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介護保険制度が発足して10年を迎えました。 「介護の社会化」をうたい文句に発足した制度ですが,介護疲れによる無理心中など痛ましい事件が後を絶ちません。 介護保険料・利用料の重い負担,介護サービスの圧倒的な不足など,「負担あって介護なし」ともいうべきさまざまな問題が浮き彫りになっています。 制度を検証し抜本的な見直しをおこなうことが重要です。 日本ではいま75歳以上の高齢者は1,164万人,2025年には「団塊の世代」もすべて75歳となり2,000万人を超します。 1人暮らしや夫婦だけの高齢世帯,認知症の高齢者などが増加しているいま,家族介護に依存する現状をあらため,公的な介護体制を整備することは急務の課題です。 旧自民党・公明党連立政権がすすめてきたのは,社会保障費削減のために給付の抑制と国民負担を強化し,高齢者・家族に「自立・自助」を強要する制度改悪でした。 「介護の社会化」に真っ向から反します。 介護保険も2005年10月の「施設給付の見直し」で特別養護老人ホームなどの食費・居住費が保険の対象外となり,原則全額自己負担となりました。 定率1割の費用負担とあわせると,月々15万~16万円もの支払いが必要となり(ユニット型個室,市町村民税課税世帯の場合),施設からの退所を余儀なくされる高齢者が相次ぎました。 2006年4月から施行された改悪介護保険法では,軽度者から介護ベッドなど福祉用具をとりあげました。 公的な介護をもっとも必要とする低所得の高齢者を制度から排除するというまさに暴挙です。 特別養護老人ホームの待機者42万人という厳しい現実は,国民の老後不安を募らせています。 国会で一部野党からの追及,見直しを求められてきましたが,国が予算を削り,低い整備目標を自治体におしつけ,施設建設を抑制してきたことが最大の原因です。 先月札幌市でおきた認知症高齢者のグループホームでの火災による死亡事故は,防火設備の立ち遅れとともに,「1人夜勤」の貧困な職員配置基準を放置してきた国の責任を浮き彫りにしています。 介護現場の深刻な人材不足も,2003年と2006年の介護報酬の連続削減が介護事業所の経営を危機に陥れ,介護職員の低賃金化と労働条件悪化を加速させたことが原因でした。 政府は,世論と関係者の運動におされ,2009年に介護報酬を3%引き上げ,「処遇改善交付金」を実施しました。 しかし,介護職員の給与はなお全産業平均の6割程度で,月10円も低いというのが実情です。 抜本的改善が不可欠です。 介護保険の見直しに向けた論議が始まっていますが,国民の保険料負担をおさえながら,安心して利用できる介護制度を実現するために,国庫負担を大幅に増やすことが決定的に重要です。 国庫負担引き上げなどの政策方向は,全国市長会をはじめ多くの国民の共通の声です。 憲法25条の生存権理念にもとづく安心・安全の介護保障制度の確立へ,国民と共同を広げて取り組むことが重要です。
2010年04月10日
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衆議院本会議で4月6日,国家公務員の幹部人事を一元管理し,支配統制を強化する国家公務員法改定の政府案と,自民党とみんなの党が提出した対案の趣旨説明と質疑が行われました。 政府案は,これまで人事院が担ってきた国家公務員の幹部人事を内閣が一元的に管理し,降任・降格人事を容易にします。 “政府公認の天下りセンター”と指摘されている官民人材交流センターを廃止し,組織的な再就職の斡旋を原則禁止しますが,あらたに民間人材登用・再就職適正化センターを新設し,政官財癒着の温床となる「官民人材交流」などを進めます。 自民,みんなの党の対案は,降格人事の範囲を幹部職から一般職まで拡大し,官民人材交流センターは存続する内容です。 質疑で民主党の後藤祐一議員は,「公務員の総人件費2割カット,議員は議員定数削減で血を流し,お金持ちにも身を削っていただく,それでもお金が足らなければ消費税増税」だなどと述べ,今回の改定を庶民増税への“地ならし”と位置づけました。 自民党の平井たくや議員は,「公務員の人件費を下げるためには,給与を下げ,職員の数を減らすしかない」などと述べ,公共サービス切り捨ての人件費削減を求めました。 今回審議入りした国家公務員法改定案の衆院本会議質疑で,政官業の癒着を温存し,国民サービス切り捨ての公務員削減を競い合う点では民主党,自民党ともに大差ないことが浮き彫りになりました。 政府案は,これまで人事院が担ってきた幹部人事を内閣官房が一元管理し,容易に「降格」できるようにするなど,労働基本権をはく奪したまま公務員に対する支配統制を強化するものです。 官僚の答弁禁止などを盛り込んだ「国会改革」法案と併せて,鳩山内閣が掲げる「政治主導」の確立めざす関連法案のひとつです。 本会議質疑では民主党が「格下げするぞとにらみをきかせ,公務員に従っていただく」(後藤祐一議員)と狙いをあけすけに語れば,自民党は「政府案では官僚依存から脱却できない」(塩崎恭久衆議院議員)と批判し,「降格」人事を課長級にまで拡大するよう求めました。 公務員は勤務条件を法律で定め,解雇や降格を規制するなど厳格な身分保障を定めています。 「全体の奉仕者」として政治的圧力や干渉を排除し,国民の立場にたって働けるようにするためです。 両党の主張は,幹部職員からこの制約を掘り崩すもので,すでに実施されている人事評価制度と併せて“ものいえぬ公務員”づくりをもたらします。 天下りについては,旧自民党・公明党連立政権時代に「官民人材交流センター」がつくられ,組織的な「再就職斡旋」が公然と行われてきました。 政府案では,このセンターを廃止し,再就職斡旋は行わないことにします。 しかし,新たに「民間人材登用・再就職適正化センター」を新設し,政官財癒着の温床となる「官民の人材交流」をすすめるとしており,「天下り」が根絶される保障はありません。 自民党は政府案を「天下り温存」と批判しましたが,みんなの党と一緒に出した対案では,天下り公認の「官民人材交流センター」を存続するよう要求。両案とも大差ないことを示しました。 際立ったのは,公共サービス切り捨ての公務員削減を競いあったことです。 民主党が「公務員人件費2割削減の断行を」(後藤祐一議員)と叫べば,自民党は「給与の抜本改革,職員を減らすしかない」(平井たくや議員)といっそうの公務員削減を求めました。 民主が「それでもお金が足りなければ消費税増税の論議をすべきだ」(後藤氏)と述べたように,公務員削減は庶民増税の地ならしであることも浮き彫りになりました。 両案ともに「政府が幹部公務員の人事を完全支配することで、時の政権の言いなりにしていくことが狙い」で,公務員の「全体の奉仕者」という本来のあり方を破壊するものです。 企業・団体献金や天下りを禁止し,政官業の癒着を断ち切るとともに,公共サービスと国民の権利を守るために人員体制の拡充と労働条件の確立こそ必要です。 そのためにやはり公務員に労働基本権を付与し,国民本位の行財政の確立や監視に向けて役割を発揮することが求められます。
2010年04月09日
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与党3党は4月6日,国対委員長会談を開き,国会法改定案など与党の「国会改革」関連法案を5月に入り次第,衆議院に提出する方針を確認しました。 会談後,民主党の山岡賢次国対委員長は記者団に対し,同日,衆議院本会議で審議入りした国家公務員法改定案の審議の行方をみて,「その次(国会法改定案等)のスタート(審議入り)とゴール(可決)を相談したい」と述べました。 山岡氏は,衆議院議会制度協議会について,「遅々として進まないし,開かれることもない」としたうえで,「(審議時間などで)最善の努力と最大の譲歩をしたあとは,どうしてもというときには,きちっとすすめていきたい」と発言しています。 本来,議会制度の改革などを全会派で協議する同協議会を飛び越してでも,法案の提出と審議入りを強行する姿勢も示しました。 また,同会談では,「必要な法案」を成立させるためには,6月16日を会期末とする今国会の延長も視野に入れることが確認されました。 与党3党が国会法改定案の提出方針と必要な場合の国会延長を確認しましたが,この間の民主党の国会運営が何を狙ったものなのか,段々浮き彫りになってきました。 政府・与党が当初,労働者派遣法改定案などの参議院先議を強行しようとした背景には,単なる参議院選挙対策だけでなく,今国会での国会法改定案の成立という狙いがありました。 通常国会の半分が過ぎたばかりのいまの時点で会期延長などというのは,まさに何をかいわんやだです。 さらに,議会制度協議会でまったく議論もしていないにもかかわらず,国会法改定案「要綱」を各党に一方的に提示してきた与党側の強引なやり方に言及し,内閣法制局長官の国会出席・答弁の禁止や,憲法改悪をはじめとした強権的な国家体制づくりをすすめようという狙いがよく表れています。
2010年04月08日
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沖縄の米軍普天間基地の無条件撤去を求める県民・国民の願いに逆らって,県内・国内での「たらいまわし」にすぎない基地の「移設」に固執する,鳩山由紀夫政権への批判が高まっています。 鳩山政権は「移設」先として,沖縄県内のキャンプ・シュワブ陸上部や勝連半島(与勝半島)の沖合,鹿児島県の徳之島などをあげ,5月末までに決着させるとしています。 事態は非常に緊迫しています。 沖縄と本土の連帯したたたかいで「移設」計画を撤回させ,普天間基地の無条件撤去を求めてアメリカと本腰を入れて交渉するよう迫っていくことが不可欠です。 鳩山政権が持ち出し,3月末からアメリカとの本格的な交渉を開始したといわれる「移設」案は,いずれも基地による被害をなくし平和な暮らしを取り戻したいと願っている県民世論に反し,普天間基地を「国外・県外」に移し負担を軽減すると約束した民主党の選挙公約にも沿っていません。 名護市のキャンプ・シュワブの陸上部に新しい基地をつくるという案は,断念に追い込まれたシュワブ沿岸部での新基地建設をわずかに移動させただけで,住宅地での騒音被害などがいっそう酷くなります。 勝連半島のうるま市沖での新基地建設は3,000メートル級の滑走路を複数つくるというもので,埋め立てによる漁業被害や騒音被害など住民の被害の面でも,近くの石油コンビナートへの墜落の危険など安全面でも最悪の案です。 いずれも沖縄県民や自治体は被害を県内で「たらいまわし」するだけだと猛反対しています。 鳩山首相が「腹案」としているといわれる普天間基地の大半の機能を徳之島に移すという案も,地元で猛反発を受けているだけでなく,最後には勝連半島沖に巨大な新基地を建設して,集約していくことを狙っているともいわれており,とても沖縄県民の負担軽減になるものではありません。 だいたい普天間基地は,沖縄を占領したアメリカ軍が戦時国際法にも違反して不当に土地を奪い居座りを続けてきたもので,その返還を求められたら,「移設」先として代わりの基地をよこせというのは居直り強盗のような言い分です。 海兵隊は,アメリカの戦争のための「殴りこみ」部隊です。 住民の平和と安全を脅かす部隊に,基地を提供し続けるいわれはありません。 問題は普天間基地の「移設」先をどこにするのかではなく,無条件撤去を求めるかどうかです。 鳩山政権が「移設」にこだわるから,問題解決の見通しが開けないのです。 世界には対米交渉で基地を撤去させた例は実際にいくつもあります。鳩山政権は基地の「移設」先を探すのではなく,無条件撤去をアメリカに求めるべきです。 「移設」先探しに固執する鳩山政権に対し,沖縄でも本土でも,強い失望と批判の声が上がっています。 今こそその声を集め,鳩山政権に普天間基地の無条件撤去実現を求め「たらいまわし」には反対の声を突きつけていくときです。 東京では4月14日,「沖縄県民と連帯し,普天間基地の即時・無条件撤去を求める中央集会」が開かれます。沖縄では4月25日に,超党派の県民大会が予定されています。 沖縄と本土が連帯し,アメリカ軍基地撤去の闘いを強め広げていくことがなによりも重要です。
2010年04月07日
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昨年秋に発足した鳩山・民主党政権が初めて編成し,先月下旬に成立した2010年度予算。 この中で,『米軍再編経費』,『アメリカ軍「思いやり予算」』,『沖縄のアメリカ軍基地・訓練を「たらい回し」するSACO(沖縄に関する特別行動委員会)関係経費』の合計額が,過去最高の3,369億円に上っています(グラフ1)。 自民・公明両党の旧政権に比べても,アメリカ軍への“思いやり”ぶりは異常突出しています。 過去最高となった理由は,米軍再編経費の急膨張です。 鳩山政権が,本格実施の局面に入ってきた米軍再編で,自民党・公明党連立政権下の日米合意をほぼそのまま踏襲しているからです。 前年度比で481億円も増額し,総額を1,320億円と1.6倍化しました。(歳出ベース,以下同じ) このうち増額幅が大きい事業のひとつが,沖縄のアメリカ海兵隊「移転」のためとして行われるアメリカ領グアムでの基地増強計画(前年度比126億円増)です。 アメリカ領にある米軍基地を日本国民の税金を使って建設するもので,世界的にも,歴史的にも例を見ません。 もうひとつは,アメリカ海軍厚木基地(神奈川県)の空母艦載機をアメリカ海兵隊岩国基地(山口県)に移駐する計画(同215億円増)です。 これも基地の大増強計画です。 移駐に伴う新たなアメリカ軍住宅建設のため,周辺住民の強い反対にもかかわらず,愛宕山(岩国市)の用地買収費も初めて計上しました。 民主党は野党時代,沖縄の海兵隊のグアム「移転」協定や,米軍再編計画を受け入れた自治体だけに「再編交付金」を出すという露骨な「アメとムチ」の政策である米軍再編特措法に反対しました。 昨年の総選挙でもマニフェスト(政権公約)で「米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」と明記。 政権発足直後も,北沢俊美防衛相は,野党議員の国会質問に対し,アメリカ海兵隊の普天間基地(沖縄県宜野湾市)の「移設」問題に限らず,「日本における米軍駐留の全体の見直し」を行うとの考えを示していました(昨年11月20日,衆議院安全保障委員会)。 ところが,予算案を決定した昨年12月25日の記者会見では,北沢氏は「米軍再編については,普天間飛行場の移設先の検討を続けていくことになっているが,それ以外のものは淡々と予算計上をして執行していく」と表明し,国民への公約を裏切りました。 しかも,「普天間以外」というものの,普天間基地のアメリカ海兵隊キャンプ・シュワブ沿岸部(名護市)への「移設」という従来の日米合意に基づき,シュワブ内の既存隊舎などの再配置や環境現況調査を継続するための費用も計上。 自民党・公明党連立政権下の計画を白紙に戻したわけではありません。 実際,防衛省が作成した2010年度予算の説明資料は,普天間「移設」問題を含め「(米軍)再編関連措置を的確かつ迅速に実施する」とした自民党・公明党連立政権の閣議決定(2006年5月)を踏まえて,「施策の推進」を図るとしています。 一方で,鳩山政権は,普天間基地の新たな「移設」先を5月までに決定するとして,総選挙での「県外・国外移設」という公約に背いて,「県内移設」の動きを強めています。 具体的な「移設」先が決定した場合は,「速やかに必要な契約手続きに入れるよう」(防衛省)に予備費(3,500億円)などを活用し,新たな負担を行う方針です。 政権内の有力案として,沖縄の米海軍ホワイト・ビーチ沖(うるま市)を埋め立て,3,600メートル級の滑走路2本と3,000メートル級の滑走路1本を持った巨大基地を建設するという計画が報じられ,県内では「何のための見直しなのか」という批判が上がっています。 アメリカ軍への「思いやり予算」(日米地位協定でも義務のない米軍駐留経費の日本側負担)も1,881億円と依然,高水準です(内訳はグラフ2)。 民主党は予算編成作業の目玉として「事業仕分け」を行いました。 「思いやり予算」については,米軍基地で働く従業員の給与水準だけを対象として実施し,「見直しを行う」との評価結果を出しました。しかし,政府は2010年度予算で「見直し」を行いませんでした。 SACO関係経費は前年度比57億円増の169億円。 周辺住民が強く反対しているアメリカ軍の海兵隊北部訓練場のヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)の工事費もきっちりと盛り込んでいます。 もう言葉もありません。
2010年04月06日
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アメリカ軍普天間基地の「移設」先として鳩山政権が検討しているとされるひとつ,勝連沖埋め立て案(沖縄県うるま市)。 「政治的裏切り。沖縄県民の生存権の侵害だ」。 この住民の声は超党派で可決した県議会での「県内移設反対」決議を真っ向から踏みにじる同政権の県民不在への怒りだけではなく,埋め立て案のあまりの巨大さへの怒りです。 勝連沖埋め立て案は,同県中部地区の経済関係者が政府に持ち込んだとされています。 持ち込まれた図面によると,うるま市浜比嘉島の沖合1,300メートルのリーフ内に1,020ヘクタールを埋め立てて人工島を造成。 3,600メートル級の滑走路2本と3,000メートルの滑走路1本を建設します。 アジア最大といわれるアメリカ空軍嘉手納基地でさえ3,600メートル級滑走路が2本です。 ここに航空自衛隊那覇基地,アメリカ軍那覇軍港の機能を「移転」させるとしています。 「毒を食らわば皿まで」とばかりの巨大な新軍事要塞の出現です。 面積を比較すると,V字形滑走路2本をつくる辺野古沿岸は160ヘクタール。勝連沖埋め立て案は,この辺野古案6倍の広さです。 「世界一危険な基地」の普天間基地が480ヘクタールで,勝連沖案はこの2倍の面積です。 一方,海域は日本有数のモズクの漁場です。 全国のモズク消費量の5割を生産しています。「死活問題だ」と漁協はいち早く反対を決議しています。 アメリカ軍基地のための勝連沖埋め立て問題は過去2度もちあがり,住民の反対でいずれも阻止してきました。 新基地予定地の目前の平安座島には,日本の6日分の石油が備蓄されている大型タンクが並ぶ石油コンビナートがあり,もしもここにアメリカ軍ヘリが墜落したら大惨事です。 島袋俊夫市長もメッセージをよせた,うるま市民総決起大会の力をバネに4月25日の県民大会を成功させ,県内移設ノー,普天間基地の即時閉鎖,無条件撤去を実現しないといけません。 「鳩山政権はずいぶん足元を見られたもんだ。」 これが私の正直な感想ですが,公約違反の続く鳩山政権の崩壊は近いのかもしれません。
