ワルディーの京都案内

ワルディーの京都案内

2017/03/21
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テーマ: 京都。(6435)
カテゴリ: 研修会
【 2017年 3月21日(火)】

 今日、午前中ガイド会の研修、夕刻津軽三味線のレッスンが京都でありました。その日記は こちら 。

 ここでは講演会の様子を書きます。

 我がガイド会は、別エリアグループの研修会ですが、席に余裕があるので参加させていただきました。

 講師は、 冷泉 貴実子(れいぜいきみこ) さん。

冷泉家時雨亭文庫 冷泉為任氏 の長女で、第25代当主 冷泉為人氏 の妻。



 冷泉家は 藤原俊成、定家 の流れをくむ歌道の宗匠家の内の一つで冷泉流歌道を伝承しています。住まいの「冷泉家住宅」は、1790年の建築で、現存する唯一の公家屋敷で、国の重要文化財に指定されています。

 我が会は、営利を求める団体ではなく、そんなに高額な講演料は払えないと思うので、普通なら冷泉貴美子さんを個別にお呼びしての講演会など考えられないのですが、そこは我が会の強みなのでしょう、会のメンバーに冷泉家での和歌の会に参加していた方がいらして、その繋がりで来ていただくことができたようです。

 場所は、我が会の事務所があるハートピア京都の会議室でした。

 演題は 「和歌に詠まれた四季」 。

 初めて知ったことも多く、最初から最後まで楽しく拝聴させていただきました。


 色々知ったことを列挙します。

・現在の暦・太陽歴は明治5年に導入された。それ以前の和歌は旧暦(太陰暦)で理解しないといけない。例えば、睦月、如月、弥生は1月、2月、3月だが季節は春。それぞれ、今の2月、3月、4月(きっちりではないが)



・お月様が出る時間は毎日52分ずつ遅くなっていく。十六夜は「いざよいの月」(ぐずぐずすろという意味)、十七夜は立待月(たちまちのつき)、十八夜は居待月(いまちのつき)、十八夜は臥待月(ふしまちのつき)と呼ばれるのは、どんどん月の出が遅くなっていくため。二十六夜頃の月は有明月(ありあけのつき)と呼ばれる。夜明けの空(有明の空)に昇るから。

・月の満ち欠けは29.5日で1周するので、29日の月(小の月)、30日の月(大の月)を6回ずつ設け、1太陰年を354日とした。すると、3年で1月以上の誤差が出るので、閏月を設けた。(昔の人の誕生日や死亡日に、例えば「XX年閏X月」と書かれていることがあったが、その意味が分かりました。)

・春、夏、秋、冬の始まりが立春、立夏、立秋、立冬。節分はその前日で、季節を分けるという意味。年4回あったが、今残っているのは立春の節分のみ。

・お正月は昔は、今の2月だった。春に近かったので、迎春という言葉がぴったりだった。

・昔は照明がなく夜は暗かった。月の光は、現代とは比べ物にならないほど、明るい存在だった。



                            
(一) さざ浪や滋賀の浜松ふりにけりたが世にひける子の目なるらん
                        藤原俊成(新古今)

滋賀の浜辺の松は老木となってしまったなあ。いつの御代に引いた子の日の松が根付いたものなんだろう。


 門松は平安時代の宮廷儀礼である「小松引き」がルーツと考えられています。「小松引き」とは、正月初めの子(初子)の日に、外出して小さな松の木を引き抜いてくる貴族たちの遊びの一種で、この「子の日の松」を長寿祈願のため愛好する習慣から変遷したものです。現在でも「根引きの松」と呼よばれ、関西地方の家の玄関の両側に白い和紙で包み金赤の水引を掛けた根が付いたままの小松が飾られています。

根引き松

http://ruiruitomidori.blog.fc2.com/blog-entry-808.html


 若い子であっても自分の干支は知っている。未成年者を補導し、年齢を偽っていそうだと感じたら、「何年(なにどし)産まれ?」と聞くのがテクニック。

 方角は「子」が北、「卯」が東、「午」が南、「酉」が西。これから 子午線 という。



(二) 君がため春の野にいでて若菜つむわが衣手に雪は降りつつ
                        光孝天皇(古今)

あなたにさしあげるため、春の野原に出かけて若菜を摘んでいる私の着物の袖に、雪がしきりに降りかかってくる。


 昔は冬の間は、緑の物は食べられなかった。春の七草、七草粥はまさにご馳走だった。




(三) 梅が枝に鳴きてうつろふ鶯の羽白妙に淡雪ぞ降る
                        惟明親王(新古今)

梅の枝から枝へと飛び移っている鶯。その鶯の羽が真っ白になるほどに沫雪が降っているよ。


 淡雪は春の雪、白雪は冬の雪。

 「梅は花の兄、菊は花の弟」という諺がある。梅は百花にさきがけて咲くので花の兄と呼び、菊は後で咲くので弟という意味。


(四) 大空は梅の匂ひにかすみつつ曇りも果てぬ春の夜の月
                        藤原定家(新古今)

大空は梅の香りに霞んでいる。そしてぼんやりと曇りも果てない春の夜の月、そう朧月が出ている。


 春は霞、秋は霧。だから春の月は朧月。今は春の霞は、黄砂とかPM2.5で嫌われるが、昔は初めての霞を初霞といって喜んだ。冬は冴ゆる月。


(五) またや見む交野のみ野の桜狩花の雪散る春のあけぼの
                        藤原俊成(新古今)

また見ることがあるだろうか、いや、ないだろう。交野のみ野での花見で、桜の花が雪のように舞い散る、この春のあけぼののすばらしい景色を。


 桜は今はソメイヨシノが主だが、昔は山桜だった。交野は猟場だったところ。泊りがけで出かけた。藤原俊成が実際に出かけたわけではない。このように昔の和歌は、実体験に基づかないものも多い。


(六) 三千年になるてふ桃の花咲けり折りてかざさむ君がたぐひに
                           (落窪物語)

桃の花が咲いているのを、人が折っている。三千年に一度だけ実がなるという桃の、花がたわわに咲いているのを折って、花かんざしにしましょう。あなたのように長寿になるように。



 三千年は「みちとせ」と読む。「三千年の桃」とは、漢の武帝が西王母(せいおうぼ)(崑崙山に住む女仙)からもらって食べた、三千年に一度実を結ぶという不老長寿の桃。この西王母の誕生日が3月3日。古代中国では3月3日に、御祓をした人型を川に流し、また邪気を祓う桃の枝を飾った。この行事が日本に伝来して宮中行事の「曲水の宴」になり、奈良時代以降やはり3月3日に行われた。3月3日を「桃の節句」と言うのは、西王母と深く関わりがあると思われる。

 男の人も帽子にかんざしを差した。

 陰陽道の陰は偶数、陽は奇数を表す。五節句は1月1日、3月3日、5月5日、7月7日、9月9日(重陽)と奇数になっている。9は今では「苦」に繋がると縁起が悪い数字だが、昔は「九重」で縁起の良い数字だった。9月9日は、「救急車の日」でもあるそうな。


(七) 卯の花のむらむらさける垣根をば雲まの月のかげかとぞみる
                        白河院(新古今)

卯の花が群がって咲いている垣根を雲の間からもれる月の光と見てしまいます。


 卯の花(うのはな)は初夏に白い花を咲かせるウツギの花を指す。旧暦の4月(卯月)頃に咲くことから「卯月の花」=「卯の花」と呼ばれた。唱歌『夏は来ぬ(なつはきぬ)』では卯の花にホトドギスの組み合わせ。

 昔は下水道も上水道もなく、夏は病気が流行った。死を招く最悪の季節。 

                            
(八) うちしめりあやめぞ香るほととぎ鳴くや五月の雨の夕暮
                         藤原良経(新古今)

しっとりとした空気の中で菖蒲(しょうぶ)の香がする。ほととぎすの鳴く五月の雨が降る夕暮れどきよ。


 5月は旧歴では夏。五月雨(さみだれ)とは梅雨の雨であり、五月晴れとは梅雨の合間の晴れ。あやめ=菖蒲。

 この季節は病気が流行る。5月5日の端午の節句には、病気が入らないようにヨモギやショウブを飾ったり、屋根に置いたり、お風呂に入れたりした。それが薬玉(くすだま)になり、軒に吊るした。端午の節句も、男の子が元気に育つようにと願う日になっていく。

 「ホトホトギス」の名は、「ホトホト」と鳴くことから。「ス」はカラスやウグイス同様、鳥の名の接尾語。


(九) 風そよぐならの小川の夕暮れはみそぎぞ夏のしるしなりけり
                         藤原家隆(新勅撰)

風がそよそよと吹いて楢(ナラ)の木の葉を揺らしている。この、ならの小川の夕暮れは、すっかり秋の気配となっているが、六月祓(みなづきばらえ)のみそぎの行事だけが、夏であることの証なのだった。


 夏越祓=六月祓。半年の穢れを祓う。御禊(みそぎ)は、水の中で身を清めること。足だけ清めるのが「御手洗(みたらし)祭」。葵祭では斎王代が手だけを清める。

 冷泉家ではススキの葉で「人形(ひとがた)」を作り、全身をなでながら和歌を唱えて息を吹きかけ、水を張った手水鉢の中に放。                

 宮中では夏越の祓の後、氷を食べた。氷に小豆を乗せた。これがお菓子「水無月」に繋がる。



(十) 秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる
                         藤原敏行(新古今)

(立秋の日になっても)秋が来たと、はっきりと目にはみえないけれど、風の音で(秋の到来に)はっと気づきました。



(十一) 雲間より星あひの空を見わたせばしづ心なきあまの川浪
                         大中臣輔親(新占今)


雲の間より二つの星がで会う空を見わたせば、落ち着かない天の川波です。私も二つの星が無事に出会えるのか心落ち着きません。

 七夕は今は梅雨シーズンで、何故天の川の見えにくい季節なのかと思ってしまうが、旧歴では今の8月で、秋の始めと言ってよく、天の川が見える可能性は大きい。

 冷泉家では乞巧奠が行われる。中国起源の7月7日に行われる織女に対して手芸上達を願う祭。「巧みを乞う」、すなわち歌や蹴鞠が上手くなることを祈る。


(十二) 星あひのゆふべすずしきあまの河もみぢの橋をわたる秋風
                         西園寺公経(新古今)

