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Ryu-chan6708

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2006.06.01
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カテゴリ: 読書感想
 昨日、急なヤボ用で、電車でトンボ帰り。往復5時間余の電車の中で、この本を読了。新刊である。この本は松本清張の昭和史を扱った 「昭和史発掘」 「日本の黒い霧」 の評論である。これらの清張の本はもう30年くらい前であろうか、当時、清張ファンであった私は文庫本で読んだ。
 「昭和史発掘」は20件、「日本の黒い霧」は12件の事件からなる。

 30年ほど前、これらの本をよんでいたときは、面白かったが、今、全体を通じて思い出すと私たち世代にはつらい。 日本の苦々しい時代を描いているからだ。
しかし、これらを読んだことのない人には、清張の別な側面と、昭和の裏面を知るのによいガイドブックとなろう。
 「昭和史発掘」のほうは、軍国主義が次第に支配し、太平洋戦争に向っていく状態が描かれる。しかし、昭和11年の2・26事件で終わり、 途中の戦争の間はすっぽり抜ける。
 次の昭和史は、敗戦後の事件を扱った「日本の黒い霧」で始まる。清張にとっては、2・26事件は5年後に始まる太平洋戦争と昭和史上つながっているのであろう。
 「日本の黒い霧」は戦後の 下山事件、松川事件、帝銀事件 「日本の黒い霧」は朝鮮戦争で終わる。 だから、清張は、この本では朝鮮戦争はアメリカ側がしかけたという疑いを捨てきれない。

 この朝鮮戦争で破滅した日本経済は息を吹き返し、高度成長への足固めをするが、その後の昭和史を清張は書いていない。
 倒産しかけて、創業社長が退陣したトヨタは、石田社長の時代になるが、トヨタも朝鮮戦争の恩恵を受けた例にもれない。別な本だが、当時の石田社長の次のような談話がある。
「この数ヶ月、ワシは夢を見ているようだ。トラックも四輪駆動車もろくに塗装もせずとも、羽が生えている鳥みたいに(韓国の米軍基地を目指して)飛んでいく。中国の義勇兵がプサンまで攻め込んできたときは、値段もへったくれもなかったで。よこせ、よこせの矢のような催促じゃった。ワシも長いこと商売をやってきたが、あの時ほどボロ儲けしたことはなかったわ。戦争直後のときも(豊田自動)織機は信じられないくらい儲けたが、今度はケタが違う。」
 このカネがトヨタの生産設備に投入され、高度成長に向う。

 司馬遼太郎は、 この昭和の軍国主義時代は日本史で稀な狂気の一時代としている。言わば、一神教の時代である。 そして「坂の上の雲」の日露戦争で小説は終わりで、その後の近代小説は書いていない。彼は敗戦時、22才で戦車隊にいたので、 ノモンハン事件 を小説に書くことを期待され、取材もしていた。しかし、遂に書かないで亡くなった。
 司馬遼太郎は、「坂の上の雲」でも203高地の戦いを書いているとき、その戦い方の稚拙さで多くの兵士が死ぬことに耐えられず、 しばしば呆然となって筆をおいたという。 ましてやメチャメチャにソ連の戦車にやられ、多くの戦死者を出したノモンハン事件を書くことは気が進まなかったのではないか。

 清張は36才で敗戦を朝鮮で迎えたが、2・26事件後の日中戦争、ノモンハン事変、太平洋戦争も書いていない。

「あの戦争は何だったのか」( 新潮新書:昨年夏発刊)として新書版に簡潔にまとめ、このブランクを埋めている。これも日本人にはつらい本であるが、知らないといけない知識であろう。

松本清張と昭和史

あの戦争は何だったのか





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Last updated  2006.06.01 07:04:14コメント(0) | コメントを書く


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