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2012.01.31
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カテゴリ: カテゴリ未分類


 長めの髪をわずかに頬を覆うまで垂らし、鼻筋がきれいで唇は適度にあつぼったい。
 紫系のジャケットに古びたジーンズ、おそらく女子大生だと思われる。
 透明なビニールにつつんだ花束を手にしていて、百合はまだ蕾そのもの。
 両側を挟まれているので、花束をどこにおさめるか苦慮し、けっきょく膝にはさむ。

 飴玉をしゃぶり、いくらか薄汚れたバッグから本を取り出し、表紙によく茂った樹が描かれた本に眼をおとす。
 「モモ」とかその類いだと思ったが、Susan Sontagの名がみえる。
 タイトルは、Bajo el signo del saturnioであった。
 つまり「土星の徴しの下に」である、こちらはのけぞりそうになる。
 この版は見たことがない。
 UNAMクアウティトラン校あたりの女子大生であろうか。
 UNAM本校のある三号線では、こんな類いの本を読んでいる大学生はときどき見かけるが、この五号線ではめずらしい。
 たちまち話しかけたくなるのを抑えるのがタイヘンであった。

 背に夕陽を浴びているので、暑さにたえられなくなったのだろう。
 無理してからだをよじるようにしてジャケットを脱ぎ、腕がむき出しになりこちらの眼は釘付けになる。
 おなじく紫系の木綿のシャツ。
 いかにもしなやかな姿態で、こちらの眼がうるみかける。

 こちらもつられてかばんからJose Agustinの小説でも出して拡げておけばよかったかもしれないが、ビル・エヴァンスだけを聴いていた。

 飴玉とSontagの組み合わせも妙ではあるが。。。

 しだいに眠気にかなわなくなったのか、うとうとし、お口に飴玉をいれ、唇のへりから柄が飛び出ている。
 遠い学校だから朝も早く、疲れきっているのだろうな。
 でもやはり飴玉を口にふくんだままの居眠りというのは、生理的な不快感をもたらす。
「お嬢さん、虫歯になりますよ」とか、よけいなお世話をしたくなる。

 それに気づいてか、飴玉を膝のうえのかばんに納めるが、あらら、Sontagの本に押しつけるような感じになる。
「それはないでしょ」と口をはさみたくなる。

 そのままパンティトラン駅まで眠り込む。
 あとを追うように歩いてみると、上背もこちらとおなじくらいあった。
 しかし向かうのは別の方向であった。

 ああ、Sontagも読まなければ。

               (03 of March, 2009)






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最終更新日  2012.01.31 10:42:47
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