ADBE )の動画技術「Flash(フラッシュ)」をめぐる、アドビのシャンタヌ・ナラヤンCEO(最高経営 責任者)と米電子機器大手アップル( AAPL )のスティーブ・ジョブズ会長兼CEOの対立だ。フラッシュは膨大な数のウェブサイトの双方向機能を 実現させている技術だ。
ジョブズ氏は6月に開催された技術者向けカンファレンスで、「フラッシュは衰退しつつあるテクノロジーだと思う」と語った。同氏の主張によれば、フラッ シュのプログラムはバグが多く、電池消費量も大きすぎるという。同氏はフラッシュと同じ機能の多くを実現できる、現在仕様策定中のウェブ記述言語 「HTML5」の採用を支持している。
一方、米カリフォルニア州サンノゼのアドビ本社でインタビューに応じたナラヤンCEOは、思慮深く穏やかな物腰で、ウェブ上の技術をめぐる主導権争いを 繰り広げている人物という印象とは程遠かった。フラッシュをめぐる争いは、ジョブズ氏が言うように「戦争」というほどの段階に達しているのかとナラヤン CEOに尋ねると、同CEOは笑みを浮かべ、こう語った。「この状況をどんな言葉で表現するかは重要ではない。当社はこれをコンピューティングの今後の方 向性を決める綱引きだと考えている」。
無料配布されている動画再生ソフト「Flash Player(フラッシュ・プレーヤー)」は、大半のウェブサイトの紹介画面や短編映像、挿入広告、動くタイポグラフィー(文字表現)、双方向グラフィッ クスなどを再生表示でき、世界中のパソコンの98%にインストールされている。
アドビによれば、フラッシュはトップ100の主要ウェブサイトの85%ほどで採用されており、オンラインゲームの70%、ネット動画の75%にもフラッ シュ技術が使われているという。
アドビの調べでは、携帯電話機メーカー上位20社のうち19社がフラッシュに対応したスマートフォン(多機能携帯電話)を生産している。唯一の例外が アップルで、同社のスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」やタブレット機「iPad(アイパッド)」はフラッシュに対応していない。
1989~1995年にアップルに勤務していたナラヤンCEOは、フラッシュに対するジョブズ氏の批判は技術的な問題を突いたものではなく、その狙いは 今後の携帯端末分野で主導権を確保したい同氏の思惑にあると見ている。
「コンピューティングをめぐる対立が生じる背景には、常に絶大な市場シェアの確保をめぐる争いがある。パソコンの場合は、アプリケーション分野で主導権 を得た者が圧倒的な市場シェアを獲得した。アップルにとってフラッシュは目の上のこぶで、同社が望む閉鎖的なシステム確立の障害になっていると考えている のだろう」(ナラヤンCEO)
この件に関してアップルに電話でコメントを要請したが、返答は得られなかった。HTML5はフラッシュとは異なり、特定企業の独自技術ではなく、所有権 を持つ企業は存在しない。
アドビはフラッシュ・プレーヤーの最新版「Flash 10.1(フラッシュ10.1)」のリリースで、同社が今後もスマートフォンやタブレット機の分野で力を発揮できることを証明しようとしている。10.1 の開発はジョブズ氏が公然とフラッシュ批判を始める前から進められていたが、この最新版は同氏の批判の多くに対処している。
10.1では、携帯端末で動画をよりスムーズに再生できるようになるほか、iPhoneのようなタッチスクリーン操作にも対応し、指でつまんで写真を小 さくしたり、反対に指で広げて写真を拡大できるようになる。アドビによれば、この最新版ではバッテリーの消費電力も低減されるという。
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