2010年04月05日
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「後期高齢者医療制度」をいますぐ廃止するよう求める集会が各地で開かれ,4月3日の東京・明治公園の集会では10,000人を超す参加者が会場を埋め尽くしました。 かつて民主党は後期高齢者医療制度を直ちに廃止し,まずは老人保健制度に戻すことを国民に約束しました。 連立政権の合意も廃止を掲げています。 ところが政権が発足すると,「新しい制度」をつくる2013年度まで廃止を先送りする方針に転換しました。 政権が国民の期待を裏切る中で,高齢者に医療差別を強いる世界に例のない後期高齢者医療制度は実施から3年目に入りました。 後期高齢者医療制度は国民を75歳で区切って,それまでの医療保険や扶養家族から引き離し,差別的な医療制度に送り込むという人間の尊厳をおかす制度です。歴代の厚生労働大臣や厚生労働省の官僚らは,この制度が医療費の抑制を目的にした制度であることを,あからさまに公言しています。 命を守る健康保険制度を,命を縮める「うば捨て山」に変質させた後期高齢者医療制度は,続ければ続けるだけ被害を広げます。 後期高齢者医療制度は2年ごとに保険料を値上げする仕組みです。 鳩山政権は国庫補助を実施して新たな負担増を抑えると言っていました。 しかし,実際にはこの国庫補助を実行せずに地方任せにしたため,多くの都道府県で保険料が引き上げられます。 明らかになった新制度の厚生労働省“試案”も,国民の怒りを広げています。 試案は75歳の区切りを65歳に引き下げて高齢者を国民健康保険に加入させ,現役世代とは「勘定を別に」(長妻昭厚労相)した制度として設計しています。 後期高齢者医療制度の非人間性は,疾病の危険性が高い75歳以上を「別勘定」にして囲い込み,際限のない負担増とともに差別医療を押し付けるところにあります。 その75歳の区切りを65歳に広げ,「うば捨て山」の「入山年齢」を前倒しするようなやり方を許すわけにはいきません。 試案によると現役で働く被用者保険の本人も,子どもと同じ世帯で扶養家族になっている人も,65歳になったら脱退させられて国民健康保険に移されます。 後期高齢者医療制度の理不尽な仕組みそのものであり,国民が厳しく批判してきたやり方です。 長妻厚生労働大臣は,その点は「論点」になっていて検討中だと説明していますが,もうすでに国民は「こんなやり方はやめよ」と審判を下しています。 これでは,国民の被害とともに,制度の混乱もますます大きくなるだけです。 鳩山政権は国民に対する公約を何重にも踏みにじっています。 「後期高齢者医療制度はいったん廃止をする,そして老健制度に戻す」。 2008年6月,民主党など当時の野党が提出した後期高齢者医療制度廃止法案の審議で,民主党は明確に答弁しています。 昨年の衆議院選挙では鳩山由紀夫首相も「お年寄りの尊厳を取り戻すためには廃止法案を可決するしかない」と街頭演説で訴えました。 「公約を守れ」という世論をさらに広げ,国民自身が後期高齢者医療制度を直ちに廃止させないといけません。 「マニュフェスト選挙」と謳って与党になった民主党がその公約を自ら踏みにじっては自民党政治となんら変わりないことを自ら証明しているようなものです。 夏の参議院選挙では国民に審判が下されるのは間違いないと思います。
2010年04月04日
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「核密約」を含む日米の「密約」について,外務省の有識者委員会が報告書を発表して1ヶ月。報告書が「核密約」を「明確な合意はない」としたごまかしが,いよいよ通用しなくなっています。「核密約」をかつて国会で追及した日本共産党の不破哲三元衆院議員が今週明らかにしたアメリカ側文書や,志位和夫委員長が提出した質問主意書に対する政府の回答,さらに衆議院外務委員会での国際問題研究者・新原昭治氏らの発言で,報告書の所見がまったく根拠のないことが明らかになりました。政府はごまかしをやめ,「密約」廃棄のための措置をとるべきです。日米の「核密約」は,核兵器を積んだ米艦船や航空機の寄港・飛来を「事前協議」の対象外としたもので,1960年の日米安保条約改定の際,当時の藤山愛一郎外相とマッカーサー駐日大使が頭文字で署名した「討論記録」に明記されています。有識者委員会の報告書は「討論記録」の存在を認めながら,アメリカ側が「交渉当時,その解釈を日本側に明らかにした形跡はない」とのべました。不破氏が示したアメリカ側文書は,マッカーサー大使が安保改定交渉の開始時に駐フィリピン米国大使に送った1958年10月22日付の極秘電報と,合意が成立した後の1959年6月20日付の国務長官あての報告電報の2通です。極秘電報は,マッカーサー大使が国務省と国防総省共同の訓令にそって,「核兵器を積載しているアメリカ軍艦の日本の領海と港湾への立ち入りの問題は従来通り続けられ,(事前)協議の定式の対象にならないこと」を首相と外相に提案したとしています。一方,報告電報は,アメリカ側が条約案や「討論記録」などを「単一のパッケージ」として日本に受け入れを迫り,「完全な合意に達した」と明記しています。日本側に「アメリカ側の解釈を明らかにした形跡はない」などという有識者委員会の所見は,根本から覆ります。一方,志位委員長が質問主意書で,「討論記録」を「公式の合意文書」と認めるのかと追及したのに対し,政府は答弁書で「不公表とすることとして両政府の間で作成された合意文書である」と認めました。しかも「討論記録」を,日米「共通の理解を記録するため」のものだとしています。これこそ“密約”です。「共通の理解」とはなにかが根本的に問われてきます。密約を廃棄しなければ「核持ち込みの危険がある」という志位氏の質問に対しても,政府は,「ないと判断している」としか答えられませんでした。「密約」ときっぱり認め,廃棄することが重要です。新原氏は衆議院外務委員会の参考人質疑で,不破氏も示したアメリカ側文書などを取り上げ,有識者委員会の所見を「重大な瑕疵がある」と批判しました。日本側でも安保改定当時外務次官だった山田久就氏が,政府の説明は「とりつくろい」だとのべていたことも紹介しました。政府や有識者委のごまかしはいよいよ通用しません。核持ち込みの「密約」は明々白々です。「核密約」をこのままにしておいて,日本への核持ち込みに終止符をうつことはできません。核兵器のない世界を切望する世界の世論に応えるためにも,政府は「核密約」を認めて廃棄し,「非核の日本」に進むべきです。
2010年04月03日
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後期高齢者医療制度が4月1日,導入から3年目を迎え,保険料が改定されました。厚生労働省の同日までのまとめで,24都道府県で保険料率が引き上げられます。昨年の総選挙で同制度の廃止を公約しながら,先送りしたうえ,保険料値上げにも国として手だてをとらない鳩山政権に怒りの声があがっています。同制度は,75歳以上の高齢者を現役世代と切り離し,強制的に別枠の制度に入れて重い負担を課すもので,保険料は,全員に均等に課せられる均等割額と,所得に応じてかかる所得割率からなります。24都道府県のうち17道府県が均等割額,所得割率をともに引き上げ,7都府県が所得割率を引き上げます。両方とも据え置く県が16,両方とも引き下げる県が7あります。平均保険料額でみると,31都道府県が値上がりとなります(注)。1人当たりの全国平均年間保険料額は前年度比2.1%増の6万3,300円。最も増加率が高いのは徳島の7.7%,広島5.8%,大阪5.1%,北海道5.0%と続きます。鳩山政権は,保険料の値上げを抑えるために国庫補助を入れるとしていましたが,実施せず,保険料抑制を地方任せにしました。そのため多くの都道府県で保険料が引き上げられる結果を招きました。ただちに制度を廃止することが必要です。(注)保険料額は被保険者の所得水準に影響されるため,保険料率が上がっても保険料額は下がるなどの場合があります。後期高齢者医療制度の実施から2年がたった4月1日,各地で同制度の即時廃止を求める集会やデモ,署名行動が行われました。那覇市では,県庁前の広場で沖縄県社会保障推進協議会のメンバーが座り込みました。新潟市では集会とデモで県民にアピールしました。山形市では山形県社保協の廃止署名の呼びかけに青年も次々と応じました。中央社保協は同日,すみやかな廃止を求める相野谷安孝事務局長の談話を発表し,鳩山内閣が廃止を先送りし,4月からの保険料値上げをそのままにし,65歳以上の高齢者を現役世代と別勘定にする「新制度」を検討する―の“三重の公約違反”を批判しました。4月3日には,東京・明治公園で,「後期高齢者医療制度はいますぐ廃止!」を掲げて大集会が開かれます。
2010年04月02日
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政府の国家戦略室が6月に策定する財政運営戦略と中期財政フレームの素案が3月31日までに明らかになりました。社会保障費の財源については,「社会保障制度改革,税制改革も含め,財源を中長期的に確保する姿勢を明確に示す」とし,消費税増税を強く示唆しています。中期財政フレームは,歳入の見通しを基礎におきつつ,今後3年間(2011~2013年度)の歳出の大枠を示すものです。財政戦略の策定については,「党派を超えた取り組みが望まれる」とし,自民党との共同を想定しています。債務残高の削減については,国内総生産(GDP)に対する債務残高比率を「安定的に縮減させる」こととしています。その中間目標として基礎的財政収支(プライマリーバランス)などの達成を4段階で定めます。新規施策や減税には恒久的な財源を確保する「ペイアズユーゴー原則」など財政運営ルールの確立も目指しています。中期財政フレームで定める3年間の歳出の大枠については,総枠のみを示すか,社会保障や公共事業など主要項目を示すか,各省庁ごとに示すかなどを今後の検討課題としました。また,首相や国家戦略担当相の裁量枠を設定したトップダウン型の編成方式を検討するとしています。国と地方を合わせた債務残高比率の安定的縮減を可能にするため, (1)2011~13年度の歳出の大枠を示す中期財政フレームを設定 (2)基礎的財政収支赤字を半減 (3)同収支の均衡化 (4)同収支の黒字化の4段階で目標達成時期を示します。 国家戦略室の検討会がまとめた財政運営戦略と中期財政フレームの素案要旨は次の通りです。 【財政運営戦略のイメージ】 【財政健全化目標】財政健全化のゴールは公的債務残高の対GDP比を安定的に縮減させていくことに求めつつ,その前提としてフロー目標を段階的に定める。達成目標時期は幅を持った時期(2000年代前半など)を設定することも考えられる。フロー目標はプライマリーバランスに代えて(債務の元利払い費を加味した)財政収支を用いることも考えられる。 【財政運営ルール】 (1)トップダウン型の新たな予算編成方式 (2)ペイアズユーゴー原則 (3)財政赤字縮減ルール (4)景気循環要因を除いた「構造的財政赤字」縮減ルールなどが考えられる。 【中期財政フレームのイメージ】財政運営戦略との整合性を保ちつつ,3年間の歳出の大枠を定める。これに沿って各年度の具体的な概算要求と予算編成を行う。フレームは定期的に改定。フレームの経費区分は「総枠のみ」,「社会保障,公共事業など特に大きな経費の内訳を明示」,「主要経費別ないし各省別の内訳を明示」などが考えられる。 【その他】 財政健全化は政権を超えて取り組まなければならない。党派を超えた取り組みが望まれる。今後の財政運営の戦略づくりで民主党政権と自民党が競演しています。自民党はすでに国会に「財政健全化責任」法案を提出しています。自民党案では,税収確保のためには,「消費税を含む税制の抜本的な改革」が必要だとしています。もともと財政赤字が巨額に膨らんだのは,自民党政権下での大企業・ゼネコン優先の財政運営が原因。巨額の軍事費が聖域化されてきたことも財政赤字を助長しました。そのツケを消費税増税で国民に回すことは許されるものではありません。ところが,菅直人財務相は,3月24日の記者会見で,「今さら(巨額赤字の)責任を問うという問題を超えて」議論することが重要であると発言し,自民党政権時代の財政運営を不問にする姿勢を示しました。さらに菅財務相は,「政権交代があった今だからこそ」,自民党とも公明党とも「超党派の場で議論する」ための「土俵が国会という場で生まれる」と述べています。今回明らかになった政府の財政運営戦略の策定方針でも,「党派を超えた取り組みが望まれる」と,わざわざ強調しています。財政運営の戦略づくりで,民主,自民が「大連立」状況という重大な局面になっています。税制問題では,鳩山由紀夫首相は,参議院予算委員会(3月12日)で「法人税が日本は高くて消費税が極めて低いというのは実態として事実であろうかと思います」と答弁したことは重大です。財界団体の日本経団連は,自民党政権時代から,繰り返し法人税減税と消費税増税を政権に求めてきました。中期財政フレームの策定に関連して,経済同友会の桜井正光代表幹事も記者会見(2月16日)で「税制はどうあるべきかが必須で,消費税は当然出てくる課題」と消費税増税を求めています。消費税は,「生まれも育ち」も「福祉」を口実にしてきました。しかし,消費税は低所得者ほど負担が重い大衆課税です。しかも,アメリカ発の金融・経済危機で日本国内では,失業や貧困層が広がり,国民生活は深刻な状況になっています。そして日本経済の停滞は国内需要が落ち込んでいるのが原因なのに,消費税を増税し,法人税を減税するというのは,「経済活性化」という経済対策としても方向が間違っています。
2010年04月01日
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いつも読みに来て頂き本当に感謝しております。政治の情報を発信することを趣旨に,2006年1月1日より毎日掲載を目標にやってまいりました。残念ながら,2008年12月15日でその目標も途切れてしまいました。公私共に忙しくなってしまい,毎日掲載することが難しくなってしまいました。しばらくお休みを頂き,掲載を再開したいと思います。宜しくお願い申し上げます。
2008年12月16日
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2013年以降の温暖化防止の新たな国際協定について協議する国連気候変動枠組み条約第14回締約国会議(COP14)は12付13日未明,2週間におよぶ議論を終えて閉幕しました。 温暖化防止の次期国際的枠組みづくりで進展はありませんでした。 会議は,新協定を採択する来年末のCOP15までの行動計画などを採択。来年6月にドイツのボンで開く会合までに,議長が新協定交渉の土台となる文書を作成することで一致しました。 また途上国の温暖化対策に資金援助する「適応基金」の発足で合意しました。 先進国による温室効果ガス削減の中期目標については,昨年12月のバリ会議(COP13)と同様,「2020年までに1990年比で25%-40%の幅で削減」との目標を確認した京都議定書特別作業部会の合意を承認したにとどまりました。 会議では,途上国側が先進国に中期目標を設定し,責任を果たすよう求めたのに対し,日本やカナダなどは消極姿勢に終始。途上国への技術移転や資金メカニズムの問題でも途上国と先進国の意見の隔たりは埋まりませんでした。 このため,12月12日深夜に始まった最終会合では途上国側から不満の表明が相次ぎ,徹夜会合となりました。 閉幕後の記者会見で気候変動枠組み条約のデ・ブア事務局長は,「これから交渉が本格化していく。それにつれ,各国とも国益を強く主張してくるものだ」と交渉の難しさをにじませました。 結局,ポーランドのポズナニで開かれていた国連気候変動枠組み条約第14回締約国会議(COP14)は,昨年末のバリ会議(COP13)の合意をほぼなぞるだけにとどまり,温室効果ガスの削減目標など,新協定の中身に直接かかわる合意はほとんどありませんでした。 その要因は,強い政治的指導性の欠如だといえます。 会議では,途上国側の姿勢の積極化が評価される一方,先進国側で交渉の牽引役が現れない現状が目立ちました。 「途上国が頑張っても,先進国がリードしなければ交渉は進まない」との指摘が会議で繰り返されました。 先進国を引っ張ってきた欧州連合(EU)も,精彩を欠きました。EU首脳会議は12月12日,「2020年までに温室効果ガスを1990年比で20%減らし,再生可能エネルギーの比率を20%にする」計画に合意。 欧州委員会のディマス環境委員は,「これを土台に,コペンハーゲンで合意ができれば30%削減に努力する」とし,他の先進国に野心的目標をもつよう迫りました。 しかし,COP14に弾みをつけるには手遅れでした。 加えてアメリカはオバマ新政権の発足待ちという状況で,先進国の足を引っ張る日本,カナダ,オーストラリアの姿が逆に目立ちました。 交渉を妨害する国にNGOが連日授与するCOP恒例の化石賞で,日本は1位を4回,2位を2回受賞。カナダに次ぐ妨害国に指定されました。 COP14の合意では,COP15に向けた文書を来年3月にまとめ,各国が意見を出し,6月に交渉文書をまとめる段取りになっています。 ところが日本は,2020年までの中期削減目標を検討する委員会を設置したばかり。目標決定が国際交渉に間に合うのかとの疑問が出ています。 その一方で,「セクター別積み上げ方式」や,途上国を分類しての削減目標義務付けなどの提案に固執。閣僚級会合でも,外交的表現での日本批判が続きました。 「アメリカが入らない合意は無意味だ」,「中国も責任を負うべきだ」と,他国への責任転嫁で自国の義務不履行を覆い隠してきた日本。 オバマ次期政権がアメリカの方向転換を表明し,中国の削減努力が一定の評価を受けるもと,このままでは日本は,コペンハーゲンで完全に孤立する危険があります。 まさに財界言いなりで,政治主導でのグローバルな地球温暖化問題の対応もできない今の自民党・公明党連立与党政治の害悪がよく現れている会議だったと思います。
2008年12月14日
