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マラーホフによる新演出だそうで、本拠地であるベルリン国立歌劇場で昨年上演された作品を東京バレエ団が再演したのだ。構成は、プロローグからオーロラが16歳の誕生日に薔薇の棘(糸巻きではない)で眠りにつくまでを一幕、王子の登場からオーロラが目覚め二人が結婚式を挙げるところまでを二幕としてコンパクトにまとめられていた。ただ、これは東バで上演されている眠りとほぼ同じ構成なので好みの問題は別として違和感は無かった。物語の全篇を通じてリラの精とカラボスがオーロラにからむようになっていたのが新しい視点かな。振り付けにはあまり大きな変更はなかった。あまり評判の宜しくない薔薇の生垣のセットはシンプルで美しく良かったと思う。ただ、衣裳がね・・・。大変奇抜でハッキリ言って日本人には全く似合わない。特に、男性は気の毒なほど滑稽だ。オーロラの衣裳も何だか若い女の子のサマードレスみたいで私の好みではない。主役のオーロラ姫を踊ったのは吉岡美佳さん。痩せてる・・・。でも、貧相に感じてしまったのは多分それだけではないと思う。安定感もいまひとつでグランの時のフィッシュダイブなど落ちるのではないかとハラハラした。マラーホフも焦って抱え込んでいるように見えたぞ。素晴らしかったのはリラの精の上野水香さん。昨夜の妙な衣裳を着こなしていたのは彼女だけではないだろうか。やはり、身体そのものの美しさが物を言うのだなと実感した。長身で手足が長く頭が小さいという有利さに加え反張膝の足、怖いぐらいにカーブする足裏と甲。そういう彼女の身体的な優位さが昨日は存分に活きた。堂々とした立ち姿とマイムも別格の雰囲気。いつもは違和感のある個性的な顔立ちさえプラスに働いていて彼女に目が釘付けだった。フロリナ王女の小出領子さんも安心して見ていられた。可愛らしくてファンも多いようだ。今回、衣裳が妙だったので男性ダンサーには酷な舞台だったが、ソリスト陣は結構見られる代物だったのはさすが東バと言うべきか。マラーホフのたっての希望でカラボス演じた芝岡紀斗さんなど日本人離れした容姿の良さでとってもさまになっていた。お目当てのマラーホフだが、「眠り」はもともと王子のしどころの無い演目の上に二幕の狩りの場面は大幅にカットされており演出として意図されたものかどうか分からないが何だか頼りない王子(笑)だったこともあり、王子さまオーラがキラキラという雰囲気ではなかった。でも、話に聞いていたジャンプして着地する時音がしないというマラーホフの繊細な踊りは十分堪能できた。とにかく、何気なく自然に振舞っているのに品が良い。ダンスールノーブルとはかくあるべきというお手本だ。
2006.02.22
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ルジマトフのソロルは素晴らしい。これは彼のためにあるような役だ。今回も一幕と二幕はほとんど踊らなかった。特に二幕の婚約式のソロを省略したのには驚きを通り越して衝撃を受けてしまった。でも、もういい。そういうことが気になるならルジマトフは見ないことだ。ピルエットで何回廻ったとかジャンプをどれくらい高く跳んだとかよりも、ルジマトフの世界に浸りに行くのだ。今回は最初からそのつもりで出かけた。そして、彼の「演じる」ソロルを十分に堪能した。レヴェランスの時まで役になり切る独特の世界。ルジマトフでなければきっとさまにならないだろう。ニキヤのシェスタコワも良かった。夏のガラの時にはちょっとテクニック的に怪しげな所もあったが、今回は安定していた。ルジマトフとのパートナーシップも良い感じ。カーテンコールでルジマトフがひざまづきシェスタコワの手にキスした時など隣の席の女性が黄色い声をあげたほどに素敵な二人だった。予想外に良かったのはガムザッティのエフセーエワ。彼女はワガノワバレエアカデミーの生徒だった頃から有名だったが私はあまり好みでなかった。背が小さいわけではないようだがとても小柄に見える。私のガムザッティのイメージはパリオペのDVDのプラテルなので彼女はちょっと迫力不足なのではと思っていたのだ。しかし、なんのなんの、ニキヤとの一対一の対決も堂々たるものだしとにかく華やかな雰囲気だった。お陰で、ソロルの心変わりとその後のニキヤの悲しみと死というドラマがきちんと成立した。ただ、今回やたらと日本人出演者が目立っていたのがちょっと気になる。「バヤデルカ」はただ舞台上を歩くだけの人手がかなり必要な演目だから引越し公演ともなれば現地雇用(?)もある程度仕方ないとは思う。でも、バレエの舞台なのだから、せめてダンサーを集めることは出来なかったのだろうか。どう見ても素人のような太ったおじさんが出て来た時にはげんなりしてしまった。兵士役で舞台奥に突っ立っていた外人たちも素人に違いない。立ち姿もさまになっていないし、とにかく姿勢が悪い。さらに、バヤデルカに特徴的なお辞儀、片手は額に、もう一方の手は胸に当て、片足を後ろに引いて前屈みになる独特のポーズが物凄くカッコ悪いのだ!どこかのバレエ教室の発表会を見ているのかと一瞬勘違いしてしまった。私はあのポーズが大好きなのに・・・、いい加減にせいっ!!(爆)
2006.01.30
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実は、この「ラ・シルフィード」のチケットを買う際に一抹の不安があった。ルジマトフにジェームズって合うのかな?不安は的中した。ルジマトフは、結婚式の直前に妖精に魅せられ花嫁をほっぽらかして出奔してしまう若く浅はかな田舎の青年にはとても見えない。どう見ても王子さまだ。気品がありすぎる。いつもの苦悩の表情もこの愚かな若者には似合わない。踊りも何だか精彩を欠いていたように感じた。調子が悪かったのか。それとも、年齢的なものなのだろうか。昨夜は演奏もひどかった。特に金管が、何度となく、盛り上がったところでポァンと崩れるのが興ざめだった。また、最初、オケの音がピットの中からではなく舞台の左右に据えられたスピーカーから聞こえてくるような感じで嫌だった。もっとも、これはホールの問題だが。「ラ・シルフィード」が上演時間の短い作品だったために同時上演された「騎兵隊の休息」は他愛ない内容の楽しい作品。私の大好きなチャールダッシュがたくさん踊られた。でも、わざわざお金を払ってまで見たい作品かと問われるとかなり微妙だ。
2006.01.06
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今年の新国立「くるみ割り人形」は見事に私の予定と被ってしまった。ヴィシニョーワのマーシャはタイプじゃないかもと思いながらもやっぱり彼女は見てみたい。でも、どうしても都合がつかなかった。残念!そして何より以前の日記にも書いた私の注目の王子さまレオニード・サラファーノフが是が非でも見たい!!もう行けなくなるのを半ば覚悟して最終日のチケットを買っておいた。果たして、時間は空いたがクタクタだ。でも行ったぞ。レオニード・サラファーノフを見る、ただそれだけのために!感想は・・・頑張って行って良かった~(^^)オペラグラスの超アップで見ても、か、か、可愛い~~。雰囲気もとってもノーブルでさすがマリインスキーの王子様だぁ。実を言うと、私の理想の王子さまはもっと冷たい感じの美形なのだ。だから最初は彼の少年のような雰囲気に違和感もあった。しかし見慣れてくるとこれもまた初々しくて良いねぇと感じてしまうところが我ながら不思議だった(笑)ただ、マーシャ役の西山裕子さんとのコンビネーションに少々難ありで、パドドゥの時に回転が足りず向かい合った状態で終わってしまい最後にサラファーノフ君がぐいっと前に向けたことが二度ほどあってちょっと興醒めだった。マリインスキー版の衣裳で毎度お馴染みの妙な触角のような髪飾りも見慣れてきたのか、今日もこれだと覚悟して見たからなのか最初に見た頃よりはショックも感じなくなった(爆)雪のコールドはいつもながら良く揃って綺麗。薔薇のワルツでは厚木三杏さんが華やかな容姿で目を惹く。オケの演奏もなかなか良くて耳も満足。踊りに合わせて緩急をつけるなど気配りも感じた。帰りにはこの公演のスポンサーからお客様にお土産も出た。お子さんにというアナウンスだったが皆もらっていたので私も。v(^^)楽しいクリスマスだった。
2005.12.26
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う~ん、まだ気持ちの整理がつかない(笑)私の王子様マチュー・ガニオを見に行ってきたのに、演目は大好きな「眠り」だったのに、書けば文句ばかりがタラタラ出てきそう(爆)東京バレエ団の眠りが短縮版だというのは聞いていたが、やはり二幕のオーロラの目覚めから三幕の結婚式までを一気に上演するのはせわしないよ。百年の眠りからようやく覚めたというのに結婚式の段取りのため(笑)オーロラとデジレが急いで舞台袖へ引っ込むというのも興ざめだ。お祝いのディベルティスマンも唐突に始まるし、何よりオーロラとデジレのグラン・パ・ド・ドゥのあの始まり方はないでしょう。有名な前奏も省略され、大勢のお客様に迎えられる入場もない。あれでは、ガラコンサートと変わらない。大好きな場面なのに、全幕の最後を飾るグランの華やいだ雰囲気がまるで感じられなかった。オーロラ姫の上野水香さんは長い手足に小さな頭で、やはり日本人離れしたプロポーションだな。マチュー王子と並んでも全然見劣りしない。ただ、ローズアダージョは、表情がまるで無くて、腕の使い方や指先にも優雅さが無く、かなりがっかりした。その後のローズアダージョのヴァリエーションでは随分柔らかな表情や手の動きになっていたから、やはり緊張していたのだろうか。最後のグラン・パ・ド・ドゥの時に見せたような笑顔で全幕通して踊ってくれていたらきっと印象も随分と違っていただろう。マチュー・ガニオに関しては、あんなにも見せ場が無くてはどうにも仕様があるまい。もともと眠りは王子の見せ場が少ないのに森の場面がほとんどリラの精との妙なマイムなのだから退屈してしまった。しかも、オーロラの眠るお城へ歩いて行くデジレに茶色いボロ布を纏ったような妙なダンサーが一列に並んで先導する??な踊り。貧乏臭いなどと言ったら失礼だろうか。マチューのデジレ王子は、いつの日か、森の中で王子様が長々ソロで踊りまくるヌレエフ版で見たいものだ(爆)あぁ、やっぱり文句ばかりが出てしまった(笑)でも、意外なお楽しみもあったぞ。ローズアダージョの4人の王子が高岸直樹さん、木村和夫さん、後藤春雄さん等東京バレエ団の看板ダンサー達だったのだ。眠りには男性ダンサーの活躍する場面が無いからかも知れないがなかなか贅沢な配役だった。とりわけ高岸直樹さんは、発するオーラが他の方と全然違う。身のこなしも表情もまさにノーブルそのもの。出て来た途端に目が釘付けになってしまった。きっと、あんなアクシデントさえなければ、高岸王子がオーロラ姫の婿に決まっていたに違いないのに!と残念に思わせる程の素敵なお姿でした。
2005.08.20
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自分でも意外な展開なのだが、どうやら私はルジマトフが好きになってしまったらしい。初めて映像でルジマトフを見たのはガラ公演でのジゼル第二幕。深い情念を感じさせて素晴らしいと思ったがどちらかと言うと苦手なタイプかもと思った。その後、ドン・キホーテのDVDで若い頃の踊りを見た。素晴らしいテクニックと美しいラインに感心したが発するオーラがなにやら物狂おしくてやはり苦手だなと思った。ところが、このドン・キの映像を何度も何度も見ているうちにだんだん、このくらいやってくれないと物足りないなと思い始めた。そして、キーロフの海賊のDVDで彼のアリを見て完全にこうでなければいけないと確信した。コンラッド、メドーラと踊る有名な洞窟のパドトロワでも彼だけが別の世界にいる。雰囲気が彼だけ違うのだ。そんな独特のオーラに目が離せなくなってしまった。こんな風に、最初は苦手だと思っていたのに次第に惹かれついにはファンになってしまうという経験は過去にもある。ヌレエフとマラーホフだ。この三人に共通するのは、自己愛の激しさだろうか。あまりのナルシスト振りに淡白な私は最初引いてしまう。しかし、ひとたびそのナルシズムの魅力に囚われたなら普通にかっこ良いくらいではもう満足できなくなってしまうのだ。そして、昨日、ついに生でルジマトフを見て彼の放つ圧倒的なナルシズムのオーラに完全に魅せられてしまった。普通、どんなに有名なダンサーでも、生の舞台を見ると人間臭さを感じたり、現実の世界を共有している実感がするものだ。しかし、ルジマトフは、そこにいながら生身を感じさせず遠い別の世界にいるようだった。眼差しは確かに客席を見ているのだが、その目に私達は映っていない。違う何かを見つめているような、一種の近寄り難さ、孤高の姿を見る思いだった。特に、ラ・バヤデールのソロルは本当に素晴らしかった。自分の保身のために女性を裏切ったとんでもない男のはずなのに、ルジマトフが演じるソロルは時に神々しく、途中涙がこぼれそうになったほどだ。相手役のシェスタコワも彼の世界と一体となり二人の醸し出す雰囲気はこの世のものとは思えないまさに精霊の世界のそれだった。このラ・バヤデールにあまりに感動してしまったので、パキータでの打って変わった粋なルジマトフを見てもソロルの影を追ってしまうという不覚を演じてしまって勿体無かった(笑)さすがに年齢もあって、ジャンプの高さなどはちょっと物足りない感じもあったが、たっぷりと見栄を切ってみせるカッコ良さで全てチャラにしてしまう。きっとこれを見たくて、ファンは彼の舞台に足を運ぶのだろうなと納得した。昨日の公演で見る限り、思っていたより顔も身体もふっくらして、化粧も映え、美しい姿だったのも嬉しかった。
2005.08.15
