小説「桜が咲くにはまだ早い三月」「無明の果て」 

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mizukei0423

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『サヨナラの向こうにあるもの』  -了-


第一章  「優二」


第二章  「冬弓」ふゆみ


第三章  「罰」


第四章  「キス」


第五章  「マリエ」


第六章  「嘘」


第七章  「電話」


第八章  「軽蔑」


第九章  「希望」


第十章  「陽ざし」


第十一章  「手紙」


第十二章  「サヨナラ」


最終章  「永遠」


「あとがき」


「桜が咲くにはまだ早い三月」


第一章  「アイツ」


第二章   「心拍数」


第三章  「着信」  一節


第三章  「着信」  二節


第三章  「着信」  三節


第四章  「返信」  一節


第四章  「返信」  二節


第五章  「戸惑い」  一節


第五章  「戸惑い」  二節


第五章  「戸惑い」  三節


第六章  「心」  一節


第六章  「心」  二節


第六章  「心」  三節


第七章  「プロローグ」  一節


第七章  「プロローグ」  二節


第八章  「約束」  一節


第八章  「約束」  二節


第八章  「約束」  三節


第九章  「力」  一節


第九章  「力」  二節


第九章  「力」  三節


第十章  「明日」  一節


第十章  「明日」  二節


第十章  「明日」  三節


第十章  「明日」  四節


第十一章  「夢」  一節


第十一章  「夢」 二節


第十一章  「夢」  三節


第十一章  「夢」  四節


第十二章  「現実」 一節


第十二章  「現実」 二節


第十二章  「現実」 三節


第十二章  「現実」 四節


第十二章  「現実」 五節


小説  『無明の果て』 ー完ー


第一章 「キャリア」 一節


第一章 「キャリア」 二節


第一章 「キャリア」 三節


第一章 「キャリア」 四節


第一章 「キャリア」 五節


第一章 「キャリア」 六節


第一章 「キャリア」 七節


第一章 「キャリア」 八節


第一章 「キャリア」 九節


第一章 「キャリア」 十節


第一章 「キャリア」 十一節


第二章 「恋人」 一節


第二章 「恋人」 二節


第三章 「不信」 一節


第三章 「不信」 二節


第三章 「不信」 三節


第四章 「ひとり」 一節


第四章 「ひとり」 二節


第四章 「ひとり」 三節


第四章 「ひとり」 四節


第五章 「休暇」 一節


第五章 「休暇」 二節


第五章 「休暇」 三節


第六章 「転勤」 一節


第六章 「転勤」 二節


第六章 「転勤」 三節


第六章 「転勤」 四節


第六章 「転勤」 五節


第六章 「転勤」 六節


第七章 「決意」 一節


第七章 「決意」 二節


第七章 「決意」 三節


第七章 「決意」 四節


第八章 「アメリカ」 一節


第八章 「アメリカ」 二節


第九章 「結婚」 一節


第九章 「結婚」 二節


第九章 「結婚」 三節


第九章 「結婚」 四節


第十章 「宿命」 一節


第十章 「宿命」 二節


第十章 「宿命」 三節


第十章 「宿命」 四節


第十章 「宿命」 五節


第十一章 「楽園」 一節


第十一章 「楽園」 二節


第十一章 「楽園」 三節


第十一章 「楽園」 四節


第十一章 「楽園」 五節


第十一章 「楽園」 六節


第十二章 「必然」 一節


第十二章 「必然」 二節


第十二章 「必然」 三節


第十二章 「必然」 四節


第十三章 「罪」 一節


第十三章 「罪」 二節


第十三章 「罪」 三節


第十三章 「罪」 四節


第十四章 「岐路」 一節


第十四章 「岐路」 二節


第十四章 「岐路」 三節


第十四章 「岐路」 四節


第十四章 「岐路」 五節


第十四章 「岐路」 六節


第十五章 「夢」 一節


第十六章 「誓い」 一節


第十六章 「誓い」 二節


第十七章 「真実」 一節


第十七章 「真実」 二節


第十八章 「魂」 一節


第十八章 「魂」 二節


第十八章 「魂」 三節


第十八章 「魂」 四節


第十九章 「再会」 一節


第十九章 「再会」 二節


第十九章 「再会」 三節


第十九章 「再会」 四節


第十九章 「再会」 五節


第二十章 「あこがれ」 一節


第二十章 「あこがれ」 二節


第二十章 「あこがれ」 三節


第二十一章 「願い」 一節


第二十一章 「願い」 二節


第二十一章 「願い」 三節


第二十一章 「願い」 四節


第二十一章 「願い」 五節


第二十一章 「願い」 六節


第二十二章 「運命」 一節


第二十二章 「運命」 二節


第二十二章 「運命」 三節


第二十二章 「運命」 最終章 -完-


