退院後すぐに、ほかのお宅に、預けられました。
環境は申し分のないところでしたが、なぜか
毎日あばれて、脱走までして、怪我をしてそれから
大きな声で夜鳴きをして、ほかの猫とも
うまくやれなくて。
それから、2ヵ月後にうちに来ました。
うちにきてからもずーっとおっかない顔をして
隠れたままです。
いずれ、ゆきちゃんもよいお宅に
もらわれれて幸せになってもらいたいと
里親さん募集を予定していました。
ある夜、私は猫のことや人のことにひどく
疲れて暗い書斎でうなだれてないていました。
涙がぽろぽろ落ちてきたとき、暗闇にかくれていた
ゆきちゃんが、そろりと近づいて私の目の前に座りました。
それから、しばらく、まじまじと私の顔を見て
ほほを落ちる涙を手でぬぐい始めました。
右目は左手で、左目は右手で。という具合に。
それから手に取った涙をぺろーりとぺろーり
となめています。
私は驚きととまどいで、涙もとまってしまい
何が悲しかったのかも忘れ呆然としましたが、
はっとわれに返り、ゆきちゃんに軽く会釈をして
その部屋を後にしました。
そしてその夜はぐっすりと眠りました。
きっとそれは、動くものを手でさわる
猫の習性のようなものかも
しれないのですが、そんな不思議な出来事が
何度かあって、ゆきちゃんは、
里親さんを探すことなくうちの子になったのでした。