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麻生太郎首相は12月12日夕方,「生活防衛のための緊急対策」を発表した記者会見で,3年後に消費税増税を実施するという「立場はまったく変わっていない」と明言しました。 消費税増税に向けた準備を進める考えを明らかにしました。 麻生首相は「2011年度から消費税を含む税制抜本改革を実施したい」と強調。 増税のために必要な作業を始めるように,与謝野馨経済財政担当相と中川昭一財務相に指示したと述べました。 麻生首相は10月30日,追加経済対策を発表した記者会見で,「3年後に消費税の引き上げをお願いしたい」と発言していました。 自民・公明両党が12月12日まとめた2009年度税制「改正」大綱では,消費税増税の時期を「2010年代半ばまでに」とし,「3年後」とは明記しませんでした。 麻生首相は,同日の記者会見で,「基本的に3年後に消費税を引き上げるという方針」「(3年後の)2011年に,私としては(消費税増税を)ぜひやりたい」と繰り返し表明。 「いろいろ批判が出ることは承知している」が「逃げずに」進めるとし,あくまで3年後に消費税増税に踏み切る考えを示しました。 アメリカ国発の金融危機で景気が悪化するもと,「生活防衛のための緊急対策」についての記者会見で消費税増税を重ねて強調するのは異常なことで,個人消費を冷やすことにしかなりません。 欧州が消費税減税に動いているなか,世界の流れにも逆行しています。 麻生首相自身にとって「生活防衛のための緊急対策」は『消費税増税』のための「定額給付金」なのでしょうか? 「生活防衛のための緊急対策」は政治家として,景気を回復させて国民生活を良くしようという「景気対策」ではなく,「生活防衛」どころか「生活破壊」である『消費税増税』の“口実”に過ぎないものなのでしょうか? なんとも呆れるばかりです。
2008年12月13日
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防衛省は米軍再編を本格的に進めるために,2009年度の軍事予算案に約1,000億円もの巨額の支出を要求する方針を決め,財務省との事前調整に入りました。 米軍再編は,自衛隊基地への訓練の移転などが進んでいるとはいえ,核心ともいうべき沖縄の新基地計画や岩国基地(山口県)の再編計画は,地域の強い反対で立ち往生したままです。 国民が認めてもいないのに,今年度(191億円)の5倍もの予算を計上するのは重大です。 社会保障費など国民生活予算を削減する一方で,巨額をアメリカ軍に投入する態度が国民の反発を買っているのは当然です。 約1,000億円のうち半分は在沖縄米海兵隊のグアム移転を理由にした,グアム基地建設関連予算です。 米軍司令部や隊舎建設のための土地造成費です。今年度予算では調査費として約4億円がついていますが,建設費を計上するのはこれが初めてです。 司令部要員など8,000人の海兵隊員を沖縄から移転させても,戦闘部隊と基地をそのまま残す再編計画では,沖縄県民の苦しみをなくすことはできません。しかもグアム移転と一体で政府が押し付けようとしている沖縄での新基地建設計画は,騒音被害の拡大など「基地の痛み」を激増させるだけです。 70%もの県民が基地撤去を要求し,新基地計画に反対しています。 基地の痛みをなくせという県民の強い願いに背を向けながら,日本の負担でグアム基地建設を進めるのは許されません。 米軍再編に要する経費は3兆円というのがアメリカ政府高官・軍幹部の説明です。日米合意では,沖縄の新基地建設と厚木基地(神奈川県)からの空母艦載機部隊の岩国基地移駐は2014年に完了するとされ,その他もそれ以前に作業が進むことになっています。 今後6年間で合意どおりに再編を進めれば,年平均でも5,000億円が必要になる計算です。来年度1,000億円を計上するのは,そのための助走であり,その後は数千億円にもなるのは避けられません。 巨額の米軍再編予算を確保する手法も見過ごせません。 防衛省は来年度の概算要求で約4兆8,500億円を計上していますが,これとは「別枠」で再編予算を要求しています。これは政府方針にもとづいています。 2006年の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」(「骨太方針」)が,軍事予算で対応できない場合は「必要な措置を講ずる」としているからです。 「別枠」を許せば軍事予算を激増させ,国民生活予算の圧迫にさらに拍車をかけることになるのは必至です。 そもそもブッシュ政権がはじめた米軍再編は日本の防衛とは無縁です。日本の基地を足場にして,世界各地にいつでもどこにでも迅速に米軍部隊を送り,軍事介入できるようにするのが狙いです。 米軍地位協定にも根拠のない「思いやり予算」と同類の米軍再編予算を増やすことに,何の道理もありません。 米軍再編を許さないことはアメリカの戦争態勢づくりを阻止することにつながります。それこそが戦争を放棄し紛争を平和的に解決することを理念とする憲法九条をもつ日本の役割です。
2008年12月12日
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“派遣切り”“期間工切り”など大企業が非正規労働者を大量に解雇している問題で厚生労働省は12月9日,労働基準法に違反しない場合でも,労働契約法や裁判の判例を踏まえ,不適切な解雇・「雇い止め」をしないよう企業に「啓発・指導」することを全国の労働局長あてに通達しました。 労働基準局長名の通達では,派遣や有期契約のいわゆる非正規労働者の解雇や雇い止めがみられるとして,労働契約法や裁判例などをふまえて対応することを要請。 新たに作製したパンフレットを活用して啓発指導するよう求めています。 パンフレットでは,派遣・期間労働者を契約途中で解雇することは,労働契約法で「やむをえない事由」以外は禁止されていること,期間の定めのない労働契約の場合よりも厳しく判断されるとしています。期間満了に伴う「雇い止め」でも,判例では,有期雇用が繰り返し更新されると期間の定めのない契約と変わらないとされたり,契約更新に対する労働者の期待が合理的とされていることを紹介しています。 いすゞ自動車などの解雇が労働契約法違反であることを繰り返し指摘されていましたが,その指摘が生かされた形です。 大量整理解雇などの情報を把握した場合には,法令や雇い止めの基準違反などを防止するため,迅速に情報収集し,必要な指導をするよう求めています。労働条件特別相談窓口を設置することや,労働者からの問題のある申告については早期解決に優先的に対応するよう述べています。 職業安定局長名の通達では,公共職業安定所が,期間工や派遣労働者などの大規模な雇い止めの情報を把握した場合,企業に対しすみやかに監督し,必要な指導をするよう指示しています。 解雇とともに寮を追い出されるケースも多いことから,事業主に離職後も一定期間入居できるよう配慮を要請することや,住居喪失者に雇用促進住宅の入居をあっせんするよう指示しています。 大企業による非正規労働者などの大量「首切り」が一大社会問題となる中で,2つの新しい重要な動きがうまれています。 ひとつは,労働者の社会的反撃が始まっていることです。 いすゞ自動車の栃木工場や藤沢工場,日産ディーゼル工業(本社・埼玉県上尾市),大分キヤノンなどの例でもご存知のように,全国各地で,非正規労働者が自ら労働組合を結成したり,労働組合に結集したり,たたかいに立ちあがっている点です。 労働者が憲法の団結権を行使して,自ら立ち上がりつつあるのは,本当に重要な動きです。 もうひとつの重要な動きは,今回出された厚生労働省の「非正規切り」防止の通達です。 通達では,有期労働契約について「やむをえない事由」がある場合を除いて契約途中での解除は違法(労働契約法違反)になることを明記しています。 契約満了での「雇い止め」でも,乱用すれば違法になる場合があるということも示され,雇用を維持するための「啓発・指導」を各都道府県労働局に指示する内容になっています。 実際問題まだ不十分ですが,労働者の闘いが行政を一歩動かしたものです。労働者が首切りを許さないたたかいをすすめていくうえでもひとつの足がかりになります。 この通達も生かしながら,労働者自身が闘いを大いにすすめて,昨今の大企業中心の政治とを変えていって欲しいものです。
2008年12月11日
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自民党・公明党連立与党は,アフガニスタンでのアメリカの戦争を支援するため,海上自衛隊のインド洋での給油活動を延長する法案を,参議院が否決したあと,12月12日の衆議院本会議で再議決しようとしています。 12月11日の参院外交防衛委員会で採決する日程は,民主党も賛成して決めました。 給油活動を延長する法案を,参議院が否決したあと衆議院で再議決,3分の2以上の賛成で成立させるやり方は,今年1月にもやられたものです。国民の反対と議会制民主主義を重ね重ね踏みにじる,無法きわまるやり方です。 インド洋での海上自衛隊の給油活動が,無法なアメリカの戦争を後押しするだけで,アフガニスタンでの平和の回復にも,国民の民生向上や国土の復興にも役立っていないことは明白です。 2001年のアメリカ同時テロの直後,アメリカのブッシュ政権がテロへの「報復」として始めたアフガニスタンへの攻撃は,当時のタリバン政権を崩壊させたものの,開戦から7年以上たっても悪化の一途をたどり,文字通り泥沼の状態です。 アメリカやNATO(北大西洋条約機構)が派遣した軍隊は圧倒的な軍事力でも抑えきれず,撤退どころか増派を検討しなければ身の安全も守れない状態に追い込まれています。 とりわけ事態を深刻にしたのは,アメリカの無差別な空爆が罪のない国民を惨殺し,怒りを招いていることです。 アフガニスタンのカルザイ政権も繰り返し空爆の中止を求めていますが,アメリカはそれさえ聞き入れていません。 空爆をおこなっているのはインド洋に配備された空母などから飛び立ったアメリカ軍機です。 政府が国会に提出した資料などから,日本の給油が空母を護衛している艦船にもおこなわれていることが明らかになっています。日本の給油が無法な虐殺に手を貸すものとなっているのは重大です。 いまや戦争では国民の憎悪と暴力の応酬を激しくするだけで,テロはなくせないことは明白です。 給油延長法案を審議した参議院外防委に参考人として出席したアフガニスタン現地で活動する民間団体「ペシャワール会」の中村哲現地代表も,テロは「軍事力では絶対になくならない。ますます拡大する」,「外国軍の空爆が治安悪化に拍車をかけている」と強調しました。 8月には現地で活動中の「ペシャワール会」のボランティア伊藤和也さんが武装勢力によって命を落としました。 それだけに発言は重く,法案をごり押しする与党は,参考人として出席を求めた中村氏の発言さえ踏みにじる責任を,厳しく問われることになります。 アフガニスタンでの無法な戦争の支援を,無法なやり方で継続しようとする政府は,アメリカ軍などの増派に呼応して,アフガン本土への陸自ヘリ部隊の派遣まで言い出しています。 これこそ無法に無法を加速させるものです。 アメリカやその同盟国も戦争では解決できないと言い出し,カルザイ政権も繰り返し現地の武装勢力との話し合いを呼びかけるなど,平和的解決の機運は高まっています。 戦争支援をやめ,平和的解決を後押しすることこそ,いま日本がやるべきことです。
2008年12月10日
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自民・民主は新金融機能強化法案を12月11日の参議院財政金融委員会で採決することで合意しました。 麻生太郎首相は「一次補正で借り手側の対策はできた。問題は貸し手側」だと述べ,「貸し渋りが起きないように,早急に成立を」と言っています。しかし,借り手側の対策は依然として不十分であり,貸し手側の対策は銀行への大盤振る舞いにすぎません。 従来の金融機能強化法(3月に期限切れ)では公的資金の規模は2兆円でした。 今回の法案では,資産100兆円クラスの大銀行にも投入できるよう,公的資金枠を5倍の10兆円に膨らませています。 メガバンクと呼ばれる大銀行グループは,優遇税制によって法人税の負担をほとんど免れています。特に2001年から2007年の7年間は10兆円の大儲けをあげながら国の法人税はゼロ,たったの1円も納税していません。 そのメガバンクが,わずか1年半の間に中小企業向けの貸し出しを5兆円以上も減らして,貸し渋り・貸しはがしの先頭に立っています。 全国銀行協会は法案の早期成立を求めていますが,それ自体,根深い腐敗体質の表れです。 全銀協会長の杉山清次みずほ銀行頭取は貸し渋り批判に対し,「貸し渋りをしている意識はない。貸せないところには貸していないということだ」と言い放っています。 法案は金融機関の収益性・効率性を高めることを第一の目的にして,破たん前の金融機関に予防的に資本注入(金融機関株の買い入れや出資)する枠組みです。 最大で約70兆円を投入できるアメリカの緊急経済安定化法は,5年後に損失が出た場合,大統領が金融業界に損失額を請求する法案を出すことになっています。 しかし,新金融機能強化法案では損失は国民に転嫁します。 中川昭一金融担当相は「アメリカにはアメリカのやり方,日本には日本のやり方がある」と答弁しました。日本政府の大銀行奉仕はアメリカと比べても異常です。 この10年間に銀行業界には12兆円以上の資本注入など,総額46兆8,000億円もの公的資金を投入してきました。そのうち少なくとも10兆円以上が焦げ付いて,国民負担になることが確定しています。 日銀の超低金利政策や保有株の買い取りなど,銀行業界には至れり尽くせりの応援策を講じてきました。 それにもかかわらず,銀行業界は中小企業への貸し出しを全体で84兆円も減らしています。 国民へのツケ回しを担保にした銀行応援は,乱脈融資や投機で失敗しても「税金で助けてくれる」という腐敗した経営体質をはびこらせました。しかも,新金融機能強化法案は,かつては資本注入した金融機関に求めていた中小企業への貸し出し目標さえ外しています。 貸し渋りを防ぐ保証がまったくないばかりか,銀行の経営倫理の崩壊を促進するだけです。 民間信用調査会社は,緊急保証制度が始まっているものの,資金繰り悪化による倒産が高水準だと指摘しています。 年末に向け「貸し渋り倒産」は極めて深刻です。 雨の日に無理やり傘を取り上げるような大銀行を,公的資金で甘やかすのではなく,貸し渋りをやめさせる厳しい指導・監督こそが緊急に必要です。
2008年12月09日
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日本経団連の御手洗冨士夫会長は12月8日の記者会見で,相次ぐ非正規社員の解雇について「世界的な景気の急激な落ち込みにより各社も減産に追い込まれ,苦渋の選択で雇用調整が行われている」などと述べました。 大企業は「減産」を口にしますが,大きな利益をあげ,株主配当も減らさず,巨額の内部留保も抱えており,人員削減を強行する根拠などないものです。 キャノンも5,800億円の利益を見込み,株主への中間配当だけで715億円。解雇に追い込まれた非正規1,700人の雇用維持に必要な額は中間配当の5%にもなりません。 剰余金も3兆3,000億円ためこんでおり,雇用を維持する十分な体力があることは明白で,「苦渋の選択」とはよくもいえたものです。 御手洗冨士夫氏はまた,同社で請負・派遣社員が解雇されることについて,“請負・派遣元が解雇したものだ”として同社の責任ではないとの発言をしました。 しかし,請負・派遣社員の解雇は,キャノンが発注を削減したためであることは明らかです。派遣法に基づく派遣先指針でも,派遣先に解雇の原因がある場合,派遣先の関連会社に就職を斡旋するなど雇用を確保しなければならないと定めています。 財界のトップとしても,企業のトップとしても,責任逃れの発言は許されません,決して許されるものではありません。
2008年12月08日
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ポーランドのポズナニで開催中の国連気候変動枠組み条約第14回締約国会議(COP14)は12月6日までに前半を終えました。 今回の会議は,2013年以降の温暖化防止の新たな国際協定をつくる来年末のCOP15の成功の足がかりを築くため,世界が目指すビジョンと先進国の削減目標などで共通認識を前進させることが求められています。 しかし,これまでの議論で,COP15に向けた論点整理案のとりまとめは難航しています。 会議で大きな論点となっているのは,先進国の温室効果ガス削減の水準です。 12月4日の会合で中国やインド,南太平洋の島国ツバルは,気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の昨年の報告書に基づき,先進国が2020年までに1990年比で25%-40%削減する中期目標をもつよう主張。 これに対し先進国側のロシアやカナダが「受け入れられない」と拒否しました。 先進国の中でもドイツは30%削減の中期目標を決め,ノルウェーも今回の会議で30%削減の目標を示しました。イギリスも二酸化炭素(CO2)を26%削減する目標を国内法で決定しています。 これまで交渉をリードしてきた欧州連合(EU)では,「2020年までにガスを20%削減し再生可能エネルギーの比率を20%にする」という中期目標や関連のエネルギー政策の確定をめぐり加盟国間で議論があり,11日-12日のEU首脳会議で決着をつけることになっています。 世界最大級の排出国でありながら温暖化防止交渉を妨害してきたアメリカは,その張本人のブッシュ政権が来年1月に退陣することから,会議での代表団の発言は控えめです。 交渉への消極姿勢のため,非政府組織(NGO)などから繰り返し批判されているのが日本です。 日本は「世界全体の排出量を2050年までに半減する」という目標を掲げています。ところが,その基準年については,1990年とするのはEUに有利で日本に不利だとして,複数設定するよう主張しています。 これは実質削減量低下につながる主張です。日本政府代表は,この「半減」目標さえ「拘束力はない」と発言しました。 さらに日本は,アメリカ新政権が交渉方針を明確にするまでは自国の中期目標を示さない態度に固執しています。 これらの姿勢から日本は3日,4日両日と連日,交渉を妨害する国を批判するためにNGOが与える「化石賞」の1位に選ばれました。 2013年以降の新協定で,中国などの新興国を含む途上国の関与をどの程度にするかは,もうひとつの論点です。 先進国と途上国の「共通だが差異ある責任」の原則に基づきつつ,途上国も,先進国側からの支援を条件に,一定の行動をとるべきだとの議論が出ています。何の対策もとらない場合に比べて2020年までに15%-30%削減すべきだとの意見も表明されました。 これに対して中国は,「一人当たり歴史的排出量」という指標を示し,これまで歴史的に排出量が少なかった国は,当面は一定の排出量が認められるべきだと主張しています。 地球温暖化問題は地球全体の問題である以上,国益ばかり主張するだけでは解決できません。地球温暖化問題は政治が主導してこその世界が目指すビジョンと共通認識を前進できるものです。 日本はいつまでも,アメリカと同調する政策ではなく経済大国2位として独自の地球温暖化対策を政治主導で進めないといけません。 大企業より政治献金を受け取って「財界言いなりの政治」を進める自民党・公明党連立与党や民主党では,なかなか地球温暖化問題は解決できないのかもしれません。そういう意味では,日本の地球温暖化対策は世界より大きく遅れそうです。
