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今回読んだのは、成山堂書店から出版されている、ヤンマーパワーテクノロジー株式会社著の『舶用ディーゼルエンジン 構造・保守・整備』です。仕事に直結する内容なので、以前から関心のある本でした。タイトルのとおり、舶用ディーゼルエンジンの構造、保守、整備について解説された技術書です。それぞれの分野がバランスよく扱われており、エンジンについて知識を整理するうえでも参考になる一冊でした。今回、特に印象に残ったのは、舶用三乗曲線について理解を深められたこと、そしてエンジンの状態を五感で感じ取ることの大切さです。分かっているつもりだった「舶用三乗曲線」今回の読書で、個人的に大きかったのが舶用三乗曲線について理解が深まったことです。これまで、言葉としては知っていました。何となく分かっているつもりでもいました。しかし、いざ説明できるかと考えると、理解が十分ではなかったのだと思います。今回、本を読んだことで、頭の中で曖昧だった部分が一段クリアになりました。技術の仕事をしていると、こういうことはあるのではないでしょうか。用語を知っていることと、その意味をきちんと理解していることは、同じではありません。何となく知っているために、改めて勉強する機会を逃してしまうこともあります。もちろん、一度理解したからといって、それで終わりではありません。実際の仕事の中で使い、必要に応じて確認しながら、自分の知識として定着させていく必要があると思います。今回の読書は、知っているつもりだった知識を見直す、よい機会になりました。デジタル時代だからこそ、五感で感じることもう一つ、印象に残ったのが、ディーゼルエンジンの変化を五感で感じ取ることの大切さです。現代はデジタル技術が進歩し、さまざまなデータを使って機械の状態を把握できる時代です。数値を確認し、変化を捉え、異常の兆候を見つける。こうした技術は、エンジンの状態を把握するうえで重要な役割を果たしていると思います。一方で、データだけですべてが分かるわけではありません。音の変化、振動、におい、熱の感じ方など、実際に機械と向き合うことで気づけることもあります。普段と何かが違う。その小さな変化に気づけるかどうかが、機械の状態を理解するうえで大切なのだと思います。特に印象的だったのは、こうした感覚を単に経験や勘で片付けるのではなく、エンジンの変化を敏感に感じ取る感性そのものが求められる、という点です。デジタル技術と、人間が五感で捉える情報。どちらか一方があればよいのではなく、それぞれの強みを生かすことが大切なのだと感じました。もちろん、五感による気づきだけで機械の状態を判断するのには限界があります。感覚で異変に気づいたら、データや点検結果と照らし合わせて確認することも必要でしょう。だからこそ、機械の状態を正しく理解するためには、知識だけでなく、変化に気づく感性も磨いていかなければならないのだと思います。著者から伝わってくる、舶用ディーゼルエンジンへの思いこの本を読んでいて、もう一つ感じたことがあります。それは、著者が舶用ディーゼルエンジンを大切に考え、深く理解しようとしていることが、随所から伝わってくるということです。単に構造や整備方法を説明するだけではなく、エンジンを扱ううえで何に目を向けるべきなのか。その考え方にも触れられているように感じました。技術書というと、知識や手順を身につけるために読むもの、という印象があるかもしれません。もちろん、それも大切な役割です。ただ、技術を扱う人が何を大切にしているのか、どのような視点で機械と向き合っているのか。そうした部分に触れられることも、技術書を読む意味の一つなのだと思います。私自身、仕事に直結する分野だからこそ、書かれている知識だけでなく、その背景にある考え方にも目を向けていきたいと感じました。もう少し詳しく知りたかった部分も全体としては分かりやすく、知識を整理するうえで参考になりました。一方で、一部については説明が少し省略されているように感じたところもありました。特に、構造に関する部分は、もう少し詳しく解説してほしかったというのが率直な感想です。もちろん、一冊の本ですべてを詳しく説明するのは難しいでしょう。扱う範囲が広いからこそ、説明を簡潔にする必要もあるのだと思います。それでも、構造をより深く理解したい立場からすると、もう一歩踏み込んだ説明があれば、さらに理解が進んだのではないかと感じました。分かりやすいことと、深く理解できること。その両方を満たすのは簡単ではありませんが、自分が今後学んでいくうえでも意識しておきたい点です。