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本当はコジョカルのシンデレラが見たかったとか、王子様はプトロフがいいなとか、義理の姉がアンソニー・ダウエルじゃないとか、欲を言えば限が無い。日曜のマチネしか都合がつかず希望通りのキャストで見られなかったのは残念だったが、幕が開いたら、そこにいたのは安定した完璧なテクニックで踊るシンデレラのリャーン・ベンジャミン、堂々として気品ある王子のヴァチェスラフ・サモドゥーロフ、芝居心たっぷりの義理の姉達だった。ロイヤルバレエの層の厚さに改めて感心し世界トップレベルのバレエ団の力を見せ付けられたような気がした。リャーン・ベンジャミンのシンデレラはとても軽やかだった。小柄だがとてもバランスの良いプロポーションで踊り方も切れが良く私の好きなタイプだ。王子のサモドゥーロフはがっちりした身体でちょっと重そうな気もしたが、他の男性ダンサーと並んでも彼だけひときわ気品が漂っていたのはさすがだった。それから、日本のバレエ団の公演と決定的に違うと思ったのは主役でない男性ダンサー達もみな揃って素敵だった事だ。お陰でとても贅沢な気分になった(笑)それにしても、ロイヤルバレエのシンデレラは本当に美しい。衣裳の色合いも実にセンスが良くて素敵だし舞台がきらきらと輝いているように感じる。特に素晴らしいかったのは、私が大好きなおどろおどろしいワルツの音楽に乗って輝く馬車でシンデレラがお城へと走り去る一幕の幕切れ。二幕の舞踏会で王子の腕に抱かれてポーズを取るシンデレラとそれを取り囲む貴婦人や妖精達がハの字型に並ぶ場面。時計が12時を告げてボロ着姿に戻ってしまい慌てて逃げ去るシンデレラが落としたガラスの靴を拾い上げる王子と騒然となる舞踏会場の二幕の幕切れ。晴れて結ばれたシンデレラと王子が手を取り合い妖精達に祝福されて金色の紙吹雪が頭上に舞い散る三幕の終わり。どの場面も夢のように美しく心に残る。それと、三幕冒頭で妖精達の持つ星型のライトのついた杖が真っ暗な舞台にペンライトのような光を灯す場面も幻想的だった。惜しむらくは、セットが少し簡単で軽量な感じがしたことと、大道具が移動するゴォーゴォーガラガラいう音がして興醒めだった事だ。これは、コヴェントガーデンであれば生じなかった問題なのだろうか。
2005.07.10
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ザハロワ&ウヴァーロフの主演で新国立の「ドン・キホーテ」を見た。このコンビで見るのは「ライモンダ」「眠れる森の美女」に次いで三度目だが今回が一番良かった。二人ともテンションが高くて溌溂としていたように思う。それが「ドン・キホーテ」という底抜けに明るい演目による開放感から来たものなのか、この日はNHKのテレビカメラが入っていたからそれを意識していつにも増して頑張ったせいなのかは分らない(笑)ザハロワはやはり素敵だ。彼女がアラベスクすると、他の人とは別のことをしているのかのような錯覚を起こしてしまう。長すぎて時に持て余しているかのように見える手足だが、ポーズの美しさに果たす効果は絶大だ。ウヴァーロフはお行儀の良いバジルだった(笑)今回の衣裳は黒だったから身体も締まって見えてかっこいい優男ぶり。いつもの少々もさっとした感じもお転婆なキトリの尻に敷かれた王子様ではない普通の町の若者っぽくてむしろ良かった。いづれにしても、長身で美形の二人があんなに弾けてしまったら、日本人のダンサーは皆貧相に見えてしまう。新国立のメンバーにはちょっと気の毒だったかな。特に、夢の場で、ザハロワの180度以上上がる豪快なグランジュッテの後に続かなければならなかった森の女王の川村真樹さんや、第三幕のグラン・パ・ド・ドゥで客席がブラボーの大歓声で二人を賞賛する中ヴァリエーションを踊らなければならなかった寺島ひろみさんや本島美和さんはきっと大変なプレッシャーを感じていただろう。それにしても、「ドン・キホーテ」を日本人がそれらしく上演するのは本当に難しいのだとつくづく感じた。一幕の町の広場の場面など、がやがやした賑やかな様子がいまひとつ感じられない。何だか大人しくてお上品なのだ。町の娘達もジゼルの村娘かと思うような小奇麗さだった。二幕の夢の場などは綺麗にまとめられるのだが、ラテンの雰囲気(笑)を東洋人が出すのは所詮無理な事なのかも知れない。街の踊り子の真忠久美子さん、派手な見せ場なのにかなり物足りなかった。ポワントが時々ドゥミのように見えたのは気のせいだろうか。アスィルムラートワと比べようとは思わないが、彼女にはもっともっと精進して欲しい。期待しているのだから。今回の舞台は8月21日に放送される。私のお奨めの見所は、何と言ってもザハロワのグランフェッテ。物凄い速さで回り始めるた時もハラハラしたが、その後右に左に軸が動くスリリングな状況で、なんとドゥーブルまで交えてまさにハラハラドキドキ、最後まで強引に回りきったところが何ともお見事でした(爆)これが世界の強さなのかも・・・。
2005.06.27
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先週、今週と2週にわたりバレエ音楽の特集。新国立劇場バレエ団のソリスト達がゲスト出演して有名な場面を踊った。新国立劇場バレエ団を応援している私としては、全国ネットの番組に若手が出てパフォーマンスをするのはとても良い宣伝になると期待していた。特に、このバレエ団は、国が後押ししてバレエの普及とレベルの向上を図っているのだから、是非とも頑張ってもらいたかった。しかし、見終わって、正直な気持ち、ちょっと期待はずれだった。ダンサー達が全体的に小粒に感じられるのは体型的に劣る日本人として仕方のないことだと思う。綺麗に踊っているのに、ちんまりとまとまっているような損な印象を受けてしまうのも、感情表現が苦手な日本人の弱点かもしれない。だが、ところどころテクニック的に心もとないのは頂けない。ドン・キホーテのパ・ド・ドゥを踊った厚木三杏さんなどは容姿の点で決して外国人に負けないのだからもっと完璧な踊りで観客をアッと言わせて欲しかった。あんな風にぐらぐらしていては、所詮日本のバレリーナはあんなものと外国バレエの崇拝者に嫌味を言われるだけだ。若いバレリーナ達は、みなほっそりとして日本人としてはかなり美しい体型だと思う。でも、何故か寂しい印象だ。優等生的と言ってもいい。今回テレビ放送と言うことで、化粧が控えめだったのも返って逆効果だったかも知れない。素顔に近いナチュラルさゆえに、普段とは異次元の世界へトリップする準備を本人も見る側も十分に整えられなかったような感じもする。結局、志賀三佐江さんの踊りが一番安心して見ていられたというところに日本バレエの現状が集約されているような気がした。彼女の容姿は明らかに典型的日本人のそれだ。そのハンディを補って余りあるテクニックによって彼女はプリマとしての地位を掴んだ。しかし、日本のバレエも、そろそろ、その段階から次に進まなければならない。道は険しい。でも、私はこれからも応援しているよ。頑張れ!
2005.06.19
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昨日は久しぶりのバレエ鑑賞だった。演目は新国立劇場バレエの「眠れる森の美女」。アナニアシヴィリを見るために申し込んだチケットだったが、急な降板でザハロワに代わった。でも、私個人の好みで言えば、オーロラ姫にはアナニアシヴィリよりザハロワの方が合っていると思うので災い転じて福かな。ザハロワとウヴァーロフのコンビは去年の「ライモンダ」に次いで二度目の鑑賞。ザハロワは本当にバレエの神様に愛されているんだなぁと感じる。反張膝の足に見事な甲、美しい顔、足は天を突くほどに軽々と上がりポーズの一つ一つが絵のように美しい。1幕で彼女がその華やかな姿を見せた時はもう「待ってました!」状態。そのままローズアダージョに入ると、あの比類なく美しい音楽と相まって感動のあまり途中で涙がこぼれそうになったほどだ。ところが、いよいよクライマックスになり、拍手で彼女を称えるためにオペラグラスを膝に置いた時、信じられない事が起こった。アティテュードの姿勢のままで4人の求婚者と次々にプロムナードするローズアダージョ一番の見せ場で、ザハロワがバランスを崩しポアントが落ちて両足が床についてしまったのだ。すぐさま体勢を立て直すことも出来ず、そのまま両足で歩いて一回転し次に繋げるという、私がこれまで見たことのないような大失敗だった。その瞬間、あまりの出来事に、私などは落胆というよりむしろ放心状態のようになってしまったし、多分客席の方が彼女より動揺していたのではないかとさえ思えた。その後も小さなミスが目に付いたり、表情も心なしか硬かったのであまり調子が良くなかったのかも知れない。ザハロワほどのバレリーナでも失敗することがあるんだという驚きと、それほどに難しいローズアダージョの魅力を再確認した貴重な経験(?笑)だった。さて、今回も見るまで不安だったマリインスキー版に付き物の妙な鬘だが、見慣れてきたせいか、はたまた、私の視力が急激に低下してぼやけていたせいなのか、今回以前ほどには気にならなかった。舞台美術や衣裳も、前回見た時は大好きなパリオペのヌレエフ版の映像と比べてとても貧相に感じたが、今回は素直に楽しめた。新国ダンサー陣ではリラの精の前田新奈さん、白い仔猫の本島美和さん、赤ずきんのさいとう美帆さんが印象に残った。特に、リラの精は凛として気高く役柄に良く合っていたし、テクニックも安定していて私はとても素敵だと思った。さいとう美帆さんは可憐な容姿でなかなか良い。最後に、これは大変失礼な言い方だが、私がどうしても魅力を感じられないダンサーがいつもとても良い役で踊っているのは何故だろう。単に、私が素人だから、その方の素晴らしさが分からないのか。それとも、私のような素人には分からない何かが、バレエの世界にはあるということなのか。気になって仕方がない。
2005.04.30
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新国立劇場のHPを見に行ったら、12月の「くるみ割り人形」の王子役が決まっていた。マリインスキー劇場のレオニード・サラファーノフだ。以前から秘かに注目していたサラファーノフ君がやっと、やっと、王子様としてやって来る。嬉しい~~!彼を初めて見たのは、随分前にNHKで放送されたサンクトペテルブルグ建都300年記念のガラ公演だった。ヴィシニョーワを相手にラ・バヤデールのソロルを踊った若手ダンサーは私好みの細身の長身。上着の袖がパフスリーブという驚くような衣裳(笑)にも拘らずみょうちくりんに見えない気品にひと目でファンになった。惜しむらくは、口元がちょっと締りがないのだが・・・(爆)いつか、生の舞台で彼の踊る姿を見てみたいとずっと楽しみに待っていたのだが、それがついに叶うのだ。しかも、くるみの王子様なら、初々しい彼の雰囲気にきっとぴったりに違いない。しかし、ここで難題。もともと今回の新国立のくるみはヴィシニョーワとファジェーエフの日に行こうと思っていたのだ。サラファーノフ君の王子も見るとなると、両日通うのか?う~ん、マリインスキー版のくるみを続けてみるのはちょっと苦しい・・・(^^;サラファーノフ君の舞台写真はこちら2003年の「ラ・バヤデール」です。ニキヤはザハロワ。この時の衣裳はパフスリーブじゃない(笑)
2005.04.26
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今回「ドン・キホーテ」を購入したのも、実は必要があってのことだ。手元には、バリシニコフが踊ったアメリカンバレエシアターのものと、ウヴァーロフとステパネンコのボリショイバレエ日本公演のビデオがあった。しかし、アメリカンバレエシアターのものは、どうも私の好みに合わない。バリシニコフの踊りは超絶技巧炸裂ですごいけど、演出や舞台の雰囲気が良くも悪くもアメリカっぽくて軽い感じがするのだ。その意味で、ボリショイ日本公演の映像はなかなか気に入っていた。ところが、私がヘマをしてビデオを壊してしまったのだ(汗)一応直したことは直したのだが、一部の映像に傷がついてしまい、それで、別のバレエ団のドン・キも見てみようと思い注文することにした。その際、悩んだのは、パリオペのヌレエフ版にするか、ルジマートフの踊るキーロフ版にするかだった。私の好みとしてはパリオペなのだが、購入者のレビューを読むと、パリオペは上品過ぎてドン・キのがやがやした雰囲気が出ていないとあり、キーロフの映像は必見との評価だったので、一抹の不安を抱きながらもキーロフの方を注文した。果たして、不安は的中した。キーロフの映像は暗い。前回購入した白鳥の湖と同じ感じだ。カメラアングルも顔を取ろうとするから、つま先が見えなくてイライラする。これも、白鳥の時と同じだ。衣裳も私の好みではないし、町の娘達の感じが水商売の女のようなのも嫌だ。グラン・パ・ド・ドゥのキトリのヴァリエーションが一般的な扇を持つものでないということは承知の上で買ったのだが、やはり物足りないと感じた。私はもともとあのヴァリエーションがあまり好きではないので、こんな気持ちになるとは、自分でも意外だった。お目当てのルジマートフだが、う~ん、これは好みの問題としか言いようがない。彼は日本に熱狂的なファンが大勢いると、以前NHK・BSで放送された「ロシアバレエのスターたち」でも紹介されていた。テクニックも素晴らしいし、スタイルもいい、カリスマ性もあるから女性達が熱狂するのはすごく良く分かる。でも、私は・・・。まぁ、単なる好みの問題ですね。それで、相変わらず、ところどころ傷の入ったボリショイのドン・キを見ているという訳だ。パリ・オペってどうなんだろう。そっちも買っちゃおうかな。
2005.03.11
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またまた調子に乗って激安DVDを購入した。今回は、ロイヤルバレエの「くるみ割り人形」、キーロフバレエの「ドン・キホーテ」、そして、アメリカンバレエシアターのガラ公演だ。このうち、ロイヤルのくるみは、必要があって去年の10月に探し回り、国内では在庫切れだったのでアメリカのアマゾンに頼んだ。ところが、一向に入手のめどが立たず、駄目でもともとのつもりでアマゾンをキャンセルし例の激安ショップに注文したところ、何とすぐに発送してくれたといういきさつの代物。一体どうなっているのだろう。配役は、アリーナ・コジョカルのクララ、吉田都の金平糖、ジョナサン・コープの王子、アンソニー・ダウエルのドロッセルマイヤー。くるみ割り人形は素敵な青年に変身するが、金平糖とグラン・パ・ド・ドゥを踊るのは別の王子様だった。人気の高いコジョカルは可憐な容姿でクララにぴったり。そのせいか、第二幕で吉田都が登場した時は、あまりの外見の違いに正直言って一瞬うっとなってしまった。だが、容姿のハンディ以外は安定したテクニックと丁寧な踊りでとても楽しめた。相手役のジョナサン・コープとのバランスという意味でも、吉田都の手足の短さ、頭の大きさは悲劇的ですらある。それだけに、彼女がプリンシパルとして舞台の真ん中に立つために技術的にどれほど努力しているか想像すると、同じ日本人として心からの賞賛を送りたいと思った。ただ、このくるみで一番目立っていたのは、クララでも金平糖でもない。ドロッセルマイヤーだ。これはきっとアンソニー・ダウエルがもう自分が出たくて出たくて仕様がなくてこのような演出にしたのではないかと思えるほどで、ほぼ全篇にわたってうろうろしている。魔法が使えるという設定を前面に出して、ツリーを大きくするのもお菓子の国へ連れて行くのも、お菓子の精達を呼んで踊らせるのも全部ドロッセルマイヤーだとはっきり分かるように構成している。そう言えばDVDのパッケージもアンソニー・ダウエル演じるドロッセルマイヤーの写真だったな。まぁ、そもそも荒唐無稽なストーリーだから、全ては魔法使いのおじさんがクララに見せた夢だったという流れが誰にでも分かる形で提示された方がすんなり理解できる気もする。去年の10月にこのDVDを探し回ったのは、オーソドックスなくるみが見たかったからだ。手元にあったビデオは、ニューヨークシティバレエの映画とベルリン国立歌劇場のもので、いづれもかなり変わっている。その点でロイヤルのこの舞台はほぼ私の期待通りだったと言える。映像も明るく綺麗でDVDの特性も活かされた満足の一本だった。
2005.03.10
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昨夜のNHK教育テレビ「芸術劇場」で放送されたパリ・オペラ座バレエ団の「ラ・シルフィード」は、いろいろな意味で、私にとって大変にショックなものだった。この舞台映像はつい最近DVDとして発売されたものだ。主役のジェイムスを踊っているのが私好みのほっそりとした超美形マチュー・ガニオなので当初は購入しようかとも思った。しかし、パリ・オペのラ・シルは、現在世界で広く上演されているブルノンヴィル版ではなく、パリオペ初演時のタリオーニ版を復刻したラコット版であることから逡巡してしまった。折りしも、マチュー・ガニオが客演した東京バレエ団のラ・シルでラコット版を見る機会があり、その際、これは恐らくDVDで何度も見直したいとは思わないだろうと感じた。運良くこのDVDをNHKがテレビ放送することを知り、それならビデオに録画すれば良いだろうとケチなことを考えて結局購入を取り止めてしまったのである。そうした経緯を経ての昨夜の放送である。果たして、そのパリオペによる「ラ・シルフィード」であるが、結論から言うとラコット版がこんなに素敵だったとは!と驚くほどに見応えがあった。最初はシルフィード役のオーレリ・デュポンが何だか意地悪そうで、シルフィードの無邪気な感じや生身の人間ではない空気の精のはかなさには合わないと思った。しかし、高度な技術に裏打ちされた体重を感じさせない軽やかなステップに次第に魅了され、本来マチュー・ガニオを見ることが目的であったにもかかわらず、第二幕などはすっかりオーレリ・デュポンの踊りに見入ってしまった。特に、ジェイムスにスカーフをかけられ息絶えてしまう場面で、予想だにしなかった状況にショックを受け激しい後悔の念に苛まれるジェイムスを、断末魔の苦しい息の下で優しくいたわるオーレリの姿には涙すら滲んだほどだ。正直言って、踊り手が異なるだけでこれほどに作品の深さが違ってしまうとは衝撃的だ。東京バレエ団の公演で私が見た日にシルフィードを踊ったのは斉藤友佳理だ。彼女はこのシルフィード役を当たり役にしている。世間の評価も高い。でも、私はどうも彼女のなよなよとしたシルフィードが苦手だ。それを、人は、はかなげと感じるのかも知れないが、私には退屈なだけだった。私は、クラシックバレエは激しいものだと思っている。お姫様であろうと妖精であろうと、その踊りがどんなに優雅に見えても、本来激しい体の動きを要するものだと思う。にも拘らず、何事も無いように涼しげな笑顔で踊るからこそ素晴らしいのだ。だから、くねくねと雰囲気で見せるバレリーナより、多少生硬な感じはしても、テクニックでぐいぐい押すタイプの方が私の好みには合っている。オーレリ・デュポンのシルフィードは、まさに、その意味で感動的だったのである。お目当てのマチュー・ガニオはアップで見てもやはり美しかった。ブルノンヴィル版ではなかったが、素晴らしい足さばきを十分に披露する場面もあったし、ジャンプも高い。そして、何より、若さが輝いている。どんなに跳んでも回っても疲れることを知らないのではないかと思わせるほどの若いエネルギーに満ちている。次は何を踊るのだろう。王子様など踊られたら、もう、たまりませんなぁ(笑)でも、お楽しみはもう少し先に取って置いて(?)、「ラ・バヤデール」のソロルなどどうだろう。ターバンが似合いそう(爆)このパリ・オペの「ラ・シルフィード」はDVDを購入することにしよう。今のところ日本でしか発売されていないようなので、アメリカの激安DVDショップに出るまでもう少し待ってから(爆)
2005.03.07
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新国立劇場バレエ研修所の第2期生修了公演を見てきた。第1期生による初めての修了公演の時は往復葉書による抽選にはずれた。今回は電話抽選に簡単に当たってしまい、おや?と思ったが、行ってみて何故簡単にチケットが手に入ったのか分かったような気がした。ちょっと中途半端な構成で、見応えという点では、生徒さんには気の毒だが、期待はずれだった。しかし、これは勿論先生達の責任だ。生徒の魅力を最大限に引き出してやるのは先生の仕事だから。公演は三部構成。第一部はシアトリカル・ダンスと銘打ち、短い台詞の付いた舞踊劇。シェイクスピアの真夏の夜の夢をモチーフに、メンデルスゾーンの同名曲を使って、研修所の講師がオリジナル作品を作った。これが、何とも・・・、正直言って学芸会のようだった。私は日本のミュージカル俳優とて本当に上手い人は数少ないと思っている。まして、20歳そこそこで演劇に関しては素人の研修生達に見応えある芝居をしろという方が土台無理な話だ。しかし、踊りになると俄然活き活きとして、身体が何よりも雄弁に語りだす様子を見ると、やはり台本に問題があったのだなと思わざるを得ない。難しい課題に真摯に取り組んだ研修生達が気の毒にさえ思えた。第二部は、研修生自身の創作作品から特に選ばれた2作品とバリエーション4作品の披露。女性はみな抜群のプロポーションで技術も安定しており、水準の高さを感じさせた。ゴパックを踊った男性が高いジャンプで会場からもひときわ大きな拍手が送られていたが、彼の踊り方はもうプロ並み。このまま新国立に入っても十分やっていけそうだ。第三部は、クラシックバレエ。「ライモンダ」から結婚式の場面だ。新国立のダンサーが6人ほど応援に来て、華やかなグラン・パが踊られた。これは、まだまだ未熟だ。でも仕方がない。研修を終えたばかりの若者が踊りこなせるような演目ではないから。技術は十分にあると思うが、独特のポーズに代表される“かっこよさ”がいまひとつ足りない。これからもっともっと精進して、いつかの日かカッコ良く決めてねと心の中で呟いた。全ての演目が終わり、カーテンコールの幕が下りたその後で、舞台上では研修生の一人ひとりが感謝の言葉を述べた。みんな涙でぼろぼろだ。若い人っていいなぁ。客席ももらい泣き。牧先生も泣いていた。そんな中、最後まで泣かなかった二人がすごく印象的だった。一人はゴパックの彼。もう一人は、恐らく2期生の中で最も期待されていると思われる女性。容姿も良く、今回の公演でもすごく目立っていた。二人にとって、今日の日は単なる通過点に過ぎないのだろう。頑張れ。あと、これは言い難い事だが、どうせこのHPを見ている人なんてわずかしかいないから思い切って言わせてもらおう。ライモンダのジャン・ド・ブリエンヌ役を踊った新国ダンサーにがっかりした。特に、私の大好きな、手を頭の後ろに当てたポーズで後方ジャンプする場面が全然別のもっと簡単な踊りになっていたのはどういうことだろう?こういう場で研修生の手本にならなくて、何のプロ、何のゲストだろうか?人選に大いに疑問を感じた。
2005.02.14
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楽しみにしていたマチュー・ガニオを見てきた。東京バレエ団公演「ラ・シルフィード」。シルフィード:斉藤友佳里、ジェイムス:マチュー・ガニオ、エフィー:井脇幸江、そして一幕のパ・ド・ドゥには上野水香、スター総出演だった。異例の飛び級でスジェからエトワールに昇進したマチュー・ガニオは、本当に美しい青年だ。ギリシャ彫刻のような彫りの深い顔、長身に長い手足、農夫の役でも貴族のような気品、高いジャンプ、これからずっとこの若者がバレエダンサーとして成熟していく過程を見守っていけるのかと思うと、もうそれだけで幸せだ。東京バレエ団のラ・シルフィードは、この作品で初めてトゥシューズというものを履いて踊ったマリー・タリオーニの父親の振り付け・演出を復刻したラコット版だ。今回、マチュー・ガニオを見たいという思いばかりが先走って、東京バレエ団の「ラ・シルフィード」がブルノンヴィル版でないことを私は事前に承知していなかった。開演前のロビーで第一幕のパ・ド・ドゥに上野水香が出演すると配役表にあるのを見て、あれ?第一幕にパ・ド・ドゥなんてあったかな?と不思議に思った時気付くべきだった。実際に幕が開いてからは、あれ?あれ?の連続。そして、第一幕の終盤にジェイムスのあの有名なバリエーションを含むキャラクターダンスが全てなかった時の私の落胆はもう言葉では言い表せない。これで、第二幕を見る楽しみは完全に失われたとさえ思ってしまった。ブルノンヴィル版の森の中のシーンは、音楽、主役二人のパ・ド・ドゥ、コールド、全てが高い完成度を誇っていると私は思う。大好きな場面だ。それなのに、見られないなんて。森のシーンには、ジェームスが素晴らしい足さばきを見せるバリエーションもある。うう・・・、マチュー君でそれが見られると楽しみにしていたのに。もう、こうなったら、後はただマチュー・ガニオを見ることだけを唯一の楽しみにしようと心を決めた。そして、彼は私のその思いに十分応えてくれた。ソロで激しく踊った後、少し苦しそうに顔を歪めた様子も、カーテンコールでの少年のような明るい笑顔も、全てが可愛いマチュー君だった。次に彼を見る時は、どんな大人の男性になっているだろうか。楽しみに待つこととしよう。
2005.02.11
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ついに見つけましたよ。Amazonより安くDVDが買えるところを。勿論、リージョンコードは1です。ふふふ、これでやっとリージョンフリーのDVDプレーヤーを買った甲斐があったというものです。今回購入したのはパリオペの「ラ・バヤデール」とキーロフの「白鳥の湖」。各16ドルちょっと。激安ですな。中古ではありませんぞ。新品。うひょひょ。早速見ました。正直言うと、不安でした。ちゃんと写るのかいな?なんて。でも大丈夫でした。ほっ。「ラ・バヤデール」は1994年の舞台。若き日の(?)ローラン・イレールが素敵です。イザベル・ゲランのニキヤ、プラテルのガムザッティ、そしてイレールのソロル、この三人があまりに美しくて見惚れてしまいました。ただ、イレールの衣裳がちょっともこもこしていて身体のラインが良く分からない。インド風にこだわっての事でしょうが、ダンサーの魅力には彼らの肉体そのものも含まれていると思うのでちょっと残念です。この「ラ・バヤデール」の振り付けはヌレエフの遺作となった仕事。DVDの冒頭ではヌレエフへの献辞のあとオペラハウスの貴賓席に彼のサイン入りの写真とオペラグラスが添えられ、この舞台とそれを記録したDVDがヌレエフへ捧げられたものであることを感じさせます。今更ながら彼の偉大さを思いました。キーロフの「白鳥の湖」は原盤が古すぎてDVDで見る意味がないほど映像が悪く、がっかり。メゼンツェワとザクリンスキーの1972年の舞台です。豪華絢爛なパリオペの舞台の後だと、キーロフと言えども貧相に見えてしまって可哀想。衣裳が先日見た新国立の白鳥と同じだったので(一部違うものもありますが)ひとりでウケてしまいました。本当に借りていたんですね。(当たり前か)最近のキーロフはこの衣裳を使っていないようだから、相当古かったんだろうな・・・などと、妙なことまで考えてしまいました。主役二人は私の好みではないなぁ。特に、ザクリンスキーのたくましい太ももが駄目です(笑)でも、きっと見慣れてくれば(?)、違う感想を持つかも知れません。第二幕第一場の幕切れ(オディールに騙されたと知る場面)の表情がとても良かったので。(謎)
2005.02.09
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米国アマゾンに注文していたDVDが先週やっと届いた。と言っても、最初に注文したものではない。あれは、未だに発送すらされていない。まったく、どうなってるの?それで、待ちきれずに追加注文した方が先に届いたのだ。今回届いたDVDは、パリオペラ座の「パキータ」とパリオペラ座バレエ学校の「コッペリア」。米国製なのにリージョンオールなんて書いてある。変なの。「パキータ」は全幕で見るチャンスのほとんどない作品だ。でも、それも無理からぬことだというのが良く分かった。結婚式のグラン・パだけが傑出していて、あとは一幕のパ・ド・トロワ以外、ほとんど見るべき場面も聞くべき音楽もない。でも、このパ・ド・トロワを踊った男性ダンサーがすごくチャーミング!誰だろう?クレジットに出ていないようなのだが。そして何より、リュシアン役のホセ・マルティネスがとっても素敵なのだ。彼はほっそりとしてノーブル、強烈な個性というより線の細い大人しい感じだ。どうも、私はこのタイプの男性ダンサーが好きらしい。それで、なるほどと合点がいった。これまでずっと、みんなが騒いでいるスターダンサーの話題にいまひとつ乗れず淋しい思いをしていたのだが、よく考えてみると、そのダンサー達はいづれも男性らしい魅力に溢れている。だから私は食指を動かされなかったのだ。まっ、私がどんな好みだろうとどうでもいい話だけれど(笑)という訳で、私はこのDVDにとても満足している。「パキータ」のタイトルロールを踊っているのはアニュエス・ルテステュ。この人は体格がいいのかな。猫背気味なのも気になった。顔も淋しげな怖い系だし、あまり好きなタイプのバレリーナではない。また、この版では、いつもグラン・パで踊られる有名なヴァリエーションが何故か全てカットされている。パキータが踊るヴァリエーションも通常のものと違う。(ソリストの踊るヴァリエーションの中のもの)多くのファンが楽しみにしているお馴染みの場面をわざわざカットする意図が解せない。私も、パリオペのバレリーナ達であのヴァリエーションが見てみたかった。残念だ。「コッペリア」の方は、マチュー・ガニオ見たさに買ったのだがこれは失敗だった。学校公演のためなのか第三幕が丸ごとカットされている。ガニオ君も妙な顔してマイムをするばかり、ちっとも踊らない。でも、このDVDにはおまけ映像が付いていた。日本では「エトワールへの道」というタイトルで販売されているパリオペラ座バレエ学校の学校案内のような映像だ。レッスン風景の場面で出演している当時の生徒の中に、オーレリー・デュポン、ニコラ・ル・リッシュ、ホセ・マルティネス等、今をときめくエトワール達が写っていてちょっとしたお宝映像になっている。そうとは知らずに見ていた時から何故か目を惹く子だなと感じていたので、やはり・・・と納得した。まさに、栴檀は双葉より芳し、だ。[追記]パ・ド・トロワを踊っていた男性はエマニュエル・ティボーでした。最後のクレジットにちゃんと載っていました(汗)当時スジェ、今はプルミエール・ダンスールに昇格しています。
2005.01.16
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先日衝動買いしたフェリとコレーラの「ロミオとジュリエット」のDVDを何度も見ているうちに、この作品がますます好きになってきた。実は、私は、この「ロミオとジュリエット」というバレエがあまり好きではなかった。以前、といっても6年程前だが、NHK・BSでパリオペラ座の公演が放送された時も、マニュエル・ルグリのロミオであったにも拘らず、録画したものを一度だけ見て消してしまったくらい興味がなかった。今思えば、なんと惜しいことをしてしまったのだろう。この作品を好きになれなかった理由は、恐らく私の性格によるものだと思う。よく言えば真面目で潔癖症、照れ屋で淡白な性格の私には、あの、じわ~~、べと~~っとした世界(笑)は、すごく苦手だったのだ。特に、有名なバルコニーの場面など、とても正視できなかった。息継ぎなく旋律が続いていくようなプロコフィエフの音楽も息苦しいと感じた。今では、うねるように展開するドラマティックなこの音楽に陶酔しているというのに、当時は心地よいとはとても思えなかったのだから不思議だ。そんな私がこの作品の魅力に気付いたきっかけとなったのは、「ダンサーズドリーム、ルドルフ・ヌレエフの世界」というフィルムだった。エリザベス・モランとマニュエル・ルグリが主演するパリオペラ座の「ロミオとジュリエット」のリハーサル風景を中心に、ヌレエフの振り付けや作品自体の解釈などを交えつつ構成されたこのフィルムは非常に興味深いものだった。その後、散々悩んだ末に(笑)、生の舞台を見に行き、意外にも最後まで熱心に鑑賞してしまった自分に、自分で驚いた。フェリとコレーラのロミジュリを見て、また「ルドルフ・ヌレエフの世界」を見てみた。いいなぁ、パリオペのロミジュリ。う~ん、何故消してしまったのだろう。DVD出てるかな。探してみよう。
2005.01.14
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「やっと会えたね・・・」これは、ある流行作家が後に彼の妻となった女優に、雑誌の対談の仕事で初めて会った時に言った言葉だ。今日、ヴィシニョーワの白鳥を見るために新国立劇場の客席に座った時、私も同じ言葉を言いたくなった。これまで何度も彼女の舞台を見たいと思いながら、何故か都合がつかずにチャンスを逃してきたからだ。そして、第一幕・第二場でついにヴィシニョーワが現れた時、最初の印象は・・・、「随分たくましいオデットだな」(笑)顔も急遽代役が立ったのかと思ったくらい違って見えるし、眉を寄せ苦しげな表情で踊る姿は、何だか身体が強張っているような感じだ。しかし、その彼女が、第二幕のオディールになって登場した途端、本来の華やかさで劇場を圧倒した。不敵で妖艶な笑い顔は、いつものヴィシニョーワだ。途中ちょっとふらつく場面もあったが、力でぐぅっと立て直し踊りぬく強さ。筋肉質の身体もかっこいい。見ているうちに、実はこちらが本当の姿で、白鳥のオデットに姿を変えて王子を騙していたのではないかと妄想してしまった。そうなると、第三幕のロットバルトとの戦いも、王子はただおろおろと走り回るばかりで、対決したのはヴィシニョーワだったのではないかとさえ思えてしまう。大きな拍手と歓声の中繰り返された何回ものカーテンコールの最後の幕が降りる時、ジークフリート役のコルプの肩に顔を寄せて幸せそうに微笑んでいたヴィシニョーワの姿がとても素敵だった。今回、初日の感想をあちこちのサイトで読んでおいたので、コルプのモンチッチのような髪型もオケの金管のひどさもあらかじめ覚悟して行った。コルプの髪型は意外にもあまり気にならなかった。彼はごつい顔に似合わず王子様らしい気品があるから、舞台ではそちらの方が勝ったのかもしれない。でも、オケは何とかしろと言いたい。コール・ド・バレエはいつもながら美しい。特に、白鳥の湖はその実力の見せ所とも言うべき演目だったから、いつにもまして感動した。カーテンコールの時、ヴィシニョーワとコルプが両袖に寄り、コール・ド・バレエに敬意を表する場面があったが、社交辞令ではなかったかも知れない。それほどに素晴らしかった。最後に、この公演でも、私が秘かに応援しているダンサーが、前回のくるみに続いて大きな役を踊った。嬉しいことだ。これからも、一歩一歩、着実に実績を積んでいって欲しい。
2005.01.09
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日本で売られているCD、カセット、ビデオ、DVDはあまりに高い。これまで、CDやビデオはアメリカで買って来てもなんら問題はなかった。しかし、DVDだけはリージョンコードなるものがあって、ソフトとハードのリージョンコードが同一のものでなければ再生できないという。つまり、海外で生産されたソフトを日本製の機械で再生することが出来ないようになっているのだ。リージョンコードは全部で6つ。例えば、日本は2、アメリカは1、ヨーロッパは2、東南アジアは3といった具合だ。当然、アメリカのAmazonでDVDを買っても、日本製のハードでは見ることが出来ない。そこで、買いましたよ。リージョンフリーというDVDプレーヤーを。つまり、どこのエリアで作ったソフトでも再生することができるという代物。ただし、これって法律違反ぎりぎりみたいだが。ちなみに、本来の仕様はリージョンコード3に対応したもの。でも、試しに日本製のリージョンコード2のソフトを再生してみたところ、全く問題なく綺麗に再生できた。ふふ、しめしめ。それで、もう嬉しくなって、早速米国のAmazonにバレエのソフトを注文した。奮発して(ってそれ程でもないが)航空便で。ところが、毎日楽しみに自分の注文品の発送状況をチェックする度何故かどんどん延期になっている。何なの?一体。せっかちな私ははやる心を抑えきれず、何でもいいから早く見たくて、先日くるみを見に新国立へ行った折、フェリとコレーラの「ロミオとジュリエット」(於ミラノ・スカラ座)をほとんど衝動的に買ってしまった。この二人は、今年2月に新国立でもロミジュリを踊っている。私は残念ながらそのチケットを入手することが出来なかったが、代わりに若手有望株のコジョカルの日が買えたのでそれで良いことにしようと思っていた。ところが、何とそのコジョカルも怪我で降板してしまったのだ。何という不運。そして、その不運は舞台だけでは飽き足らず、DVDでまで私を苦しめる。このDVDは税込みで5000円以上した。ところが、購入後に米国Amazonで調べたら、特別価格で20ドルを切っているではないか!か、か、悲しい・・・。これでは、一体何のためにリージョンフリーのデッキを買ったのか分からない。もう・・・何やってるんだ、私は。ちなみに、このフェリとコレーラのロミジュリはなかなか美男ぞろいで良かった。コレーラは、若くて軽率で直情的で、とても魅力的なロミオだ。ジュリエットの婚約者もなかなかのイイ男だったので、あんなふうに嫌って狂言自殺までするなんて可哀想じゃないか!と腹が立った(笑)プロコフィエフの音楽はここでもドラマティックに鳴り響いていたけれど、ティボルトが死ぬ場面の迫力がいまひとつ物足りないように感じたのは、再生した時の音量が小さかったせいだろうか。
2004.12.25
