Rock's cafe

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August 15, 2004
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彼女は、小さな、とても小さな町に生まれ、そこで12歳まで育ち、お父さんの転勤でちょっと大きな町に移ってから、中学校で初めて一人の男の子を好きになる。

サッカーが好きな、快活な男の子で、他の女の子と全く同じように、彼女は彼のことを好きになるのだ。でも、その恋はほのかな片思いで終わり、彼女が誰かと両思いになるためには、高校まで待たなくてはならない。

今度は一人教室で本を読んでいるような、静かな男の子で、みんなにそれほど注目される事もないが、偶然同じ本を読み、その感想を語り合ったことで惹かれあうようになり、少しの時間が経ってから恋愛が始まるのだった。

その恋愛は初々しくて、その分未熟で、二人はまるでほんの少し傷つけあうためだけにいつも会っていた。もちろんささいなことでケンカをし、仲直りをし、それでもいつしか心は静かに離れ、二人は別れてしまう。

やがて彼女は受験を経て大学生となったが、そこでは徹底的な三年間の空白が訪れる。来る日も来る日も、同じような、全く同じような生活が続き、ひたすら退屈な日常が絶え間なく流れていくのだ。

彼女は、その中で、何がしたいのか良く分からないが、それでも毎日何かしたくてうずうずしていた。周りの人と異なっていながらそれを乗り越えるような何かを。テレビや雑誌では彼女と同じ年か、若い人たちがどんどん世の中に出て行こうとしていたが、彼女はそれを見てあせってばかりで、実際は何も出来ずにいた。小説を読まなきゃ、映画を見なきゃ、勉強しなきゃ、恋をしなきゃ・・・、しなきゃいけないことはたくさんあったけど、結局何にもできなかった。

「何かをするというのは、本当に難しい」と、
              いつも頭の片隅で思いながら。

そして今日も、彼女は静かに眠りにつく。いつかそっと夜が明けていくのを待つように。







「彼女」は惑星「地球」の住人で、私たちが生命の自己発生と進化の過程を観測するために、十分な陽光・大気と水分を含む環境を整え設計したその惑星では、彼らの時間でいう数十億年の歳月を経てから、やっと生物の一部が微かなレベルで意識と感情を持ち、日常の生活に喜怒哀楽を感じつつ、何かを思考するようになっている。その環境に様々な変数を与えては、その変化の元で現れた影響に応じて、「彼ら」がそれをどう乗り越え、或いは堕落していくのかを観測しデータ化することが、ぼくと仲間の仕事だ。

彼女はぼくの管轄に属するヒト科動物の一人として、何も特別な存在ではない。しかし今日は、特別に彼女にだけ、とびっきりの素敵な恋をさせてあげる事にした。今寝ている彼女はまだ何も知らないが、さっきぼくが入力した変数によって、「明日」になり目を覚ました時から、彼女の人生を変える位の素敵な恋が始まるのだ。出会いから別れまで、それはそれは、彼らのもつ貧弱な思考と、さらに貧弱な言葉では表現できないぐらいの、燃え上がるような素敵な恋が。もしかして彼女はそれを「運命」と捉えて、少しは喜んでくれるだろうか・・・、と思いながら、ぼくは目の前に広がる、彼らが宇宙と呼ぶ巨大な電脳空間を眺めながら、ちょっと微笑んだ。

                         おわり





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Last updated  August 16, 2004 03:29:02 AM
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感想、または批評  
さわゆー さん
どういった立場で感想・批評を送ればいいのか分からない。一つの文学作品として思ったこと気付いたことを自分の考えと対比しながら書けばいいのか、それとも一つのママゴト的・同人的・自己満足的作品として、その出来を賞賛すればいいのか……。
とりあえず率直に読んで思った感想を述べると、
「読点の多さが太宰治のようで、自分のリズムとは合わなかった」「オチのシュールさが自分は好きだ」「短編というより、ショートショートだろう」といったところだろう。
もしこれ以上の感想・批評(rock氏が作家を目指しているという前提で送る感想・批評)が希望なら、もう一度声をかけてください。 (August 17, 2004 12:09:49 PM)