★あとがき★  ~もうひとつの物語~


★あとがき★ の「あとがき」


『おかえり』  -完-


2013年12月03日
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カテゴリ: 小説・コラム



終わりましたよ。」


夢の中なのか、現実の事なのか判断のつかないまま、

その声が執刀医のものだと気づいた時、

私の身体にはすでにたくさんのチューブが付けられていた。



目が開かない。

苦しい。

寒い。

動けない。




怖い。


怖い・・・・



その時

「けいちゃん、手術成功したから安心して。

大丈夫だからね。」

夫が私の手を握って、何度も耳元で囁いたんだ。



そうか、わたし手術したんだ。

お腹、切ったんだ。

・・・終わったんだ・・・




そして、あの日から六年目の冬。


あの時の執刀医が私に言った。







平成19年12月3日

6年前の今日の出来事。


昨日の事のような、ちょっと前の出来事。







    『おかえり』







その内科医は隣のベッドで同じ検査を受けている人に聞こえないように、

私の耳元に顔を近づけて優しい声でこう続けた。


「手術しないといけませんよ。悪いやつだから。」


モニターに写った自分の腸壁を見つめながら、

私は大きくため息をついた。


なんとなく感じていた嫌な予感は、見事に的中してしまった。


それからすぐに看護師の後について別の部屋へと案内され、

ひんやりとした台の上で言われるがまま、

うつ伏せになり仰向けなり、右を向き左を向き、

嫌と云うほど写真を撮り、

クリップで印を付けられたその悪いやつとの闘いの準備を、

私はいつの間にか始めていたのだ。



会話らしい会話も無いまま淡々と仕事をこなす内科医と看護師を見ながら、

これから起こる未知の出来事を想像しようとしたけれど、

ピントがぼやけているようで何ひとつ頭に浮かんでは来なかった。


そしてそれが終わりかけた時、私は改めてその内科医に聞いた。


「先生 私、癌ですよね。」


ちょっとだけ気の毒そうに、

だけど内科医は私の目を見てはっきりと言った。


「はい、初期の直腸癌です。

かなり下の方だけど人工肛門も付けなくて大丈夫かな。

ギリギリセーフだと思いますよ。

私の診断ミスだといいんですがね。

後で担当の先生からよく話を聞いてください。」



年に一度の健康診断は、私に命の危険を運んで来た。


自覚症状など何ひとつないのに。



しばらく待たされやっと呼ばれた診察室へ入ると、

ライトが当たった壁にはさっき写したばかりの写真がびっしりと並べられ、

それを見つめる女医が振り返らないまま


「どうぞ」

と少し語尾を引きずるような口調で私を招いた。


なんだかテレビで見たようなシーンだ。


「気をしっかり」とか

「先生…そんな…」とか、

泣き崩れる家族とか。


でもそんなドラマチックな場面など現実には何も存在はしなかった。



なんだろう。

緊張もしなければ動揺すらしていない。


それより、この事実に夫は耐えられるだろうかと、

その時の私は説明を受ける頭の隅でそんな事ばかり考えていた。


「極々初期のものですから、また今の暮らしに戻れると思います。

まぁ、見つけ時、切り時って所でしたね。」


見つけ時かぁ・・・

スーパーの特売でもあるまいし。



その夜 夕飯を食べながら夫が

「検査どうだった?」

と安心しきった顔で私に聞いた。

いつもと何も変わらない穏やかな顔で。



動揺も緊張も恐怖も感じなかった私の瞳から溢れ出た涙は、

テーブルの上で跳ね返り大きな音を立てた。


ぽたぽた…

ぽたぽた…

ぽたぽた…

ぽたぽた…


怖くて怖くて どうしていいのか分からなくなった。


病気は怖い。

だけどそれに揺さぶられる気持ちの方がもっと怖かった。


この現実に耐えられないかもしれないと案じた夫は

「大丈夫だよ」

と、少しだけ笑って私を抱きしめた。



術後 五年 生存率

80%強


当たり前の明日を、当たり前に迎えるために訪れた 生きる事への祈り。


ゆらゆら 心の中で揺れ続けた。



12月3日手術。

17日退院。


明日への希望と闘った二週間。


結婚して三年。

そして退院の日はちょうど私の誕生日だった。


年に一度のこの日に合わせたように、

これまでの年月の要らない所だけをリセットして、

私はもう一度生まれ変わった。



リビングの壁にはファックス用紙を三枚繋げたメッセージ。


夫が書いた


「お誕生日おめでとう

恵ちゃんおかえり」


の文字。




ぽたぽた…

ぽたぽた…


ぽたぽた…

ぽたぽた…



それを見つめながら、涙でかすれた声で私は言った。


極上の最高の「ただいま」を。


                      ー了ー








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最終更新日  2013年12月03日 23時28分22秒
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