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2026.03.08
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カテゴリ: 政治・経済

高山正之『高市早苗が習近平と朝日を黙らせる』は、産経新聞出身のコラムニストが約二十年以上にわたり書き続けてきた時事コラムを集成し、その終章とも言える一冊としてまとめた政治・メディア批評本です。 中国と朝日新聞を中心に、戦後日本を取り巻く国際政治、メディア報道、リベラル言説の欺瞞を、辛辣かつ挑発的な文体で斬り続けた「変見自在」的世界観の総決算と位置づけられています。

本書タイトルに名前を冠された高市早苗は、著者の政治観を象徴する存在として据えられています。 中国や左派メディアに対して一歩も引かない強硬な政治家像と、著者が長年批判してきた朝日新聞・中国共産党体制への苛烈な批判が、タイトルレベルで対置されているのが特徴です。 ただし内容の主体は高市本人の評伝ではなく、著者自身のコラムを通じた「日本を取り巻く言論空間」の批評にあります。

構成は「はじめに 新聞が描かない世界を書き続けて」に始まり、「第一章 朝日のイジメに忘却はない」から「第九章 憲法よりお天道様を大切に」まで全九章という章立てです。 各章はそれぞれ、朝日新聞批判、ジェンダー言説批判、「クルド人・支那人ファースト」と形容される移民・人権政策への違和感、アメリカ政治の狂騒、中国・韓国・欧米列強の歴史的欺瞞など、多様なテーマを短いコラム単位で縦横無尽につないでいきます。

第一章「朝日のイジメに忘却はない」は、朝日新聞をはじめとする大手メディアへの怨念に近い批判が核です。 著者は「日本人を装って嘘をつきまわる連中」に対して「朝日は身元をはっきりさせろ」と書いたところ、朝日側が強く反発し、その騒動が「週刊新潮」での連載休載、さらには単行本化拒否にまで発展した経緯を描いています。 新聞が権力監視者を自称しながら、自らの政治的立場や出自的・思想的背景については伏せたまま読者を誘導している、と著者は告発的に語ります。

「はじめに」および終盤の章では、著者が二十年以上続けてきたコラム「変見自在」の終章としての自覚がにじみます。 2002年頃から積み重ねた原稿が、メディアの制約や出版側の忖度によって公には出せなくなっていく過程は、書き手自身にとっての“言論の死角”の告白でもあり、同時に新聞ジャーナリズムが描かない世界を自分は書き続けてきた、という自負の表明でもあります。 「新聞では何も学べなくなった」といった既刊での決め台詞を引き継ぎながら、新聞・テレビという旧来メディア装置への失望と決別を強く印象づけています。

第二章「『オレは女だ』はヘンだ!」では、フェミニズムやジェンダー論の潮流に対する著者の違和感が、あえて挑発的な表現で語られます。 トランスジェンダーやジェンダーフリーをめぐる言説を、「言葉のすり替え」や「現実否認」と見なし、常識的な性差の感覚を強引に書き換えようとする運動として批判しています。 ここでも、著者特有の皮肉と揶揄が強く、共感する読者には痛快である一方、価値観の異なる読者には強烈な拒否感をもたらしうる語り口になっています。

第三章「おどろきの『クルド人・支那人ファースト』」では、日本国内の移民・難民政策、人権派弁護士や市民運動に対する批判が展開されます。 著者は、クルド人や中国人といった外国人の権利を優先し、日本人住民の安全や生活が脅かされる事例を取り上げ、「人権」を掲げる勢力が実は日本社会の安定を損ねているのではないかと問いかけます。 中国への批判では、歴史認識問題や尖閣諸島をめぐる動きだけでなく、中国共産党体制の身勝手さ・残酷さを取り上げ、「強欲」「卑劣」といった過激な表現で切って捨てる姿勢は既刊『習近平は日本語で脅す』などと一貫しています。

第四章「アメリカはクレージーすぎる!」や第五章「ダメな男が政治家になる?」では、舞台をアメリカ政治や日本国内の政治家に移し、メディアが英雄視する人物像の裏側を暴くような筆致が続きます。 アメリカのリベラル政治、ポリコレ、BLM運動などを「狂気」と断じる視線と、日本の政治家の軽さ・無責任さへの嘲笑交じりの批判が、短いコラムごとに矢継ぎ早に投げ込まれます。 ここでも事実関係の検証やデータ提示より、現場取材経験と著者の直感にもとづく断定的なレトリックが前面に出ています。

後半の「人間、我慢が大事!」「黙れ、この卑劣漢の噓つきどもよ!」「日本に祟る輩たち」といった章題からもわかるように、本書のトーンは終始一貫して過激で、敵と見なした対象への容赦ない言葉の打ち込みが続きます。 朝日新聞の虚報問題や歴史認識報道、欧米列強の植民地主義、中国や韓国の反日政策などを一つの線で結び、「日本を貶めてきた嘘つきたち」に対する怒りとして描き出しているのです。 その一方で、著者は「お天道様」を引き合いに出し、憲法や人権よりも、日本人が伝統的に大切にしてきた倫理観・自然観を取り戻すべきだと主張します。

スタイル面では、海外特派員としての経験を背景に、アメリカ、イラン、欧州、アジア諸国の現場を歩いた視線から、新聞には載らない裏話を交えたコラムが多いのが特徴です。 2001~2007年に帝京大学教授を務めた経歴もあり、国際政治や歴史を俯瞰する視野は広い一方、あえて乱暴な表現や差別的に受け取られかねない語りを用いることで、読む側に強いショックを与えようとする“毒舌芸”が前面に出ています。 読者レビューでも「まったくその通りと思える話」と「本当か?」と思わされる話が混在し、数字や参考文献による裏づけが乏しい点を問題視する声が見られます。

本書をどう読むかは、読者の政治的立場やメディア観によって大きく分かれます。 中国や朝日新聞、リベラルメディアへの不信を抱く読者にとっては、言いたいことを代弁してくれる痛快な“反メディア論”として機能する一方、価値観の異なる読者には、事実検証より感情や偏見を優先した危うい言説として映りうるでしょう。 いずれにせよ、「新聞が描かない世界を書き続けてきた」と自負する一記者が、連載打ち切りとともに投げ込んだ、時代とメディアへの最後の挑発として読むと、タイトルの過激さも含めて本書の位置づけが見えてきます。


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最終更新日  2026.03.08 10:30:41
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