ゆめのあとさき

ゆめのあとさき

忘れない日々~その参~


少しデータが安定しない事を伝えられる。少し、イヤな予感がした。
前回の危篤の時よりデータ自体は悪くないがやはり安定していない。
早めに皆を呼ぶ。皆で声を懸け見守るが一進一退。劇的な変化はない。

11時過ぎ皆が血圧計に集中していたが、急に脈拍が低下。みるみるうちに
下がっていく。覚悟をしていたとはいえ、目の前で起こっていることが
信じられなかった。「何これ?」
なかなか消えないろうそくがすっと消え入るように。
ICUにいろんな警告音が鳴り響く。
この音は2,3ヵ月後まで耳に残って離れなかった。

先生も必死に心臓マッサージをしてくれるがダメ。
あまり覚えていないが、かなり長い間してくれた。
私はもういいと思ったが義父はあきらめていない。
体に差し込まれたチューブから血が出始めていた。
私はこれ以上見られなくなって手をかざしてマッサージをやめてもらった。

どう見ても今、彼女がなくなったなんて信じられない。
だから直後は涙は出なかった。皆泣いていたが出なかった。
息子は声を上げて泣いていた。娘は黙って泣いていた。
それを見て初めて涙があふれてきた。

控え室に戻るが当然茫然自失。ただ、一人で浸りたかった。
義母、実母、義妹に化粧を頼み、これからの流れを婦長より聞く。
いろんな所に連絡するとすべてが動き出すのがわかっていたから
3時過ぎまでは会社にも知らせなかった。少しずつ段取りを進めた。

やたら天気が良かったのを覚えている。そしてその天気は一週間ばかり
続くことになる。晴れ女の彼女らしかった。実はその後毎7日ごとも
晴れになりそれは四十九日のあとまで続いた。

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