シンガポールでサバイバル

今年もやってまいりました。

何をって？マラソンでございますよ。

体調が最悪で、友人に「名誉ある撤退」を勧められ

とりあえず朝ごそごそおき出して

「駄目だったら、途中で棄権しよう」と出かけようとすると

玄関のドアに紙が張ってあります。

「ファイト一発」

月子より、激励のメモです。

返事を書くことにしました。

「もし、私がお陀仏になりました暁には、あとのことお願いします。ゆえじ」

今生の別れともなるやも知れぬ我が家を後にし、

タクシーの中で、「しまった・・・パンツ洗ってなかった・・・」と

悔やみ、これは生きて帰ってこなければと

気持ちを新たにいたしました。

スタートポイントは、マーライオンの前。

真っ青なランニングを着た女子、女子、女子の渦。

シンガポールのジョンカビラみたいなDJが

「見て＝＝＝！美女がたくさん歩いてくる！！！

おれ、このカテゴリーが一番すきだ～～～～～！！！」と

絶叫しております。

確かに大奥も真っ青なオンナだらけっぷりでございます。

「あ～ゆ～れでぃ～～～？？？」

「いえ～～～～い！」みたいな掛け合いを

何度か繰り返し、一曲踊って、気分は絶好調。

周りにいる見知らぬ女子たちとも、

目でなんとなく「がんばろう」と言い合います。

友人が言います。「何が楽しくて、苦しい思いすんのよ」

確かに、「マラソン」って学生時代、苦しい思い出のひとつ。

でも、あのころは、どうやって走っていいのか分かっていなかった

ように思います。

周りより、少しでも早く。

前の人間を抜かすために。

そのために、走っていたのです。

マラソン大会でもいつも上位でした。

でも、とてもとても苦しかった。

今は違います。

今、私は、ゆっくりゆっくり走ります。

でも、自分の心地よいペースを維持することを

目標に走るのです。

人を出し抜こう、とか

少しでも、早く、とか

そういうことに惑わされそうになる自分を抑えて

「あなたが、一番、心地よいスピードは、どこ？」

「今、楽しんでる？苦しんでない？」

「抜かされたからって、それに惑わされて、

自分のペースを崩してない？」

「まだまだ長い道のりなの。この瞬間、燃え尽きるような

走り方、してない？」

そんなことを自問自答しています。

走っている１０キロの間、ずっと。

とても、とても、貴重な時間です。

それは言い換えると、勝たないことを、学ぶ時間です。

ゴールしたとき、涙がこみ上げました。

周りに惑わされず、自分の時間を

きちんと守り通した自分が

たまらなく、愛おしい。

そして、思うのです。

これから続くであろう

長い人生、

こうやってペースを守って

生きてけるはず、と。