2008年12月07日
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北朝鮮の核問題を巡る六ヶ国協議の首席代表会合が12月8日,中国・北京で開かれます。 北朝鮮の核申告に対する検証方法の文書化が最大の課題です。北朝鮮は,日米韓が求める核施設のサンプル(試料)採取の明記に反対する姿勢を見せており,各国メディアは交渉の難航が予想されると伝えています。 六ヶ国協議は,7月の首席代表会合以来,5ヶ月ぶり。 今回の会合は,10月の米朝協議での合意内容を,六ヶ国協議の合意文書として確認することが目的です。核申告の検証方法のほか,核施設の無能力化や経済・エネルギー支援などについても議論し,朝鮮半島非核化の「第二段階」の完了を目指します。 首席代表会合を前に,アメリカ首席代表のヒル国務次官補(東アジア・太平洋担当)は12月4日,12月5日の両日,シンガポールで,北朝鮮首席代表の金桂冠(キム・ゲグァン)外務次官と会談。 「(非核化第二段階の)合意の締めくくりに向け,具体的な問題を議論した」(金次官)といいます。 北朝鮮は,検証方法について,10月の米朝協議で合意した(1)現場立ち入り,(2)文書の提出,(3)技術者からの聞き取り,以外の方法を認めない立場を強調。試料採取の明文化にも反対しています。 日米韓は,検証方法で「誤解,曲解の余地のない文書」の採択を目指す方針。核施設のサンプル採取のほか,寧辺を含めたすべての核施設を検証の対象とするよう求めています。 シンガポールでの米朝協議では意見の差が埋まらず,決着は北京での六ヶ国協議に持ち越されました。 北朝鮮は,「行動対行動の原則」に基づき,五ヶ国が実施義務を負う経済・エネルギー支援の遅れについても批判。検証実施などの新たな措置については,五ヶ国が支援義務を完了した後に実施するという姿勢を見せています。 五ヶ国は,北朝鮮に検証方法の厳格化を迫る一方,自らの義務の履行も迫られることになります。【参考】「第二段階」 六ヶ国協議は2007年10月,第二段階の措置として『北朝鮮は寧辺の核施設を無能力し,すべての核計画を申告する』,『他の五ヶ国は北朝鮮に重油100万トン相当のエネルギー支援を行う』,『アメリカは北朝鮮のテロ支援国姿勢を解除し対敵通商法の適用を終了する』ことなどで合意。 2008年7月には,これらの措置を10月末までに履行し,非核化の検証体制を確立することで合意していました。
2008年12月06日
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年の瀬を迎え,突然解雇を言い渡された労働者の苦境は,言葉で語り尽くせないものがあります。 とりわけ派遣や期間工など非正規労働者は,解雇と同時に寮などを追い出され,生活の基盤そのものを崩壊させられます。文字通り路頭に迷う,深刻な事態です。 派遣切りや期間工切りは,労働法制など雇用のルールを踏みにじる無法なもので,規制緩和で非正規労働を拡大してきた政府の責任も重大です。いまこそ政治の責任で無法・違法な解雇をやめさせ,生活と雇用を保障する,実効ある対策をとることが重要です。 深刻化する雇用問題に対し,日本共産党の志位和夫委員長は麻生太郎首相に緊急対策を申し入れ,党首会談でもその実行を求めました。自民党と公明党の与党は提言をまとめ,政府は週明けに対策を決定することにしています。 麻生首相は国会答弁でも,雇用情勢の悪化は「アメリカ発の金融危機による『金融災害』というべきもの」といった答弁を繰り返します。 しかし,トヨタなどの大企業が派遣労働者や期間労働者を大量に解雇しているのは決して「天災」ではありません。トヨタでいえば,今年度6,000億円もの利益を見込み,13兆円もの内部留保をため込んでいます。 大量解雇は労働者に犠牲をしわ寄せし,企業だけが儲けを続けるためです。大量解雇による雇用の悪化は,これまでの景気の後退期に比べても異常に速いスピードです。 大企業が景気のよいときは派遣など非正規の労働者を増やして利益を上げ,景気が悪くなりそうだとなると,率先して切り捨てているためです。背景には,労働法制の規制緩和で非正規労働者を拡大してきた政府の政策があります。 政府は「政治災害」だという批判にこたえるためにも,無法な解雇をやめさせ,雇用と生活を守る対策をとるべきです。正社員があたり前の働き方になるよう,派遣法などの抜本改正も不可欠です。 麻生首相は志位委員長との党首会談でも財界団体などに「要請した」としか答えず,衆議院予算委では首相や舛添要一厚生労働相が「介入できない」などと答弁しました。 とんでもないことで,労働者の雇用と生活を守るために無法・違法な解雇をやめさせるのは政府の大事な仕事です。 不当な解雇に反対する労働者のたたかいで,解雇以外方法がないなど「4件」を満たさない整理解雇は無効だという判例が確立しています。非正規労働者も同じです。労働契約法では期間労働者は契約期間中,解雇できないことにもなっています。 無法・違法な解雇をやめさせるため,政府が指導・監督の責任を果たすのは当然であり,大企業に雇用のルールを守らせる,実効ある措置をとるべきです。 派遣切り・期間工切りが進めば,年末に多くのホームレスがちまたにあふれるとまで懸念されています。 事態は切迫しています。政府が「行政不介入」などを口実に,対策の手をこまねいていることは無法の追認にしかなりません。 雇用の不安を解決し,人間らしい労働を実現してこそ,経済も拡大できます。雇用対策を言葉だけにせず,派遣切り・期間工切りなど,無法な解雇をやめさせるかどうかが政府に問われています。
2008年12月05日
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日本が中心になってつくった「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決議」(58ヶ国共同提案)が,12月2日の国連総会で賛成173,反対4(アメリカ,インド,イスラエル,北朝鮮),棄権6(中国,パキスタンなど)で採択されました。 核抑止・核固執と決別し,核廃絶を中心にすえる世界的流れがいよいよ大きくなっています。日本の決議が多数に支持されたのもそうした流れのあらわれです。 問題は日本の核決議が核廃絶を中心にすえていないことです。唯一の被爆国である日本政府の姿勢が問われています。 日本政府は今回,7月に行われた洞爺湖サミット首脳宣言をふまえて,核兵器の「削減」要求を新たに決議にもりこみました。核兵器廃絶要求が中心にすわっていないという批判をかわす狙いからです。 アメリカをはじめ核兵器国が保有する核兵器の数は未だに膨大で,この削減自体は当然です。しかし,世界は核兵器廃絶を求めているのです。 核兵器の削減要求という核兵器保有国が認める範囲内でお茶をにごすのはあまりにも卑屈です。核兵器保有国に対して核兵器の廃絶を求めない決議では,核廃絶の願いにこたえたとはいえません。 今回の日本の決議は,核兵器保有国にも核兵器廃絶を求めていません。 核兵器保有国が「核兵器廃絶の明確な約束」をした2000年の核不拡散条約(NPT)再検討会議の最終文書を「想起する」といいながら,決議本文で,核兵器保有国に約束通り核兵器廃絶にふみだせといわないのは,重大です。 決議への賛成が最多になっても,核兵器廃絶を決議の中心にすえることを避けたのでは,核兵器廃絶の願いに反することに変わりはありません。 日本の決議には,核兵器全面禁止条約の制定やそのための交渉などの実効的措置についていっさい言及はありません。全面禁止条約に向けた動きが強まるのを押しとどめる狙いがあることを示しています。 それは日本政府が,非同盟諸国が提出した核弾頭とその運搬手段の質的改良,開発,生産,貯蔵の即時停止を核兵器国に求めた「核軍縮」決議やマレーシアなどが提出した「核兵器の威嚇と使用の適法性に関する国際司法裁判所の勧告的意見の追求」決議に棄権したことでも明らかです。 しかも,非同盟諸国案への投票理由は「現実的,段階的であるべき」だといい,マレーシア案では「段階的な進展を達成する措置を固めるべきだ」とケチをつけています。 日本政府の狙いが,核兵器廃絶に向けた実効的措置に反対することにあるのは明白です。 アメリカのオバマ次期大統領も「核兵器のない世界」を追求すると明言しているように,いま核兵器廃絶の流れを一気に加速すべきときです。日本は唯一の被爆国であり,その政府が核兵器廃絶運動の先頭に立つのは当たり前です。核兵器廃絶の流れに背を向けるのは大きな誤りです。 核兵器廃絶をめぐる情勢は大きく変わっています。 一日も早く核兵器をなくしたいという世界と日本の人々の願いにこたえ,核兵器廃絶を中心にすえた外交を進めることがいよいよ重要です。
2008年12月04日
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麻生内閣は2009年度予算の編成で,2006年の「骨太方針」に基づく歳出削減路線の実質「凍結」に追い込まれました。2006年「骨太」は社会保障を標的に歳出を削減し,足りなければ消費税増税で賄う「財政再建」策を掲げています。 麻生内閣は不景気に対応した一時的措置だとしています。右往左往しながら,「骨太」の「維持」に固執する姿勢です。 しかし,暮らしと社会保障を犠牲にする「構造改革」が,根本から破たんしていることは誰の目にもはっきりしています。 自民党・公明党連立政権は財界の号令で2002年度予算から社会保障の大規模な抑制を開始し,7年間で1兆6,200億円の予算を削ってきました。小泉内閣が最後に取りまとめた2006年「骨太方針」は,社会保障の自然増を,2011年まで5年にわたって毎年2,200億円も削り続ける“ノルマ”を課しています。 毎年連続で社会保障を後退させた「構造改革」は,医療や介護,生活保護などあらゆる面で深刻な社会問題を引き起こしています。 政治と行政の支えを最も必要とする障害者,失業者,高齢者をはじめ,社会的に弱い立場に置かれた国民が最大の被害者です。 自民党の細田博之幹事長は,「不況が深刻化」しているもとで,「骨太方針」の歳出削減は「いったんひと休み」だと説明しています(12月2日の記者会見)。 矛盾は,アメリカ発の金融危機のはるかに前から噴き出しています。 歴代の厚生労働相が異口同音に,社会保障の抑制は「限界だ」と述べざるを得なかったほどです。単なる景気対策や,いずれ“解凍”する「凍結」ではお話になりません。 国民生活を犠牲にする「骨太方針」は,きれいさっぱり撤回すべきです。 自民党は公共事業を3%削減する方針の凍結も求め,麻生内閣は「弾力的」な財政出動を約束しました。地域経済の悪化,中小・零細建設業者の経営難は極めて深刻です。民間のマンション・住宅市場の冷え込みに加えて,銀行の貸し渋り・貸しはがしが直撃しています。 しかしそれは,自民党・公明党連立政権のバラマキでは解決しません。 小泉内閣以来の公共事業「改革」は,大手ゼネコンに奉仕する高速道路やスーパー中枢港湾など「構造改革」型の大型事業に投資を集中しました。 ばっさり削ったのは中小業者の受注率が高い福祉・教育,生活道路など生活関連の工事です。 麻生内閣の「予算編成の基本方針」は,「改革」を継続し「更なる重点化・効率化を図る」と明記しています。これでは,浪費を重ねて大手業者を潤すだけです。 無駄な大型事業にメスを入れ,公共事業の中身を福祉・生活優先に抜本的に切り替えてこそ,住民に必要な公共事業と中小業者の仕事を確保することができます。貸し渋りを正すには,税金投入で甘やかすのではなく,銀行に対する強力な指導と監督が必要です。 暮らしを犠牲にして財界・大企業に奉仕する財政の数字合わせは土台から崩れています。 社会保障の抑制から拡充へ,軍事費と大企業・大資産家向け減税に切り込めば消費税に頼らずに財源を生み出せます。 根本から破たんしている「構造改革」路線は,根本から転換すべきです。
2008年12月03日
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戦前の日本の侵略を否定する論文を発表して更迭された田母神俊雄前空幕長が免職にもならず,7,000万円ともいわれる退職金を受け取りました。田母神俊雄氏は講演などで対外的な発言を続けています。 ことは田母神俊雄氏個人の問題ではすまされません。 侵略戦争の反省に成り立つ憲法と,侵略をわびた「村山首相談話」(1995年8月)を否定する人物をなぜ航空自衛隊のトップにすえ,懲戒免職にしなかったのか,政府の任免責任が問われている問題です。 妄言の背景と土壌をあいまいにしたまま,幕引きすることは許されません。 麻生太郎首相と浜田靖一防衛相は,日本が侵略国家だったというのは「濡(ぬ)れ衣(ぎぬ)」だという田母神俊雄氏の論文が公になると,内容が「不適切」だという理由で空幕長を更迭しました。 しかし,田母神俊雄氏はそれ以前から自衛隊の内外で同じような発言を重ねており,論文が問題になってからあわてて「不適切」などと言い出すのは,責任をあいまいにするだけです。 懲戒免職しなかったこととあわせ,無責任とのそしりは免れません。 田母神俊雄氏は,空幕長になる前の航空総隊司令官時代から,航空自衛隊幹部学校幹部会が発行する隊内誌『鵬友』で政府方針に反する内容の論文を発表しています。 昨年5月号では,今回の論文と同じ内容を空幕長として発表しています。 『鵬友』について防衛庁(現防衛省)は,「責任をもって見ております」(1992年5月14日参議院内閣委員会,小池清彦教育訓練局長)と説明してきています。一連の論文を知らなかったと,責任を免れることはできません。 田母神俊雄氏は2002年に統合幕僚学校長になるや,「歴史観・国家観」の講義を新設し,侵略戦争を美化する「靖国」派の学者を講師にして「大東亜戦争史観」,「東京裁判史観」などを幹部自衛官に教えたことも問題になっています。 熊谷直・元統合幕僚学校教官は,講師を決めれば防衛省内局の教育担当部局に「必ず通報する」(11月20日付「日経」夕刊)と述べています。 講義の内容や講師の選定を防衛省が黙認してきたとすれば,それこそ重大です。 しかも田母神俊雄氏は,自らの論文が問題になり更迭されると,2人の元首相の名前をあげて,「私の考えは理解されている」と述べました。 1人は森喜朗元首相です。元首相が田母神前空幕長の後ろ盾になっていたとすれば,放置するわけにはいきません。田母神俊雄氏の「濡れ衣」論文発表を許した土壌にこそ,問題の根源があります。 再発防止というなら政府・防衛省の責任を徹底解明すべきです。 田母神俊雄氏は,問題になった論文でも空幕長を辞めてからの講演やインタビューでも,集団的自衛権の行使や核兵器を含む攻撃的兵器の保有を公言し,自らの発言はそのための制約を取り払うためだったと主張しています。 政府や防衛省が田母神俊雄氏の発言が問題だというが,こうした田母神俊雄氏の発言の狙いについてはどうなのか。 きちんと態度を表明しなければ,結局,田母神俊雄氏の発言を,政府の方針にそったものだったと認めることになります。自衛隊制服組の「暴走」を許さないためにも,軍事同盟強化と海外派兵拡大の政策をやめることが重要です。
2008年12月02日
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2013年以降の地球温暖化対策の新たな国際協定について協議する国連気候変動枠組み条約第14回締約国会議(COP14)が現地時間12月1日午前(日本時間同日夜),ポーランド西部のポズナニで開幕しました。 会期末の11日,12日両日に閣僚級会合を開き,来年12月のCOP15(デンマーク・コペンハーゲン)での新協定採択に向けた国際交渉のたたき台をまとめます。 現地からの報道によれば,デブア枠組み条約事務局長は11月30日に記者会見し,ポズナニ会議で明確にすべき課題として(1)各国の温室効果ガス削減の公約の規模,(2)先進国が約束する途上国の削減努力への資金援助の規模,(3)どんな機関が資金運用するか,を提起。 オバマ次期米大統領が内外で指導性を発揮するよう期待するとともに,現在のアメリカ発金融危機のため温暖化対策が後回しにされる危険性を警告。 温暖化対策強化で経済成長を図る「緑の成長」を訴えました。 2012年までの京都議定書第1約束期間後の新協定をめぐる交渉は,昨年末のインドネシア・バリ島でのCOP13で開始。ポズナニ会議が中間点です。しかし,7月の北海道・洞爺湖サミットを含め,過去1年間で交渉に実質的進展はありません。 一方で,『議定書の温室効果ガス削減目標達成のめどがドイツ(1990年比で2007年に22.4%削減)など一連の国で立ちつつある』,『イギリスが世界初の温暖化防止の国内法を成立させるなど各国の対策が具体化している』などの成果が出ています。 これまで交渉の妨害者だったアメリカにも変化の可能性が出るなか,依然としてガス排出量を増大させている日本の対応がいまこそ問われています。
2008年12月01日
