のんびり幸兵衛夢日記

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2006.03.17
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カテゴリ: 読書
娯楽小説は大好き。ピカレスクもアンダーグラウンドも好き好き。
そんな私が、これはちっとも面白いと思えませんでした。テレビドラマではずい分話題らしいけど、小説もいいって言う人多いけど、私がヘンなんかな?

前半何度も挫折しかけては、あとがきの馳星周が絶賛しているのを見て思いとどまるということの繰り返し。
とはいえ、ヘタッピなのではありません。上手、下手で言えば、むしろ上手。上手というか、器用です。

最初の方では、読んでいて、なんだか西村京太郎みたいと思いました。
別に地名がたくさん出てきたというわけじゃなく、思考回路というか、既成のおっさんチックな展開が。
そのうち、森村誠一も彷彿させるような。見たことあるようなないような。どっかの小説で、なぞったことのあるようなないような展開というか論理というか。わだちがくっきりできたあとを、みんなで安心してたどってるというか。

そのあとは、私がかつて読んできた小説の数々を、いろいろと懐かしく思い出しつつ、読んでました。
これまでに、こんなにたくさんの小説や小説家のことを思い出しながら読んだものは初めて。


たとえば、主人公の女性の、一見欠点がなく素晴らしいようであるのに何故不気味に思えるのかを、「篠塚」は何度も考えますが、結局、知り合った学生時代の最初に見たときに感じた印象というものが、一番影響しているようだ、と自分で結論付けています。

そうやって感性で物事を判断するのは、超文系の私から見て、これは私と同類だ、と感じました。
世の中で言われているように、理系の人が小説を書いたんではなくて、文系の人が理系の知識を身につけて書いた小説なんではないかなぁと思いました。


結局、何で私がこの小説を「面白いっ!」と思えなかったのかというと。
ひとつには、作者は生まれ育ったところで、こういった世界を見てきたのだろうけども、たぶんその中では比較的めぐまれた境遇にいて、自分自身がよもや経済的に抜き差しならぬ状況に追い込まれて、川の向こう側に渡ってしまうようなことになるとは、想像する必要に迫られずに生きてきたんではないかと、読みながら思ってしまったからです。

ただ次から次へと、見世物小屋を引っ張り回されても、だんだん疲れて楽しめなくなってきます。
そういう意味で、器用なだけにサービス精神は旺盛なんだけども、「次から次へと差し出すあ~なた~」と、こちらは一歩引いて見てしまうことに。

過激な内容も、罪悪感なく楽しみたい。説教臭い小説は嫌。
読む側は、そう思っているわけで、だからこそさりげなく行間から各方面に配慮されていることが感じられたりすると、共感して心にすっと入ってくるものです。
でも、この小説には、残念ながら、そういう装置が欠けていました。
面白い要素はあるけれども、面白がるのはちょっと悪趣味、と思いました。





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最終更新日  2006.03.20 12:34:51
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