ギャンブルで大破滅

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2007/12/08

小さな３つの立方体・・・

今・・・・

こんなちっぽけなものに私の・・・・

いや、我々の命運が握られていた。

物理的に握っているのはこの私だが・・・・

私が握っているのは我々の実質の支配者・・・・

今後の我々をどうするのかは・・・・

私の手の中にある物体に握られていた。

重苦しい沈黙の中・・・・

この緊迫感・・・・

ひりつく・・・・

それぞれの思惑が交差し・・・・

人間の念が・・・・

全体の足枷となっていた。

視線が飛び交い・・・・

やがてある一点へと集約されていく。

会議室の中央・・・

そこには木目調の机が置かれており・・・・

その上に一般的なオフィスでは見慣れない円錐の形状を逆さまにしたものが中央に置かれている。

我々の注目は・・・・

中心へと注がれていた。

すでに・・・・

５人中、４人が与えられた運命を受け取っており・・・・

残るは私一人だった。

そう・・・

違うのは、かかっているものだった。

今回張っている物は・・・・・

年末の仕事

誰が、その日の仕事を対応するのか？

年末・年始の仕事をかけた熱いチンチロ勝負・・・・

負けたら・・・・

大晦日や元旦に仕事に行かねばならなくなるかもしれない。

誰かが必ず請け負うものなのだが・・・・

恐怖の当番をかけた勝負が繰り広げられていた。

想像してみて欲しい。

年末の大晦日・・・・

ホールでハッピーニューイヤー・・・・・

どこがハッピーだと突込みしかでてこない。

しかも仕事が熱かったり・・・・

２３時以降に呼び出されたりする可能性もあるのだ。

可能なら避けたい。

おまけに元旦も下手をしたら行かなければならない。

そんな仕事をかけたチンチロ・・・・

負けるわけにはいかない。

皆が皆・・・・

負けられない勝負に・・・・

勝負に参加する他者の破滅を願っていた。

当然だ。

これは完全なるゼロサムゲーム。

誰かが失えば・・・・

誰かが得るのだ。

目の前の人間が滅すれば・・・・

間違いなく、自分が潤う。

そんな全体の負の祈りに支配されながら・・・・・

負けられないチンチロ勝負はスタートした。

最初に振ったのは・・・・

一緒に麻雀をよく打つ入社したばかりの私に最初に仕事を教えてくれた人・・・・・

その人は・・・・

２だった。

全体に安堵の雰囲気が・・・

ここで２は・・・・・

かなり破滅より・・・・

勝負は決まったかに見えた。

そして・・・・

次の人は・・・・

結婚破滅選手権代表のM氏・・・・

相変わらず・・・

流れが無いのか物理的に大きな背中が小さく見える。

そして・・・・

サイを投じた。

結果は・・・・

２

勝負は最悪でも振りなおしがある。

しかし、ここで二人中二人が２

この時点で・・・・

ここから先の人間は全員安全・・・・

かのように見えた。

しかし・・・

博打は・・・・

ギャンブルはそう簡単なはずがない。

負の祈りに彩られた会議室では・・・・

確率など・・・・

吹けば飛ぶような理でしかない。

人の思念が渦巻く勝負では・・・・

必ず偏りが存在するものだ。

そして・・・・・

偏った。

３番目は私の上司が振るはずだったが・・・・

悪寒がするといい・・・・

４番目になった。

そして・・・・

３番目に振ったのは・・・・

営業所の目の前で車上荒らしにあうというヒキを持つK君だった・・・・・

出た数字は・・・・

１

これだから博打は恐ろしい。

安全そうに見えるときでも・・・・

人間の思念は確率を捻じ曲げる。

ここで・・・・

ピンポイントで・・・・

１を引くのだから・・・・

決まったな・・・

私の中で・・・・

逆転が存在無しないラインだなと思えた・・・

それでも・・・

少し恐れていた。

ギャンブルは・・・・

偏るものなのだ。

信じがたいほどに・・・・・

絶対はないし・・・・

気を抜けば・・・・

何が起こるかわからない。

１％でも確率が存在すれば・・・・・

最も絶妙なタイミングでその事象は起こりうるのだ。

そして・・・・・

１のターンを回避した上司は・・・・

流れを掴んだとばかりにサイを振った。

そして・・・・

目がでた。

その数字は・・・・

１

ここで・・・・

ここで１がでるとは・・・・

ギャンブルの神様もなかなかやるな・・・・

そして・・・・

回ってきた私の番・・・・

正直・・・・

大丈夫だと思っていた。

無論、目無しの可能性もあるが・・・・

ここで引けない子は駄目だ。

引かないはずが無い。

周囲の破滅コールに包まれながら・・・・・

私は第１投を丼の中に投じた。

チャンスは３回まで・・・・

１投目は目無し・・・

・・・・

これは仕方が無い。

そして・・・・

２投目・・・・

周囲の破滅コールは熱を帯びてきた・・・

１の二人は特にだ。

私は再度サイコロを握り締めると・・・・

南無三っ！！

サイコロを転がした・・・・

出目は・・・・

無

ここで・・・

急激に熱くなる。

チャンスは残り１度・・・・

ここで引けないやつは論外。

最もひりつく場面だ。

目無しかそうでないか・・・・

２で十分なのだ。

博打を司るものよ・・・・

御加護をっ！！

私は掲げた右腕に念をこめた。

本気としか思えないほど・・・・

周りの私の破滅を願う声は大きくなっていく。

惑わされるな・・・・

私の念で・・・・

他者の黒い期待を跳ね返すのだ。

私は引くっ！！

ここで助からずに・・・

どこで助かろうと言うのだ。

魅せろっ！！

私は生き残るんだ。

是が非でも・・・・

他者全員が滅しようとも・・・・

私だけは足掻いて生き残るっ！！

さあ・・・・・

引け、役を。

ここで大物を引くのだ。

そして生存競争における私の強さを見せ付けるのだ。

私の生存意欲、渇望・・・・

それのすべてをここに・・・・

さあ・・・・・

勝負！！

私は気合をこめてサイを投げた。

私を支配する立方体は・・・・・

からからと音を立て・・・・

華麗に舞った。

目無しだけは駄目だ。

ここで役をっ！！

そして・・・・

衆目をひきつけながら・・・・・

丼の中は・・・・

静寂を取り戻した・・・・・

皆が賽の目に引き寄せられる・・・・

私は・・・・・

引いた。

ここぞという一番で大物役をっ。

さすが私だ。

１とか２とかのショボイ目とは違う。

ギャンブラーは・・・・

華がなくちゃならない。

漢だったらこうじゃなきゃあ・・・・・

丼の中身は・・・・

私の目にはこう見えた。

１・２・３

ダァーッ！！

猪木のように叫べば許してくれるかと思いきや・・・・

残酷なまでに１・２・３

役だ。

それも大物の・・・・

１が二人、２が二人・・・・

その局面で・・・・

２度の目無しを経て・・・・

１・２・３ですか・・・・

いくらなんでも・・・・

ヒキが強すぎる・・・・

私は・・・・

滅した・・・

生存競争に勝ち残ることができなかった・・・・・

破滅だ・・・

年末年始仕事破滅・・・・・

だが・・・・

ギャンブルで決めるこのフェアさが嫌いじゃない。

ここで１・２・３を引いたら仕方が無い。

納得できる破滅だ。

がこれもギャンブル・・・・

これだから博打はおっかない。

ギャンブラーとしての華は魅せた。

華々しく散る方向でだが・・・・・

競馬でボーナス倍増計画に・・・・

ひどく立ちはだかる障害となりそうな流れのような気がする・・・・

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