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病院の中庭は患者さんが憩うところ。職員の顔も勤務中とはどこかが違う。そんな中庭は50坪程はあるだろうか。両側が5階建ての病棟に囲まれているので、この時期は余り日当たりは良くないが中央に池があって、山茶花や万両が色を添えている。
昼休みに中庭に出ると顔なじみのKさんと会った。何時もながらのにこにこ顔に思わず私から「ね!あの木は白樺に似ているけど、なんて言うの?」と聞くと、「ああ!あれね!ダテカンバだよ!別名暴れ木ともいってね!、ほら横にあんなに枝を広げているだろう?真っ直ぐに伸びないのが特徴なんだよ!」と、教えてくれた。
そして、「あの桜のこと?ああ、あれは実生なんだよ!。私が清掃としてこの病院に入った28年前、50センチくらいの桜の木を見つけてね、此処に植えたんだよ。毎年花が咲くたびに、今年は幾つ咲いたと数えては楽しんでねェー。それがもうこんなに大きくなった。5月になるとひきがえるが子供を生むよ!小さい時からちゃんと模様があってね。可愛いよー!、5,6匹かな、いや多いときは10匹ぐらいいるよ。ほら!あそこだよ!あそこに今は寝ているよ!」と、眼鏡の奥の細い目をキラキラして話してくれた。
Kさんの指さす先はダテカンバと桜の木の根元。そこは、落ち葉と柔らかい土とで格好の冬眠場所のようだ。そういえば昨年、ひきがえるが棒きれに乗ってじっとしているのをみたけれど、彼らの寝床まで知っているとは、すごい!!愛情があればこそである。
改めて中庭を見回すとき、Kさんの長い年月と真心が随所に凝縮されているように思えてならない。さて問題の蛙さん達は、どんな顔して寝てるのかな?別々なのかな?それとも一緒なのかな?想像するだけでわくわくしてしまう。そんなドラマのあるこの中庭が、今までよりも、ずーっとずーっと大好きになった。
勇気こそ地の塩なれや梅真白 中村草田男(新版・俳句歳時記)所収
