真夏の過日(いよいよ乗るぜ編)


道理で日曜なのに予約が直ぐ取れた訳だ。
楽しい乗馬ライフを過ごすには、先ず早くスタッフと他の
会員さんに顔を覚えて貰う事だよねと連れと相談し、
会う人毎に意識して声を掛け挨拶しまくる。結構気が疲れる。

記念すべき一鞍目、馬配はベイジル君、サラ・センの10歳。
馬房に迎えに行く。一人で行くの初めてだぜ、大丈夫かな、
えーと何すんだっけ。どきどきしながら向かう。が、三棟
ある厩舎のどこに居るのか判らず、ウロウロしてもた。

綺麗な栗毛って言うのですか。白足袋履いてるのだが右前脚
のみ履き忘れ。額に傷ある月形半平太(極古)、聞くと新馬
時代に柵に突っ込んだ跡とか。さすがサラ、背が高いっすね。

馬房に入ると、ありゃ、耳絞ってるよ。口元ひくひくさせて、
前脚トントンと叩いて威嚇してんのかい。
馬体の左側を壁にぴたっと付けて「このクソ暑いのに仕事なんか
したくねーやい」モード。
うむー、ちょっとビビる。どうしたものか。取り敢えず
名前呼び続けて、そろっと近付く →トントン…。
やっぱヤバそう。一度馬房を出る。
暫く様子見て再度近付く →トントン…。 おーい。

何とか馬体の左側に入り、無口を近づけると「くいっ」と頸上げる。
こいつ馬体デカいから頸上げると大抵手が届かない事を知っとる。
無口を離すとしゅっと頸下がる、近づけると上がる。離すと…
キリ無いやんか。

「ベイジル、大丈夫ですか~」
余りに出てくるのがとろいので、スタッフが心配して声を掛けて
くれた。と途端に無口に鼻を突っ込んで来る。
こらっ、完全にナメとるな~。

えーっと、先ず鞍と頭絡取ってきて、裏堀だよな。
あれ?ブラシ掛けが先だったっけ。連れに訊かれたが忘れた。
どっちでも良いのちゃう? ぺちぺち脚叩くと自動で脚上がる。
楽だねぇ。でもモタモタしてたら「もうええやろ」とばかりに勝手
に下がる。ごめんね、要領悪くて。

わっ、蹴るな。お前は蝿追っ払ってるだけかも知れんが、めっちゃ
恐いやんけ。ゼッケン付けて鞍載せて、あれ、マルタン忘れてた。
腹帯絞めたらまた怒ってるし。あ、いきなり絞めたらダメなのね。
はいはい。

んで銜掛ける。。。って「いー」するなよ。え?親指でグリグリ
するんすか。そんな事して咬まれないっすか。
ふう。ここまでで体力の半分終わった。汗が滴ってる。
もうシャツ絞ったらコップ一杯分くらい出るぜ。

「はい、馬場に行きましょう」
手綱取って引いて行く。公園の中なので何人かギャラリーが居て
珍しげに見てるよ。何か見られるのって悪くない気分だね。
ほら、馬だよ、ウマ。大きいだろ。これから乗るのよ。ふんふんっ。

鐙に左足かけて飛び上がって…じゃ無くて、スタッフが持ってきて
くれた踏み台使ってよじ登る。
良かった、オーストラリアであれ(飛び上がる)やって股関節が
つったもんな。
ここの台はビールケースじゃ無くてちゃんとアルミ脚立だ。

先ずは馬上体操やって常歩と軽速歩で姿勢のチェック。
もっと手綱張るの?止まるけど。 張るのは引っ張るのと違うの?
背中丸いですよーって、一生懸命伸ばしてるつもりなのに。
おなか出してって、もう出てるし。 違うって?
脚でグイグイやれって、やってるつもりなのに未だ足りないのかね。
 「駄目なら鞭入れて良いですよ~」
そんな、いきなり走らない? こわごわ「ぺちっ」。
 「もっと力入れて。反応が無い内は止めたら駄目ですよ。」
べしっ。「ひひんっ」
 「あ、今のは強すぎですね。」
うむ~、力加減が良く判らないぞよ。
しっかしもうヘトヘトだよ。喉はからからだし目に汗入るしで、
前がかすんで来た。未だ時間来ないの~。

やっと?終わって下馬。ありゃ足に力が入らない。腰砕け
寸前だよさ。よたよた、よちよち歩いて馬繋場に帰る。
死ぬる~水くれ~。
なるほど、それで皆さんペットボトル持参で来てる訳ね。
「あそこにウォータークーラーありますよ」と指導員さん。
をを、ありがたや。
ヘルメット脱いだらポッと湯気が出た。(あくまでイメージ。)

馬は汗掻いたから丸洗い。一応ぬるま湯で。
気持ち良さそうだねぇ。一緒に掛かりたいよ。
汗扱きでしずく飛ばして、ほっときゃ直ぐ乾くってか。

「脚はよーく拭いてくださいね。特にここの凹みんとこ」
をー、しかしこんな細い足首で良く馬体+ワシの体重支え
て走るねぇ。ワシ競馬しないから良く知らんけど、サラの
脚ってガラス細工だって聞いた事があるが、確かに華奢
な感じするねぇ。この前のリッツはぶっとかったけど。

みんなコンビニ袋に何入れて来てるのかと思ったら、仕事上がりに
ポリっと一本おやつをあげてたのね。ごめん、ベイジル、今日は
持ってきて無いよ。そんな「ちっ、シケた野郎だ」って目を
するなよ。(あくまでイメージ。)

馬房に返すと夕飼が用意されていて、一目散に頸突っ込むベイジル。
おいおい、無口外せないやんけ。
くっと頸上げて、いかにも「早よ外せ」と言わんばかり。何と
賢い。と言うか翻弄されまくり。

さて次の予約して帰るとしますか。次は朝の涼しい内に…あ、
一杯ですか。皆さん考える事は一緒で。では夕方のちょっとでも
涼しい時に…四時ですか。余り変わらないかな。

平素の怠惰な生活が祟り、急に運動した翌日は元より、数日間は階段
の昇り降りも苦労する筋肉痛に襲われたのである。
会社の子分:「ワシさん、足どうされたのですか?」
ワシ:「うん、ちょっと筋肉痛でさ」
子分:「何か運動でもしたんすか?」
ワシ:「ん、馬よウマ。」
子分:「競馬ですか」
ワシ:「どアホっ、何で競馬行っただけで、こないなペンギンみたいな
 歩き方になるねん。乗馬や乗馬っ。」
子分:「ええー、乗馬っすか」

ふふっ。どーだい、このハイソな香り。
「ご趣味は」と訊かれ、何げに窓辺を眺めつつ髪をかき上げながら、
「そうですね、乗馬を、少々…」と応える、上流階級のお嬢って雰囲気
漂ってるだろっ。 ワシ♂だが。

子分:「全然似合わないっすね。」

はい、おーきに。


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