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―通学路(1)―



 しかし下校時間は学年によってばらばらであるので、帰り道は同級生同士で帰ることになる。小学生になったとはいえ6歳児だけでまっすぐ歩けるわけがない。給食食べたら下校していたはずなのに傾いてきた日を見たこともある。だいたい普通は2時間くらいかけて歩いていたのだと思う。

 路側分離帯を平均台のようにして「この下は溶岩よ」などと注意しあいながら歩く。ありんこの動きは気になるし、バッタに出会えば全身引き伸ばして長さを確かめたくなるし、捕まえたトカゲが切ったしっぽは動かなくなるまで見つめ続ける。雲の形が気になって側溝に落ちることもある。   

 草笛を作ったり、笹舟を作って溝に流したり、遊び道具にはことかかない。エノコログサを挟んでヒゲダンスを踊る、じゅずだまは集められる限りポケットに詰め込む。

 ヨモギで緑色に、ツユクサで真っ青に、ヨウシュヤマゴボウで紫色に、いつも指はいつのまにか染まっていたが、意図的に、ホウセンカでマニキュアをしたり、オシロイバナの種を割って顔に塗りたくって、おしゃれしたつもりになっていることもあった。

 おやつが欲しくなれば、すかんぽをかじったり、桑の実や、カラフルな槙の実の色の濃いのを食べたり、空き地の植物と花壇の植物の違いなんかもわかっていないので、サルビアの蜜を吸ったりしていた。カラスノエンドウはサヤエンドウの味とは違うなあとか、マリーゴールドは苦いなぁとか、野菜ではない植物の味覚の記憶はこのころ形成されている。

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