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氷った夜空に牛の心臓がまたたいている。あの戦の前夜には、満天に米を散らしたごとく星がざわめいていたものだ。今ではその百分の一も見えぬのが寂しい。

さて、石田治部少輔三成は、まだ落ち着きの悪いしゃれこうべをかじかんだ指骨で抑えながらクラブ『くのいち』に向かってとぼとぼと歩いていたのだが、ふと途中にある『毛利BAR』に久しぶりに立ち寄ってみることにした。
ぎい~っ。
毛利輝元 「いらっしゃーい、おっ三成か、久しぶりじゃのぅ」
石田三成 「輝元殿、ご無沙汰いたしておりました。なにぶん小さな店を切り盛りしており申して、なかなか出歩くこともままならず、新年のご挨拶もせぬままに・・・」
毛利輝元 「よい、よい、堅苦しい挨拶は抜きじゃ、さ、何を飲まれる」
石田三成 「では、バランのハイボールを。それにちょこっとアードベックをトッピングしてくださらんか」
毛利輝元 「承知した、しばし待たれぃ」
とぽとぽとぽ、しゅわーっ、からんっ、とぽっ。
毛利輝元 「さ、さ、どうぞ」
石田三成 「かたじけない、ごくっ、うーむ旨い」
小早川秀秋 「おや、三成ではないか、店はもう閉めたのか」
石田三成 「ふん、おぬしのような裏切りものに呼び捨てにされるとはこの治部も落ちぶれたものよ」

小早川秀秋 「悪かった悪かった、あのときはわしもああせねば生きておれなんだからのう。お主だって慶長の役では太閤にわしのことをひどくゆうたではないか。昔のことをぐちぐちゆうとまた嫌われるぞ。さて、毛利殿、わしにはマティニをもう一杯」
毛利輝元 「承知」
からんからんからん、くるくるくるくる・・・・・・

石田三成 「毛利殿のお手前、いつ拝見してもお見事でござるなあ」
毛利輝元 「そうやっておだてられて大将にまつりあげられたおかげで、関ヶ原の後は大変じゃったのじゃぞ」
石田三成 「毛利殿はそれでも生き残ったのじゃから、わしよりましじゃ、ぐすっ」
小早川秀秋 「三成よ、そういえば大谷刑部殿は近頃ますますおどろおどろしくなられたのう」
石田三成 「ははは、おぬしは刑部殿には煮え湯を飲まされたからな。まだ怖がっておるのか」
小早川秀秋 「いやいや、もう昔のことは水に流したわ。それよりどこかお悪いのではないかと心配なのじゃ」
石田三成 「うーむ。今宵もラフロイグをがばがばと飲んでおられたな。肝臓がないからうまく代謝できぬのじゃろう。腰もまがっておるし、骨粗鬆症かもしれぬ」
毛利輝元 「骨粗鬆症にはカルシウムじゃ。牛の乳がよいぞ」
石田三成 「では、たまにはアドヴォカートカウでも勧めてみようかの。ま、今宵は牛の乳ではなくおなごの乳と戯れているやもしれぬが」
小早川秀秋 「何?おなごの乳とな、ど、ど、ど、どういうことじゃ」

石田三成 「最近、火炎地獄の入り口にクラブ『くのいち』というキャバクラができたのはおぬしも知っておろう。さっき家康と正則と長政と細川忠興殿が向かったのじゃが、珍しく大谷刑部どのもついて行ったのじゃ」
小早川秀秋 「これはしたり、遅れをとった。三成よ、それをはやく言わんか」
石田三成 「なんじゃ、おぬしも行くのか。まあ、わしも行くところだったのじゃがな。毛利殿はいかがいたす」
毛利輝元 「いや、わしはよい。近頃イケメンの小姓が入ったでの、ひひひ、ほれ挨拶せい」

お小姓 「お初にお目にかかりまする」
石田三成 「ほう、そうかそうか、毛利殿の下でしっかり修行せいよ」
小早川秀秋 「何を悠長にしておる、ほれ、三成、まいるぞ」
石田三成は、小早川秀秋と連れだち、火炎地獄のネオンをめざして、再び冬空の下を歩き出すのであった。
第二話はちょっと地味だったでしょうか。あんまりがんがん行くのもナンセンス的には好ましくないと思ったので。ちなみにこの毛利BARは実在のものとは無関係ですので、ここでお断りしておきます。
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