2024 年 7 月公開の『もしも徳川家康が総理大臣になったら』に続く武内英樹監督作。原作ありの映画化ではあるが、武内監督作品は『テルマエ・ロマエ』( 2012 )『翔んで埼玉』( 2018 )と突飛な着想が話題となり、ヒットしシリーズ化されている。
清水茜の『はたらく細胞』は、人間の体内の細胞たちを擬人化した設定が斬新だ。原作漫画の『はたらく細胞』とスピンオフ漫画『はたらく細胞 BLACK 』をもとに、人間親子の体内ではたらく細胞たちと、その親子の人間世界のドラマが進行する。脚本は、武内監督作では『劇場版 ルパンの娘』( 2021 )『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』( 2023 )を手がけている徳永友一。
人間の体内には 37 兆個もの細胞が存在し、酸素を運ぶ赤血球や細菌と戦う白血球など無数の細胞たちが、人間の健康を守るため日夜はたらいている。母を病気で早くに亡くした高校生の漆崎日胡(芦田愛菜)は、父の茂(阿部サダヲ)と 2 人暮らし。健康的な生活習慣を送る日胡の体内の細胞たちはいつも楽しくはたらいているが、不規則・不摂生な茂の体内では、ブラックな労働環境に疲れ果てた細胞たちが不満を訴えている。そんな中、彼らの体内への侵入を狙う病原体が動き始め、細胞たちの戦いが始まる。
体内での主役は赤血球と白血球。赤血球は、血液循環により、酸素を体内に届け、二酸化炭素を肺に運搬する。白血球は外部から侵入した最近やウイルスなどの異物を排除する。擬人化された赤血球(永野芽郁)は、日々酸素と二酸化炭素の運搬業務をこなしている。仕事の様は宅配便の配達業務のようでもある。赤血球は白血球のひとつで細菌と戦う好中球(佐藤健)に憧れている。好中球は寡黙でハードボイルドヒーローのようだ。白のコスチュームで“白血球”と文字のついたキャップをかぶっている。“はたらく細胞”の永野芽郁と佐藤健は NHK の連続テレビ小説『半分、青い。』( 2018 )でも共演していた。
好中球が外部から来た敵の肺炎球菌(片岡愛之助)や黄色ブドウ球菌(小沢真珠)らと戦う場面では派手なバトルのアクションシーンが展開される。佐藤健のアクションは実写映画版『るろうに剣心』( 2012 ~ 大友啓史監督)を思わせる。『はたらく細胞』のアクション監督は大内貴仁。大内は『るろうに剣心』ではアクションコーディネーターとしてアクションや殺陣の振り付けを行っている。
赤血球の赤、白血球の白、肺炎球菌の青、黄色ブドウ球菌の黄などは大胆なコスチュームである。 NK 細胞(仲里依紗)は忍者のようで黒の衣装。カッコイイ。ヘルパー T 細胞(染谷将太)はメガネをかけて切れ者の科学者のようである。外敵侵入に対して、敵の情報をもとに、的確に攻撃できるように戦略を決める司令官である。 NASA の司令官のようでもある。これらの登場人物?は原作にも描かれているのだろうが、それを実写版で登場させるのである。うまくいかないとウソっぽくなる。この映画では、実写化がうまく決まっている。スタッフを調べると衣裳統括・衣装コンセプトに柘植伊佐夫、衣装デザイン・衣装製作に櫻井利彦との名がある。
細胞たちがはたらく体内には西洋の城のような建物があって、外国のどこかの国のようでもある。そこへ敵が攻めてくるのだ。細胞役に 7500 人のエキストラを動員して体のメカニズムを表現する手法にも迫力がある。
24 年に公開の映画では『十一人の賊軍』では藩の家老、『ラストマイル』ではサイト商品の運送会社の関東局局長の役を演じていた阿部サダヲ。本作の日胡の父親役は久々の笑える阿部サダヲで登場してくる。漆崎茂はトラックドライバーである。大食いしたため、運転中にうんこに行きたくなってトイレを求めて右往左往する様子が実に可笑しい。そんな時にトイレで順番待ちの列が出来ていたりしたら、絶望的な気分になるもんね。肛門括約筋の役は一ノ瀬ワタル。括約筋は相撲取りのようないでたちだ。トウモロコシをかじっていた茂だが、トウモロコシは消化されないで粒で出てくることある。ここも可笑しかった。この笑いのあと人間のドラマは日胡の病気との戦いになってシリアス調になってゆく。
原作の着想が面白いのだろうが、実写映画版も画に説得力があって面白い。宣伝文句にあるように[はたらく細胞ワンダーランド]である。
『ゆきてかえらぬ』 根岸吉太郎と田中陽… Mar 9, 2025
『52ヘルツのクジラたち』 本屋大賞受賞作 Mar 6, 2024
『赦し』 対峙する再審法廷。 May 18, 2023
Comments