パターンファイルを「クラウド」に、ユーザーの「評判」も活用
シマンテック、ジャストシステム、トレンドマイクロおよびマカフィーの4社は、2010年8月から9月にかけて、ウイルス対策ソフトの新版を相次い で発売した(表1)。新版の特徴は、「クラウド」機能や「レピュテーション(評判)」機能への対応強化。ここでのクラウド機能とは、インターネット上の サーバー(クラウド)に置いたパターンファイル(ウイルス定義ファイル)に、リアルタイムで問い合わせる機能のこと。レピュテーション機能は、怪しいファ イルなどの情報を対策ソフトメーカーに報告する機能を指す。これらの機能により、新種ウイルスにいち早く対応できるとしている。なお、これらの機能の名称 は、メーカーによって異なる。
表1に掲載した各社の主力製品は、ウイルス対策に加えて、迷惑メール対策やフィッシング詐欺対策、ファイアウオール、URLフィルタリングなどの機能を備えた統合セキュリティ対策ソフト。
トレンドマイクロ以外は、ウイルス対策に特化した製品も別途用意している。表1の統合セキュリティ対策ソフトと比較すると、価格は2割から3割程度安い。
各社とも、主力製品では1ライセンスで3台のパソコンにインストールできる。「カスペルスキー インターネット セキュリティ」については、旧版(2010年版)では2台のパソコンにインストール可能だったが、新版では他社製品と同様に、3台にインストールできるよ うにした。
いずれの製品も、対応OSはWindows XP/Vista/7。「ウイルスバスター2011 クラウド」では、Mac OSで動作する対策ソフト「ウイルスバスター for Mac」を同こんしているので、Macユーザーも利用できる。シマンテックとジャストシステムでは、Mac OS用のウイルス対策ソフトを別製品として販売している。
ウイルス対策ソフトの多くは、複数のウイルス検出手法を備えるが、主力となるのは、パターンファイルを用いた「パターンマッチング」。対策ソフトメー カーは、出回っているウイルスを入手および解析し、その特徴をパターンファイルに登録する。ユーザーのパソコンにインストールされている対策ソフトは、検 査対象ファイルとパターンファイルを照合することで、対象ファイルがウイルスかどうかを判定する。対策ソフトは定期的にメーカーのサーバーにアクセスし、 最新のパターンファイルをダウンロードする。これにより、新たに出現したウイルスも検出できるようにする。
ところが最近では、この手法では対応できなくなっているという。新種ウイルスが次々と出現しているからだ。例えばマカフィーでは、1.7秒に1個の 割合で新種ウイルスが出現しているとしている。このため従来の手法では、新種に対応したパターンファイルをメーカーが作成しても、そのパターンファイルが ユーザーの対策ソフトにダウンロードされる前に、ウイルスに感染する危険性がある。加えて、出現する新種ウイルスの数が多いため、メーカーがウイルスを入手できない恐れがある。メーカーがウイルスを入手できなければ、当然、それに対応したパターンファイルは作成されない。
これらの問題を解消するために各社が力を入れているのが、クラウド機能とレピュテーション機能だ。
クラウド機能のメリットは、出現したばかりのウイルスにも対応できること。同機能では、パターンファイルの一部を対策ソフトメーカーのサーバーに置い て、リアルタイムに問い合わせる(図1)。これにより、パターンファイルが作成されてから、ダウンロードされるまでのタイムラグを解消できる。
クラウド機能を備えた対策ソフトの動きは次のようになる。ユーザーがWebサイトなどから新しいファイルをパソコンにダウンロード(コピー)すると、対 策ソフトはパソコン上のパターンファイルを使って検査する(図1-1、2)。ここでウイルスが検出されない場合には、そのファイルの特徴をサーバーへ送信 (図1-3)。サーバーでは、最新のパターンファイルを使って検査し(図1-4)、結果を対策ソフトに送信する。
トレンドマイクロでは、2009年に発売した企業向けのウイルス対策ソフトでこの機能を搭載済みだが、個人向け製品では、今回の新版で初めて搭載した。 マカフィーでは、2008年発売の「マカフィー2009」シリーズで搭載。新版では同機能に関するバックエンドを強化し、従来版以上に、新種ウイルスに迅 速に対応できるようにしたという。
クラウドの機能のもう一つのメリットは、パソコンにインストールするパターンファイルの容量を減らせること。これにより、パソコンへの負荷を軽減できる という。トレンドマイクロではこのメリットを強調。ウイルスバスターの新版では、パソコンに保存するパターンファイルは全体のおよそ2割。残りの8割は同 社サーバーに置くことで、メモリーの使用量を抑えたり、ウイルス検索の速度を向上したりできるとしている。
レピュテーション機能は、怪しいファイルなどの情報をメーカーに報告する機能(図2)。例えば、パターンファイルに登録されていなくても、挙動が怪 しいファイルについては、ウイルスの疑いが強いとしてメーカーのサーバーに報告する。メーカーではそのファイルを解析して、ウイルスかどうかを判定。ウイ ルスと判定した場合にはパターンファイルに登録して、ほかのユーザーも確実に検出できるようにする。つまり、ウイルスのサンプル収集を、ユーザーの対策ソ フトに手伝ってもらうイメージだ。いずれの製品でも、同機能は初期設定で有効だが、ユーザーが無効にできる。レピュテーション機能は、ウイルスバスター、カスペルスキー、ノートンで搭載済み。いずれも、2009年発売の2010年版で搭載した。新版では、それ ぞれ機能強化を図っている。例えばカスペルスキーでは、ファイルの情報だけではなく、怪しいWebサイトのURL情報も収集。この情報を使って怪しい Webサイトへのアクセスを遮断し、ウイルス感染やフィッシング詐欺などの被害を未然に防ぐという。
ノートンでは、怪しいファイルの情報だけではなく、問題のないファイルの情報も収集することを明らかにしている。同製品は、各ユーザーのパソコンにイン ストールされているファイルの情報をメーカーのサーバーへ送信。インストールされている台数が多いファイルは、正規のアプリケーションである可能性が高い と判断し、ホワイトリストに登録。一方、ホワイトリストにないファイル、つまり、インストールされている台数が極端に少ないファイルは、パターンファイル に登録されていない場合でも、ウイルスの可能性があるとして、ユーザーに警告する。
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