Secret

PR

×

Profile

Esprit*

Esprit*

2007.08.17
XML
テーマ: 愛しき人へ(901)
カテゴリ: カテゴリ未分類
私はポーチの中に財布とハンドタオルを詰め込むと、

家族はもうみんな眠りについていたので、
家のカギだけそっと施錠すると、そのまま家を飛び出した。


・・顔はまだぐしゃぐしゃのままだ。
まだ足も完全に回復したわけではないので、そんなに強くは走れない。
それでも気持ちだけが先を急いでしまう。


いつもの待ち合わせの浜辺。
外は台風が近づいてきていて、生ぬるい風が顔に吹き付けてくる。

真っ暗な中にも異様なほど白い波が
防波堤にぶつかってしぶきを上げていた。
しばらくすると、聞き覚えのある車のエンジンの音が、
道の先のトンネルのほうから響いてくるのが分かった。
・・先輩だ。
カーブを曲がってMR2のリトラがこっちを大きく照らして近づいてきた。
何度も見覚えのあるこの光景。
車が私の前に止まって、先輩がルームランプを点けた。

「乗って。」

先輩が中から助手席のドアを開けてくれた。
私は黙ってうなずいてそのドアから中に座り込む。



「勘違いしちゃいけないよ。俺はキミを説得しに出てきただけだから。」

運転をしながら先輩が先に話を切り出した。

「でも!」

「駄目だって。相手の人の気持ち考えてみなよ。」

「・・でも。」



「・・・でも。」


車が人目につかない道路脇のスペースに止まった。


「・・台風だけどさ、すこしだけドライブでもすっかな。」

「・・・・・。」

「今晩だけ。今晩だけなら相手の人も許してくれるだろ。」


先輩はやっぱり私といまさらイチから始める気なんてない・・
そう思うとまた涙がこみ上げてきそうになった。


「どこ行きたい?・・っていっても、ゴメン、
 今日ガソリン切れ掛かってるからそう遠くにはいけない。」

「・・先輩の行きたいところでいいです。」

「じゃ、とりあえず、車出すよ。」


先輩はそう言って、ハンドルをまた国道に戻した。


「どっか24時間開いてるガスステないかな・・」

「・・えっと、R●●線沿いに昭和シェルかモービルか
 あったはずですけど・・」

「じゃあ、そこまではガゾリンも持つだろうな、行こうか。」


R●●線のある市はちょうど私達の住む町から1時間かかる。
山道をずっと走っていく、少し長めのドライブコース。
大好きな先輩との最後のドライブなんだ、
じめじめせずに笑っていよう、
いい思い出にしなくちゃ。
私はそう自分に言い聞かせて、泣くのをやめて顔を上げた。


・・・そのあと、本当に忘れられない思い出ができてしまったの
だけれど。








お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2007.08.18 00:59:21


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: