40歳を超えてから、調子のいい日がなくなってきた。
病気もはっきりした。原発性アルドステロン症。
それでも、体の動きそのものに不安はなかった。50歳が近づくにつれて「体力がなくなってきたな」と感じることはあったが、「まぁまぁ、まぁ」といなしてきた。
ところが、50歳の誕生日を迎えた途端、体の動きに支障が出始めた。
誕生日の一週間後あたりからアキレス腱が痛み、歩くのにも難儀するようになった。やがて痛みはアキレス腱から徐々に上へ移り、ふくらはぎが常に攣っているような痛みに変わっていった。
病院へ行くと、「肉離れですね」と言われた。
治療は、血流を良くする塗り薬とロキソニンテープ。さらに、つま先を前ではなく横に向けて歩くと痛みが少なくなると言われ、そのように歩いた。
老人より遅く歩く日々が数週間続いた。
それでも、なんとか痛みが引いてきたと思ったら、今度は右肘がとてつもなく痛くなった。そして右手の人差し指の先に痺れが出てきた。
右利きなので、右手を使わずに生活するわけにもいかない。「痛い、痛い」と言いながら過ごす。
同じ病院で症状を訴えると、今度は「テニス肘ですね」と言われた。
治療はストレッチと体外衝撃波治療、それにリハビリテーション。体をほぐしたり、癒着した部分をほぐしたりする。
体外衝撃波治療は、まず5回連続で行い、その後しばらく様子を見て、再開するかどうかを決めるとのことだった。
そしてリハビリ。
担当の作業療法士は30代くらいだろうか。イケメンで、おまけに姜尚中ボイスという、完璧すぎる男だった。
順番を待つ椅子に座っていると、その「姜尚中ボイスマン」にリハビリを受けている高齢の女性が、悶えまくっている。
「気持ちはわかるよ」
と、心の中で話しかけた。
その作業療法士によると、私の体は「ガチガチに硬い」らしい。
「手首を回転させるだけで肩甲骨が動くというのは、よっぽどですよ」
とまで言われた。
肘の痛みは少しだけ引いたような気がした。
しかし、指の痺れは逆にひどくなっていった。
最初は人差し指全体だったものが、中指の先端、親指の付け根あたりまで広がってきた。
もともと汚い字しか書けないのに、ペンを握る力が出ない。字はさらにヨレヨレの、ふにゃふにゃになった。
箸もうまく使えず、おかずを落とす。
飲みに行ったとき、カウンター越しに出てきたビールを受け取る際にも、こぼしはしなかったものの、「こぼすかもしれない」という恐怖が出てきた。
気をつけていないと不安なので、左手を添えて、まるで茶道でお茶をいただくように両手で受け取る。
医師に「痺れる範囲が広がってきた」と訴えた。
しかし、
「テニス肘は痺れ、出ないからなぁ」
と言うだけで、治療が変わることはなかった。
そして、自転車に乗るときにも問題が出てきた。
ハンドルを握った手に体重がかかる。その瞬間に痛みが走り、力をかけられない。転びそうになることもあった。
「これはさすがに、別のところで診てもらったほうがいいんじゃないか」
パートナーや母に相談すると、同じ病院を勧められた。
そこで、その病院へ行くことにした。
診察開始の1時間前に着いたのに、待合室はすでに満員だった。
初診ということもあり、診察まで3時間。
ようやく呼ばれて、
「テニス肘と診断されていますが、痺れについては特に診断されていません。でも力が入らないし、痺れもある。手の甲が腫れることもあります」
と訴えた。
握力計で測る。
右35kg。
左55kg。
通常なら利き手のほうが強いはずなのに、右手は左手より20kgも弱かった。
打診器で母指球を叩く。
すると、痺れが出た。
「手根管症候群ですね」
ようやく、痺れの正体がわかった。
我慢できないほどの痛みがあるならブロック注射という選択肢もあるが、そこまでの痛みではない。痛みには波があり、診察時はそれほど強くなかった。
治療はリハビリテーションとストレッチ、そして投薬。
前の病院と大きく変わるわけではなかったが、処方された薬は違った。
プレガバリン。
「痛みを感じている神経を、感じさせなくする薬です」
そう説明されると、なんだかとても怖い薬に感じた。
ところが、この薬が効いたのか、飲み始めて一週間ほどで、痺れはほとんどなくなった。
ただ、手の甲の腫れや、手を動かしたときの痛みはまだ残っている。
リハビリは、最初の病院のほうが丁寧だった。
イケメンはいる。
しかし、姜尚中ボイスはいない。
担当も固定ではなく、そのとき空いている作業療法士が担当する。
利用者数がまったく違うので、仕方がない。
一週間分の薬を飲み終え、2度目の診察へ。
握力を測ると、前回とほぼ同じような数値だった。
「痺れがだいぶなくなったのは、投薬の効果でしょう。そのまま続けましょう。薬の量はまだ増やせますが、副作用はどうですか?」
医師にそう聞かれた。
プレガバリンを飲むと、1時間ほどして猛烈に眠くなる。
朝晩の服用。
夜は寝入りが良くなって、むしろ都合がいい。
しかし、朝は困る。
朝から昼寝できる身分ではない。
そのことを伝えると、薬は増量せず、同じ量のまま続けることになった。
痛みはだいぶなくなってきた。
けれど、強張りと腫れはまだある。
40代の頃までは、「ちょっと調子が悪いな」くらいで済ませていた。
50歳を超えた途端、アキレス腱、ふくらはぎ、肘、手、そして神経。
ひとつ治りかけると、また別のところに問題が出てくる。
これが「歳を取る」ということなのだろうか。
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病院のリハビリテーションで電気ビリビリ療法があったのを話すと誕生日プレゼントでいただいた。
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これも誕生日プレゼントしていただいた。だいぶ痛みが弱くなります。