りゅうちゃんミストラル

りゅうちゃんミストラル

2009.01.28
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カテゴリ: 読書





作者の三崎は「となり町戦争」で知られるようになった。
前からこの短編集はネットでの書評があちこちで見られるようになった。
今回私は書店で偶然、文庫本を見つけて購入した。
収録された7つの作品を紹介する。

「二階扉をつけてください」

回覧板で二階扉の設置が叫ばれていた。
しかし、妻が出産で実家に帰っている男の家では回覧板をよく読まなかった。
近所の人にうるさく言われて、男はやっと二階に扉を付ける。
その扉が何にに使われるのか。どう使うのかもわからないまま。

工事のために電話する男と見積もりにくる男が同じというのは笑った。
どうやら三崎の得意技は「日常にある非現実」を描くことにあるようだ。
なかなか捻りのきいた、読者を裏切らない設定は新鮮。

「しあわせな光」

短くてすぐに終わってしまう作品。
ここでも「日常にある非現実」は健在。

「二人の記憶」

自分の記憶が果たしてどれだけ正しいのか。
それに疑問を投げかける人は意外に多い。
非現実だけでなく、読者を惹きいれる内容はなかなかのもの。

※作品集のタイトルでもある「バスジャック」については最後に述べる。

「雨降る夜に」

本が好きな人なら、この作品は頷くことがあるだろう。
短いが独自の世界を構成している。

「動物園」

この設定は作者独自のもの。
非現実だがそれを以下に嘘っぽくしないか。
作家としての技量が問われる作品。

「送りの夏」

この作品が最後なのは、作者の狙いなのだろう。
テーマは「死」。
前にも記事にしたが、葬式は誰のためのものか。
それは主に亡くなった人のためではなく、残された人のため。
残された人が亡くなった人をどう送るか。
それは人によって大きく違う。
だからこそいろいろな宗教がこの世にある。
私はそう考える。

12歳にして肉じゃがを作る女の子はなかなかいないかも。
自立心が高く、ケストナーの作品に出でてくる子どもみたいだ。
小学生の彼女にとって、この夏は忘れられない思い出になる。
それだけははっきりしている。
余韻の残る作品として、私の記憶に残る。

「バスジャック」

タイトルになっている作品。
だが、私はこの作品がもっとも気に入らない。
まず、バスジャックが「ブーム」「トレンド」というのが問題。

思い出すのが「ネオ麦茶」で有名になった2000年の西鉄バスジャック事件。

西鉄バスジャック事件(Wikipedia)

刃物を持った17歳の少年による犯行だった。
豊川市主婦殺人事件 と同時期で、社会に衝撃を与えた。
西鉄の事件で少年は3人を刺し、うち一人の女性が亡くなった。

実際にバスジャック事件で犠牲者が出ている。
それを考えれば、こうした小説があることに嫌悪する。

ある人は、「これはフィクションだから」と言うかもしれない。
作者もそう考えているかも。

それって爆笑問題の太田光をネット上で「殺す」と書いた男みたいだ。
その男は逮捕され、「あれは冗談だった」と主張しているという。
(後日、太田がテレビでそう語っていた)

この世には、「言っていい冗談」と「言ってはいけない冗談」がある。
三崎はそのことを理解しているのだろうか?

この短編集を読んで、「バスジャックしてやろう!」と思う奴。
実際にはいないかもしれない。
しかし、「人を殺してみたかった」という理由で殺人に走る人がいる。
そんな時代にこうした作品が存在する意味。
それをどう考えているのか。

実際に死者が出ているバスジャック事件はある。
ならば、なぜその犠牲者と家族の痛みを考えないのか?
青臭いようだが、たとえ私だけでもこうした意見は残しておきたい。

もうひとつ。
「バスジャック」の中で、以前自爆が起きたと書いてある。
その時の「痛み」を表現できていない。
私は小説の出来以前の問題として、「痛みが表現できないものは論外」と考える。
バスジャックが「ブーム」「トレンド」と書くなら、痛みも書くべきだ。

さらにもうひとつ。
この作品はオチが序盤に読めてしまう。
小説としても不出来だ。

学生運動のようなくだらないシュプレヒコールと団結。
バスジャックの「作法」について書く部分。
どれも小説として面白くない。

次に三崎の作品を読むなら「となり町戦争」なのだろう。
多くの読者は逆に「となり町戦争」→「バスジャック」と読んでいるようだ。
「バスジャック」を読んでしまった今、その気になれるかどうか。

何しろ、読者ができる行動は「読まない」と「読む」しかないからだ。
こうしてブログに書くのもひとつの方法ではあるが。

帯には「とにかく・・・すごい本です」とある。
正直、すごい本とは思わなかった。

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最終更新日  2009.01.29 19:13:29


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