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Esprit*

Esprit*

2007.08.23
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テーマ: 愛しき人へ(901)
カテゴリ: カテゴリ未分類
私の携帯に知らない番号からのコールがあった。


彼女は私の部署の上司に当たる男の人と交際をしていたのだが、
その上司が突然行方不明になってしまったらしい。
何故、彼女が私に電話をかけてきたかというと、
どうやらその上司が県内にある、
とあるゴルフ場にいるらしい、と
そこまでは彼女が調べたのだけれど、
そのゴルフ場の場所がよく分からない。というのだ。

婚約を破棄した彼氏の住む地域。
破談にしたことを知らない彼女はせっぱつまって私に
電話してきたのだった。


「お願いです、彼氏さんに一緒にゴルフ場の場所まで
 行っていただけるよう頼んでいただけませんか?」


私の彼氏は、何度も私の家に来ていたこともあって、
私の勤めていた営業所の中でも顔が知れていた。
もちろん、その上司も事務の子も顔見知りだった。
・・多分、先輩はこの辺あたりから私の結婚話を聞いたのだろう。


私は断ることができなかった。
上司は警察に捜索願も出されていたし、


私から彼に連絡を取ることはしていなかった。
すれば、また要らぬ期待を持たせてしまうから、
かかってくる電話やメールは受けても、
自分からはしないようにしていた。
けれど、私が連絡をいれてしまうということは、

とられてしまうかもしれない・・・。

私が彼に電話を入れ、彼は協力すると約束してくれた。
私は事務の子と上司の親を連れて、
彼が指定した場所まで2人を連れて行った。
私はただそれだけの役目を果たしたら、すぐ帰るつもりだった。


約束の場所はゴルフ場の手前のガソリンスタンドの裏手の駐車場。
車で乗り入れていくと、見慣れた彼の黒いセリカが止まっていた。

「あれ?痩せましたね、彼氏さん」

事務の子が私の車の中から、外で待つ彼を見てそうこたえた。
私は事務の子には彼と別れ話が出ていることは言ってなかったから、
何気なく彼女はそういったのだけれど、
私はあえて外の彼と目を合わせないように下を向いていた。
彼がこちらに向かって歩いてきたので、事務の子と上司の親は車を降り、
3人がゴルフ場のサービスカウンターの方に消えていった。
その間、駐車場で私は自分の車にカギをかけて、乗せて来た二人を待った。


10分くらいしただろうか、
運転席の窓をコンコンと誰かがたたいた。
・・・彼氏だ。
顔をあげて私がぎょっとしたのは言うまでもない。
顔が・・げっそりと肉が落ちていた。
腕も肩もひと回りもふた回りも細くなって、
頬の部分がこけて顔の輪郭が変わってしまっていた。

「!!」

「・・開けて?」

思わず息をのんでしまった私に彼が話しかける。

「・・相手さん、いたわ。俺が呼び止めて連れてきた。
 今、3人で話してるから、もう少し時間かかるよ。」

「・・・・・。」

「俺らも話そう?降りてきてよ。」


もう前のように私をなじる勢いは彼にはなかった。
私は車のロックを開けて外に出てしまった。


「・・痩せたね。」

「ん?ああ・・どうだろ10キロ近く落ちたかな・・」


私の車にもたれながら、彼は自分の服の腕をまくって見せた。
小学校から大学まで野球をしていたヒトだから、
どちらかといえばガッチリ系のヒトだったのに、
かなりからだの筋肉が落ちてしまっていた。


「・・食べてるの?」

「うん、食べてるよ。身につかないだけみたい。」


ごめん・・といいかけて頭を上げようとしたとき、
彼が私を引き寄せて抱きしめてきた。


「やめて・・お願いだからやめて。」

車が影になっていて、国道やガソリンスタンドからは見えないけれど、
ゴルフ場のほうからだと二人は丸見えになってしまっている。
懐かしい彼氏の匂いがした。
私はその匂いから逃れようともがいたけれど、
彼の力の方がずっと勝っていた・・・。






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Last updated  2007.08.24 00:36:29


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