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談話室での食事が終わったら、患者さん1人ひとりを車椅子で病室に戻すのだが、A子さんはベットに移動しても横になろうとしない。「どうしたの?」と私。「あのね!赤ん坊が背中にいる、潰すから駄目!ここ、ここ」と背中を指さす。「あら!ごめんね。気が付かなかった…。もう大丈夫よ!隣のベットに寝かしたから」と私。「そうかい、そうかい、ありがとね」とようやく横になった。我が子を虐待する親の報道を聞くにつけ、物の無い頃に自分は食べなくとも子供に与え、一生懸命に働き、子育てをしたであろう「母達」のあり方を思う。
彼女は86歳、脳梗塞後遺症で両下肢が真っ直ぐに硬直している。会話は成立しないのだが、底抜けに明るい。常に独語をしていて「…そんなことがあったのかねえー。あははははー。まあ!可愛そうに、良かったね!あははははー」などと大声で笑う。詰所まで聞こえるのでお昼の弁当を広げながら「まあ!こっちまで楽しくなるわよね!」とみんなで顔を合わせて笑った。
ところが、これが眠いときにおむつ交換などしようものなら「なにすんのよー。泥棒ー、たすけてー」と、大声で叫ぶ。気に入らない処置をしようものなら「やめてー、いじわる!お母さんに言いつけてやるから…」と怒るや、叫ぶや。そのくせ終わると「わるいねー。ありがとね!どうも。」と、くったくなく笑う。この笑顔には思わず引き込まれて、師走の気ぜわしさも忘れてしまう。
