不破雷導

不破雷導

PR

×

Profile

不破雷導

不破雷導

Freepage List

Apr 12, 2005
XML
テーマ: 小説(12)
カテゴリ: 小説
 「ははは、うっ、いてっ、ててててて……」
 「あ、あなた、大丈夫?」
 「あ、ああ、大丈夫だ。それよりあれ、持って来たか?」
 「新聞ね。売店で、4紙、買って来たわ」
 「よし、俺はこっちとこっちを見る。おまえはこっちとこっちを見てくれ」
 「ええ」
 「……うひゅ、間違いない。そっちは?」
 「こっちもよ。同じだわ」
 「うひゃ、うひゃ、うひゃひゃひゃひゃ、ひゃ、ってっ」

 「だって、これが、笑わずにいられるかって。何せ、さ、さ、3億円……」
 「しーっ! 駄目よ、そんなに大きな声で言っちゃあ」
 「大丈夫だよ。この病室には、俺達だけだし、それに、……」
 「それに、何?」
 「あ、いや、何でもない」
 「まさか、あなた、あの、お気に入りの看護婦にでも、言ったんじゃないでしょうね!」
 「(うっ、スルドイ!)い、いや、あ、まあ、うん。いや。だ、大丈夫だよ。ちゃんと、誰にも言うな、ここだけの話、ってくぎをさしたから」
 「馬鹿ね! 誰にも言うなって、ここだけの話と言ってみんなに広がって行くのよ!」
 「いやあ、そう。いや、だ、だけど、なんだなあ。あの、車に跳ねられたときには、死ぬかと思ったよなあ。それが……」
 「うふっ、あなた、うわごとで、ケーキ、ケーキって、言ってたそうよ」
 「どうも、あけましておめでとうさんでございます!」

 「いやだなあ、旦那。隣りの病室の、同じ日に入院した……、覚えてませんか?」
 「ああ、どうも……」
 「聞きましたよ、旦那。おめでとうございます」
 「えっ? 何が?」
 「いやだなあ、旦那。とぼけちゃって。宝くじですよ、た、か、ら、く、じ」

 「どうしてって、看護婦さんから聞いたんで。もう、病院中、その話題でもちきりですぜ、旦那」
 「なんですって!!」
 「ひえ~~~」
 「そこで、ものは相談なんですがね、旦那。同じ日に入院したよしみで、その、ちょいと、私にも、おすそ分けを……」
 「な、何を。何であんたに……」
 「ほらあ、だから言ったでしょ」
 「いいじゃないですか、旦那。たったの、500万、500万円で、いいんですよ。3億円もあるんだから、500万円ぽっち、何でもないでしょ? それで、私たち家族4人は、救われるん……」
 「いやあ、どうですか、お具合は?」
 「あ、先生。おかげさまで……」
 「結構、結構。にぎやかですな」
 「いや、この人は……」
 「実はですな。個室を用意しましてな、そちらに移って頂こうかと……」
 「えっ? ど、どうして? 個室なんか……」
 「あ、いや、個室の使用料は、こちらで持ちますのでな。その代わり、我が病院へ、寄付の方をちょっと……」
 「ひえ~~~、せ、先生、あなたまで……」
 「うわ~」
 「キャー」
 「こっちよ、こっち、この患者さん!」
 「何だ、何だ」
 「きゃー、あ、それ、当たりくじぃ!? 見せて~!」
 「あ~、見た~い。私も~。見せて見せて~」
 「うわっ、やめろ、触るな!」
 「旦那ァ、500万円……」
 「是非、寄付を……」
 「あああああ! やめてくれ! もう……」
 「きゃああ! あなた! 何するの!」
 「旦那!」
 「やっだー、この人、食べてるぅー」
 「うぐうぐうぐ」
 「よしなさい!」
 「あなた、駄目よ、吐き出して!」
 「ははははー、食っちまったぞー! へへーい。ざまあ見ろー」
 「な、なんてことを……、旦那ァ」
 「あなたああああ」
 「やっだぁー。つまんなーい」
 「慌てるな! これより、緊急手術、3億円摘出手術を行う! 君たち、今すぐ、クランケを第1手術室に運んでくれたまえ!」
 「ひえ~~~、助けてくれ~~~~~!!!」


(2001年1月)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Apr 14, 2005 11:28:33 AM
コメント(0) | コメントを書く
[小説] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Keyword Search

▼キーワード検索

Favorite Blog

まだ登録されていません

Comments

コメントに書き込みはありません。

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: