こんぱすコーチの全方位日記

2014年10月28日
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昨夜は関東も木枯らし1号が吹きすさび、
そのせいでしょうか、
今朝はスッキリとした青空が広がりました。

ウォーキングコースから仰ぎ見る富士山も、
今日は周囲に雲一つ無く、くっきりと映えています。

2014年10月28日の富士山
2014年10月28日の富士山 posted by (C)まさやん6312

今日はヨメさんの命日。
1年経ちました。
あっという間でしたけど、

ずいぶん遠い昔のできごとだったかのようにも
感じられます。

彼女が最期を迎えたあの緩和ケアの病室からも、
あの日、きれいに富士山が見えていました。

ヨメさんが入院していた病室から見た富士山
ヨメさんが入院していた病室から見た富士山 posted by (C)まさやん6312

1年前のあの日。
僕にとって、
これまでの人生で一番長い日だったかも知れません。
そのときの記録から。



日付が変わって午前1時を過ぎると、ますます息が浅くなり、

唇の赤みも消え、白くなってくる。

いよいよ臨終の時か、と高ぶってきたが、
呼吸は浅いながらも持続、安定してきた。

巡回に来た当直看護師さんの、
「ご本人は、ご家族が交代で休息をとるのを

という声がけに促され、控え室で仮眠。

6時半ごろ、目が覚めて病室に戻ると、容態は安定していて、
手足の温度が少し戻っていた。唇の赤みも差してきている。
これはどういうことか。
奇跡の復活の兆しなのか、それとも最後の気合いなのか。

7時半、当直の看護師さんから状況報告。
呼吸は安定していて小康状態を保っているが、
手をつねっても反応がなく、小水もほとんど出ていない、
さらに血圧は徐々に落ちてきており、
容態は横ばいかやや下がり気味。
それでも口周りを掃除すると唇が動いたり、
呼びかけには目が開くなどの反応はある。
周囲の会話なども聞こえているようなので、
できるだけ呼びかけてもらう方が、
患者本人にとっては安心すると。

8時過ぎ、妻の爪が伸びていることが気になる。
何日か前に「爪切りを持ってきて欲しい」と言われ、
すぐに持ってきたのだが、結局切ることができなかったようだ。
代わりに母親と僕で片手分ずつ切ってあげる。
妻に「手の爪、切っといたよ」と、耳元で伝えると、
うんうん、とうなずく彼女。

妻の呼吸があまりにも苦しそうで、
切なくなって涙があふれる。

「順番が逆やないの! 私を見送るのが先でしょ! 
どうして私があなたを見送らないといけないの!?」
悲痛な叫び声をあげる母親。
その言葉に、僕も息子たちも新たな涙を誘われる。

10時、昨夕も見舞ってくれた、ママ友の1人が再度往訪。
自身も現在同じ病院に通院していて、その検診の帰りだった。
ベッド上の妻越しに、ママ友と母親が妻の人柄について語り合う。
お互い、妻の良いところを言うのだが、
僕としてはおぼろげながら感じていた彼女の人柄が、
そんなに周囲の共感を得ていたのか、と今更ながら驚く。
もっと早く察していれば良かった。
さすれば、もっと彼女に優しく接していただろうに…。
今となってはもう遅い。遅すぎる。

と、突然彼女が目を見開き、息をあげる。
びっくりして看護師さんを呼んで看てもらうと、
特に身体の数値に変化はない。
耳は聞こえている、ということだったので、
母親とママ友との会話内容に反応したのかもしれない。

11時過ぎ、少し家のことが気になって、
いったん自宅へ車を走らせる。
この間に妻の容態に変化があったら、とも懸念したが、
むしろ小康状態の今がチャンスと思った。
帰宅して良かった。
昨日、母親が洗濯物の取り込みに帰った際、
寝室の扉を閉めてしまっていて、
猫が1匹、閉じ込められた状態になっていた。

玄関先には、ママ友たちからの差し入れが置かれていた。
ありがたく頂戴する。

12時過ぎ。病院に戻ると、妻はまだ息があったが、
こちらからの呼びかけにはもう反応がない状態になっていた。

15日までお世話になっていた、
外科病棟の看護師さんたちが
入れ替わり立ち替わりお見舞いに訪れる。
こちらとしては、
よくしていただいたことにお礼を言うのが精一杯。

午後2時。
何となく呼吸の感覚が間延びしてきたように感じる。
それと同時に息の吸い方が、
しゃっくりみたいにごくごく短く、一瞬だけ顎を上げる感じだ。

午後2時半頃になると、
呼吸の間隔が急に大きく間延びしだした。
次の息継ぎがなかなか出て来ない。
「えっ!? ひょっとして息が止まった!?」と思った途端、
「ヒュッ」と息を吸う。そんなサイクルが何度か続く。

2時35分、小さな息継ぎの後、次の息継ぎがなかなか出て来ない。

1分、2分…。

出て来ない。息継がない。
母親が妻の左手首を持って脈を取る。
「脈が取れない」とつぶやく。慌てて看護師さんを呼んだ。

駆けつけた看護師さんが脈を計りつつ、聴診器を胸に当てる。
反応がないようだ。
「正式には、今、別の患者さんと面談中の主治医が診断します」
と告げられ、しばらく空白の時間。

2時50分頃にようやく主治医が入室。
脈を計り、胸に聴診器を当て、
さらに瞳にペンライトをかざして反応を見る。
「いずれも反応が認められません。
よって、午後2時53分、亡くなったことを認めます」
と主治医。家族全員が改めて亡骸に涙する。