今回の本を読んで、すべてが分かったわけではありません。むしろ、もう少し詳しく知りたい部分が見えてきたことも、読書の成果だと思っています。知っているつもり、で終わらせないために今回の読書を通じて、曖昧だった知識が一段クリアになりました。そして、エンジンの状態を把握するには、数値やデータだけでなく、実際の変化を感じ取る感性も大切なのだと改めて考えました。知識を身につけることと、現場でその知識を生かすこと。その間には、まだ自分が学ぶべきことがあるのだと思います。これからも、分かっているつもりになっていることを一つずつ確認しながら、理解を深めていきたいです。仕事に直結する本だからこそ、読んで終わりにするのではなく、日々の仕事にもつなげていければと思います。【送料無料】舶用ディーゼルエンジン 構造・保守・整備/ヤンマーパワーテクノロジー株式会社価格:2,860円(税込、送料無料) (2026/10/11時点)楽天で購入
2026.10.11
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2026年9月20日、家族で京都市動物園へ行ってきました。一緒に行ったのは、妻と小学生の息子2人、義父です。 この日、特に印象に残ったのがゴリラでした。ゴリラの幼い子どもを見たのですが、とても可愛い。ただ、しばらく見ていると、「可愛いだけではないな」と思いました。幼いゴリラは、遊び回るように動いていました。その間も母親は、子どもから目を離さないようにしているように見えました。・外敵から守ること。・餌を与えること。・遊び回っている途中で怪我をしないか気を配ること。人間の子育てと同じとは言えませんが、親が子どものことをずっと気にかけている姿を見ると、やはり子育ては大変なんだろうなと思います。【写真①:ゴリラの子ども】 ゴリラは、自立するまでに10〜15年ほどかかるらしいです。一方で、生まれてからわずか1週間ほどで親から離れる動物もいると聞きました。動物によって、成長のスピードは本当に大きく違います。ゴリラは成長が遅い分、子どもを育てる期間も長くなります。 ゴリラは数が減っているらしいですが、こうして成長に長い時間がかかることは、繁殖という面では不利になるのだろうか、とも考えました。もちろん、実際には寿命や繁殖の仕組みなど、いろいろな要素が関係しているのだと思います。普段なら「ゴリラの子ども、可愛いな」で終わっていたかもしれません。でも今回は、親が子どもを見守る姿を見ているうちに、その先にある子育ての大変さや、長い時間をかけて成長していくことにも目が向きました。 息子たちはゴリラを喜んで見ていました。動物園では、動物を見るだけでなく、こういうことを考えるきっかけもあるんだなと思った一日でした。
2026.09.27
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今回読んだのは、村木正芳さんの『よくわかるトライボロジー』です。トライボロジーとは、摩擦、摩耗、潤滑など、二つの物体が接触して動くときに起こる現象を扱う学問です。私がこの本を読もうと思ったきっかけは、普段の仕事でも表面粗さを計測することがあるため、表面の状態をもう少し深く理解しておきたいという思いがありました。本書はトライボロジー全般を扱っており、表面、接触、摩擦、摩耗から潤滑、軸受、流体潤滑など、かなり広い範囲について解説されています。トライボロジーは「油膜厚さ」を求める学問なのか?読み始める前の私は、トライボロジーについて、摩擦や摩耗、潤滑を扱う学問だという程度の理解でした。ところが読み進めていくと、油膜厚さを求めるためのさまざまな考え方や計算方法が出てきます。そのため、途中からは「トライボロジーとは、主に油膜厚さを求めるための学問なのではないか」と思ってしまうほどでした。もちろん、トライボロジーのすべてが油膜厚さを求めることではありません。本書では摩擦や摩耗、表面、接触なども幅広く扱われています。ただ、私にとっては、これまで漠然と捉えていた「潤滑」というものが、かなり理論的に扱われていることが印象に残りました。特に印象に残った「ベアリングエリアカーブ」本書の中で特に印象に残ったのが、ベアリングエリアカーブについての記述です。普段の仕事で表面粗さを計測していることもあり、単純に「表面粗さの数値を見る」というだけではなく、その表面形状が実際の接触にどう関係するのかを考えるきっかけになりました。表面粗さというと、私はこれまで、測定して数値で評価するものとして捉えがちでした。しかし、実際に二つの表面が接触するときには、表面全体が均一に接触しているわけではありません。