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夜のニュースで、あの森繁さんの訃報を聞いた時、ちょっと驚いた。
かなりの高齢だとは知っていたので(96歳)今さら、驚くこともないはずなのだが。。。
先日もここで書いたように、世田谷文学館の「久世光彦展」に行き、彼の本を何冊か購入
した。「ベスト・オブ・マイ・ラスト・ソング」(人生の最後に聴きたい歌)と、向田邦子さんとの
交流を描いた「向田邦子との二十年」(触れもせで)の2冊と他にも数冊。
その両方の本に森繁さんは登場している。
奇しくも、今日の夜、仕事帰りのバスの中で読んでいた箇所が彼の登場する場所だった。
向田邦子さんの脚本家としての才能を見出したのは森繁さんだった。
既に映画俳優としても有名になっていたが、その後「七人の孫」のホームドラマでテレビの
世界でも一時代を築いた。テレビのホームドラマが全盛になる頃に若手演出家として森繁
さんに出会ったのが、久世光彦さんだった。
久世さんは最初、森繁さんを好きになれなかったと言う。
あんな軽口の胡散臭さに心を許してなるものかという構えがあったと言う。
深刻好きで、お尻の青い文学青年崩れの若い久世さんだった。
「あのころの私は、お芝居を漢字や横文字で考えていたのだろう。」
「ところが森繁さんのお芝居は平仮名だった」と、、、、久世さんは書いている。
平仮名の芝居! 見事に森繁さんの芸風を表している!
向田邦子さんも、森繁さんに対して最初は同じ印象を抱いたらしい。
でも、そのいかがわしさ、インチキ臭さとかには、たまらなく魅きつけられるものがあるらし
くて、、、ついにはあの曖昧さが好きでたまらなくなったと言う。
悪く言えば「際限のないいい加減さ」
良く言えば「余白の魅力」を、向田さん、久世さん二人とも感じたと言う。
ちょうど、その箇所を読み終えて、帰宅早々のことだったから・・・
「え~~っ!」と、軽く絶句してしまった。
そして、もう一つの魅力が、、、あの歌。
下手ウマ?というのかしら?(^^;
あまり音程も正しいようには思えない、あの歌!
あの歌に何回も泣かされたと、久世さんは「マイ・ラスト・ソング」に書いている。
「知床旅情」は有名だけれど、絶品なのはアカペラで歌う「月の砂漠」!
みんなが知っている歌なのに、森繁さんの手にかかると、まるで別の歌のようになるのが
不思議だった。そして、どんな歌にも泣かされてしまうのが、もっと不思議だったと。。。
月の砂漠をはるばると 旅の駱駝がゆきました
金と銀との鞍置いて 二つならんでゆきました
金の鞍には金の甕(かめ) 銀の鞍には銀の甕
二つの甕はそれぞれに 紐で結んでありました
今頃、自分より若い歳で亡くなった、向田さん、久世さんのお二人に森繁さんは再会して
いるかしら?
せっかちな向田邦子さんは、もう黄泉の国にはいなくて、現世に生まれ変わっているかも
知れない。
「あれ、あの人(向田さん)もうここにいないの?」
「こっちに来たのも早かったからネ~」(向田邦子さんは51歳だったかな?)
「まっ、仕方ないか。」
「それじゃ、あんた(久世さん)と野郎二人でチビチビやりますかぁ?」
と、再会の乾杯をしているのではないかと、、、
勝手に想像している私です。
森繁さん、お疲れさまでした。
それでは今夜はこの辺で、、、続きはいつか・・・・