Kai -改 解 会 快…

Jan 21, 2010
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昨日は暖かい1日だったのに、体力的にダウンの日。
なので1日身体を温めて、小説を読んでいました。

昔は私が本の虫だったのですが、父が、今の仕事に変わってから暇つぶしなのか本を大量に読むようになり、それを何ヶ月かに1度もらってきます。
その中の1冊に、なんとなく目を引いたものが有りました。





あとがきを開いてみると、養老さんという大学の教授が書いておられます。
「バカの壁」などの著作で有名な方ですね。

あとがきから見るっていうのは反則なんですが(笑)、そんな反則をする人間のために、養老さんはあえて本の本筋には直接触れず、「どんな本でも読んでみないことには面白いか面白くないかもわからない」と反則者を一刀両断した後、でもこの小説のポイントを抑えた文章を書かれていました(後から読んでそれは理解できます)。
「読む前から内容を決めず」読む、事が大事だとあとがきで釘を刺されました(笑)ので、これが気に入って読み始めることに。

大学受験を失敗してしまった主人公が、見たこともないような崖を自分が一生懸命に登っている場面からスタートします。

太陽もなく、影もない。ひたすらだだっ広い世界。

混乱して周囲に話を聞くと、そこは生と死の境の世界でした。
どうやら主人公は自殺に成功して、生と死のハザマの世界にいるのです。主人公は大学受験に失敗して自分が首をつって死んだことを思い出します。
他の3人もまた、それぞれの事情で自殺をしてその世界に居るようです。

自分の事情をやっと飲み込めた所で、太陽のないだだっ広い空からパラシュートで何かが降りてきます。

…「神」です。

その世界に先に居た、主人公以外の3人もこんな事は初体験でした。
スカイダイビングの格好をしたファンキーな「神」は、
なんで空からわざわざパラシュートで降りてくるのかというツッコミをかわしつつ、
オレンジ色のレスキュー服を4人に渡し、メガホン、インカムマイク、携帯のようなカウンター、そして暗視ゴーグルのような特殊なめがねを支給します。

「自殺をしてしまい命を軽く扱ったお前たちがこの世界にとどまるのをやめて天国に行きたいなら、4人で7日間×7週の間に、100人の自殺しそうな人間を助けなさい」と指令が下ります。



自分たちは幽霊で見えないけれど、その人の中に「入る」ことができる事、
メガホンで「応援」すると自殺しそうな人の内面の声として届く事、
携帯のようなカウンターに助けた人がカウントされていく事などを学びつつ、
それぞれの事情を抱えたギリギリの「自殺しそうな人たち」を4人が何とか助けていくという物語でした。

結構最近に書かれた小説です。


途中、欝・いじめ・境界例・虐待・受験失敗・借金苦という重いテーマも描かれているのですが、「あちら側の世界」といいますか、命を粗末にしてしまった「もうすでに死んでいるものたち」が、「死ぬな!」と言って自分たちのようにさせまいとしていくところに滑稽さがありますし、どうしてそんなことで自殺してしまうんだ?という視野狭窄がどうして起っているのかを「見せる」構成になっています。

そんな風に思わなくていい、もっと別なやり方をしてもいいということを、自分のことは棚に上げつつも幽霊人命救助隊の4人が死に物狂いで、姿の見えない状態でメガホンで叫んだり、いろいろ作戦を立てて要救助者に気づかせようとするところに、笑えたり泣けたりと言った要素が詰まっていました。

また、4人の主人公チームがそれぞれ自分の自殺の原因に向き合っていくというもう一つのプロットも有り、こちらもRPGのようで面白くも有ります。

養老さんがあとがきで「日本人は、昔から落語でもそんな話があるが、生と死の世界の間をひょいっと乗り越えて、この世のルールの窮屈な所を茶化すのが上手い」と語っていました。まさにそれを地で行くような小説です。

読み終わる頃には、なにかやんわりとやわらかいものに守られているような気持ちになりました。





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最終更新日  Jan 21, 2010 05:40:25 PM
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