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2003.05.16
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カテゴリ: カテゴリ未分類


人里から離れた森の中ほどに、

花と虫にとって天国のような小さな野原がありました。

虫も花たちも仲良く楽しく暮らしていました。

その楽園に、いつの頃か小さな白い花が一つ咲きました。

薔薇

虫も、他の花たちもその花を見たのは初めてでした。

「あなたは、なんと言う名前なの?」と、蜜蜂がききました。

「ごめんなさい、私もわからないの」と、白い花は応えました。

「その、チクチクしたものをどけてくれないと花の蜜で団子が作れないわ。何とかして頂戴。」

蜜蜂にそういわれても、白い花は自分では何も出来ませんでした。

白い花には小さなたくさんの棘があったのです。

そのうち、蜜蜂は「これでは蜜も採れないわ。」

と、ぷりぷり怒ってどこかへ行ってしまいました。



その次にやってきたのは、華やかな蝶たちです。

「まあまあ、かわいらしい花があるわ、ここで一休みしましょう。」

「あらあら、本当そうしましょう。」と、白い花に止まろうとした時、

「ああっ痛い!羽に棘が刺さったわ」と、一匹の蝶が羽を傷めてしまいました。

「まあ、大変、こんな変な花にはもう用事はないわ、行きましょう。」

蝶たちも口々に叫んでどこかへ飛んでいってしまいました。

「私は、一体誰なの?どうして体にはこんな棘があるの?」

白い花は、悲しくて悲しくて、静かに涙をこぼしてしまいました。



それからというもの、蜂や蝶のうわさを聞いた虫達は、

白い花を避けて通るようになり、近寄ってきても

「あんたなんか、そうやって棘の鞭を振るって、すましているがお似合いさ」

なんて、意地悪を言う蟷螂や、スズメバチたちぐらいです。

野の花たちも、誰も自分達の仲間に入れようとしませんでした。

白い花は、悲しさと寂しさのあまり、

ますます自分の姿を棘の中に隠してしまいました。



それから、どれくらいの季節が流れたでしょう。

白い花が再び目覚めたときも、その一輪以外仲間は目覚めませんでした。

それどころか、棘のつるばかりが大きく育ち、

もはや蟷螂達も近寄れなくなっていました。

「これでいいんだわ、もう誰も私のことを気にしなくなる・・・」

寂しさは募るが、意地悪をされないだけましになったと、思うようにしたのだ。



ある晴れた春の日の午後、その野原は突然騒がしくなった。

「わーっ、すごーい、森の中にこんな野原があるなんて。」

「本当だ、僕の父さんでもきっと知らないと思うよ。」

人間の少年と少女がやってきたのだ。

「ねぇ、ここは、村の人たちもあまり来ないみたいだけど、

お花がいっぱいで素敵ねー。私ここが好きになっちゃった。

あら、あそこの奥にあるのは何かしら?」

薔薇

少女は、棘で自分を隠してしまった、小さい白い花に気がついた。

「あっ、父さんの花の本で見たことがあるよ。

確か、『バラ』って言うんだよ。

この辺ではめったに見ることがない珍しい花なんだって。」

少年はちょっと得意そうに胸をそらせて話た。

「ふふっ、あなたのお父さんは庭師さんだものね。そんな本もあるのね。

そう、『バラ』さんなのね。こんにちは、よろしくね。」

少年と少女は、この小さな野原でひとしきり遊んだ後、

夕焼けの中帰っていった。

「・・・私の名前は、『バラ』というのね。ここではとっても珍しいのね。

ふふっ、名前があるなんて思わなかったわ。」

白バラは、ちょっとだけ元気が出てきたようで、

蔓の中から、夕日を眺めてつぶやいた。



その次の日から、少年と少女は毎日、白バラのもとに遊びにくるようになった。

本で勉強したのか、余分な蔓を切り落としたり、根元に肥料をまいたり・・・

「ああっ、痛い!もうどうしてこう棘が生えているのかしら。」

少女の小さな腕は引っかき傷だらけになった。

「仕方ないよ、だって、バラも自分のみを守るためなんだもん。

動物達に踏み荒らされたり、鳥達に花の芽が食べられないようにしているんだって。」

「へー、どうして?」

「バラの花って、この辺では見たことないような綺麗な花だろ?

昔々は神様のお庭にしか咲いていない花だったんだって・・・」



ー神様の庭で咲いている頃は、誰にも苛められることがなかったので、

バラの花には棘がなく、たくさんの仲間とともに暮らしていました。

ある日、神様のバラを盗んでいったものが居りました。

それは悪い悪魔でした。

悪魔は、美しいバラの花がどうしても欲しかったのです。

でも、悪魔のすむ世界は、意地悪な獣や、魔物たちがたくさんいて、

みんな美しいバラの花が欲しいと狙っていました。

バラたちは、触れないようにと、いつのまにか棘を体につけていったのです。

そこで悪魔は、誰にもこのバラを盗られないようにと、

触るとバラのことが嫌いになってしまう魔法をその棘にかけたのです。


その作戦は大成功しました。

魔物や獣達が触れると、

痛いのと、魔法のせいですっかりバラのことが嫌いになってしまいました。

そして、魔法をかけた悪魔もうっかり触ってしまい、

バラのことに見向きもしなくなってしまいました。

バラたちは、悪魔の世界ですっかり少なくなって元気もなくなってしまいました。

その様子を知った神様は、バラ達が可愛そうになり、

何とか魔法を解いてあげました。

でも、どうしても棘だけはとることが出来ませんでした。

バラたちはすっかり臆病になってしまったのです。

『心と体に棘を持ってしまったお前達を、

もうわしのもとにおいておくことは出来ん。

せめて、人間の世界で美しく咲くように。』



・・・こう言って神様が、僕達の世界にバラの花を植えられたんだって。」

「なんだか可哀想ね。この子も一人ぼっちみたいだし・・・

あのね白バラさん、私達あなたが大好きなの。

きっと、お友達を増やしてあげるね。」

少女の優しい言葉は、白バラの心の棘をそーっと、とかしていきました。

「あの子達がお友達?私の?仲間も増やしてくれるの?」

白バラは静かに泣きはじめました。

でもそれは悲しい涙ではありませんでした。

嬉しくて暖かい涙でした。

白バラはもう一人ぼっちではありません。友達が出来たのです。



やがてまた、幾つもの季節が巡りました。

あの小さな野原はどうなったのでしょう。

森の奥の小さな野原には、小さな可愛らしい家が一軒建ってました。

その家の可愛らしい庭には、色とりどりのバラの花達が咲いていました。

その真ん中に、あの白バラが、ひと際嬉しそうな花を咲かせていました。

                 おしまい





なんだか恥ずかしいような話を載せてみました。

これは、中学のときに書いた話を加筆修正したものですが、
今朝、庭のバラの木の下を草取りしていて、ふと思い出してしまったのです。もう、楽天日記では色々と恥ずかしげもなく書いているので、恥じかきついでにと、書いてみました。一応童話なのですが、長々と読んでくださった方、どうもありがとうございました。





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最終更新日  2003.05.17 00:11:59
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