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少しだけ暇が出来たので歩いてみたくなった。目的も決めず、足の向くまま気の向くまま、冬の太陽を追い掛けながら…。こんな時間も大好き。
ふと時計をみるとまだ30分、まだまだ歩きたい気分。隣町まで足を伸ばしてみることに。
知らない町を歩けば、こんな所にこんな店があって、この建て売り住宅はまだ売れていないのかもしれない。などと勝手に思いながらのウオーキングは新しい発見がいっぱいある♪♪。
「おばちゃん!これいくら?」、商店街を離れた2メートルほどの路地に人だかりがしていた。輪の中に入ってみると茣蓙の上に、新鮮な野菜や手作りらしいおはぎ、漬け物、梅干し柚子などがところ狭しと並んでいた。中央の座布団には姉さん被りのおばちゃんが坐っていて、なれた手つきで品物をさばいている。「すごーい!こんなに沢山背負ってくるの?」ぶしつけな私の質問に「昔はそうだったけど、もう年だからそれをおっぺしてくるよ!」台車のような形のものを指さしながら人なつっこい笑顔で答えてくれる。
「この叔母ちゃんは昔から来ていてね!千葉からだよ!」隣の主婦が親切に教えてくれる。すると「50年になるよ!」、本人から合いの手。「え!では今おいくつですか?」質問好きの私に嫌な顔も見せず「84ぐらいになるっぺなー」と、品物とお金とを出し入れしながら答えてくれる。土日以外は毎日きて同じ所に坐って売っているのだという。びっくりするやら、感心するやら。「おばちゃん!この前おまけしてくれたから」「悪いねえー」そっと背中の方に誰かが包みを入れる。差し入れらしい。
「この叔母ちゃんのは美味しいですよ!、雨の日はその奥の庇のとこに来ていてね!朝は10時頃から午後は3時ぐらいまでいますよ。」別の主婦が教えてくれる。ああー、50年とは!すごーい!!ここに、50年もいるのー。しみじみと周りをみる。
手荷物にならない軽いもので、ほうれん草と藁俵の納豆を買った。指なし手袋からよく働いた指がでて前垂れのポケットと品物との間を忙しく往き来している。「おいくらですか?」「300円!」、親指と人差し指で○を作ってにっこりと笑う。ああー、50年。この路地で主婦達との温かいやりとりが明日もつづく。そして、その先も…。
ゆく人の眸のたのもしき師走かな 桂信子