表面には微細な凹凸があり、その凹凸の状態によって、どの程度の面積が実際の接触に関係してくるのかも変わってきます。そう考えると、普段計測している「表面粗さ」というものも、単なる測定値ではなく、摩擦や摩耗、接触状態につながっているものとして見る必要があるのだと感じました。今回の読書で、ここが自分の仕事と最もつながった部分だったと思います。摩擦・摩耗についても、改めて考えるもう一つ、この本を読んで考えるようになったのが、摩擦や摩耗の種類についてです。「摩擦」や「摩耗」と一言で言っても、実際にはさまざまな状態やメカニズムがあります。これまでも仕事の中で摩擦や摩耗という言葉を使うことはありましたが、それぞれを整理して考える機会は十分ではありませんでした。本書を読んだことで、摩擦や摩耗についても、「何が起きているのか」をもう少し細かく分けて考える必要があると感じました。特に、表面の状態、接触の仕方、潤滑状態などを切り離して考えるのではなく、それらが互いに関係して摩擦・摩耗という現象につながっていると考えることが重要なのだと思います。正直に言うと、難しい本でしたタイトルには「よくわかる」とありますが、私にとっては、決して簡単な本ではありませんでした。前半から中盤にかけては、自分の仕事と関係する内容もあり、比較的読み進めることができました。一方、最後の方になると、私には難解に感じる内容が増えてきました。すべてを理解できたとは、とても言えません。特に、理論的な部分については、一度読んだだけでは十分に理解できなかったところがあります。だからといって、この本が分かりにくい本だと単純に評価するつもりもありません。トライボロジーそのものが、摩擦、摩耗、表面、接触、潤滑、流体など複数の分野にまたがる学問だからこそ、理解するにはある程度の基礎知識が必要なのだと思います。私自身の知識が足りない部分もあります。「表面を見る」ということ今回この本を読んで、一番変わったのは、普段計測している表面粗さを見るときの意識かもしれません。測定結果として出てくる数値だけを見るのではなく、「この表面の凹凸は、実際の接触ではどう作用するのだろうか」「この表面同士が接触したとき、どこが実際に接触しているのだろうか」「潤滑状態が変われば、この表面の役割も変わるのだろうか」といったことを考えるようになりました。まだ自分の中で十分に整理できているわけではありません。ただ、これまで測定対象として見ていた「表面粗さ」を、摩擦や摩耗、接触現象の一部として考える視点を持てたことは、この本を読んだ一つの収穫でした。読み終えて『よくわかるトライボロジー』は、私にとって「読めばすぐ理解できる入門書」というより、トライボロジーという分野を広く知り、分からない部分を見つけるための本でした。特に、表面粗さや接触については、自分の仕事とのつながりを感じながら読むことができました。一方で、最後の方には理解しきれなかった部分も残っています。今回分からなかったところを、そのまま「分からなかった」で終わらせるのか。それとも、摩擦・摩耗、接触、潤滑、表面粗さについて一つずつ学び直していくのか。「自分は何を理解していて、何を理解していないのか」を知ることも、次の勉強につながるからです。今回の読書をきっかけに、まずは摩擦・摩耗の種類と、表面粗さが実際の接触状態にどう関係するのかを、もう少し掘り下げてみたいと思います。よくわかるトライボロジー 村木 正芳価格:1,949円(税込、送料別) (2026/9/19時点)楽天で購入
2026.09.19
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静かな夜、一人で過ごす時間。ソロキャンプという状況と、このタイトルが何となく相性が良さそうに思えたのが、この本を手に取った理由です。実際に読み始めてみると、想像していたような単純な恋愛小説ではありませんでした。恋愛の物語でありながら、それ以上に、一人の女性が自分自身や他者との関わりの中で何を感じ、どう生きていくのかを描いた物語だったように思います。一人で生きる人は、思っている以上に多いのかもしれない読みながら考えていたのは、主人公のように、目立たず、どこか人との距離を取りながら生きている人は、実際には少なくないのではないかということでした。人と関わりたい気持ちはあっても、どう関わればいいのか分からない。傷つくことを恐れて、自分から一歩を踏み出せない。そんな人は、男性にも女性にもいるのではないかと思います。主人公の人生を読んでいると、「殻を破る」という言葉を簡単に使うことの難しさも感じました。