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これは、左に移さない文章になりますね。 でも、ちょっと長くなりそうなので、こちらに書いていく事にします。 まず、初めに、「パン・ド・ミ」って、何なんでしょう。私の作る「パン・ド・ミ」は、山形の牛乳100%使用の食パンです。でも、これは「パン・ド・ミ」という商品名であって、実際の「パン・ド・ミ」は、すこし意味が違います。 さしあたり、「パン・ド・ミ」とは、フランス語です。Pain de mieと書いて「パン・ド・ミ」と読みます。これは、直訳すると「中身のパン」となります。 中身のパン、とは、日本人にとっては、妙な表現ですが、基本的にフランス人は、「パン」とは、皮(クラスト)に旨さを感じる人たちですので、皮が多いパンが好まれます。ですので、その意に反した「中身の多いパン」は、フランス人にとっては、「ちょっと普通のパンとはちゃうねんで」という感覚になります。 そして、フランスにおいてのpain de mieは、どのような扱いか、と申しますと、主に「カナッペ」や「サンドウィッチ」などに使われ、日本人が当たり前のように「トースト」している様な食べ方は、フランス人にとっては、特別な食べ方になります。 つまり、フランスにおいてのpain de mieとは、フランスのpain de mieであり、日本における「パン・ド・ミ」とは、すっかり捉え方がずれてしまっている、と考えて良いと思います。 で、日本における「パン・ド・ミ」ですが、これはまるっきり「食パン」と考えて、間違いないと思います。ただ、呼称がフランス風になっているだけ、というだけです。 そもそも、pain de mieが日本に広まったのは、10年程前に、フランス系の名前の付いた某店が、山形食パンを「パン・ド・ミ」という商品名で売り出し、それがヒットし、それが原因で、全国に「山形食パン=パン・ド・ミ」となったというだけで、基本的に、パン・ド・ミの定義はとてもあいまいなものである、というのが、私の考え方です。 日本においての「パン・ド・ミ」は、フランスのおいてのpain de mieとは、すこし異なっているのは、味覚の好みの違いが大きいと思います。 日本人は、基本的に「もっちり、しっとり」を好みますが、フランス人はそうではありません。ですので、「パン・ド・ミ」とpain de mieが異なるのは、味覚の概念の差異と考える事ができます。 結論。 日本においての「パン・ド・ミ」とは、基本的に山形食パンのことである。配合上で、特に定義される特徴はなく、形状と呼称が、その特徴だと考える事ができる。主な用途はトースト用、もしくは、サンドウィッチ用であり、それは通常の食パンと、あからさまな差異はない。 こんな感じです。 もっとぶっちゃけて書いてしまうと、「パン・ド・ミ=山形食パン」と考えても良いと思います。 では、イギリスパンとパン・ド・ミの差異は何か? これは、配合上の微妙な差でしょう。 イギリスパンは、食パンよりもリーンな生地を使用するのが一般的です。パンドミは、食パンの生地ぐらいのリーンでもなく、リッチでもない生地を使用するのが一般的です(もちろん、いろんな配合があるので、だいたいそのぐらい、という感じです)。 こんな感じでよろしいでしょうか?>ちょこぱんさん
2004年08月10日
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この季節になると、保健所の「食品衛生講習会」があります。恒例と言うか、定例というか、必ず行われます。 だいたい、食中毒についての事や、食品衛生法に合致している正しい表示の仕方など、「食品衛生」についての2時間弱の内容です。 毎年毎年、同じ事を同じように、保健所の職員の方から教えて頂いているので、クーラーの効いた室内で、椅子にすわって話を聞いていると、「それ知ってますよー」と油断して、ついつい、うつらうつらと・・・。 でも、大切な所は聞いてますから。いや、聞いているはずだと思います。多分・・・。 うつらうつらしながら講習を聞いている時に、「パン屋だったら、どの菌が危ないやろか」と、眠たい目をこすりながら考えます。