小説「桜が咲くにはまだ早い三月」「無明の果て」 

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第四章 「ひとり」 二節




筋書きを書いて未来を決定出来るとしたら、

それは思い通りの幸福を手に入れる道を迷いも無く行く、尊い事なんだろうか。


だけどやっぱり、先の解らない毎日の期待と不安の中で暮らす生き方を誰もが選ぶだろう。


明日を知らないでいることが、夢見るということなんだから。


私の今までは、思い通りにならないことでもきっとうまく行くと信じて

乗り越えようとしてきた日々の繰り返しだったような気がする。


一行が語ろうとしている事が、私の頑張りではどうしようもない事実なら、

その時はいさぎの良い女っぷりを演じるしかないんだろう。


だけどそんな事を演じても、一行にはすぐ見破られてしまうだろうけど。


「この間、遅くに帰った日があったでしょ。

あの時のこと。」


「私あの日はバーに居て、ひとりで飲んでたんだよ。」


「知らなかったなぁ。

涼に聞くまで、ここに居たと思ってた。

涼はさ、何度もあの店に行ってたって言ってた。

麗ちゃんに偶然に会える場所は、あの店しか知らないからって。

涼がそこまでマジだったって、さっき話しててびっくりしたよ。

麗ちゃん、迷ってるんじゃないの?」


「涼くんのこと?」


「うん。

俺の知らない事って、もっとあるの?」


一行の元カノの話じゃないの?と思ったけど


「初めてのコンパの日にメールが来たのね。

それからは、何度か電話やメールが来たりしたかな。

ただそれだけよ。」


「ふぅ~ん。

好きとか、付き合ってとか、そういうやつ?

でもさ、どうしてその時言わなかったの?」


「だって、その時一行は私の彼氏じゃなかったよ。

正直、私も涼くんに興味あったしね。

好きとか言うんじゃなくて、あんな綺麗な男性 見たことなかったもん。

疑ってるの?」


一行は下を向いたまま少し考えていたけど、何かふっきれた様子で話はじめた。


「麗ちゃん、学生の時バンドやってたって話したよね。

その時のドラムの奴が今度結婚することになって、

レストランでパーティすることになったんだよね。

そこで久しぶりに演奏することになってさ、その打ち合わせだったんだ。

ボーカルがその時付き合ってた娘なんだ。

あの日一緒だった。」



「見たよ。

二人で信号渡って行くとこ。

涼くんに彼女が誰か教えてもらったけど、怖くて聞けなかったの。

親しそうだったし、綺麗な人だったし、若いし・・・」


言わないでおこうと決めていたのに、しゃくりあげながら言葉をぶつけてしまった。


「ごめん麗ちゃん、先に言えばよかったのかな。

そのパーティに麗ちゃんも誘うつもりで秘密にしていたんだ。」


涙と鼻水でクシャクシャな私の顔を

「あらら」と、一行は覗き込んだ。


「フラレたのはこっちだし。」


一行の元カノが涼と連絡をとり、涼は“年上の上司が一行の彼女”と彼女に伝え、

それからは時々一行の元に元カノからメールが届くらしいと言う事。

だけどそれはパーティの打ち合わせだから心配しなくても良いと言う事を、

一行は何度も私に説明したのだ。



だけど一行。

そのパーティに私を誘うって。

秘密って・・・


そこで元カノと私が顔を合わす事になったらとか

考えたりはしないわけ?




つづく・・・






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