人は、自分の殻の中に閉じこもりたいから閉じこもっているとは限りません。そこから出る方法が分からない場合もあるでしょうし、出ようとして傷ついた経験があるのかもしれません。もちろん、小説の登場人物と現実の人間を単純に重ねることはできません。それでも私は、主人公のような人が現実にもたくさんいて、その中には最後まで大きく変わることなく人生を終える人もいるのではないかと思いました。そう考えると、「人が変わる」ということは、本人が思っている以上に難しいことなのかもしれません。だからこそ、誰かとの出会いや、偶然の出来事が人生に与える影響について考えさせられました。「あなたは私と寝たいと思いますか?」という問い本の中で印象に残った言葉があります。«「あなたは私と寝たいと思いますか?」»かなり直接的な問いです。もし自分が突然こんな質問をされたら、どう答えるだろうかと考えました。私は男性ですが、おそらくすぐには答えられないと思います。そして迷った末に、「はい」と答えるのではないかと思いました。ただ、この問いを単純に性的な意味だけで受け取ることはできませんでした。誰かに対して「あなたは私をどう思っていますか」と尋ねることは、思っている以上に怖いことです。相手の答えによって、自分が傷つく可能性があるからです。だから多くの場合、人は聞かない。曖昧な関係のまま、相手の気持ちを想像し続ける。あるいは、自分の気持ちさえ明確に言葉にしないまま時間が過ぎていく。この小説を読んでいて、人と人との関係には、「知りたいけれど、知るのが怖い」という感情が常にあるのだろうと思いました。私が勝手に期待していた結末正直に言えば、読んでいる途中から、私はある結末を勝手に期待していました。そして読み終えたとき、「あれ?」と思いました。自分が想像していた方向とは違ったからです。もちろん、それが悪いという意味ではありません。むしろ、自分がなぜその結末を当然のように期待していたのかを考えるきっかけになりました。小説を読んでいると、いつの間にか「物語なのだから、こうなるはずだ」と考えてしまうことがあります。誰かと出会ったら、関係が深まるはず。困難があれば、それを乗り越えた先には何かが待っているはず。しかし現実の人生は、必ずしも物語のようには進みません。誰かと出会ったからといって、その関係が自分の望む形になるとは限らない。変わろうとしたからといって、人生が劇的に変わるわけでもない。この小説を読み終えたあとに残ったのは、そんな当たり前のことでした。けれど、その当たり前のことを改めて考えさせられたのは、自分自身が知らないうちに「物語らしい人生」を期待していたからかもしれません。最後のページを読んだときこの本を読み終えたのは、バスの中でした。最後のページを読んでいるとき、ちょうどこの小説に合っているように感じる音楽が流れてきました。どんな曲だったか以上に、「その瞬間、この小説と周囲の空気が不思議と重なった」という感覚が印象に残っています。本を読み終えた場所や時間、そのときに聞こえていた音まで含めて、一冊の読書体験になることがあります。同じ本でも、自宅の明るい部屋で読んだ場合と、静かな夜に一人で読んだ場合では、残る印象が違うかもしれません。ソロキャンプで読む本を探していたことから始まった読書でしたが、結果的に、この小説は「一人で読む」という行為そのものについても考えさせられる一冊になりました。人は、自分の殻から出られるのか『すべて真夜中の恋人たち』を読んで、私は「人は変われるのか」という問いについて、はっきりした答えを得たわけではありません。むしろ、以前より少し分からなくなりました。人は自分一人の力だけで変わるのか。誰かとの出会いによって変わるのか。あるいは、変わらないこともまた、その人の人生なのか。主人公のように、静かに、自分の内側に多くのものを抱えて生きている人は、きっと現実にもいるのでしょう。その人たちが、ある日、自分の殻を破ることもあるかもしれない。しかし、破らないまま一生を終える人もいるのかもしれません。それを外側から見て、「もっと変わればいいのに」と簡単に言うことはできないように思います。この本を読み終えて、そんなことを考えました。恋愛小説として読むこともできる。一人の女性の人生の物語として読むこともできる。そして私は、人が他者と関わることの難しさと、自分の殻から外へ出ることについて考えながら、最後のページを閉じました。読み終えたあと、きれいに答えが出る小説ではありませんでした。だからこそ、しばらく時間が経ってからも、ふと思い出す一冊になるのかもしれません。すべて真夜中の恋人たち (講談社文庫) [ 川上 未映子 ]価格:814円(税込、送料無料) (2026/9/11時点)楽天で購入
