小説「桜が咲くにはまだ早い三月」「無明の果て」 

小説「桜が咲くにはまだ早い三月」「無明の果て」 

最終章  「永遠」




私の十年は深く長い年月を越え、

心の隙間をえぐり残酷な現実を運んで来た。


だけどあの日、私達が出会い私達が過ごした輝いていた時代を

もう一度ここに蘇らせてくれた。



あの時、たくさんの人混みの中から優二にめぐり会えた

奇跡のような運命に、私はとても感謝をしている。


冬弓に恋したことも、優二を裏切った事も、

そして優二がもう居なくなってしまった事も

全て私の力になり、

穏やかに見つめられる日がきっといつかやって来ると信じてみたい。



私はもう一度、優二の手紙を読み返し、

しっかりと心の中に刻み込んだ。

汚れたインクの染みでさえ惜しむように。


だけど私がこの手紙を手に取り、読む事はもう二度とないだろう。

二人で並んだ写真は、この場所に必要じゃない。


だから私は、この二通の手紙を捨てた。


私はあの頃の私じゃない。



サヨナラの向こうにあるものは、

過去にすがる事ではなく先を見据えて行くこと。


サヨナラがくれた新しい力を輝かせて行くこと。



誰もが壁に打ちあたり、叩きのめされ立ち止まるその時に、

堂々と正面を向いていると言うこと。



孤独で孤独で、ただひとり孤独の中で、

残像に縛りつけられていた私はもう何処にもいない。


人が空を飛べないように、

憧れだけを夢み、それが永遠に報われぬままでも

それは恥ずべき事ではなく、

いつか叶うと信じていられる大きな希望のようなものだと

長い年月が言っている気がした。




優二


あなたの好きだったマイケルフランクスをかけようね。


囁くような歌声が、優二の声に聞こえてくるよ。


優二がいる、この青く遠い大空の果てまで届いてと祈りながら、

私はひとり繰り返し何度も聞いた。



今日も、そしておそらく明日も、変わりばえのない日常の中で、

永遠に望む幸福がこの手の中で創られて行く。


誰もが夢見る豊かな未来に、私はゆっくり慌てずに歩いて行く。



優二

私は大人になったでしょう。


優二はもう歳をとらないけれど、

私はここで永遠を探して行くよ。



泣き疲れ、鏡に映った私に私は言う。


「わたしは マリエ。

生意気な女」



そうだよね 優二。

こんな私に会いたかったはずだよね。


優二のことなど愛してないと思っていた、

あの生意気なマリエに。




優二



優二…




二度目のサヨナラだよ。




サヨナラの向こう側から


笑って私に手を振って。





バイバイ・・・   




私の優二・・・






               ー了ー






つたないお話を最後までお読みいただきありがとうございました。


感謝します。



★mizukei0423★



次回は「あとがき」です。






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