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Esprit*

Esprit*

2007.08.07
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先輩はちょうどそのころ国家検査員の資格を取っていた。
車検対応に最低3人は検査員が各営業所に必要になる。
たまたま隣市の営業所の検査員が他の新営業所に移動になって、
先輩がその代わりにひっぱられたとのことで、
とりあえず3年。
3年経ったら、今の営業所に戻ってくるということらしいけれど、
その期間の間に他のエンジニアが国家検査員資格を取らなければ、
転勤期間は延長される、というものだった。




「え、もう全くこっちには来ないんですか?」

「ん、仕事の帰りに何か運んできたりとかするかもしれないけど、
出勤時間も違ってくるし、帰りも時間はずれるし・・・。
社内運動会とかだったら会うかもな。」


先輩は淡々と話してくれていたけれど、
私はもう言葉が出てこなかった。
先輩と電話を切った後、携帯を握りしめたまま、ずっと考えていた。


まただ・・。

私が先輩のことを想うと、先輩は離れていってしまう。
毎日、目で追っていられた私だけの幸せな時間。
高校の通学のときと同じ、見ているだけで幸せだったあの時間。

先輩は私の目の前から消えてしまう・・。

いつも目で追うことさえも許されなくなってしまう・・・。



「おーい、どうだ?調子は。」

彼が休日の前夜は家に泊まりに来てくれていた。
休みの日には松葉杖の私を連れてドライブに誘ってくれた。

愛おしい人。
愛おしいはずなのに・・・

やさしくされればされるほど、なぜか彼氏への愛を意識しすぎて
その愛情がホンモノなのかツクリモノなのか
自分でも本当に分からなくなっていた。
私は彼と幸せにならなければいけないんだ、
結婚して幸せな家庭を築くんだ、
幸せに・・幸せに・・・
考えれば考えるほど、心の中で何か違うものを求めている。
確約された幸せより勝る私の中の秘めた想い・・・。


職場復帰と延期した結納の日取りがどんどん迫ってくる。
もう結納を先延ばしにすることは許されないだろう。
本当にこれでいい・・??
本当にこれは私が望んでいる未来・・??


2時間かけて帰っていくセリカのテールランプに手を振りながら、
私の目の先にはあの待ち合わせをした海辺の堤防が
沈んでいく夕日に真っ赤に色を染められて、
綺麗だけど物悲しく思えてならなかった。








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Last updated  2007.08.08 01:29:04


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