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麻生太郎内閣は,追加経済対策(10月30日発表)に「妊婦健診の無料化(14回分)」を盛り込みました。妊婦が費用の心配をせずに,必要な健診を受けられるよう,国庫補助制度を新たにつくって公費負担を増やすとしています。 妊婦健診は母体と胎児の健康を守るために大切なものですが,1回5,000円-10,000円程度の窓口負担がかかります。 今回の政府方針は,国民の切実な要求を反映したものです。 ただ,政府は全国すべての市区町村で14回分が無料になるかのようにいっていますが,公費負担の仕組みはそれを十分保障するものになっていません。 政府の対策は,14回のうち,9回分の2分の1を国庫補助するというものです。残りの5回については,地方交付税を財源に,自治体が独自の判断で実施回数を決める現在の仕組みが維持されます。(下図) 地方交付税は使い道にしばりがないうえ,全体として減らされてきました。 このため,自治体の財政状況が厳しければ,5回分すべてを無料化できない場合もあります。全国的には平均5.5回分が無料化されていますが,1回-4回しか無料化できていない自治体も,全国1,800自治体のうち172(9.6%)残されています。(4月時点,厚生労働省調べ) この自治体間格差を解決しないまま,9回分の国庫補助を上乗せしても,14回分を無料化できない自治体も残る恐れがあります。 9回分しか国庫補助を行わない理由について,厚生労働省の担当者は「現行の仕組みを緊急に組み替えるのは難しい。財源の問題もある」と説明。「5回分は各自治体で努力していただきたい」と述べるのみです。 また,国庫補助は当面2010年度まで。 それ以降については「今後の実施状況をみて検討」(厚生労働省)としており,現時点では「時限措置」の域を出ていません。 舛添要一厚生労働相は今回の対策について,「お金がなくても妊娠,出産は国が面倒を見るということをはっきり打ち出した」(10月11日の記者会見)といっています。 それを確実に保障するなら,自治体によって格差が生じないよう財政措置を講じるとともに,国の責任による恒久的な無料化制度の創設に踏み出すべきです。
2008年11月30日
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政府・与党が追加経済対策(10月30日発表)に盛り込んだ介護労働者の給与「月2万円アップ」の実現を不安視する声が広がっています。 「2万円上がるといわれていますが,本当に働く者のところまで届くのですか?」 11月28日に開かれた厚生労働省の介護給付費分科会で,全国老人福祉施設協議会副会長の中田清委員が,多数寄せられているというメールの一部を紹介しました。 同氏は,北海道のある介護福祉士養成校が「賃金2万円アップ」を売り物にした募集パンフを配布しているとも指摘。 「期待があふれていることは間違いない。しかしこの分科会では,介護職員全体の処遇を一定の割合で底上げするという議論はみえてこない」と,「2万円アップ」への期待が先行することに懸念を表明しました。 座長の大森彌東京大学名誉教授も「大混乱になるのではないかと憂慮している」と同調しました。 というのも,「2万円」は全介護労働者にゆきわたる裏づけのないものだからです。 厚生労働省は「単純計算すれば」として次の根拠を示しています。 約80万人(非常勤職員を常勤に換算した場合)の介護労働者の給与を月2万円上げる費用は年に1,920億円。介護報酬の3%引き上げは2,000億円程度に相当するので足りる,というものです。 他方で同省は,「事業所と職員の条件はさまざまだ。給与が一律に一定金額上がるわけではない」と予防線を張っています。 現在,多くの介護事業所の経営は危機に追い込まれています。 過去2度の改定で報酬は計4.7%も引き下げられ,2005年からの制度改悪でサービス利用も抑制されたためです。3%の報酬増分をすべて給与アップに回す余裕のある事業所は多くありません。 日本医師会は,「経営状況が健全で確固たるものにならない限り,介護サービス従事者を取り巻く諸問題が根本的に解決されるものでは決してない」と指摘しています。 全日本民主医療機関連合会(民医連)は「3%程度の引き上げでは介護保険スタート時の水準にすら遠く届かない」として,5%以上の報酬引き上げを求めています。 経営の安定と労働者の処遇改善を同時に行えるだけの財政的な手当てが求められているのです。 しかしながら,政府は少なくとも「2万円アップ」を公に打ち出したのならば,言い訳に奔走するのではなく,責任をもってふさわしい手だてを講じるべきです。
2008年11月29日
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沖縄県議会9月定例会が11月28日に開会し,アメリカ軍鳥島・久米島両射爆撃場とアメリカ軍訓練区域(ホテル・ホテル訓練区域)の一部返還を求める決議・意見書が全会一致で可決されました。 県漁業協同組合連合会など漁業者からの強い要求を受け,野党県議が9月定例会代表質問で返還を強く求めていました。 これに対し,仲井真弘多知事は同返還を「日米両政府に強く求めていきたい」と議会の場で初めて表明していました。 決議・意見書は,鳥島がアメリカ軍による長年の実弾射撃の結果,原形をとどめないほど破壊され,劣化ウラン弾による環境影響も懸念されると指摘しています。 また,カツオ,マグロ,ソデイカ,モズク養殖などの好漁場となっている本島周辺海域・沿岸域に行くのに,訓練水域のために迂回を余儀なくされるなど,近年の燃油価格高騰のあおりで漁業者の経営は厳しい環境下にあるとして,漁業者の好漁場の確保と安全・安定的な操業を図るために返還を強く求めています。 決議はアメリカ軍と日本政府によって戦後一貫して奪われた,沖縄の豊かな海を漁民に取り戻す沖縄県民の総意です。 在日米軍基地面積の約70%が集中する沖縄本島。海,空も例外ではありません。 政府がアメリカ軍に提供している訓練水域は全国で49ヶ所,そのうち沖縄は29ヶ所です。その多くが実弾射撃なども伴う訓練空域と一体です。 「見えないアメリカ軍基地」で豊かな漁場が奪われているのです。 訓練水域では「アメリカ軍が訓練していないときは操業可能」と政府は言います。しかし訓練はほぼ連日行われており,操業は事実上できないのが実態です。 一部返還を求めている「ホテル・ホテル」水域は沖縄本島に近く,周辺には漁協が浮漁礁(パヤオ)を設置するマグロやソデイカなどの漁場です。 訓練水域外での操業中にアメリカ軍ヘリが漁民の頭上を旋回して妨害したり,周辺海域にアメリカ軍機が墜落するなどの事件・事故も後を絶ちません。 今年4月にはアメリカ海兵隊のハリアー戦闘機が同射爆撃場近くの海域に250キロ爆弾2発を誤投下。場所は訓練水域から5.5キロも離れていました。一歩間違えれば大惨事です。 漁場を奪われるばかりか,訓練水域を回避して別の漁場に遠回りするたびにかさむ燃料代の負担も深刻です。 政府のアメリカ軍関係補償金も減額の一途です。 「減る補償,増える危険,遠のく漁場。漁師らの三重苦」(「琉球新報」11月26日付)は限界を超えています。 元漁協組合長が訴える「本当は全訓練水域を返還してほしい」は,全漁民の願いです。 決議の可決を可能にした背景に県議選での与野党逆転という県政の様変わりがありました。野党議員が漁民の願いを独自の政府交渉の場や県議会でとりあげ,決議実現に尽くしました。 「一部返還」,「鳥島返還」は最低限の要求です。 日本政府は今こそ,県議会決議の重みを正面から受け止め,「現時点でアメリカ側に返還を求めることは難しい」(中曽根弘文外相)などのアメリカいいなりをやめ,ただちに返還のための対米交渉を具体化すべきです。
2008年11月28日
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「小泉首相が靖国神社への連続参拝を強行し,続く安倍晋三内閣は『戦後レジーム』からの脱却を掲げた。自民党内でも歴史認識問題を中心に“民族派”が台頭した。直接の引き金とはいえないが,こういう事情が背景にあることは間違いない」 自民党幹部の1人は,田母神俊雄・前航空幕僚長の侵略戦争美化「論文」についてこう述べました。 「民族派」とは,日本の侵略戦争を正当化し,首相の靖国神社参拝を声高にとなえてきた日本会議国会議員懇談会のメンバーらをさしています。 田母神俊雄氏が航空幕僚長に任命されたのは2007年3月。 任命したのは「戦後レジームからの脱却」を掲げ,任期中の改憲を目標とした安倍晋三内閣でした。 田母神俊雄氏と安倍晋三元首相は懸賞論文を主催したアパグループの元谷外志雄代表を介してつながっています。元谷外志雄氏は安倍晋三元首相の支援組織「安晋会」の副会長でした。安倍元首相と元谷アパグループ代表(雑誌『アップルタウン』から) 「日本は神の国」発言をした森喜朗元首相も元谷氏と同郷で親密な間柄。後に断ったものの,懸賞論文受賞パーティー(12月8日に開催予定)の発起人代表をいったんは引き受けていました。 閣僚経験のあるベテラン議員は,事態の深刻さについてこう述べます。 「『自虐史観』などということをいう政治家が増えたし,国民の間にもそういう空気が広がっている。その中で,航空自衛隊の長が公然と政治介入し,政治を批判した。一歩間違えればクーデターだ。海外活動を本来任務とする実力組織のトップがあのような歴史認識を示すのは,アジア諸国との関係から見ても重大だ。私自身も『左』のイデオロギーには厳しかったが,『右』には甘かった。これは反省している」 前出の自民党幹部は言います。 「その後の自民党内での議論で,『シビリアンコントロールの観点からは問題だが,(論文の)中身はもっともだ』という意見が多いのも事実。同じような問題が再び起こるかもしれない」 田母神俊雄氏とともにアパグループの懸賞論文に応募した自衛官は約100人。 田母神俊雄氏は統合幕僚学校長だった時代に,「歴史観・国家観」の講義を新設し,「現憲法及び教育基本法の問題点」,「大東亜戦争史観」などを“教育”。 「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーらを講師に招いていました。 さらに自衛隊の幹部養成機関である防衛大学校の教科書『防衛学入門』では,明治以降の日本の侵略戦争をすべて「自衛が基本」という立場で記述していることも明らかになっています。 元政府高官の1人は指摘します。 「ああいう人が制服組の主流となって育っていく教育体制,ここは重要なポイントだ。近代史の基礎知識について,少なくとも政府見解とまったく異なるものが教育されている事実があるとすれば,政府の一組織として大問題だ」 田母神俊雄氏は右派月刊誌『WiLL』2009年1月号に発表した最新の「手記」で,防衛大学校時代「どちらかというとノンポリの学生だった」としつつ「だが自衛隊の教育が私を変えてくれた」とふりかえっています。 麻生太郎内閣が田母神俊雄氏を即日更迭せざるを得なかったのは,「靖国」派の主張を追いつめてきた戦後政治の到達点です。 さすがに自民党国防族の中でも公然と擁護する声はほとんどありません。 「核武装論とか集団的自衛権の行使とかいうのは,政府・自民党の見解とも食い違う。集団的自衛権行使は,安倍(元首相)が進めようとして福田(前首相)が止めた。この経緯もよく踏まえる必要がある。アメリカに頼った自衛は無責任だという議論が昔からあることは承知しているが,『自分の国を自分で守る体制を整える』という主張は,日米同盟の考え方とは異なる」(国防部会のメンバー) 自民党が絶対視する日米同盟堅持の立場から,田母神俊雄氏の“自主国防”論的な主張に困惑を隠せないでいるのです。 日本会議国会議員懇談会のメンバーでさえ,こう疑問を表明します。 「海上自衛隊のインド洋派遣延長の論議が衆議院から参議院に移行する時期に混乱を生じさせることは適切か。日本にとって一番危険な問題がある。私は『右』で,歴史問題で言いたいことはある。しかし,今の日本の現実政治と国家の安全保障を考えたら,日米安保,アメリカを大事にしなければならない。矛盾があればアメリカが優先する」 同氏は,「最近,右翼の中に極右,反米の右翼も出てきて困る」と述べ,田母神俊雄氏の「日米開戦はアメリカの陰謀だ」,「自立した防衛を」という主張に懸念を表明しました。 ただ,元防衛庁長官の1人は,不気味な“予言”をします。 「アメリカの金融危機と経済混乱から,アメリカが世界の警察官としての役割を果たせなくなり,そのヘゲモニー(支配的影響力)が後退して,太平洋にも力の空白が生じてくる可能性がある。田母神氏の発言は更迭に値するが,それとは別にこの問題は考えておかねばならない」 安保問題を担当する民主党の衆議院議員も,「アメリカ一極支配秩序の崩壊」の現実を直視せよとして「いつまでも『アメリカ頼み』では,我が国の国民の生命も財産も守れない」と述べています。 軍事力による覇権の維持に固執する限り,政界の中からも田母神俊雄氏の主張に同調する流れが出る危険があることを示しています。 国民としては,政治家がきちんと「文民統制」できているのか監視する必要があり,それを怠ると近々日本でも「軍事クーデター」という最悪な結果を招く可能性すらあることが分かります。
2008年11月27日
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財政制度等審議会(財務相の諮問機関,西室泰三会長)が11月26日,「2009年度予算編成に関する建議」(意見書)を取りまとめ,中川昭一財務相に提出しました。 社会保障関係費の伸びを毎年2,200億円抑制するとした「骨太の方針2006」の基本姿勢は維持し,「引き続き大胆な財政構造改革に取り組む」としました。 同建議は,麻生太郎内閣が検討している消費税増税を含む「中期プログラム」が「極めて重要である」と強調。中期プログラムの内容が「絵に描いた餅にならないよう,政府・与党においてはしっかりした担保が求められる」と消費税増税の具体化を促しました。 一方,社会保障については「給付と負担の普段の見直しを制度全般にわたり進めていくことが急務である」として,医療・介護のサービスコストの抑制や生活保護の生活扶助基準等の見直しに言及。 社会保障の安定財源確保を繰り返し強調しました。 雇用保険の国庫負担については「廃止を含め抜本的な改革を行うべきである」としました。 同建議は,国際金融情勢は「『100年に1度』とも言われる大混乱」に陥り,日本経済は「景気の下降局面が長期化・深刻化する」恐れが高まっているとの認識を示しました。しかし,建議が打ち出した方策は,国民の将来不安を広げ,いっそうの景気悪化を招くものばかりです。 景気悪化のもとで,2009年度予算編成に求められるものは,何よりも国民の暮らしを支える対策です。 財政制度等審議会(財政審)は11月26日,「来年度予算の編成に関する建議」の中で,「景気の下降局面が長期化・深刻化するおそれが高まっている」,「国民の将来不安は広がりを見せている」として,きめ細かい配慮が必要だとの認識を示しました。 ところが,示された方針は,その認識に逆行することばかりです。 歳出「改革」のメニューに並ぶのは,医療・介護のサービスコストの抑制や雇用保険の国庫負担の廃止,教員定数の削減など。その上,社会保障の安定財源確保を口実に想定されているのは消費税増税です。 これでは,国民の将来不安が増すだけです。 小泉内閣以来,自民党・公明党連立政治が削減してきた社会保障予算は1兆6,200億円に達しています。年金,医療,介護の改悪が,国民の命と暮らしを脅かしています。 将来不安を解消するというなら,自民党・公明党連立政治によって削減された1兆6,200億円を復活させ,社会保障制度を拡充させるべきです。 アメリカとともに新自由主義の旗振り役だったイギリスですら,景気悪化の打開策として,消費税率引き下げを打ち出しました。日本でも,せめて食料品にかかる消費税を非課税にすることで家計を応援すべきです。 国民の将来不安を取り除き,暮らしを支えてこそ本当の意味で景気悪化を打開することができます。
2008年11月26日
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文部科学省が全国いっせいにおこなった学力テストの結果を,市町村や学校単位で公表するかどうかが全国各地で大きな問題になっていますが,その発端をつくった大阪府で,結果公表を機に,学力テストの順位をあげるための異常な施策が進んでいます。 大阪府の橋下徹知事はこの10月,全国ではじめて学力テストの市町村別のデータ開示に踏み切りました。きっかけは大阪府の平均点が2年連続で全国平均を下回ったことでした。 橋下徹知事は「このざまは何だ」と教育委員会に罵声をあびせ,9月には「教育非常事態宣言」をだし,学校教育へ介入する姿勢をあらわにしました。 「目的のためには手段を選ぶな」,「プロなら言い訳をするな,結果をだせ」と講師が檄をとばし,下を向く校長や管理職たち。 11月6日に開かれた大阪府教育委員会の研修会での1コマです。 橋下徹知事のとった施策のひとつが,国も競争を煽るとの理由で禁じていた学力テストの市町村別の結果公表です。 橋下徹知事は「非公表なら予算をつけぬ」と市町村教育委員会を脅かし,結果公表を迫りました。その一方で,「予算の裏付けのために」といって府教委にテスト結果を提出させ,一部の市町村をのぞいて勝手に公表してしまったのです。 これには塩谷立文部科学大臣も「全くのルール違反」といわざるをえませんでした(11月19日衆議院文部科学委員会)。 市町村別や学校別の結果公表は,全国の90%以上の教育委員会も反対しています(文部科学省調査)。公表すべきではありません。 橋下徹知事は大阪府教育委員会とともに「大阪の教育力向上に向けた緊急対策」を発表しました。 その中身は,「基礎基本を徹底するとともに『PISA型学力』で日本一をめざす」とし,「百マス計算」や「反復練習」を強調,携帯ゲーム機を2,000万円かけて購入し学校教育で使うというのです。 多様でなければならない教育現場に,行政が特定の教育方法,特定の商品をおしつけるものです。 来年2月には,4月実施の全国テストに向けた模擬テストを計画しています。「過去問」を繰り返しやらせようというのです。 市町村等への予算配分に格差をつけようとしていることも重大です。 大阪府は「学力向上」と称して30億円の基金を設け,50校を重点指定するとともに,自治体の取り組みを査定し,それに応じた「交付金」を支給するといいます。 今後の施策の素案には,5ヶ年で全国学力テストの「全国平均を上回る」,「『無回答率』ゼロの実現をめざす」と数値目標まで盛り込まれています。 塩谷立文部科学相も文部科学委員会で「(全国学テの)趣旨,目的としているところに反するところがある」と認めざるをえませんでした。 大阪府のような点数競争は,程度の差こそあれ,全国各地でおきています。 これまで指摘してきたように全国学力テストを行えば,順位を競い,テストの点数を上げるための競争の教育に拍車がかかることは必然です。過度の競争は,子どもたちから,じっくり考え,学ぶ楽しみを奪います。 全国いっせい学力テストは廃止以外に道はありません。
2008年11月25日
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沖縄県の漁業関係者から沖縄周辺のアメリカ軍訓練水域の指定解除・返還を求める声が噴出しています。 仲井真弘多沖縄県知事が初めて,県漁業協同組合連合会の代表らとともに外務・防衛両相と駐アメリカ国大使に,鳥島・久米島両射爆撃場の返還と「ホテル・ホテル」訓練水域の一部指定解除を求めたのも,漁民に押されてのことです。 好漁場をアメリカ軍に奪われているうえに,燃油高騰で漁業経営は深刻です。漁民が訓練水域を返せと要求するのは当然です。 政府がアメリカ軍に提供している訓練水域は全国で49ヶ所,そのうち沖縄は29ヶ所です。その多くが実弾射撃などを伴う訓練空域と一体です。陸も海も空も自由に使えないのがいまも変わることのない沖縄の実態です。 広大なアメリカ軍訓練水域は漁業振興の障害です。沖縄本島から比較的近いホテル・ホテル訓練水域は約20,000平方キロメートルですが,漁民は完全に排除されています。 価格の高いマグロやソデイカがいるのに,漁民は操業できません。 政府は,訓練水域はアメリカ軍が訓練しないときには操業可能などといいますが,毎日午前6時から午後8時までアメリカ軍が使用すると決められています。操業など不可能です。 訓練水域内への立ち入りを禁止されているため,漁民が利益をあげるには遠方の漁場にいくしかありません。 しかし,訓練水域内を通れないため数百キロメートル単位で遠回りさせられ,燃油代が余計にかかります。 燃油高騰による負担が追い打ちをかけています。 許せないのは,漁民がこれだけ苦しんでいるというのに痛みをわかろうともせず,訓練水域の返還を問題にもしない日本政府の態度です。 中曽根弘文外務相は「現時点で米側に返還を求めることは難しい」と県漁連らの要請を一蹴しました(11月11日)。日本政府がアメリカ軍基地による県民の痛みを「軽減する」というのなら,こんな冷たい態度をとるべきではありません。 鳥島・久米島の水域など領海内にある漁場をアメリカ軍に提供し,漁場を奪うのは主権国家のやることではありません。 公海を日本政府が勝手にアメリカ軍の訓練水域に指定し,漁民を閉め出しているのも,国際法を無視した異常なやり方です。 日本も批准している国連海洋法条約は,「公海の自由」を明記し,操業などの自由を保障しています。政府が「アメリカ軍が使用を許されている水域」といって,漁民を閉め出し,操業させないのは,海洋法条約に照らしても許されません。 国連海洋法条約は公海でも200カイリ内の漁業は沿岸国の権利と認めています。アメリカ軍のためにその権利を放棄する日本政府の異常な態度は到底認められません。 政府は,アメリカ軍駐留が「日本防衛」のためだといって,基地の痛みを国民に押し付けてきました。 しかし,在日米軍の任務が「日本防衛」でないことは,実態をみただけでも明らかです。海軍,空軍,海兵隊はどれも海外の紛争介入を任務とした“殴り込み部隊”です。 アメリカ軍に訓練水域を提供し続ける理由はどこにもありません。 日本政府はアメリカいいなりをやめて,訓練水域返還のための対米交渉にふみきるべきです。
2008年11月24日
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年老いた夫婦や親子で支えあう「老老介護」,認知症になっても頼れる人がいない「認認介護」,肉親の介護のため,仕事もやめ,結婚も諦めざるをえない人も少なくない…家族介護の深刻さは身につまされるものがあります。 一人暮らしなどで介護してくれる人がいない高齢者も増えています。 そうした人に少しでも支援の手を差し伸べることを宣伝文句にした介護保険など公的介護の制度が,利用者・高齢者への利用サービスの抑制と,介護事業者の経営難・人材流出で,いま“二重の危機”に直面しています。 全国の医療関係者でつくる全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)はこのほど,介護保険の利用実態と制度改善の課題について,全国各地の医療・介護事業所での事例調査の報告をまとめました。 「介護保険料を納めているが,利用料負担ができず,必要な介護サービスが使えない」,「介護していた娘が病気になり(母親の)入所施設を探すが,適当な施設が見つからない」「介護認定の更新で,要介護度が引き下げられた」…報告書には,728例もの深刻な実態が満載されています。 介護保険利用者の多くは,重症化や介護する人の病気などやむにやまれぬ事情で,施設や自宅での介護サービスを求めています。ところが現在の制度は,その願いに応えきれていません。 まさに「保険あって介護なし」です。 介護保険は2000年からスタートしました。40歳になれば介護保険に加入し,加齢による病気や65歳以上の高齢者で介護が必要になれば,その程度に応じ,一定の負担でサービスが受けられるというものです。 当初から問題は指摘されていましたが,いっそう使いにくくなったのは,2006年から全面実施された,自民・公明ばかりか民主党までが賛成した制度改悪のためです。 もともと不足していた介護施設は食費・居住費の全額自己負担で負担が急増しました。軽度と認定された人から訪問介護や通所介護が取り上げられました。 介護予防や保健福祉の事業が介護保険に吸収されましたが,公的な責任と財政負担は後退し各地の介護予防事業は閑古鳥が泣く状態です。 介護の総費用を抑えるため介護事業者への報酬が削減されたため,経営が悪化し労働条件は劣悪になり深刻な人材不足が広がっています。 いまや介護保険制度は,国民的な存在意義という点でも,制度を支える人材という点でも,土台が揺らぐ深刻な事態です。 介護を必要としているすべての人の人間らしい生活を支える介護サービスを実現し,介護を受ける人も,支える人も,安心できるようにすることは,一刻を争う課題です。 来年4月からの介護報酬の3年ごとの見直しに向け,いま国でも地方でも検討が進んでいます。厚生労働省も「安心と希望の介護ビジョン」検討会などで検討してきました。 しかし,国が地方任せ,民間任せの態度を改め,公的責任をしっかり果たさなければ「安心」も「希望」も実現しません。 政府には,国庫負担を増やし保険料・利用料を引き下げる,自治体への給付適正化事業を改める,介護報酬を大幅に引き上げるなどを,強く要求します。
2008年11月23日
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地球温暖化対策を話し合う国連の会議(COP14)が12月1日からポーランドのポズナニで開かれます。2012年に終了する京都議定書第1約束期間に続く対策の枠組みづくりが,ゴールとなる来年末のCOP15に向けて本格的に行われます。 この間相次いで発表された統計は,日本が京都議定書の目標からますます遠ざかり,世界の流れに逆行していることを裏付けています。 世界が直面する待ったなしの課題で国際責任を果たそうとしない政府の姿勢を,一刻も早く正さなければなりません。 京都議定書で,日本は2012年までに温室効果ガスの排出量を1990年水準から6%削減するよう義務付けられています。しかし,環境省が発表した2007年度の排出量(速報値)は過去最悪で,1990年度比で8.7%も増えました。 政府は排出量の80%を占める産業界での削減について,もっぱら財界の“自主努力”に任せてきました。日本経団連の「自主計画」は排出量を「1990年度レベル以下に抑制するよう努力する」という全く不十分なものです。 2007年度の「自主計画」実績では,発電所や工場など産業・エネルギー転換部門(34業種)の排出量は1990年度比1.3%増加しました。 財界の“自主努力”に任せていては不十分な自主目標の達成すらおぼつかないことを示しています。排出量増加の最大の要因は原子力発電頼みの電源政策にあります。 2007年の排出量増加分の88%を発電が占めています。災害や事故で原発の稼働率が低下し,石炭による火力発電に依存せざるをえなかったためです。エネルギー政策を抜本的に改め,自然エネルギーの普及を本格的に進めることが迫られています。 国連気候変動枠組み条約事務局の発表によれば,工業国40ヶ国の2006年の排出量は1990年比で4.7%減少しました。日本が5.3%,アメリカが14.4%も増やした一方で,ドイツは18.2%,イギリス15.1%,フランス3.5%と減らしたことが注目されます。 これらの国では,政府が野心的な目標を定め,産業界と実効性のある削減の協定を結び,排出量取引や環境税などの制度を整備し,自然エネルギー普及などの手立てをとっていることが削減の成果につながっています。 政府は京都議定書に続く協定への中期目標をいまなお示さないでいます。アメリカが新協定に参加しないなら日本も不参加との方針さえとっていました。 交渉は様変わりしそうです。 京都議定書を離脱し削減に抵抗してきたアメリカで,オバマ次期大統領が「温暖化対策で指導力を発揮する」と表明し,「2020年までに1990年水準に引き下げる」との中期目標と,「2050年までにさらに80%削減する」との長期目標を示したからです。 「厳しい年次目標を設定する」とし,エネルギー政策の転換や一国レベルでの排出量の上限を定めた排出量取引制度を設立する方針も示しています。 日本も国際的な枠組みづくりとその実行に貢献すべきことは言うまでもありません。そのためにも,今こそ京都議定書の責任を果たす抜本対策をとることです。
2008年11月22日
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政府は景気に「下押し圧力」が高まっていると判断を下方修正しました。 下方修正は2ヶ月連続です。与謝野馨経済財政担当相が11月21日,関係閣僚会議に提出した11月の月例経済報告で景気判断を示しました。 同報告は基調判断について,前月の「景気は,弱まっている」という表現に加え,「さらに,世界経済が一段と減速するなかで,下押し圧力が急速に高まっている」としました。 個別項目では,輸出について前月の「緩やかに減少」から「減少」に下方修正。企業収益は「減少」,雇用情勢は「悪化しつつある」,個人消費は「おおむね横ばい」だが「足下で弱い動きも」に,それぞれ据え置きました。 世界経済は「欧米の景気は後退しており,アジアでも減速の動きがみられる」に修正。前月の日米に続いて欧州の景気後退を指摘し,世界同時不況への警戒を強めました。 先行きについては,「原油価格等の下落による一定の効果」に期待しつつも,世界的な金融危機の深刻化,世界景気の一層の下振れ懸念,株式・為替市場の大幅な変動をリスク要因として列挙。 「雇用情勢などを含め,景気の状況がさらに厳しいもの」となりかねないとしています。「雇用情勢」の一段の悪化を,先行きの留意点として新たに加えたのが特徴です。 アメリカ発の金融危機による世界的な景気悪化を理由に,自動車,電機など輸出大企業を中心に「派遣切り」などの大リストラが計画されています。 「カジノ資本主義」の破たんのツケを雇用などにシワ寄せさるべきではありません。外需・輸出頼みから内需主導へ経済政策を転換させることが政府に求められています。 企業の利益の内部留保十分にある中で,派遣社員や期間工の切捨ては待ったなしの政治の課題です。
2008年11月21日
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世界的な金融危機に対処するための緊急金融サミット,G20会議(20ヶ国・地域首脳会議)が11月14日,11月15日に開かれました。 昨年夏に「アメリカ国発の金融危機」が勃発して以来,主要国は,破たんした金融機関への救済や信用収縮する資本市場への資金提供に追われてきました。 新興国を含めて,金融のあり方を議論する国際会議が開かれたことは,極めて歴史的意義のあることです。 今回のG20会議の,邦訳で10,000字近い宣言を子細に読むと,投機的な金融活動への規制強化の方向は明確に打ち出されていますが,実効性のある具体策は,来年4月までに開く次回会議まで先送りされています。 世界は,国際的な金融改革の扉を開いたが,まだ乗り越えなければならない困難な課題があるという感じがします。 国際的な金融改革の方向を検討する際には少なくとも次の4つの視点が必要だと思われます。(1)破たんした金融機関の救済や信用収縮の犠牲を,各国の勤労国民や新興国に一方的に押し付けないこと。(2)アメリカ主導の「新自由主義」金融政策の路線を,きっぱり転換すること。とりわけアメリカ自体が,その立場に立つこと。(3)「基軸通貨ドル」体制の見直しへむけて,国際的経常収支不均衡の是正をすすめること。(4)大国主導のIMFなどの金融制度・国際機構の改革を,新興国の意向を重視して促進すること。 こうした視点から,金融サミットへいたる欧米日の対応を振り返って見ますと,今回の会議の開催にもっとも積極的だったのは,EU(欧州連合)でした。 EUは,事前に加盟国の首脳会議を開き,意見を調整したうえで,すべての金融分野の規制や監督を強化することなどの5原則をまとめ,新興国と連携して,抜本的金融改革をアメリカに強く求める立場を明確にしていました。 これに対し,ブッシュ大統領は11月13日にニューヨークで演説し,金融危機の原因は「途上国から先進国への資本流入が金融機関のずさんな融資を拡大」したことにある,などと強調し,「アメリカの規制緩和が原因」という見方を強く否定しました。 そして,資本主義の繁栄は「自由な市場」にこそあり,「過度な規制強化」に反対する立場を示しました。 日本の麻生太郎首相は,会議で「危機の克服」と題する提案を発表しました。 そのなかでは,「金融危機の発生」は,「新たな金融商品の出現やグローバル化に,各国政府による監督・規制が追い付いていけなかった」からだとしながら,こう強調していました。(注1) 「自由な市場原理に基づく競争,資本フローが,今後とも成長の基礎であり続けることは言うまでもない」。 「米国の経済力が低下し,世界最大の債務国となった現在,果たしてドル基軸通貨体制は今後とも安定的に持続するのか,という声がある。しかし,我々としては,現在の国際経済・金融システムが依拠している,ドル基軸体制を支える努力を払うべき(である)」。 これはアメリカの主張にすりよる姿勢-旧態然たる対米追随路線です。 G20会議の結果は金融規制にたいするアメリカの消極姿勢は完全に孤立する形となり,規制強化の方向が打ち出されました。 今回のG20会議の経過から言えるのは,深刻な金融危機を契機として,世界は21世紀の新たな国際金融秩序の形成をめざす過渡的な時期に入ったということです。 あえて“過渡的”というのは,従来の「新自由主義」的金融・経済政策からの転換をはかるべきアメリカ自体が,まさに政権移行の過渡期にあるからです。 今回の国際会議にあたって注目されたことは,ブッシュ路線を批判して当選したバラク・オバマ次期大統領がどのように関与してくるかということでした。バラク・オバマ氏は直接には登場せず,代理を送るだけにとどまりました。 『変革』の路線がバラク・オバマ新政権の政策と行動にどう具体化されるかに,注目されます。来年1月20日に就任するバラク・オバマ新大統領の「変革」路線がはたしてどのようなものになるのか,まだ明らかではありません。 今年のノーベル経済学賞を受けたクルーグマン・プリンストン大教授は,「様々な指標を見れば,我々が世界的な大不況に突入しつつあるのは明らかだ」(注2)と述べています。 世界的な金融危機の震源地であるアメリカの大不況が深まれば深まるほど,アメリカの「変革」は加速し,本格化していかざるをえないでしょう。 次回のG20会議までに,アメリカがどう変わっていくか,それが当面の最大の焦点です。(注1)首相官邸ホームページより。 なお,麻生太郎首相は,11月14日付の「ウォール・ストリート・ジャーナル」(電子版)に,この提案文書の趣旨を個人論文の形で寄稿している。その論文では,「自由な市場原理を基礎にするべきこと」を,より強調する英文になっています。(注2)「朝日」11月17日付。
2008年11月20日
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国の仕事は外交や防衛に限定し,それ以外の仕事は現在の都道府県を廃止して「道州」と「基礎自治体」に再編する地方に移していこうという「道州制」導入の動きが,政府や自民党,財界などで強まっています。 自民党は来年の通常国会に,「道州制」導入のための基本法案を提出するとしています。 そうした中,日本経団連がこのほど「道州制」導入についての新しい提言を発表し,「道州制」を導入すれば地方公務員の人件費削減や公共投資の効率化で財源が浮くので,その分が道路や港湾の建設など産業基盤の整備に回せるという試算をまとめました。 「道州制」の導入で,福祉や教育など本来国がやらなければならない仕事を地方に押し付けておいて,地方の公務員と予算はさらに減らし,その分を産業基盤のために使おうというのですから,恐れ入った,身勝手な試算です。 日本経団連は,「道州制」導入の効果を具体的に示したといいますが,確かにこれで,財界がなぜ「道州制」導入に熱心なのかがいよいよ分かりやすくなりました。 国と地方のあり方を大転換するとともに,財界・大企業に新たな儲けを提供する「道州制」導入の策動は,直ちにやめるべきです。 もともと,福祉や教育の施策を日本国民なら誰でも受けられるようにすることは,憲法でも定められた国の大切な仕事です。 それを切り離し地方に押し付けようというのは,財界にとって安上がりで,アメリカと一緒になって「戦争する国」になることしか考えない政府をつくろうというものです。 政府・自民党や財界は,「道州制」導入は「新しい『国のかたち』の創造」だとか,「究極の構造改革」だといってきました。 日本経団連が今回の提言で示した試算は,財界が地方に押し付けようとしている国民の暮らしに密着した分野でも,大幅な後退しか考えていないことを浮き彫りにしています。 試算は,「道州制」を導入し,「行財政改革」を進めれば,地方公務員の総人件費は1兆5,130億円,公共投資の効率化と合わせ5兆8,483億円減らせるといいます。 これまで国がやっていた福祉や教育に関連した仕事を地方に押し付けて,どうしてそれほど減らせるのか。 やろうとすれば,制度の大幅な後退は避けられません。 しかもそうして減らした公務員の働き口はどうするのか。 まさかトヨタやキヤノンが雇う保障があるわけでもないでしょう。 試算は,「行財政改革」で浮いた財源をもとに,「道州」が道路や港湾といった産業インフラの整備をおこなえば雇用の創出にもつながるといいますが,結局甘い汁を吸うのは新しい儲け口を手に入れる大企業だけということになりかねません。 日本経団連は,「道州制」導入の効果が国民の目に見えるような形で示されなければ,「その推進力は高まらない」といいます。 しかし,国民のなかで「道州制」導入への支持が広がらないのは,「道州制」が福祉や教育への国の責任を投げ捨てる悪い制度だからで,国民にその責任はありません。 財界の身勝手な「道州制」導入論で国民を惑わすのはやめるべきです。 国民の福祉を守り,「住民が主人公」の地方自治を前進させることこそ,国民は求めています。
2008年11月19日
