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7usagiさんComments
ゆうとは、小さい頃からの幼馴染みです。
私は彼女のことなら良く知っているつもりでいました。
ゆうが結婚したのは5年前。
新婚生活1年目で待望の赤ちゃんもできて、
都内のマンションに優雅に暮らす彼女は、とても幸せそうでした。
ダンナ様も優しい方で、独身だった私を家に招いてくれて、
家族で食事をしたり、お酒を飲むこともしばしばでした。
ゆうのダンナさまは、小さな商社に勤務するサラリーマンでした。
仕事柄、海外への出張も多く、ゆうと赤ちゃんは、その間お留守番をしていました。
実家に帰ることも度々ありましたが、彼女の実家までは、飛行機で1時間。
ご両親は大きなクリーニング店を経営しているので、
ゆうたちにばっかりも構っていられなかったのです。
ある日、電器店で買物をすると、
店員がインターネットプロバイダの無料CDを袋に入れてくれました。
前からインターネットには興味があったので、
早速子供が寝た後で、CDをパソコンに入れてみました。
接続方法などは、思ったよりカンタンで、料金も手頃だったので、
ゆうはインターネットを始めることにしました。
一番嬉しいのは
メールでご主人や離れている友達と連絡がとれることだったと言います。
特に海外の場合は、相手の時差や、電話代を気にしないでいいので、
単身赴任中のダンナさまも喜んで賛成してくれました。
しかし、ゆうが連絡をとったのは、その人たちだけではありませんでした。
だんだんネットに慣れてきた彼女は
「チャット」というリアルタイムでパソコンを通じ話ができる
コミュニケーション方法を覚えました。
最初は、知らない人とおっかなびっくりで話をしていたゆうも、
「インターネット」という匿名の世界で、
段々イキイキとキーボードを打つようになったそうです。
その頃、ゆうは私に
「ネットは人間関係を気にせずになんでも相談できるから楽しいよー」と、
話をしていたのを覚えています。
ある日、彼女から
「いま、大学生と恋をしている...」といったようなメールが届きました。
びっくりして電話すると、彼女は明るい声で、
「大学の3年生なの。相手もこっちのこと同じ歳だと思ってるから、たまに口説かれてる。
なーんかね、楽しかった学生時代に戻ったカンジかな。
同じ関東だから、逢おうと思えば逢えるけど、
そしたら、本当の不倫になっちゃうし、相手も、子持ちの人妻じゃがっかりでしょ?」
まあ、遊びのようなので、私も「ははは、いいねー。若いツバメだね」と
笑って電話を切りました。
それから、私の仕事が忙しくなったせいもあり、
1年ぐらい、ゆうとは逢っていませんでした。
どうしているかな、と連絡を入れたところ、一度逢って話がしたいとのこと。
私は、何か胸騒ぎをおぼえながら、ゆうのマンションに向かいました。
「チャットで知り合ってから、これだけじゃ物足りないってことになって、
夜中に電話をするようになったの...。
こっちの番号は教えられないから、あたしが彼の所に、
時間を決めてほぼ毎日電話してる。
彼には彼女がいるんだけど、
まだ女を彼女しか知らなくて、何でも興味がある状態なの。
だから、まるで恋人同士の会話なんだ...。楽しいの。
パパに後めたかったから、帰ってきた時には前より優しくできたし、
子供にもイライラしなくなった。
夜になれば、彼の声が聞ける、と思えば辛くなかったし、
それが生きがいになっているみたい...。
でも、彼は今年の4月で社会人なのよ。
だから、もう夜中の電話はムリ。
それにいよいよ我慢も限界で『実際に逢いたい』って、
毎回言われるようになってきた。
私も今、彼がいなくなって、
また家事と育児だけのなんのトキメキもない生活に戻るのはもう耐え難い。
自分でもどうしていいのかわからない...」
私は、彼女に「これを機会に連絡を断って、自分も働け!」と言いました。
それと、後悔が残るといけないから、
まだ見ぬ妄想だけの彼にこっそり逢ってきたら?とも言いました。
3月のある日、彼女は、子供を連れて、
彼が働いているバイト先へ電車に乗ってでかけました。
ショッピングセンターのお好み焼き屋だったので、違和感もなかったのです。
彼女は、思いっきり彼好みの服を着て、化粧も薄くして行ったそうです。
彼がいつも彼女に話ていたセリフ、
「ばばあとか、すぐメンドーなオムソバとか頼むんだ。
そういう客には『15分程かかります』って言うんだけど、
これが待つって答えるんだよー。可愛い子には、そっこー作るけどね(笑)」
彼は、運良く?レジを担当していました。
「何しますか?」
いつもの聞き慣れた声。ゆうは、思いきってオムソバを頼みました。
「15分程かかりますが...。」
「もーなんかさ、急に冷めたよ。恋の熱が...。
やっぱりあの子にとって、現実の私はただのオバチャンだったの。
当り前だけどね。
せめてと思って、電話では、彼が傷つかないように最後まで
『女子大生のきれいなゆうちゃん』で、終らせたわよ。
それくらいの甲斐性は、私にだってあるからさ。
これからは、夜中ぐっすり寝なきゃやっていけないほど、働くことにするわ。」
薬剤師の免許を持つゆうは、
ダンナさまの了承を得て、幼稚園に通う子供を送り出してから、
近所の薬局でパートを始めました。
働く時間は短いですが、自分で稼いだお金の尊さを久しぶりに思い出した、
とメールをくれました。
あと、追記でこんなことも書いてありました。
「きっと、チャットは主婦の間で流行ってるから、
私と同じような体験をした人がいると思うよ。
ホームページで、紹介していいよ。
恋もいいけど、やっぱり現実を見なきゃダメだって(笑)」