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ポプリローズフィールド From 真名 耀子
やっかいであるがゆえに
ちょっとやっかいだな、と思った。
別に彼女のことは嫌いではないし、楽しいし、いいヤツだと思うし、面倒く
さがりの俺らの集まりが定期的に実現しているのも全部が全部彼女のまとめっ
ぷりのお陰だし、昔の仲間と繋がっていられるのも彼女一人の存在の賜物だと
すると、ありがたいとしかいいようがない。
ただ、昔っからなんだけど、どうもどうやら、間違いなく、十中八九、彼女
は俺に気があるらしい。昔っから本当に悪いなって思うんだけれども、あんま
りいい気がしていない。
昔っからというのは、高校の時からで、それは十年ほど遡った時のことを差
していて、まあ、いわゆるクラスメートってやつで、まあ誰かが誰かを好きだ
ということになると、物好きな誰かは冷やかしたりするわけで、俺はそんな野
暮なことをやられるのがすっごく嫌で、そういうことされる前に、さっさと告
白でもなんでもしてきてくれれば、もしかして好きになれたかも、なんて思う
性質で。
まあ、冷やかされるのも面倒くさいというのが理由で、というのもつまり
は、当人より周りが先に誰が誰を好きだと知るとなると、周りがやけに気を使
い、ちょっとした言動にも過剰に反応を示したりして、いてもたっても気味が
悪くなってしまう。
彼女が悪いわけでもなんでもなく、周りの奴らの冷やかしが悪かったのか、
俺は意固地にタカコは、シンジのこと好きみたいよ、というお節介に拒否でき
るだけ拒否し続けた。だからといって、彼女が俺に直接何かを言ってきたこと
はなく、俺は正直、友達としてこざっぱりとした付き合いにしたいものだった
から、何も言われてもいないのに、「早く好きなヤツ作れよ」なんてことを卒
業式の日に言ってしまった。
地元を離れて、俺は東京に来て美容師をしている。タカコも地元を離れてい
る。離れすぎだろ、と突っ込みたくなるがタカコはNYにいる。そんなタカコが
なぜだかいつも同窓会の幹事をやっている。
俺の帰省のタイミングを待っていたかのように(いわゆるただの飲み会って
だけだけど)同窓会が開かれる。
いつもなんでNYにいるタカコがみんなにハガキ出したりやってるんだろ、と思
ってたけど、前回やっとわけが分かった。
「タカコったら、シンジに会うきっかけ作ってんのよ。涙ぐましいわね」
同級生の女子から指摘されたからだ。その同級生の女子がいわゆる俺の帰省情
報をNYにまで密告していたらしい。非常にやっかいだ。
タカコは俺に何を望んでいるんだろう。
タカコは人を笑わせるのに人一倍長けていて、お笑いにでも進むのかと思っ
たら、実はインテリなやつで、困っているやつにカンニングさせるプロだった
(これは褒められるようなことじゃないけど)。そんなタカコは人情に溢れ、
自分のことより人のことを先に考えるヤツだ。男だったら、親友にだって相棒
にだってなってやる。だけど、だけど、ごめん。異性として彼女のことを好き
になれるかというと、いくらいいヤツだって分かってても、なんか違うんだよ
な。
だから俺に合わせないでくれよ、と同窓会のことも思ったりするんだけど、
彼女は彼女で俺に会うだけじゃなくて、他のやつらと集まるのだって、立派な
目的だろうから、変なことは言わない。
ただ、去年の夏。俺が帰省するはずだったのに、仕事が急に休めなくなって帰
れなくなったときに、幹事の彼女まで帰国しなかったことを同級生らに後から
聞いた。俺はそのことに引っかかっていた。そこまですんなよ、と。
今年は誰にも言わずに帰省しようかと思った。おやじとお袋と兄貴夫婦が住