彦星と織女が逢っている夕方、涼しい秋風が天の川の紅葉の橋を吹き過ぎてます。



 中国伝説では、鵲(かささぎ)という鳥が天の川を紅葉でうずめて橋を成し、織姫と牽牛が出会う。7日の月なので、半月。それを渡し船の見ることもできる。



(十三) 白露に風の吹きしく秋の野は貫きとめぬ玉ぞ散りける
                         文屋朝康(後選)

草の葉の上に乗って光っている露の玉に、風がしきりに吹きつける秋の野原は、まるで紐に通して留めていない真珠が、散り乱れて吹き飛んでいるようだったよ。





(十四) 秋風にたなびく雲の絶え間よりもれ出づる月の影のさやけさ
                          藤原顕輔(新古今)

秋風に吹かれて横に長くひき流れる雲の切れ目から、洩れてくる月の光の、澄みきった美しさといったらどうだろう!


 8月15日は仲秋。

                             
(十五) 露ながら折りてかざさむ菊の花老いせぬ秋の久しがるべき
                          紀友則(古今)

露があるままでも、折ってこの菊の花を頭に挿して飾ろう、老いることない秋がずっと続くように。


 9月9日は重陽の節句=菊の節句。菊の葉から水が川に落ち、それを飲んだ慈童や村人が長寿となり、不老長寿を祝った。これが菊酒を飲んだり、菊のきせわたをして、災

厄を祓い、健康や長寿を祝う「重陽の節句」に繋がる。

 お酒の名前に「菊正宗」「菊の盛」など「菊」が付くのはこのため。今では、菊は弔事の花のイメージがあるが、昔はお目出度い花だった。今、菊が弔事の花になっている

のは、ヨーロッパでお墓に菊を飾ることが日本に入ってきたからのようだ。


(十六) 奥山にもみぢふみわけ鳴く鹿の声聞く時ぞ秋は悲しき
                          猿丸大夫(古今)

 人里離れた奥山で、散り敷かれた紅葉を踏み分けながら、雌鹿が恋しいと鳴いている雄の鹿の声を聞くときこそ、いよいよ秋は悲しいものだと感じられる。




(十七) けふはもし君もや訪ふとながむれどまだ跡もなき庭の雪かな
                          藤原俊成(新古今)

 今日は、ひょっとして君でも訪れてきてくれるんじゃないかと思って眺めているけど、 門に通じている庭の雪には、まだ何の跡も無いんですよ。


 女になって詠っている。こういうことはよくあった。


(十八)へだてゆく世々のおもかげかきくらし雪とふりぬる年の暮れかな
                        藤原俊成女(新古今)

振り返ればいろいろなことがあったけれど、この降る雪が空を覆い隠してしまうように、昔の面影を忘れさせてくれる、そんな年の暮れです。



目からウロコ的お話しが多く、とても勉強になりました。




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最終更新日  2019/08/25 10:21:09 PM
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Re:【観光ガイド】冷泉貴美子さんの講演会(03/21)  
おはようございます。朝から、優雅な心になりましたよ。
花の時期は心忙しくいろいろありますが、少しは昔の時間に帰って、心を静める時間になりました。
よく知って空で言える歌もありましたし、初めて読むような歌もあって大変うれしかったです。昔と今は季節の言葉も時期もずれていて、やはり、こんな学習をしてこそ、その歌を理解し感じることができますね。どうもありがとうございました。 (2017/04/08 07:15:36 AM)

Re[1]:【観光ガイド】冷泉貴美子さんの講演会(03/21)  
ローズコーンさん
>おはようございます。朝から、優雅な心になりましたよ。
>花の時期は心忙しくいろいろありますが、少しは昔の時間に帰って、心を静める時間になりました。
>よく知って空で言える歌もありましたし、初めて読むような歌もあって大変うれしかったです。昔と今は季節の言葉も時期もずれていて、やはり、こんな学習をしてこそ、その歌を理解し感じることができますね。どうもありがとうございました。
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 私はローズコーンさんのように、短歌や俳句はたしなまないので、ほとんどが初めてきく歌でした。
 現代の短歌や俳句ならいいですが、昔の歌や句の場合は、時代背景やその時代の決まりごとを知っていることが大切だということが分かりません。
 目からウロコばかりのお話でした。 (2017/04/08 06:44:52 PM)

Re:【観光ガイド】冷泉貴美子さんの講演会(03/21)  
通りすがりより さん
冷泉貴美子さん?冷泉 貴実子さん お名前はどちらでしょう?お名前は難しいですね。 (2018/03/04 04:46:29 PM)

Re[1]:【観光ガイド】冷泉貴美子さんの講演会(03/21)  
通りすがりよりさんへ
 矛盾に気づいていただきありがとうございました。標題の方が間違っていますので、訂正しました。 (2018/03/04 06:17:55 PM)

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