることもある。
Web経由の攻撃が増えているとはいえ、これまで主流だった経路の一つであるメールも当然見逃してはならない。セキュリティ企業などの調査によると、全 メールのうち7~8割が迷惑メールだとされているからだ。迷惑メールを“あわせ技”として使う攻撃も多い。フィッシング詐欺はその代表格である。攻撃者 は、巧妙なトークや旬なキーワードを駆使し、添付されているウイルス実行させたり、フィッシング詐欺サイトやウイルスを感染させるようなサイトへ誘導した りする(図5)。
インターネットを経由しない攻撃もある。USBメモリーなどの外部記憶装置を使った攻撃だ。Windowsの自動再生機能を悪用し、USBメモリーをパ ソコンに挿入するとウイルスが自動的に実行されるというものである。
PR
キーワードサーチ
カレンダー
コメント新着
フリーページ