↑について  
さわゆー さん
少しえらそうな語調になってしまいまして申し訳ない。
本人、えらぶっている気は全くございません。 (August 17, 2004 12:11:59 PM)

とんでもない!  
rock0717  さん
さすが専門家の意見、とても勉強になります!
小説家を目指すというよりも、今回は余興のようなものです。でも、これからもっとがんばっていい作品書くつもりです。小説書くのも、かなり面白いと思ったので。
にしても、「読点多用」は太宰治的手法だったんだ、知らなかった・・・。実はこの小説はフリッパーズギターの「星の彼方へ」という曲を聴いて書いていたので、リズム的にはそっちに合わせてます。でも前半と後半でなるべく文体をがらっと変えるようにしました。
とにかく、貴重なアドバイスありがとう、さわゆーさん。またよろしくね♪ (August 17, 2004 01:36:51 PM)

感想と呼べるほどのものじゃないけど  
ヨウ さん
ちゃんと、指定通りの(笑)状況で読みました。

前半と後半は意図的に違うのね、雰囲気が。

「あの曲」を聴きながら聞いた身としては、
「彼女の人生を変えるほどの素敵な恋」をトータルで与えられてしまうより、
その変数で与えられた、なにかとても小さなことが、
彼女を少しだけ能動的に動かして変えてゆく、方が、
素敵だな、と思いました。

ああ、感想でも批評でもないわね(笑)。
こんなコメントですまん。
書き逃げ!

(August 18, 2004 12:35:23 AM)

ほうほう  
さわゆー さん
まあまあ、お互い敬語はなしにしましょう。
面白いという気持ちで小説を書く人が自分の周りに増えると、とても嬉しいなあ。お互い頑張りましょう! ちなみに僕、専門家でも何でもござらんです。
(August 18, 2004 08:50:45 AM)

Re:感想と呼べるほどのものじゃないけど(08/15)  
rock0717  さん
>ヨウさんへ
感想ありがとう!決定論と非決定論で迷いましたが、この作品では決定論を選択しました。なんというか、ぼくはわりと意地悪なので(笑)でも、非決定論な作品も、もちろん書くつもりです。小説のいいところは、(当たり前だけど)ストーリーを自由自在に操るところですねぇ。普段理屈っぽい文ばっか書いてるんで、こう好き勝手に出来るのは、すごくたのしい!てことで、またそのうち小説も書きますよ♪ (August 19, 2004 01:09:00 AM)

Re:(短編小説)星の彼方へ(08/15)  
フリッパーズギター・小沢健二と好きなので・・。全て読ませてもらいました。うーん、なるほど・・と思うものばかりです。ドルフィンソングについても、ライナーノーツなど書いてもらえませんか。(って、いきなり失礼ですね!ごめんなさい!)リンクいただいて帰ります。また、遊びに来ます! (September 5, 2004 12:14:11 AM)

Re[1]:(短編小説)星の彼方へ(08/15)  
rock0717  さん
読んでいただいてありがとうございます。返事が遅くなってしまいごめんなさい。これからもよろしくお願いします。「ドルフィンソング」は、スチュアートダイベックが書いた「シカゴ育ち」という短編集の中にある「右翼手の死」を読むと、とても情景が思い浮かぶと思います。短い作品ですが、「ドルフィンソング」元ネタではないかと個人的に思っています。 (September 8, 2004 03:42:47 AM)

Re:(短編小説)星の彼方へ(08/15)  
しぶやくん  さん
なんか、微妙にブラックなお話ですね。結構好きですけどね^^
rockさんはネット恋愛とかしたことあるのかしらん?
また気が向いたら発表してください。

そう。
燃え上がるような素敵な恋=「出会いから別れまで、」 ってところが気になっちゃった♪
ちなみにぼくと恋愛したら大変よ。3000年は変わらない愛ですからw (注:3000年までではない)
(September 29, 2004 12:06:38 AM)

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