それからは事務連絡に忙殺。
看護師さんからは、即座に遺体引き取り手続きの要請を受け、
葬儀社が綴られたファイルを差し出された。
母親からも言われていたが、
病院では生きているうちは手厚く看護してくれるものの、
いったん患者が死亡すると、
手のひらを返すように、早く病院から追い出したがる。
彼らもそれがミッションなので仕方がないが、
いきなり事務的モードになってしまい、
遺体にすがってゆっくりと時間を過ごす暇も与えてくれない。

いよいよとなったら、葬儀社は新狭山駅に近いここ、
と目を付けていた「くらしの友」にアクセス。
先方は手慣れたもので、次々と質問に答えるうちに、
遺体引き取りの事務手続きが口頭で終了。

午後4時半過ぎ、ママ友たちが再び来訪。
今は亡骸になってしまった妻を見て、みんな号泣。
お子さん、つまり息子たちの同窓生も2人来て、
それぞれ声を上げて泣いてくれた。
今更ながら、息子の友人たちにも慕われていたことを
改めて思い知る。

しばらくの間、ママ友たちが亡き妻の思い出話を披露。
その中で「まさやん家は本当に理想の家庭。
旦那さんや子供さんたちの悪口なんて
彼女の口からちっとも出てこなかった」と。
かなり面映ゆいが、それも彼女のなせるワザだったのだろう。

母親からも「嫁姑の関係だけど、実際は友達感覚だった。
本当に唯一、気の許せる人だった」と応じる。
新たな涙を誘う。

妻は、ママ友たちには僕の母親、つまり姑のこと、
姑たる僕の母親にはママ友たちのことを
それぞれよく語っていたようだ。
しかもそこには一切悪口はない。
相手の好きなところ、素晴らしいところを口にしていた。
今日初めてそれがお互い明らかになり、
第三者の自分も知ることとなり、
またもや僕の中で妻の株が上昇する。

今となっては遅いけれども。

午後5時半、名残惜しくもママ友たちは退室。
すぐに葬儀社から迎えの車が到着。
ストレッチャーに載せ替えられ、
職員専用のエレベーターで僕たちも一緒に階下へ。

主治医と担当看護師さんに見送られ、病院を後にした。
わずか2か月だったが、通い慣れた病院ともこれでお別れだ。
終わってしまえば本当に呆気ない幕切れだった。



あの、間欠的に続いていた息継ぎが、
次の時点で停まってしまい、
彼女の口元から空気の出入りが永遠になくなった瞬間。

主治医の「亡くなったことを認めます」という押し殺した声。

傍らで一緒に涙を流していた看護師さんが
10数分後には事務連絡に訪れたギャップ。

母親とママ友たちは、ほとんど初対面なのに、
以前から知り合いだったかのような錯覚を
それぞれが覚えたこと。それは、
ママ友たちがヨメさんから聞いていた僕の母親像、
母親がヨメさんから聞いていたママ友たちの様子、
それらがとても的確だったからで、
改めてヨメさんの人柄が偲ばれたこと。

いろんなできごとが、
一生掛かっても体験できないことが、
わずか24時間の中に詰め込まれてしまった、
2013年10月28日でした。


1年経った今日。
会社を休み、一人、喪に服しました。

そして午前中には友人から供花が
宅配で贈られてきました。
別の友人からは昨日、御佛前が届いたので、
今日、香典返しを百貨店で済ませることができました。

夕方には、懇意にしていたママ友たちが
相次いでお参りに来てくれました。
その後、故人を偲んで一緒にお食事にでかけました。

休んで正解でした。





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最終更新日  2014年10月28日 23時41分19秒
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Re:人生で一番長かった日(10/28)  
ひまわり♪ さん
去年の28日の朝、まさやんさんからメールを頂いているんです。
恐らく私が、それ以前にメールをしたのでしょう。
こんな一日だったんですね。。。
胸が詰まります。
人が息を引き取る瞬間に、私は立ち会ったことがありません。
尊い経験になりましたね。

自然に死を迎えると、生へのホルモンから死へのホルモンに入れ替わるので、ご本人は気持ちよく死を迎え入れられる…らしいです。
何かの本で読みました。

多くの方に見守られ、愛に溢れたご臨終の様に感じました。
奥様、今世での時間は短かったのかもしれませんが、幸せでいらっしゃったんじゃないですか?
ずっとまさやんさんのお傍に居らっしゃると思いますよ。
お人柄が偲ばれる最期ですね。

改めて、心地よくあちらの世界でお過ごしいただきたい…と祈ります。
(2014年10月29日 00時44分39秒)

ひまわり♪さんへ  
>去年の28日の朝、まさやんさんからメールを頂いているんです。

そうですね。僕のスマホにも残っています。


>人が息を引き取る瞬間に、私は立ち会ったことがありません。
>尊い経験になりましたね。

だと思います。
今日(10/29)の日記にも書きましたけど、
70年以上生きてきた僕の母親ですら、今回初めて人の死の瞬間に居合わせたくらいですから、とても貴重で尊い経験だったと思います。


>自然に死を迎えると、生へのホルモンから死へのホルモンに入れ替わるので、ご本人は気持ちよく死を迎え入れられる…らしいです。
>何かの本で読みました。

この言葉を読ませてもらって、
救われるような気持ちになりました。
亡くなる数時間前から、本当に苦しそうな息継ぎをしていたもんですから、
可哀想で仕方なかったんです。
でも、上の言葉どおりだったなら、彼女自身はほとんど苦しみはなかったわけですもんね。


>奥様、今世での時間は短かったのかもしれませんが、幸せでいらっしゃったんじゃないですか?

その答えは、いつの日か僕も寿命が尽きた際に、彼女との再会が叶ったならわかることなのかも知れませんね。


>改めて、心地よくあちらの世界でお過ごしいただきたい…と祈ります。

ありがとうございます。

(2014年10月29日 17時11分53秒)

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