んでいる実家に戻って、ただのんびりと過ごすのも悪くない。同級生の誰にも
言わずに遅めの夏休みをとり、9月に俺は帰省した。
2年ぶりとなった故郷の空気は澄んでいた。高層ビルの立ち並ぶ騒音だらけ
のNYにいるタカコだったらもっとそう感じるんじゃないかと、深呼吸をしてま
ず思い出したのはタカコのことだった。やっかいだと思っていても、頭から追
い払えない。俺は苦笑した。
実家に帰って兄貴の晩酌で地酒を飲んだ。兄弟でさしで飲むのも悪くない。
おやじはすっかり弱くなっちゃたし、最近は宵の口でもう床についているらし
い。
「おやじもここ1年でめっきり年取ったよ」兄貴が言う。
「あ、そう。ちょくちょく帰ってこないといつでも元気だと思い込んじゃうも
のだね」
ひと周りとまではいかないが、迎えてくれた時にまた小さくなってしまった
ように感じた。ついこの間までは怒ると鉄拳が飛んできていたような気がする
のに今は、縁側で寡黙に盆栽をいじるのだけが楽しみな慎ましやかな老人にな
っている。
「お袋はどう?」俺が尋ねると、
「うん、この間の人間ドックでも健康体だって太鼓判押されて帰ってきたよ。
女の方が逞しいね。近くのスイミング教室に毎日のように通ってるし、韓国ド
ラマを夜更かしして見ているし、昼も夜も益々元気だよ」
となんとも頼もしい答えで、俺は安心した。何より健康が一番だ。
「そういえばさ、お前のところの同級生にヤマカワさんっていたよな」
タカコのことだ。
「なに? まさかうちに電話かけてきたりした?」
俺はこわくなった。
「いや、お袋の人間ドックの時に総合病院に送って行ったんだけど、1階の売
店で見かけたんだよ。パジャマっぽいの来てたから入院してるのかな、と思っ
て。いつもお前達の同窓会仕切ってくれている子だろ?」
俺は耳を疑った。元気なイメージしかないタカコが入院をしている。そし
て、それはNYではなく、日本で。長期なのだろうか。医療費や保険の関係でな
のだろうか。一気にもやもやした感情が広がった。
「人違いじゃないの? 今NYにいるし、元気そのものって子だもん」
「そーなんかなぁ。ヤマカワさんって売店に来た看護師の人呼ばれてたような
気がしたけど」
いてもたってもいられなくなり、自分の部屋に引き上げてからも、眠れなか
った。横になっても眠れないんで、深夜だということは承知で同級生の一人に
電話した。
「あ、ヤスダ?俺。シンジ。悪いな、寝てた?」
「だいじょぶ。どうした? 帰ってくるって連絡?」
眠そうな声ではあった。
「いや、実はもう帰ってるんだ。いや、電話したのはさ、兄貴から聞いたんだ
けど、タカコが帰国していて、入院したってホントか?」
「ああ、お前には絶対に言うな、って言われてたから誰も言わなかったんだろ
うけど、そうなんだよ」
「何? ケガ? 病気? 何?」
正しい情報を仕入れようと焦っていた。何があったのか早く知りたい。
「癌が見つかったんだって」
耳を疑った。何も返せずにいると、電話の向こうのヤスダが「もしもし」と
言っているのが何度目かでやっと聞こえてきた。
「なんで?」
「なんでって・・・。去年、NYにいたときに体調がよくなかったらしくってあ
ちこちの病院いって何度も検査したら見つかったらしいよ。初期だったから、
良かったってさ。治療は家族がいるこっちの方がいいからって帰ってきてたん
だよ」
両目から知らず知らず、涙がつつーっと流れては、ポタリ、ポタリと膝にお
ちる。グレーのスウェットパンツに一段濃い色の水玉がいくつも出来ていく。
去年の同窓会に来なかったのはそれだったんだ。俺に合わせるなよ、なんて心
無いことを思っていた自分が情けなかった。
「大丈夫なんだな?」
俺は医者でもないヤスダに強い口調で迫っていた。