眠気覚まし・・・いや、真剣に講習を受けているフリをするため・・・いや・・・なんでもないです・・・。ちゃんと聞いてますから・・・。 さて。 食中毒の原因となる菌やウィルスは、基本的に熱に弱いので、加熱されるパンならば、ほとんど大丈夫だろう・・・と考えるのが普通だと思います。 基本的には、その通りです。 たとえば、病原性大腸菌O-157は、「75度で1分間の加熱」が、安全を確保する目安です。 焼き込み調理パンや、きな粉をつけたりするドーナツなどは、特にきちんとした衛生管理をしなければいけませんが、これは常識の範囲だと思います。 食中毒は、味も匂いも変わらない食品から発生することが、圧倒的に多い、というのは、あたりまえの事です。カビが発生すれば、食べないでしょうし、変な匂いがすれば、食べないでしょう。これも、常識の範囲です。 粉と水と塩とイーストといった、素朴なパンの場合、焼き立てで既に食中毒になってしまうだろうパンは、ない・・・と思いたいところなのですが、いくつかの菌は、パン生地に混入した場合に、食中毒の原因となる可能性は捨て切れません。 まず、「黄色ブドウ球菌」。 この菌は、日常的に人のまわりに存在しています。身体にもとうぜん普通に付着して、目には見えませんが、人間と一緒に住んでいます。 この菌が、なぜ「可能性が捨て切れない菌」なのかと言いますと、この菌は増殖の時に、毒素(エンテロトキシン)を出すのです。そして、その毒素は、加熱しても消えません。 この「加熱しても消えない毒素」という点が、「食中毒予防には、しっかり加熱したら大丈夫」という常識からずれているので、気をつけた方がよさそうです。 手や指に傷があるときは、その傷口が直接食品に接しないようにする事が、なによりの防止策です。 もうひとつは、「ウエルシュ菌」。 この菌も、自然に広く生息していて、土などに普通に居ます。 この菌は熱に強く100度で4時間加熱しても、死滅しません。そして、空気の無い所でも増殖できる能力があります。 これら、食中毒を起こす菌などは、日常的に存在しているものです。特別な存在ではありません。 そういう意味あいでは、「パン酵母」と、存在的にはなにひとつ変わらない菌です。ただ、パン酵母は人に害を与えないから「良い」とされ、黄色ブドウ球菌やウエルシュ菌は、人に対して毒性があるので「悪い」とされているわけです。 さて、対策です。 食中毒対策の基本として、3つの合言葉があります。「つけない」「ふやさない」「やっつける」です。これは、常識の範囲内ですから、あたりまえのことさえすれば、防げるはずです。 やはり、重要なことは、「手洗いや器具の洗浄(つけない)」事だと思います。つけなければ、増えません。増えなければ、毒性は低いのです。健康な人ならば、少量の菌では、食中毒にはなりません。 ですから、なにはともあれ、「つけない」事を徹底する事が大切です。 とはいえ、自家製酵母などは「菌が増えやすい環境」で種を起こす訳ですから、特に「種起こし時」に気をつけなければいけません。パン酵母と一緒に、食中毒菌を増やさないように。そして、まったく発泡が起こらなくて、嫌な匂いがしたら、潔く廃棄する心構えが大切です。この場合のみ、「もったいない」は、危険です。 ある程度、酸度が高くなれば、パン酵母や有益な菌にとって住みやすく、他の菌にとっては増えにくくなりますので、特に自家製酵母の「種起こし」の素材の表面と、容器の洗浄には、気をつけておきたいものです。 もちろん、パンを作る際の「手洗い」も、当然ながら忘れずに行いたいものです。 衛生的な作業は、癖にしてしまうと、全く苦ではありません。なにより、癖にする事が大切なのです。 と、このような「眠くなる」話を、年に1度、この季節に聞かなければなりません・・・。すこしは、共感していただけるでしょうか。大切な話なのに、眠くなってしまう・・・訳です。毎年ですからね。 では、最後まで御静聴、ありがとうございました。(笑)
2005年06月30日
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