月の雫

月の雫

その4

足りない



祈ることは好きだった
物心ついたころから
神様や祈りが身近にあった

食事の時
寝る前
感謝の気持を伝える
その日一日を振り返り反省する
明日も良い一日にしてくださいと
お願いする
他愛のないお祈りだったけど


使命感や目的を持って祈る
それは初めての経験だったかもしれない


祈りに没頭しなくては
そういう思いが常にあった

恋愛になどうつつを抜かさず
自分がすべきことをすれば
もっと楽に物事が進む


少なくとも
罪悪感のひとつは減る

ここで言う罪悪感は
不倫している罪悪感とは別の
不倫に時間を割いている
意識がそっちに行きがちで
集中力がそがれている
それに対するものだった




在宅尼もどき
真面目な人には 叱られるだろうけど
そう自分を呼んだりしていた


煩悩は充分すぎるほど
前世でひどい悪事を働いたので
今生はその償いのために
清く正しく生きねばならぬ?(苦笑)


いろいろと諦めてきたんだから
もうひと頑張り
諦めが肝腎とばかり
煩悩断ち切りモードに
たびたび入ろうとするわたし


実生活が苦しくて逃げ込んだ世界
そこにも安住の場所は無い?


わたしが我侭なだけなのか

努力が足りないのか


感謝も
愛も
足りない 足りない 足りない
そう言われ続ける日々



申し訳ありません


ありがとうございますより
口にする回数の増えた言葉



こうすべき
こうあるべき
こうなるべき


そこに向かって
疲れた身体を引きずるようにして
ひたすら歩き続けていた


彼はそんなわたしに寄り添って
たびたび現実の生身の世界から
離れそうになるわたしに
彼の素朴な疑問を投げかけ
ともに考える時間を
つくり続けてくれた


あからさまな批判は しなかった

時には議論になることはあったけれど



















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