「今シンジが病院で会っても癌だったなんて多分気が付かないよ。完璧に治し
て、癌だったんだーと驚かせたいなんて言ってたよアイツは。でも帰国したて
の時は別人みたいで、もうだめなんじゃないかって、みんなで心配してさー。
アイツが会えるときに会わないと、と躍起になって同窓会の幹事やっていた分
だけつらくなっちゃってさ」
俺の涙は引っ込まず、ヤスダにバレやしないか、ヒヤヒヤしたが、タカコが
今近くにいて、そして生きているんだ、と分かっただけで、涙は嬉し涙に変わ
っていた。
俺は次の日、総合病院のタカコのいる病室にコスモスの花束を持って向かっ
た。6人部屋のその部屋の窓際がタカコのベッドだ。肩にタオルをかけて髪を
梳かしている後姿が見えた。
全部のベッドが埋まっているわけではなく、いくつかのベッドには本や衣類
があって人がいることだけは分かるけれど、その時間には誰もいなかった。
「タカコ」
呼びかけると、ビクっとしてタカコが振り返った。すっぴんだったが、見れ
ないことはない。血色のある顔にホッとした。
「シンジ? なんで?」
「昨日帰ってきてさ。ヤスダからいろいろ聞いた。大変だったんだな。ごめん
な知らなくて」
「聞いたんだ」
「うん」
異国で病気になって、心細い思いをしただろうと、何とか声を掛けたいが、
何もも出てこずにタカコをまっすぐに見ることすらできなかった。
「治ったら会えるというのが願かけみたいになっちゃって。会いたい人がいる
なら絶対に治そうって、励みになってたの。お陰さまであと一息ってとこ。で
ももう会っちゃった」
病室にそぐわないほどタカコが豪快に笑った。
「すっぴんじゃ会ったって言えないぜ」
「もう!ぶつよ!」
飛んできたタカコの手をぶたれる前に胸の前で捉えた。触れた手はひんやり
と冷たく、でもその冷たい手の中に通っている血は確実に温かいものが流れて
いるんだろうなと感じた。
手を掴まれて大人しくなってしまうタカコに慌てて掴んだ手を離し、話しか
けた。
「あれ? 髪、濡れてるな。シャンプーしたて?」
「あ、うん。そう、実は今日久々にシャンプーしたの。美容師のシンジに洗っ
てない髪のまんま会うことにならなくて良かった~」
「切ってやろっか?」
鋏と下にひくシートを借りてきてもらい、俺はタカコの髪を丁寧にカットし
た。ブルーのシートに黒い髪が小さな束になって落ちていった。
仕上がってから手鏡を渡すと、タカコの満足気な顔が映った。
「キープしやすいようにしといたから」
軽く入れたレイヤーが毛先に動きを持たせて、活発なタカコによく似合って
いる。
「うん。でも抗がん剤で抜けちゃうかもしれないけどね。そしたらスタイリン
グどうしよう」
「そのときは、そのときだろ。スキンヘッドにだってしてやるし、かっこいい
ウィッグだってもってきてやるよ」
「さっすがー」
タカコの目はキラキラしている。やっぱり元気なタカコが一番だ。本物の元
気を手に入れて欲しい。
「俺が毎年切ってやるから、がんばって治して早くNYに戻らないとな。NYにカ
ットした髪で帰ったら、誰に切ってもらったの? なんて言われるだろうな。
そしたら俺のこと宣伝しておいてくれよ。日本のトップスタイリストなんだっ
て」
タカコの顔が消えた。手鏡を膝に置いたのだ。
そのときのタカコがどんな顔をしたのかは分からない。
次の年、幸い再発の兆しが見られなかったためにタカコはNYに戻っていっ
た。定期健診で帰国することも増え、同窓会の幹事も継続している。
タカコはまず俺に帰国のタイミングを連絡してくる。髪伸びちゃって、と言っ
て。でも、やっかいだ、なんて思わない。その連絡が何より嬉しいんだ。
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