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クリスマスなので、やはり「くるみ割り人形」は見なくてはいけません。もう少し若かったら、天邪鬼を気取ってわざと見なかったかも知れないが、歳を取ってその辺は丸くなった。それで、今年は新国立のくるみを見た。私は、基本的に新国立バレエを応援している。大金持ちなら個人の賛助会員になりたかったくらいだ。今回のくるみでは、前回の日記とはまた別の秘かに応援しているダンサーが初めて大きな役を踊った。それも楽しみで劇場へ足を運んだのだ。でも、今日の舞台は何だかなぁ・・・。まず、あのプリマはどういうことなのだろうか。マリインスキー劇場でもまだ主役を踊ったことの無い新人をわざわざ呼んで来る理由が分からない。確かに、ほっそりとして顔も小さく、いろいろな方が方々で書いておられるように将来の大器なのかも知れない。しかし、新国立劇場はそういう外国人が経験を積むためにあるのではないはずだ。技術的にも心もとなく、何よりヴァリエーションはあれでいいのですか?マリインスキーでどのようなVa.が踊られているのか知らないので、あまり決め付けた物言いは控えるべきと思うが、それにしても、チャイコフスキーが作曲した曲がかなり短縮されていたのは一体どういうことなのだろうか?さすがに、Va.の後にブラボーの声はかからなかった。正直ホットした。あれで、拍手喝采したら日本の客の程度を疑われる。可愛い金髪のバレリーナが踊れば客は満足するとでも思ったのだろうか。だとしたら、随分失礼な話だ。彼女に踊らせるなら、新国立のソリストに踊らせてあげれば良かったのに。何だか納得できない。それから、今回の「くるみ割り人形」はマリインスキー版ということで、「眠れる森の美女」に引き続き、またも妙な鬘を被っていた。これには、毎回本当に悩まされる。だって、似合わない事この上ないのだ。あれは、被らないわけに行かないのだろうか。雪の情景など、新国立の誇る美しいコール・ド・バレエが、ボンボンの付いたスキー帽(「ショーちゃん帽」と言われるもの)のような鬘のせいで台無しだ。薔薇のワルツにしても、女性が被っている触覚のような銀の飾りの付いた鬘を見ると気味が悪くて素直に酔えない。マリインスキーから鬘を借りるのは、頼むから止めて欲しい。そう思っているファンはきっと多いはずだ。
2004.12.23
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数年前から秘かにその成長を楽しみにしている若手ダンサーが、ローカルなジュニアバレエ団のくるみ割り人形全幕公演で王子様として舞台に立った。伸びやかな手足、軽やかなステップ、そして何より気品溢れる雰囲気が彼の一番の魅力だ。今回、女性ダンサーのサポートも予想以上にしっかり出来ていて、期待通りの成長振りに母のような気持ち(笑)で舞台を見守った。彼を初めて見たのは、あるバレエ教室の発表会だった。群舞の前列一番端で踊る背の高い青年に思わず目が留まった。誰だ?この子は。ただ者ではないぞ。何気ないのにノーブルな雰囲気が漂う彼の踊りはとても印象的だったのだ。早速調べてみたところ、その年の全国舞踊コンクールの予選通過者リストに彼の名前があった。その後は次々に大きなバレエコンクールで上位入賞し、スカラーシップを得て留学。帰国後は、周囲に盛り立てられて、ひたすら多くの舞台経験を積んでいくばかりになっている。今回のくるみはクララと金平糖を別のダンサーが踊る演出だった。クララは中学生、金平糖は大人の女性(と言っても二十歳くらい)、そして、王子は高校生。この年齢の配分がなかなか意味深長で、私はすっかり妄想の世界(笑)に浸ってしまった。クリスマスの夜、素敵な王子様と出会った少女。王子とクララのパ・ド・ドゥは私の泣きのウィークポイントだが、今回の若く初々しい王子と少女クララの姿は私の一つの理想形と言える。くるみ割り人形が突然王子様に変身して戸惑うクララを自分の腕に呼び寄せる王子は自信に溢れ凛々しい。そして、二人のパ・ド・ドゥはいつしか雪の松林の場面へと変わる。雪の精達の幻想的な踊りの後、粉雪舞う松林を王子の腕に抱かれて後にするクララ。その様子を舞台袖近くで静かに見守るドロッセルマイヤー。胸がきゅんとするような一幕の幕切れだ。第二幕は心弾むお菓子の国へのデート。でも、最後に王子は金平糖とグラン・パ・ド・ドゥを踊る。憧れの王子様が年上の女性と踊る姿を見るクララの胸にはきっと甘酸っぱい複雑な感情が沸いていたに違いない。(もう、かなり妄想入ってます。)楽しい宴が最高潮に達した時、ねずみがそっと中幕を引き始める。お菓子の精達は次々にその中へ消えてゆく。金平糖も、王子様も・・・。そして、少女は夢から覚める。王子様との楽しい冒険の旅が全て夢の中の出来事と気付き愛しげにくるみ割り人形を抱き寄せる少女。あぁ、いいねぇ、等身大の淡い初恋の物語だ。終演後、楽屋前の通路には彼のファンが小さな人垣を作っていた。律儀に写真撮影に応じる彼は、もうスターへの階段を上り始めているのだろうか。現在、彼は、日本を代表するダンスール・ノーブルと言われているダンサーから直接指導を受けているそうだ。彼がもっともっと大きな舞台で王子様として輝く日は、きっとそれ程遠くないだろう。あと5年後か?6年後か?いづれにしても、10年はかかるまい。
2004.12.20
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「くるみ割り人形」全曲のCDを買った。これまでバレエ音楽はあくまで舞踊と一体となってこそ真価を発揮するものだという信念(笑)から、映像と切り離して音楽だけを聴こうという気持ちにどうしてもなれなかった。家には家族が買った有名なバレエ音楽だけをピックアップしたCDがあるが、それを私が聴くことはほとんどない。ところが、今回映像なしで全曲を聴いてみて、改めてチャイコフスキーの音楽の素晴らしさに感動した。もっとも、舞台を見ているので、聴きながら頭の中にはその場面が鮮やかに浮かび上がってしまい、純粋に音楽だけを味わったとは言えないのかも知れないが。なかでも私にとって新しい発見であったのは第一幕だ。パーティーの場面が延々と続く第一幕は、私が苦手とする子役(笑)がマイムをしたりダンスをしたり、バレエとしては実につまらないと常々感じていた。しかし、音楽だけで聴くとそれは細やかにパーティーの情景が描かれていることに驚く。今更ながら凄いものだと感心することしきりだ。そして、私の大好きなクララと王子のパドドゥが踊られる部分、雪の情景のひとつ前の曲だ。いつ聴いても胸がいっぱいになる。美しく叙情的な旋律。私は基本的にクララを子役が踊るのは好きではない。しかし、この曲だけは少女の淡い思いが滲み出ているようで、大人のバレリーナが踊るより子役の方がぴったりくるように思える。醜いくるみ割り人形が実は素敵な王子様で、その王子様に連れられてお菓子の国に遊びに行くなんて、老若問わず女心がくすぐられるではないか(笑)夢見る少女が王子様と出会えた喜びを踊るこの場面は、たとえ未熟であっても(ただしテクニック的に劣るのは駄目だが)少女が演じる方が感情移入しやすい。去年見た牧阿佐美バレエ団のくるみでは、ハンサムな逸見王子と踊る子役のクララの姿に不覚にも(?)うるうるしてしまった。今年も「くるみ割り人形」の季節がやってきた。来月は2つの舞台を見に行く予定だ。一つは知り合いのバレエ教室の公演、もう一つは新国立バレエ。近年、暮れの第九とクリスマスのくるみは一種の年中行事化してしまって、正直、ちょっと食傷気味。それでも、クリスマスが近づくとくるみの公演が気になってしまう。難しい理屈は抜きにしてただ楽しい夢の世界に浸れる「くるみ割り人形」は、私のようなひねくれ者には必要なものなのかも知れない。
2004.11.26
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