「ミナコの思考回廊」

「本を贈る」


「本を贈る」


先日、生まれて初めて人に本を贈った。

本は私の宝物だと思う。
特に好きなのはノンフィクション作品で、
例えば自分と同じような境遇に在る著者が綴った作品は、
共感すると共に慰められ、自分を見つめなおす機会を与えてくれる。


私は4年前、うつ病という診断を下された。

当時メディアでは『プチうつ』という言葉が流行っていて
それを耳にするたび
(うつ病はそんなに簡単なものじゃない!)
と腹を立てたのを覚えている。


そんな苦しみの中でも、やはり本は私の救いだった。

ある日、病院帰りに立ち寄った本屋で一冊の本を見つけた。
『消えてしまいたい』というタイトルが本当に切実で。
本と一緒に著者の女性さえ消えてしまいそうな錯覚を覚えた。
無性にナーバスになった私は、すぐさまその本を手にレジに向かった。

家に帰り、手にした本を開いたときは驚いた。

その本はノンフィクション作品で、自分とあまりに境遇が似ていたのだった。
一文一文を大切に読んでいくと、作中の言葉に強く共感し、
まるで自分の気持ちを代弁してくれているような、そんな気さえした。


そして先日、私はこの本を友人に贈った。

その友人は、ごく最近知り合った学校の同級生で、男性であるのに
どこか男女間の距離を感じさせない人だった。
彼は私の病気を特別視しないが、
穏やかに会話するなかで彼なりに私の病気を理解しようと励んでくれた。

私は彼のそんな態度を、とても好ましく感じた。

贈った本を読んで、彼は何を思っただろうか。
まだ、本の感想はもらっていない。
しかし相変わらず彼は穏やかだ。

そして私はそんな彼を、今まで以上に好ましく感じている。


本を贈るという行為は、幸福の象徴のようだと思う。
本を贈る相手がいるということは、素晴らしく贅沢なことだと思う。


私は幸福で素晴らしく贅沢な今を満喫している。




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