ミステリの部屋

ミステリの部屋

2006年01月25日
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カテゴリ: 海外ミステリ

最初の100ページまでがなかなか進まなくて、久々にくじけそうになりました。
ところがその後、事件が起こる頃からは読みやすくなったので、投げ出さなくて良かったというところでしょうか。
そうなると、逆にじっくり読みたい、と言う気分になりました。

大邸宅に名士が集まり、シェークスピアの劇を上演しようとするところまでが、頑張りどころ。
なぜならば、やたら登場人物が多いからです。軽く30人以上はいます。
登場人物表にポストイットを貼って、名前が出てくるたびに確かめること数十回、そのおかげで今はほんの端役まで完璧に把握できています。



ハムレット役の俳優をのぞいては、各界の名士が参加する素人芝居です。
上演前からおかしな文書が送られてきたため、出演者たちは不安をかかえていましたが、ついに『ハムレット』上演中に、ボローニアス役の大法官が銃で撃たれて死亡するという事件が起こります。
被害者は国家機密に関わる文書を常に持ち歩いていたため、首相直々の要請があり、スコットランド・ヤードのアプルビイ警部が現場に急行します。



これは1937年に書かれた作品で、アプルビイ警部シリーズの2作目です。1作目の『学長の死』は絶版となっています。

作者のマイクル・イネスはシェイクスピア研究など学究生活の傍ら、アプルビイ警部シリーズを中心に、40冊以上のミステリを発表しました。
どうやら、アプルビイ警部は順調に出世して、後々かなり偉くなるようです。


この作品の旧訳は、「翻訳が悪い。」ので有名だったらしく、読者に敬遠されしまったようです。
そのためか、江戸川乱歩が絶賛したことで幻の名作として名高かった「ある詩人への挽歌」が日本語で読めるようになるまでには五十年以上かかりました。

今回読んだものは、1997年に国書刊行会より探偵小説全集の一冊として読みやすい新訳で出版されたもの。
その後同じ全集で、『 ストップ・プレス 』が出されています。
奇想、奇抜な動機、奇人変人たち、莫迦ばかしさと紙一重のユーモア、ドタバタ騒ぎなど、イネスの独自性が発揮される後期の作品らしいので、それも読んでみたいものです。

さてこの作品、芝居の最中に事件が起こります。
なぜ芝居の最中でなければいけなかったのか、というのは大きなポイントです。

その芝居がシェークスピアの「ハムレット」。有名なセリフもでてきます。
全編通じて、シェークスピアの戯曲がかなり重要な要素となっているので、シェークスピアに興味のある方はさらに楽しめるでしょう。

序盤で紹介される個性的な登場人物ですが、初めに頑張ったおかげで、容疑者が二転三転する場面でも、ちゃんとついていくことができました。



最後には何とドタバタな展開になり、ユーモラスなシーンも見られます。

ミステリ黄金時代に書かれたにふさわしい、英国の正統派探偵小説でした。
教養と、ユーモアがうまくミックスされている、という感じでした。


原題は「Hamlet,Revenge!」口に出して言ってみると、何だかおかしくありませんか?


※登場人物にジャーヴァス・クリスピンという名前があります。

解説によると、作家エドマンド・クリスピンと、その探偵ジャーバス・フェンの起源はここにあるようです。



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最終更新日  2006年01月25日 18時58分19秒
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Re:ハムレット復讐せよ:マイクル・イネス(01/25)  
たばさ6992  さん
イネス!
私もずっと探してはいるのですが、一度もお目にかかれない作家さんです(涙)
samiadoさん、いーなー(笑)
今ならきっといい翻訳がされるでしょうに。出版社もそうやって埋もれた素晴らしい作品を発掘して欲しいですね。 (2006年01月26日 00時39分16秒)

おお、スゲエ!  
江戸川心歩  さん
ドキドキするような本ですな~・・・オフェーリア! (2006年01月29日 01時04分48秒)

Re[1]:ハムレット復讐せよ:マイクル・イネス(01/25)  
samiado  さん
たばさ6992さん、返事が遅くなりました。

私にとってこの作品が初マイケル・イネスでしたが(今はマイクルというのでしょうか)、館に劇にシェークスピアと道具立ても揃って、なかなか味わい深い英国ミステリでした。
論創社 からは、警部が奥さんと出会う場面もある「アプルビイズ・エンド」が出されていますが、かなり雰囲気が違うようですので、これも読んでみたいですね。

最近、国書刊行会や論創社から黄金期のミステリが相次いで出版されているようで、有難いことです。
(2006年02月20日 14時09分46秒)

Re:おお、スゲエ!(01/25)  
samiado  さん
江戸川心歩さん、返事が遅くなりました。

この本、シェークスピア劇というのが一つのポイントです。
シェークスピアからの引用も何回か登場しますし、その内容も事件に深く関わってくるのですよ。
(2006年02月20日 14時28分42秒)

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