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宇宙の軍事利用に向けた政府の作業が急ピッチで進んでいます。 宇宙開発戦略本部(本部長=麻生太郎首相)の第2回専門調査会(11月4日開催)は,早期警戒衛星などの開発・保有に向けた「検討を促進していく必要がある」ことを確認しました。 宇宙開発戦略本部は11月末までに宇宙軍事利用計画の骨子をまとめる予定です。 戦争を禁止した憲法も,宇宙開発は「平和利用に限る」とした国会決議もないがしろにした動きを許すわけにはいきません。 政府はいま,情報収集衛星で北朝鮮など諸外国の動向を偵察していますが,さらに多種多様な軍事衛星の開発・保有をめざしています。 専門調査会が検討している「宇宙利用の拡大」とは,本格的な偵察衛星,早期警戒衛星,軍事通信衛星,正確な位置を知るための準天頂衛星などを持つということです。 現在の情報収集衛星よりも精度の高い本格的な偵察衛星を持つのは,海外の戦場で戦いやすくするためです。軍事通信衛星も,同じです。 早期警戒衛星は,アメリカの先制攻撃への反撃として発射される弾道ミサイルを早期に探知し,在日米軍基地とアメリカ本土の防衛につなげるのが役割です。日本のミサイル防衛もアメリカのミサイル防衛と一体です。 結局のところ,日本の軍事衛星保有は,アメリカの戦争への参加・協力態勢を強めることになるだけです。 「専守防衛の範囲内での防衛目的」という言い分はまったく事実に反しています。 「防衛計画の大綱」とそれにもとづく自衛隊法改定で,イラク派兵のような海外での「国際協力活動」を自衛隊の本来任務にしたため,軍事衛星が必要になっているのです。 アメリカは,日本に宇宙の軍事利用に踏み切るように圧力をかけています。 昨年2月,アーミテージ元国務副長官とナイ元国防次官補らがだした2020年に向け日米同盟を強化するとの報告書は,「日本が宇宙空間の利用に関心を持っていることを歓迎」しています。 アメリカの本音を剥き出しにしたものです。 見過ごせないのは,政府が宇宙航空研究開発機構(JAXA)をも軍事利用計画に組み込もうとしていることです。宇宙航空研究開発機構法は,JAXAは「平和の目的に限り」宇宙を開発し利用すると明記しています(第4条)。 宇宙基本法制定で「非軍事から非侵略になった」ので「JAXAのあり方の見直しを検討する」(11月12日の衆議院内閣委員会,河村建夫官房長官の答弁)などという政府の態度は,許されるものではありません。 軍事計画に組み込まれれば,軍事秘密をたてに「自主・民主・公開」の原則を突き崩し,宇宙科学や技術の成果を秘密にする事態にもなりかねません。 宇宙の軍事利用は,日米軍事一体化を狙うアメリカの要求と,「宇宙産業の競争力強化の必要性」だとして大儲けをはかる財界・軍事産業の要求によるものです。 憲法の精神に反し,宇宙の平和を破壊する要求は拒絶するしかありません。 海外の戦争に備え,これ以上の国民の負担を増やすだけの計画はただちにやめるべきです。
2008年11月18日
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政府・与党が追加経済対策(10月30日発表)に盛り込んだ介護政策で,“誇大広告”が次々に明らかになっています。 同対策に盛り込まれた「介護保険料の上昇抑制策」が,限定された対象者向けのごく短期間のものでしかないことが厚生労働省の説明などから分かりました。 追加経済対策では,「介護従事者の処遇改善」などのため,2009年4月から介護報酬を3%引き上げる方針を決定しました。介護保険制度は報酬を引き上げると保険料も上がる仕組みのため,「保険料の急激な上昇を抑制」することも謳いました。 厚生労働省は1,200億円程度の国費を投じる案を示しています。(10月31日) しかし,報酬引き上げによる保険料上昇分全額を国費でみるのは2009年度の1年だけ。 2010年度は国費を半減するため,その分の保険料がアップします。2011年度からは国費がゼロになり,まるまる保険料が引き上げられます。 しかも「被保険者の負担を軽減」といいながら,対象は被保険者全員ではないことが,11月14日の厚生労働省社会保障審議会介護給付費分科会で明らかになりました。 厚生労働省がもれなく対象としているのは65歳以上の第1号被保険者だけ。第2号被保険者(40歳-64歳の医療保険加入者)については,「特に財政の厳しい保険者団体」に限ると説明しました。 対象は第2号被保険者の半数程度になるとしています。 介護保険料全体のうち,第2号被保険者が支払う部分が62%を占めます。その半分が対象から外れるということは,全体の約3分の1が対象外だということです。 10月31日に厚生労働省が公表した資料には,第2号被保険者にも「同様の措置を講じる」と記されていました。同分科会では,「資料は間違いということか」と委員が質問。 厚生労働側は「不正確だった」と認めました。 3%の報酬引き上げで介護労働者の給与が「月2万円アップ」すると「経済対策」に明記した根拠も揺らいでいます。 厚生労働省側は「介護報酬は事業者に支払われる。3%の引き上げで給与が一律一定金額引き上がるとは限らない」と説明し,「2万円アップ」を事実上打ち消しました。 そもそも政府・与党の対策は,介護現場から「3%の報酬引き上げでは焼け石に水だ」と批判が噴出しているものです。 そのうえ実際の内容と異なる過大な宣伝をして国民を欺くのはやめるべきです。
2008年11月17日
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麻生太郎内閣が追加経済対策の“目玉”に位置づけた「定額給付金」の迷走が止まりません。政府・与党内の意見すらまとまらず,配る自治体の側からも「白紙撤回」の声が出るほど。 受け取る側の国民からも総スカンです。 税金を使った“選挙買収”は白紙撤回以外ありません。 「みなさまの疑問にお答えします」。 自民党は11月14日,定額給付金についてこんな文書を発表。所得制限の判断を市町村に委ねた点について,「『自治体に丸投げ』との批判があります」と認めざるを得ませんでした。 同じ日,党役員連絡会では,笹川尭総務会長が同じ点について「おかしい。国がやることだから,地方が迷わないよう,しっかりしてほしい」と注文。 河村建夫官房長官が閣僚に発言を注意するよう要請したにもかかわらず,鳩山邦夫総務相は「基本的には一律支給」と所得制限に反対する姿勢を表明するなど,閣内の乱れはおさまりません。 11月14日の政府税調でも異論が噴出しました。 麻生太郎首相は「(隣の)町長同士で話し合って決めればいい」(11月15日)と相変わらず統治能力欠如の無責任ぶりです。 内閣府試算でもGDP(国内総生産)押し上げ効果はわずか年間0.1%と景気対策としての効果ものぞめません。しかも,実施には,第二次補正予算案だけでなく関連法案(特別会計法改定)が必要で,年度内成立も厳しい日程です。 「無責任」,「いいかげん」,「言語道断」…。 政府・与党が所得制限を設けるかどうかの判断を市町村に「丸投げ」したことに対して,市町村からは批判と当惑の声が相次いでいます。 「混乱や市民間の感情的な対立を引き起こす可能性がある」(上田文雄札幌市長)「このままどんどん進むと国が滅ぶ」(松浦正人山口県防府市長)との声まで出ています。 「支給にかかる事務は非常に煩雑かつ膨大なものになると予想される」 17政令指定都市の市長で構成する指定都市市長会は11月14日,深刻な懸念を示し,政府に対して「制度の根幹部分」を明確にするよう求める意見を提出しました。 所得制限を設けなくても,世帯構成の把握や本人確認,振り込みに加え,窓口に住民が殺到するなど混乱も想定されます。年度末は市町村の繁忙期と重なり,転居者への「二重支給」や「支給漏れ」を防ぐ対策も必要になります。 「毎日」11月15日付の51市区調査では,給付金の支給にかかる期間について,秋田,高知両市が「半年」と回答。2ヶ月以上の期間を示した回答が15市にのぼるなど「年度内にすべての国民に給付金が行き渡るのは絶望的な情勢」としています。 新聞・テレビ各社が今月上旬に行った世論調査では定額給付金について,「評価しない」58.1%(共同通信社),「必要な政策だとは思わない」63%(「朝日」)と回答。 「評価する」「必要だ」は20%-30%台にとどまりました。 景気対策に役立つかとの質問にも「思う」19.8%に対し「思わない」74.4%(NNN世論調査)と圧倒的です。 マスメディアも「支離滅裂な施策はやめよ」(「毎日」11月12日付社説)と主張。地方紙社説は「混乱の種をばらまくのか」(新潟日報11月13日付),「白紙も視野に国会で論議を尽くすべきだ」(愛媛新聞11月13日付)などと批判しています。 国民からもメディアからも総スカン状態です。 「定額給付金の給付をよそおった『振り込め詐欺』や『個人情報の詐取』にご注意ください」。総務省ホームページで「重要なお知らせ」として,こんな注意を載せています。 現金支給となる場合は,盗難やひったくりが懸念されます。 実施前から,犯罪や混乱を予想しなければならない制度とは一体なんなのか,問われています。
2008年11月16日
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与党に続いて政府の税制調査会が11月14日,議論を再開しました。麻生太郎首相が表明した消費税増税を含む「中期プログラム」を年内に取りまとめます。 麻生太郎首相は10月30日の記者会見で,「経済状況を見た上で,3年後に消費税の引き上げをお願いしたい」と表明しました。 最近の記者会見では「経済情勢が2年でうまくいったら,その時に(法案を)出す」と,2年後にも消費税増税の法案を国会に提出する考えを明らかにしています。 政府・与党の消費税増税の最大の口実は「社会保障の財源」です。 麻生太郎首相は繰り返し述べています。 「中福祉でありながら,低負担を続けることはできない」 社会保障国民会議の座長をしている吉川洋・東京大学大学院教授は,「『中福祉・中負担』の立場からすると現在は,やはり負担が足りない」と指摘しています。 政府・与党の認識は,現在の日本の社会保障と負担の姿は「中福祉・低負担」,つまり社会保障はある程度充実しているのに,国民の負担は少ないということです。 消費税増税で「中福祉・中負担」に持っていく政府・与党の方針は,社会保障の水準は上げないが国民の負担だけは大幅に増やすという宣言にほかなりません。 これは,現在の日本の社会保障の水準から見ると,許しがたい暴挙です。日本の社会保障が,先進国の中でも低い水準であることはOECD(経済協力開発機構)の調査でもはっきりしています。 国民への社会保障の給付は,GDP(国内総生産)比でイギリスが22.4%,フランス28.5%,ドイツ28.8%に対して日本は17.4%にすぎません。 残念ながら,アメリカ(15.2%)と並んで先進国では最低水準の「低福祉」国です。 日本の「国民」負担はアメリカとともに先進国の中では低いとされています。 しかし,この種の統計の「国民」の中には個人だけでなく企業も含まれます。重要なのは,日本の大企業の負担は低く庶民の負担は重いという実態です。 厚生労働省によると,日本の労働者の賃金に対する社会保険料負担は12%で,アメリカ7.7%,フランス9.7%,スウェーデン7%よりもかなり重くなっています。 他方,日本の企業の社会保険料負担は12%で,32%のフランス,27.2%のスウェーデンの半分以下にとどまります。アメリカの社会保険料は10.3%と低いものの,従業員のための民間医療保険の負担を含めると,企業負担は日本より約5%高くなります。 法人税の重さは大企業優遇税制があるため,税率だけでは測れません。 国立国会図書館の専門家がGDP統計を使って試算したところ,アメリカの企業の法人税負担が30%程度に対して日本は20%台前半と,相当低い水準です。 一方で日本の低所得層は課税最低限が国際的にも異常に低いなど,OECD諸国の中でも重い税負担を強いられています。 こんな日本の実態に照らせば,大企業は実質的に1円も負担しなくて済み,低所得層ほど所得に対する負担の割合が重い消費税の増税は最悪の選択です。 応能負担の原則に立ち返って,大企業・大資産家優遇の「逆立ち税制」を正すことこそ何よりも必要なのです。
2008年11月15日
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任命責任だけでなく,指揮・監督の責任が問われる-日本が侵略国家だったというのは「濡れ衣」だといい,戦前のアジア侵略を否定した田母神俊雄前空幕長が在任中,職務権限を使って,憲法や政府方針に反する内容を教育していたことが,問題になっています。 野党議員が,11月11日の田母神俊雄氏自身への追及に続いて,11月13日には麻生太郎首相に重大な問題だと指摘したのに対し,首相も「不適切だ」「(幹部教育は)バランスの取れた内容に」と答えました。 首相が本当にそう思うなら,指揮・監督の責任を取り,隊員教育を是正すべきです。 日本が侵略国家だったというのは「濡れ衣」だという田母神俊雄前空幕長の論文は,戦後の日本と国際社会の成り立ちそのものを根本からひっくりかえす危険な主張です。 田母神俊雄氏が同じ主張を以前からくりかえしているのに,防衛省が「チェックできなかった」というのは無責任な言い訳にすぎません。 田母神俊雄氏を空幕長に任命した政府は,更迭しただけで懲戒免職の根拠法が見当たらないかのようにいっていますが,最高法規である憲法の尊重擁護義務違反をことさら軽く扱う政府の姿勢こそ問題です。 自衛隊への甘い態度に批判が噴出するのは当然です。 しかもその田母神俊雄氏が,隊内での講話や幹部自衛隊員を対象にした教育で,アジア侵略を正当化した論文と同じ内容を教え込んだのを放置しておけば,それこそ第二,第三の「田母神」自衛官が生まれかねません。 異常な教育を根本から是正し,憲法と政府方針をないがしろにする自衛隊内の危険な風潮を一掃することが急務です。 田母神俊雄氏が空幕長時代の今年1月30日,熊谷基地で行った講話では,政府の防衛政策の原則である「専守防衛」を「検討されなければいけない」とか,戦前の海外派兵を「侵略のためではない」と教えています。 航空自衛隊隊員の教育指導にあたる准曹士先任90人にも,「東京裁判やいわゆる南京大虐殺にも触れながら戦後教育の危うさや自虐史観を指摘」(「朝雲」4月3日付)し,持論を教え込んでいます。 これらは氷山の一角です。 しかも田母神俊雄氏は,空幕長になる前の自衛隊統合幕僚学校長時代には,「歴史観・国家観」の講義を新設し,憲法・教育基本法の問題点,大東亜戦争史観,東京裁判史観などを課題にしました。 野党議員の調べでは,2006年の講師は侵略戦争を美化する「新しい歴史教科書をつくる会」の福地惇副会長です。 同氏は講義で,「『自存自衛』のための止むを得ない受身の戦争」だったとか,「現憲法体制は論理的に廃絶しなくてはならない虚偽の体制」とまで教えています。 防衛省は講師名の公表には「本人の了承が必要」などと言い訳していますが,国家公務員,とりわけ戦争実施部隊である自衛隊幹部を教育するというのに,秘密にしなければならないような者を講師にすること自体が問題です。 田母神俊雄氏を「定年退職」させ早期に幕引きをはかるだけでは,田母神俊雄氏が教え込んだ侵略戦争美化の「毒素」が残るだけです。 軍部の暴走を繰り返させないためにも,問題の全容を明らかにすることが不可欠です。 首相はそのために責任を果たすべきです。
2008年11月14日
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「給付金方式で全所帯について実施します」(10月30日) 「生活に困っているところに出すわけだから,豊かなところに出す必要はない」(11月4日) 「5,000万円もらっても高額所得じゃないという人もいれば,500万円もらっても(給付金は)いらないという人もいる」(11月10日) 麻生太郎首相の発言がコロコロと揺れ動き,自民党と公明党が追加経済対策の目玉にした「定額給付金」は迷走を重ねました。自民党・公明党連立与党は11月12日,その大枠をようやく決定しました。 与党の合意によると,「定額給付金」の受給に所得制限を設ける場合は「1,800万円」以上にするとしています。その一方で,現実に所得制限を設けるかどうかや支給の方法などの具体策は,窓口となる市区町村に丸投げしました。 迷走の果てにたどりついた決着も,極めて無責任です。 一連の経過と結末には,与党内からも「政府の統治能力の問題」(閣僚経験者)と批判が出るほどです。統治能力の欠如をさらけ出すようなドタバタに陥った根本には,消費税増税にからんだ「よこしまな動機」があります。 6月17日,当時の福田康夫首相が消費税増税について「決断しないといけない。大事な時期だ」と発言しました。 これに対して自民党の伊吹文明幹事長(当時)が,「(総選挙に)勝とうと思うと一種の『目くらまし』をしなければしょうがない」と,地元・京都の講演会で吐露しています。 実際に麻生太郎首相は,「定額給付金」が売り物の追加経済対策を発表した10月30日の記者会見で,同時に「3年後の消費税増税」を打ち出しました。 まさに,「定額給付金」を消費税増税の「目くらまし」に仕立てる狙いが,くっきりと浮かび上がっています。 発想そのものが「目くらまし」にすぎず,与党がまじめに国民の暮らしや景気の立て直しを考えていないことは明らかです。「公金を使った選挙目当ての買収だ」と言われても仕方がありません。 ここに迷走の根本原因があります。 「定額給付金」のモデルである「地域振興券」(1999年の上半期に配布)は,民間調査でもほとんど景気浮揚の効果がなかったことが明確になっています。 財務大臣さえ,地域振興券には「むだが多かった」と批判しているほどです(2001年,当時の塩川正十郎財務相)。 首相自身が「100年に1度」の経済危機だと述べているのに,「天下の愚策」と呼ばれ,効果が薄いと分かっている対策に貴重な財源を投入するのは愚の骨頂です。 小泉内閣以降,お年よりには後期高齢者医療制度で差別医療や保険料の増加が押し付けられ,過酷な年金課税の強化など,さんざんな負担増の連続です。 若い世代を含め,定率減税の廃止で所得税・住民税が年額3.3兆円も増税となり,社会保障と税金で年間13兆円もの負担増・給付カットになっています。1回限りの「定額給付金」その総額2兆円では家計は大赤字です。 何より「定額給付金」で「目くらまし」を目論む消費税増税で,与党は近い将来に2ケタへの税率引き上げを狙っています。 わずかな「給付金」は一瞬で消え,大増税は一生続くという“ぼったくり”に他なりません。
2008年11月13日
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麻生太郎首相が明言した「3年後の消費税引き上げ」方針で,消費税増税問題が総選挙の一大争点に浮上しています。 自民,民主両党は今週それぞれ党税制調査会の総会を開き,税制論議を本格化させます。国民の暮らしを破壊するのか,守るのか,各党の態度が問われています。 「方針は一貫している」。 麻生太郎首相は11月7日の参議院本会議で,3年後の消費税増税方針に変わりがないことを強調しました。3年後といえば,次の総選挙で選ばれた衆議院議員の任期中。 首相発言は,まさに増税を公約に掲げたものです。 これに呼応するように,首相の諮問機関の政府税制調査会(香西泰会長)は11月14日に会合を開き,消費税増税を含めた2009年度税制改定論議を再開します。 政府の社会保障国民会議が最終報告(11月4日)で打ち出した,2015年の消費税率を現在より3.3%から11.0%引き上げる試算などを視野に入れています。 自民党税制調査会の津島雄二会長も「年末の税制改正には,…消費税についても具体案をいくつかの選択肢を挙げて示したい」(日本経団連誌『経済トレンド』11月号)と述べています。 消費税は,所得の低い人ほど負担が重く,大企業は1円も負担しないなど最悪の不公平税制です。財源といえば,すぐに消費税を口にする自民党・公明党連立政治では国民の生活の不安は決して消えません。 一方,民主党は「3年後に増税すると言えば,賢明な国民は財布のひもを緩めない」(鳩山由紀夫幹事長,10月30日)と首相の消費税増税発言を批判しているものの,消費税増税そのものに反対する姿勢を明確に示していません。 同党の「税制改革大綱」(2007年12月)は,消費税率について「引き上げ幅や使途を明らかにして国民の審判を受け,具体化する」と明記しています。また,6月に日本経団連と行った「政策を語る会」では,将来的な消費税の「引き上げはいずれ必要」と明言しています。 国民の前では,“反対”,財界の前では“賛成”という曖昧な態度をとることは許されません。 「税制改革大綱」に記載したように,今度の解散総選挙において,民主党は「引き上げ幅や使途を明らかにして国民の審判を受け,具体化する」公約を実践して国民の審判を受けて欲しいものです。
2008年11月12日
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農林水産省は11月7日,汚染米事件で約2ヶ月間停止していた輸入米の入札を再開しました。輸入商社の売却予定価格が高すぎるなどが原因で,政府が買い入れを予定していた51,000トンの全量が落札できませんでした。 輸入米の入札再開は,「汚染米事件の根本的な解明や防止策もないのに,ミニマムアクセス米の輸入を強行するのは許せない」という,国民の多数の声に耳を傾けずに強行したものです。 この日の入札は,加工用の輸入米(一般米)の2008年度第2回の入札。政府の予定買い入れ数量は,タイ産やアメリカ産,グローバル・テンダー(産地の国を指定しない外国産米)の合計51,000トンでした。輸入米の入札は,世界的な食料不足と金融投機の影響で価格が高騰し,2007年度最後の一般米の入札(2008年4月22日実施)でも予定数量の全量を落札できませんでした。 やっと再開した2008年度第1回の一般米の入札(9月5日実施)も,予定数量の7割程度しか落札できず,落札価格も過去最高値をつけていました。 輸入米の入札の全量が落札できなかった背景には,汚染米事件で「食の安心・安全」を求める国民の「コメ輸入はやめよ」という声が広がり,コメの輸入条件が厳しくなり,商社が見込むコスト(費用)が膨らんだことなどがあります。 また,依然として続く世界的な食料不足によるコメ価格高騰もあります。 このため,輸入商社が入札で見込んだ売却予定価格が,政府の買い入れ予定価格を上回り,落札しなかったものと思われます。 しかし,政府が今回の事態にこりず,輸入商社のぼろ儲けのために,この先また入札を続けるとすれば,事態はいっそう深刻になります。 事実,三菱商事など日本の大手商社5社は,2008年度上期の連結決算で,純利益が過去最高を記録しています。そして日本政府が買う価格が高くなればなるほど,食料不足に苦しむ途上国の国民から,輸入商社が金の力でさらにその食料を奪っていくことになります。 政府・農林水産省は,今回の全量不落札という事態をまじめに受け止め,ミニマムアクセス米の輸入をきっぱり中止すべきです。
2008年11月11日
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日本が侵略国家だったというのは「濡衣」だと,戦前の日本のアジア侵略を否定する論文を発表した田母神俊雄前航空幕僚長を,懲戒処分もせず,退職させた政府の態度に批判が高まっています。 もともとは,侵略戦争美化の発言を繰り返していた田母神俊雄氏を航空自衛隊トップの空幕長に任命した,政府・防衛省の任命責任が問われる問題です。 「臭いものにふた」をするような政府の態度が批判されるのは当然です。 田母神俊雄氏自身の責任とともに,政府・防衛省の責任を明らかにすることが真相究明と再発防止に不可欠です。 民間企業の懸賞論文で日本の侵略を否定した田母神俊雄氏の主張は,戦後の出発点を否定し,政治の根幹を揺るがす重大なものです。 日本国憲法は戦前の侵略戦争を反省し,「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」すると明記しています。田母神俊雄氏の論文はこの戦後政治の出発点を根本からくつがえす,戦後憲法に対するクーデターともいうべき大罪です。 政府・防衛省は,田母神俊雄氏の論文公表を「文民統制に反する」とはいいますが,憲法をふみにじるという認識は示していません。 野党議員が,憲法尊重擁護義務を定めた憲法99条に違反するとの認識があるかとただしたのにも,浜田靖一防衛相は「そこまでいっていない」と答えました(11月6日の参議院外交防衛委員会)。 そうした認識だから,田母神俊雄氏の処分ができないのです。 田母神俊雄氏の論文が,「植民地支配と侵略によって」アジア諸国民に「多大の損害と苦痛」を与えたことを認めた「村山首相談話」(1995年8月)など,アジア外交の土台となる政府の公式見解に反しているのは明らかです。 だからこそアジア諸国から批判が噴出しているのであり,その意味でも政府は田母神俊雄氏の問題を曖昧にすべきではありません。 重大なのは,田母神俊雄氏は空幕長になって突然こうした主張を始めたのではなく,統合幕僚学校長など,空幕長になる以前からその異常な主張は防衛省や自衛隊内部ではよく知られていたことです。 侵略戦争美化を繰り返す田母神俊雄氏を空幕長に任命し,続けさせてきた政府・防衛省の責任は重大です。 空幕長は,内閣の承認を得て防衛相が任命します。この点では河村建夫官房長官も「内閣にも責任がある」と認めています(11月6日の参議院外交防衛委員会)。 田母神俊雄氏は安倍晋三内閣の時代に久間章生防衛相が任命し,福田康夫内閣でも,麻生太郎内閣でも空幕長を続けてきました。 当時の状況を徹底的に調査し政府・防衛省の責任を明確にしないで辞めさせるだけでは,「臭いものにふた」といわれても弁解の余地がありません。 田母神俊雄氏が応募した懸賞には94人もの幹部自衛官らが応じていたことも明らかになりました。政府は事実関係を徹底調査し,防衛大学校の教育内容を見直すなど再発防止に取り組むべきです。 背景には,政府が自衛隊の増強を続け,海外派兵などの任務を与え,自衛隊の発言力増大を認めてきたことがあります。田母神俊雄氏の論文を自衛隊暴走の一歩にさせないためにも,「防衛」政策の根幹に踏み込んだ議論が不可欠です。
2008年11月10日
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社会保障国民会議の最終報告(11月4日)は,「社会保障の機能強化」の財源として2015年に最大で消費税率11%,2025年に13%分の負担増が必要だとしています。 政府は同会議の目的について,「すべての人」が安心できる「社会保障のあるべき姿」と,「どのような負担を分かち合うか」を議論することだと説明してきました。 最終報告には安心できる社会保障も負担の分かち合いもなく,“初めに消費税増税ありき”の姿勢だけが浮き上がっています。 社会保障国民会議は公費負担の規模を,一貫して「消費税率に換算」して明記しています。 あたかも公費負担の財源は消費税しかないかのような描き方です。この会議が,社会保障にふさわしい財源のあり方,「どのような負担を分かち合うか」を真剣に検討した形跡すらないのはどうしたことか。 麻生太郎首相は10月30日の記者会見で「3年後に消費税の引き上げをお願いしたい」と述べました。 最終報告は,その地ならし役にしか見えません。 同会議は,社会保障について「『所得再分配の機能』を通じて,給付の平等・負担の公平という『社会的公正』を実現するもの」だと述べています。 「所得再分配」とは,資本主義経済がもたらす貧富の格差を是正するため,富めるものから貧しいものへ所得を移し,社会的な連帯ときずなを守る仕組みです。 その財源として,低所得層ほど所得に占める負担割合が重くなる逆進的な消費税が,ふさわしくないことは明らかです。消費税の逆進性は税率が高くなるほど過酷になります。 残念ながら,消費税率引き上げは社会保障制度の所得再分配の機能を台無しにしてしまいます。 社会保障の恩恵を受けるのは低所得層だけではありません。その財源には,しっかりした所得再分配の役割が求められます。 消費税は市場で優位に立つ大企業なら価格にすべて転嫁できる税制です。おまけに輸出企業は,「輸出戻し税」で仕入れにかかった消費税の還付まで受けられます。 一方で下請け中小企業は赤字でも自腹を切って納税しなければならず,消費者はどこにも転嫁できません。 「負担の公平」とは対極の不公平税制です。 社会保障国民会議の議論でも,「企業に社会的な責任,あるいは歴史的な責任をもう少し自覚してもらいたい。今後の様々な負担関係でいうと企業が後ろに引きすぎている」という指摘が出ています。 自民党・公明党連立政府は大企業,高額所得層や大資産家に年間7兆円もの減税をばらまいています。「負担の公平」というなら,こうした既得権益層にこそ応分の負担を求めるべきです。 何より最終報告には,毎年2,200億円の社会保障予算の抑制路線の撤回も,後期高齢者医療制度の廃止も盛り込みませんでした。「安心」は無いのに消費税率引き上げだけは鮮明です。 こんな増税には到底納得できません。 日本の貧困水準は,OECD(経済協力開発機構)諸国の中で悪いほうから数えて4番目です。 アメリカに肉薄する「貧困大国」の日本が,たとえ社会保障のためであったとしても,低所得層を直撃する消費税の比重を高めることは許されません。
2008年11月09日
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アメリカ国民がまた新しい歴史をつくりました。 史上初の黒人大統領の誕生は,長い間の人種差別と偏見の壁を前向きに乗り越えていく人民の力を示しました。世界中でいわれない差別と抑圧,隷従に苦しみ,社会のひずみとたたかう人びとへの大きな励ましです。 ほころび始めたとはいえ,世界を支配しリードする超大国。 その指令塔であるホワイトハウスに,マイノリティー(少数派)の代名詞ともいえる黒人が入ることを,誰が予想していたでしょう。 奴隷船,「アンクル・トムの小屋」,「ルーツ」…。 黒人問題と人種対立は,自由と理想のたいまつをかかげたアメリカ合衆国の暗部であり,病巣でした。その矛盾はときに犯罪となり,暴動となって爆発しました。 リンカーン暗殺(1865年)の悲劇を生みました。ケネディの暗殺(1963年)も,黒人の公民権運動が盛り上がるなかでの出来事でした。 軍人として国民的な英雄となり,大統領候補の呼び声が高かったパウエル元国務長官。彼が最終的に出馬を見合わせたのも,人種の壁といわれました。 今度の選挙でも,バラク・オバマ氏優勢が伝えられながら,有権者が実際に投票する段になればどうなるかわからない,そういった声が聞かれました。その懸念を打ち破ったのは,ブッシュ政治からの転換と変化を求める国民の期待と要求でした。 イラク・アフガン戦争やごう慢な外交,覇権主義。 金さえあれば何でもできる弱肉強食の市場優先主義。その破たんで直面した経済と生活の不安。国の行く末を根本的に変えなければだめだ,この願いと行動が国民を動かし,人種の壁を打ち破りました。 社会の矛盾を草の根からの1票の力で正していく力をも示しました。 「変化」を掲げたバラク・オバマ次期大統領のもとで,アメリカは本当に変わるのか。多くの人々が期待しています。 その期待と要求にバラク・オバマ氏がどうこたえていくか,世界は真剣に見守っています。
2008年11月08日
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麻生太郎首相が総選挙に向けた“目玉”として打ち出した追加経済対策をめぐり,政府・与党が迷走しています。 「2兆円」規模,4人家族で「6万円」と打ち上げた定額給付金。麻生内閣の経済政策の“目玉”中の“目玉”です。ところが,それを全世帯とするのか,所得制限を設けるのかで大揺れです。 麻生太郎首相は同対策を発表した10月30日の記者会見で,「全世帯について実施する。規模は2兆円」と約束していました。 ところが,与謝野馨経済財政担当相は「生活支援の名にふさわしい全世帯に給付するという意味」(11月2日のNHK番組)だと発言。所得が1,000万円を上回るような世帯を支給対象から外すべきだとの考えを示しました。 同じ番組で公明党の山口那津男政調会長は,法改正が必要なことを示し,「それをやって年度内実施が遅れるというようなことにならないように」とクギを刺しました。 中川昭一財務・金融相も,「市町村の窓口で(給付を)実施するとなると手続きが難しい」(11月2日)と,難色を示していました。 このため,自民党の細田博之幹事長が「麻生総理ははっきり言われているわけで,閣内で調整してもらわないと」(11月4日)と立ち往生する事態になってしまいました。 麻生太郎首相は11月4日,記者団に「貧しいとか生活に困っているところに出すんであって,豊かなところに出す必要はない」と発言。 記者団から「(対策発表会見では)全世帯といったが」と問い詰められると,麻生太郎首相は「言葉尻をとらまえればそうですよ。具体策がないんだから,全世帯と言わなきゃダメだった」と開き直る始末…。 自民党・公明党両党は,週内にも所得制限案をとりまとめる方向ですが,“目玉”対策でさえ政府内でまともに検討されていないことを露呈しました。 麻生太郎首相が「給付金」と引き換えに「3年後の消費税引き上げ」を言明したことを受けて,与党幹部は勝手な解釈による“援護射撃”に躍起です。 公明党の山口政調会長も,「3年後に増税などといっていない。(首相は10月3日に)訂正したでしょう。もともと経済対策には3年後なんてどこにも書いていない」(11月1日)と述べ,まるで首相が増税そのものを否定したかのような解釈を示しました。 自民党の園田博之政調会長代理は,「経済対策をやってお金がかかったから3年後に消費税を負担してくださいというのとは全然異質の問題だ」(11月2日)と言い訳しています。 しかし,どう言い訳しても,今回の経済対策と消費税増税は,まさにセットの「対策」です。 与党議員も,「『結局は,(給付金で)減税をしたあとに,怖い増税が待ち構えているんじゃないか』との批判めいた意見を頂くことが多い」(公明党の赤松正雄衆議院議員の11月3日付ブログ)と愚痴をこぼしています。 公明党の太田昭宏代表が「3年間は消費税は上げないという方が強いメッセージではないか」(10月31日)と発言したことに対しても,赤松正雄氏は「いささか苦しい」と批判しています。 まさに「ばらまき一瞬,増税一生」の定額給付金のボロは,政権の混迷をいっそう深めています。 国民は騙されません。政治家もそろそろ気付いてください。
2008年11月07日
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政府の社会保障国民会議(座長・吉川洋東京大学教授)は11月4日の会議で,社会保障の給付と負担のあり方についての最終報告をまとめました。 報告では「高齢化が進み,負担の増加が避けられない」として,消費税増税を念頭にした財源確保策へ速やかに着手することを求めました。 麻生太郎首相が10月30日に「3年後の消費税の引き上げ」と明言したのは,こうした議論を念頭においたものです。「社会保障」を口実にした最悪の増税論です。 報告は「必要な財源を安定的に確保していくための改革に真剣に取り組むべき時期が到来している」と明記。 この日の会議で確認された「社会保障の機能強化のための追加所要額(試算)」では,すべて消費税増税が前提にされているように,「必要な財源」は消費税を念頭においたもの。 「社会保障財源確保」を口実にした消費税増税に向けた論議を本格的に加速させることを狙っています。 また,試算では(1) 年金,(2) 医療・介護・福祉,(3) 子育てと家族支援の3つの分野での将来の財政支出の規模を消費税率に換算して例示(表)。 2015年の消費税率は現在より3.3%-11.0%アップ(財源として約10兆円-約36兆円),2025年には6.0%-13.0%アップ(約21兆円-約50兆円)になるとしました。 消費税増税については,同31日の経済財政諮問会議で「消費税を含む税制抜本改革の道筋」(「中期プログラム」)の議論を開始しています。 しかしながら,「社会保障」あるいは「福祉」という名で消費税を導入しておきながら,国民の社会保障を改悪し,その上大企業の同程度の減税を推し進めているようでは国民は「社会保障のため」あるいは「福祉のため」ではもう納得しません。 軍事費など聖域を設けることなく,歳出の無駄を減らし,天下りも禁止して,政治家自らの給料や議員年金の廃止など特権を減らし,大企業減税もやめ,政党助成金もやめる,アメリカへの「思いやり予算」もやめる…これだけやりましたが,それでも足りないというのであれば,国民も納得してくれるのではないでしょうか? これだけやっても足りないと政治家に言われたら,みなさんも消費税増税を納得しますよね。 自民党でも民主党でもどちらでも構いません。是非これらを実践して,国民に消費税増税を問いてみてください。 国民は必ず納得してくれます。
2008年11月06日
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