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2005.03.20
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テーマ: ニュース(95829)
カテゴリ: 今日のつぶやき
「あの日」、私はいつも通りに会社へ行っていました。

かけて来たのは、休暇を取って、青森へ家族でスキー旅行へ出かけた同じ部の先輩でした。

「おはようございます。スキーはいかがですか?何か、ありました?」
「何言ってんだー!!すぐテレビつけろ!!皆はちゃんと会社に来てるのか!?」

…日比谷線と銀座線の駅に、はさまれるような場所にあった私たちの会社。
その周辺で、とんでもない騒ぎが巻き起こっていることを、遠い雪国からの電話で知ったのです。

ほとんど時を同じくして、窓の外から救急車や消防車のサイレンがひっきりなしに聞こえて来ました。
テレビのニュースで、地下鉄の構内で何かが起こったらしいということは、わかりました。

周囲では、驚きで涙ぐんでしまう女子社員の姿もありました。
社員の安否を問うご家族からの電話もかかって来ましたし、とにかく異様な雰囲気の朝だったのを覚えています。

それでも、1時間後には社員が全員無事であるということの確認が取れた、という通達が出て、いつものように業務に戻りました。
中には、いつも乗る丸の内線から、たまたま1本早い電車に乗ってきた…と、間一髪で難を逃れて興奮気味の同僚もいました。
インターネットも、メールも、誰もが当たり前のように使う時代ではなくて、携帯電話でさえまだ完全には普及していなかった頃のことです。
その時、実際には何が起きていたのか、すべてを知ることが出来たのは、夜になってからでした。

『1995年3月20日、晴れ上がった初春の朝。まだ風は冷たく、道を行く人々はコートを着ている。昨日は日曜日、明日は春分の日でおやすみ──連休の谷間だ。あるいはあなたは「できたら今日くらいは休みたかったな」と考えているかもしれない。でも残念ながら休みはとれなかった。
あなたはいつもの時間に目を覚まし、洋服を着て駅に向かう。それは何の変哲もない朝だった。見分けのつかない、人生の中の一日だ……。
変装した五人の男たちが、グラインダーで尖らせた傘の先を、奇妙な液体の入ったビニールパックに突き立てるまでは……。』

これは、村上春樹さんが、オウム真理教による地下鉄サリン事件の被害者への膨大なインタビューをまとめた著書
「アンダーグラウンド」
からの一節です。


「平凡な毎日なんて、いつ崩れてしまっても不思議ではないんだ…」
という思いが、頭のどこかに染み付いてしまったように思います。

9・11の米国同時多発テロが起きる、6年も前。
オウム真理教の人々が起こした、前例のない無差別テロは、直接サリンを吸わなかった私の心の片隅も、確実に破壊したのです。

その年の1月には、阪神大震災が起きていました。

時をおかず、立て続けに起きた大きな事件に、離れて暮らしていることをどれほど不安に思ったことか。

今日も、福岡で大きな地震がありました。お彼岸の休日を過ごしていた中で被災された方々にとっては、どれほどの衝撃であったかと思います。
中越地震で、避難所暮しをしていた小学生の男の子に、アナウンサーが
「今、どんなことが一番の望みですか?」
と尋ねたら、帰ってきた答えは
「ふつうに暮らしたい。地震が起きる前みたいに、ふつうに」
というものだったことを、思い出します。

いつか、あっけなく壊れてしまうかもしれない、それでも。
おだやかな暮しの中で、いろいろな楽しさや、安らぎを感じながら、大切な人と共に毎日を送れる幸せを、いつもいつもちゃんとかみしめていたい。
そんなことを考えた、10年目の今日の日でした。

【辛いけれど、読んでよかったと思う本】

アンダーグラウンド(村上春樹・著)









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最終更新日  2005.03.20 14:26:34
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