2026.09.11
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仕事をしていると、何度も遭遇するにもかかわらず、なかなか理解しきれない現象があります。私にとって、その一つが「フレッティング」です。接触している部品同士に微小な相対運動が生じることで発生するフレッティングは、摩耗や損傷、疲労破壊など、さまざまな不具合につながります。実務では決して珍しい現象ではありません。しかし、その一方で私は以前から不思議に思っていました。これほど実社会で頻繁に問題になる現象なのに、なぜ大学ではあまり体系的に教えてもらえないのだろう、と。そんな疑問もあり、今回『設計者のためのフレッティング疲労入門』を手に取りました。フレッティングという厄介な現象を理解したくてフレッティングの厄介なところは、単純に「部品同士が擦れている」というだけでは説明できないところだと思います。接触荷重、微小なすべり、材料、表面状態、形状など、さまざまな要素が関係します。そして実際の不具合では、「なぜここに発生したのか」「なぜこの条件で損傷したのか」を考え始めると、一つの要因だけでは説明できないことも少なくありません。だからこそ私は、この現象をもう少し深く理解したいと思っていました。本書は、フレッティングによる不具合がなぜ起こるのか、そして設計や対策にどのように向き合えばよいのかを考えるための一冊だと感じました。読んでみてまず感じたのは、かなり実務寄りの本だということです。現場で実際にフレッティングによる問題に直面し、「では何を確認すればよいのか」「どのような方向で対策を考えるのか」という視点では、役立つ内容があると感じました。実社会では多く起きているのに、なぜ学ぶ機会が少ないのか今回、内容そのものと同じくらい強く印象に残ったのは、フレッティングという現象の位置づけについてです。私は以前から、「フレッティングは実社会ではこれほど多く発生しているのに、なぜ大学ではあまり教えてもらえないのだろう」と感じていました。もちろん、大学教育ですべての実務上の現象を扱うことは難しいと思います。材料力学、機械力学、流体力学、熱力学といった基礎を学ぶことが先であり、それぞれの具体的な不具合現象まで網羅することは現実的ではないでしょう。ただ、実務に入ってから頻繁に遭遇する現象の中には、大学で学んだ基礎知識だけでは、すぐに理解へ結びつかないものがあります。フレッティングも、その代表例の一つではないかと思います。これは大学教育がおかしい、という単純な話ではありません。むしろ、基礎学問と実際の不具合現象との間には、ある種の距離があるのではないかと感じます。実務では「フレッティング」という名前の現象として問題が現れます。しかし、それを理解するためには、接触、摩擦、材料、応力、疲労など、複数の基礎知識をつなげて考えなければなりません。学生時代には個別に学んだ知識が、実務に入ると突然、「一つの現象を説明するために結びつける必要がある知識」になる。この難しさが、フレッティングを理解する難しさの一つなのかもしれません。実務には役立つ。しかし、もっと深く知りたい本書を読んで感じた率直な感想は、「フレッティングによる不具合対策を考えるうえでは役立つ。しかし、フレッティングという事象そのものを深く理解するには、まだ足りない」というものでした。これは本書への否定的な評価というより、私自身がこの本に何を求めていたのかが、読後にはっきりしたということだと思います。「不具合が発生した。では、どう対策するか」という実務的な問いに答えるための知識と、「そもそも、なぜこの現象が発生するのか」「接触面では何が起きているのか」「微小な相対運動と応力、摩耗、疲労はどのようにつながっているのか」という現象そのものを理解するための知識は、必ずしも同じではありません。私は後者への関心が強かったのだと思います。原因を完全に理解する前に、再発防止策を決めなければならないこともあります。それは現実として必要なことです。しかし技術者として仕事を続けるのであれば、「対策を知っている」だけで満足したくはありません。なぜその対策が有効なのか。条件が変われば、同じ対策は本当に有効なのか。別の製品でも応用できるのか。そこまで考えられるようになるには、個別の対策事例を知るだけでは足りず、現象の根本に戻って理解する必要があるように感じています。今回この本を読んだことで、逆に自分が今後何を学ぶべきかが少し見えてきました。
2026.09.06
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