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「……私は目立たないでいなくなるから、時々、思い出してください。お花を一本ください……」。と、始まった書き出しに暫く釘付けになってしまった。
文章は更にこう続く「…やっと判読できるほど薄い緑の文字で書かれたこの言葉は、友人が癌発病後僅か一年、亡くなる直前に緩和ケア病棟の談話室備え付けの文具を使って遺したもの。
……看取っていた娘のEちゃんが白紙だと思ってピンクの薔薇の絵を書いた後、裏返して初めて気付いた。別れ難き人たちへの遺書という彼女の意図を超え、このメッセージは、たんたんと生きて、そっと死んでいく無数の無名の命の声のようだ。」と書かれた一節。
作者は「満田春日(みつだはるひ)」女性。総合誌「俳句界・4月号」の「詠み下ろし連載・第10回」に俳句10句に添えて書かれた小感。
彼女は昭和30年川崎市生まれ。俳誌「はるもにあ」の主宰である。病気による死、事故による死、あるいは虐待、テロなどなど…。3月の吟行で「東京大空襲・資料館」に行ってきたが、当時の被害のおぞましい写真や遺品や焼夷弾を目の当たりにした。
広島、長崎の原爆もそうだ。全て忌まわしい戦争によるものである。作者の友人が書いたという小さなメモを「無数の無名の命の声のようだ。」と、捉えた満田春日は、詩人の目と心で見たのであろう。
金縷梅や一里四方が澄んで見え 満田春日(俳句界・4月号)所収
