サトちゃんのいる風景

2009.01.30
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 柏崎の眼前で、男がこちらをにらみつけているではないか。

「おい何見てんだっ、このやろう」
 柏崎は反射的にさけんだが、男は表情を変えることなくにらみ続けている。なんて生意気なやつだろう。柏崎の怒りはさらにヒートアップした。 

「俺が誰だかわかってんのか、こらっ」
 たぶん自分が痩せた体型のため、あいつはなめてるんだろう。弱いやつほど意気がって、どうしようもないものだ。俺の正体を見せてやれと、柏崎は思った。

「こう見えても俺はボクシングをやってるんだ」
 しかし相手の耳には届いていないようだ。なんてやつだ。しかもふたりの周りに人が取り囲んで成り行きを見守っている。このままなめられたままでは終われない。

「えっ、聞いてんのか。なんなら俺と戦うのか」
 もう実力でわからせるしかない。柏崎は相手に殴りかかった。が、近くにいた頭のはげ上がった中年男性がすかさず止めに入った。


 中年男性は柏崎をつかんだまま、ただひとこと

「静粛にしなさい」
というだけだった。

「かかって来いやっ」
 柏崎は中年男性につかまれたまま、大声を張り上げた。しかし大声とは裏腹に、周囲の表情はなにか冷めてしまっている。いや哀れむような表情ともいえた。そうだろう。柏崎の背後にはこのような看板がかかっていたからだ。

『プロボクシング新人戦』







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Last updated  2009.01.30 08:24:23
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